archさんの映画レビュー・感想・評価

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ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

3.8

タルベーラの長回しには破壊と再生である『ダムネーション』を観た時に思った。
シチュエーションを提示する映像が、その役割を逸脱してその規則的運動を無機質に提示する、つまり映像における運動が前景化すること
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オキュパイド・シティ(原題)(2023年製作の映画)

3.8

面白いとか退屈とかの観点が介在しない、徹底的な過去と現在を繋げる「記録」として徹する。
それも膨大な量を「記録」するのだ。多分それでも実際のナチス占領下のオランダで死んだ人間の数に対してまだまだ少ない
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宝島(2018年製作の映画)

4.0

超正統派のダイレクトシネマ。それでいてはっきりとギョーム・ブラックの一貫したフィルモグラフィの中にあるバカンス映画としてのドキュメンタリーだった。

優れているのはこの作品の強みとなるこの避暑地のレジ
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ザ・ビッグ・ワン(1997年製作の映画)

3.5

自身のベストセラーのプロモーションツアー50日間のついでに、大企業のレイオフ問題を切る。『ロジャー&ミー』の豪華版といった規模感でアメリカ全土に渡り、多数の大企業の利潤優先の姿を捉えていく。

前作に
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14歳の栞(2021年製作の映画)

4.0

傑作
未成年の子供を映画の為に撮影されるということは親からして非常に抵抗感があるかと思うのだが、どうやって許可を取ったのか。そこからもうこの企画が成立したこと自体にある種の感動を覚えてみていた。

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漫才協会 THE MOVIE ~舞台の上の懲りない面々~(2024年製作の映画)

3.0

漫才協会という芸人達の居場所を、芸人の数だけある人生のドラマを切り取り、群像劇的に映していく。
小泉今日子らのナレーションによって非常に分かりやすく、親切に構成されているが、それ故にのっぺりとした印象
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行き止まりの世界に生まれて(2018年製作の映画)

5.0

改めて鑑賞したが、やはり大傑作。自分と自分の周りの世界(友人たちや過ごす環境)を通して、個人の問題から社会問題へと横断していきながら、はっきりとエモーショナルで、青春の後味を残していく。
いつまでも子
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ZOO(1985年製作の映画)

4.4

同時に妻を事故死で失った双子と事故死を招いた運転手の女性アルバの奇妙な日々。

死の受容、死の考察を経て、腐敗する行為に関心が至り、
その果てに対称性を失うこと=死を定義していく流れ。死を退廃的で無機
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ラースと、その彼女(2007年製作の映画)

3.3

人との関係に消極的で、交友関係を持たない主人公ラースが、突然ラブドールを「生きた女性ビアンカ」として交際を開始する。
周りは遂に狂ったかと騒ぎ立てるが、次第に彼の真剣さに影響されてか、ビアンカとして反
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東京オリンピック(1965年製作の映画)

4.2

マジで撮る映像の1つ1つがダイナミックにオリンピックを捉えていて、実際に見るオリンピックの1.5倍は神聖で、巨大で、面白いものに映っていた。

競技毎に合わせた画角や撮るポイントの選別も含めての"撮る
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英国式庭園殺人事件(1982年製作の映画)

3.9

12日間で12枚の風景画を描くように依頼された画家は、その条件としてその屋敷の女主人に肉体関係を要求する。広大な英国式庭園を備える豪邸に招かれた男は、屋敷の家主たる夫の不在に訝しみながらも、そして絵画>>続きを読む

その鼓動に耳をあてよ(2023年製作の映画)

4.0

東海制作ドキュメンタリー。
お手本のようなお仕事ドキュメンタリーになっていて非常に勉強になる。
救急救命という仕事の良いところ、悪いところ。やりがいと存在意義、労働環境や医療界隈における位置。
最終的
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彼女はなぜ、猿を逃したか?(2022年製作の映画)

5.0

大傑作!!! 最初の切り返しショットの異様な感覚(背景の差異、会話のちぐはぐさ、カメラと被写体の位置関係の違和感)からもう心を鷲掴み。独特のリアリズムが、編集テンポと撮り方で表現されている作品で、本当>>続きを読む

数に溺れて(1988年製作の映画)

4.3

検察官の男の1,2,3…画面には数字が順番通りに映し出され、粛々と100までカウントダウンされていく。次の数字、次の数字と探してしまうのが観客のサガなのか。
検察官の男が3人の女性に翻弄される男が、理
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ハンテッド 狩られる夜(2023年製作の映画)

4.0

浮気相手との逢瀬の後、不妊治療に向かう道中で寄ったガソリンスタンドで主人公アリスは狙撃される。
誰が?なんの目的で?なぜ私が?混乱の中でその"敵対者"との対決は始まる。

この映画の圧倒的な理不尽さと
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悪魔がはらわたでいけにえで私(2023年製作の映画)

2.6

前日に『復讐のワサビ』を鑑賞して、その後のアフタートークで本作の宇賀那健一監督のコメントを聞いていた。
『復讐のワサビ』の支離滅裂感、どこに連れていかれるのか分からない感を絶賛していた(私は全く賛同で
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復讐のワサビ(2024年製作の映画)

1.0

地獄のような映画だった。本当につまらない映画は、我々を寝かせてくれないし、永遠の時間を提供してくれる。
こんなにも、苦痛な体験はなかった。

本当はあーだとかこーだとか説明する気にもなれないけれど、で
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Mr.ウッドコック -史上最悪の体育教師-(2007年製作の映画)

2.9

鬼体育教師による虐待行為でトラウマを抱え、それについての自己啓発本で一躍有名になった主人公。名誉市民賞を受け取りに帰郷すると、昔の鬼体育教師が母と付き合っていることが発覚し、火花を散らすことになるとい>>続きを読む

ローリング・ストーンズ・イン・ギミー・シェルター(1970年製作の映画)

4.4

普通のライブドキュメンタリー。あの時、あの空間に満ちていた異様なエネルギーに突き動かされ、30万人近く観客とザローリングストーンズは「オルタモントの悲劇」に至ったのだという記録。
ツアー最後の無料コン
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コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)

4.3

ガイ・リッチー 真面目路線、完全に舐めていた…。素晴らしい傑作でした。
アフガン戦争で実際に起きた出来事を元に、ジョンとアーメッドの命懸けの絆の物語を描き出す。

負傷したジョン・キンリーを運ぶアーメ
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アッテンバーグ(2010年製作の映画)

3.5

これが"ギリシャの奇妙な波"なのか。
性への無垢なる関心、"普通"の枠を好奇心で逸脱していく危うさ。
少女2人の背伸びした毎日と、セックスや性器について語り合う父子。セックスが中心にあり、されどそのオ
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.6

「裁判」という場所の本質、「真実を見つける場所ではなく、真実を選ぶ(決定する)場所」だという点を見事に舞台装置として機能させ、夫婦と子供+犬の家族という集団を解体し考察する、つまり「解剖」するのだ。>>続きを読む

グリズリーマン(2005年製作の映画)

4.3

グリズリーの保護活動を行っていたティモシーとその彼女エイミーは、グリズリーによって無惨に殺される。
彼らは何故グリズリーの身近に生きて、彼らを守ろうとしたのか。彼らが殺されてしまったのは自業自得なのか
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ロジャー&ミー(1989年製作の映画)

5.0

GM社の工場によって支えられていたフリントが、レイオフによって街中に失業者が溢れかえってしまう。
潰れそうだからレイオフ…という訳でもなく合理的に企業の利益を求めるために、工場をメキシコに移すのだそう
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マダム・ウェブ(2024年製作の映画)

2.2

PSPは2003年には存在しません!!!
ソニー傘下の会社だよね???2003年にPSPが発売されてる世界として定義するってこと…?えッッッッ?


そんな些細なことはどうでも良いが、でもやっぱり酷い
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ソルフェリーノの戦い(2013年製作の映画)

3.5

実際にフランス大統領選が行われた2012年5月6日に、社会党本部でゲリラ撮影によって撮影された作品。
そのコンセプト故に幕構成が歪で、お世辞にも綺麗にまとまった作品とは言えないが、現実に起きている狂騒
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ダム・マネー ウォール街を狙え!(2023年製作の映画)

4.1

YES!!大傑作!!!!

完全なる『ソーシャルネットワーク』フォロワーの作品(原作者も同じかつ原作タイトルは「the antisocial network」)、より厳密に言えば『ソーシャルネットワー
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劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦(2024年製作の映画)

4.2

ハイキュー(原作も含めて)の素晴らしさは一貫して、「たかが高校生の部活」を「されど高校生の部活」なんだよと、描くところにあると思っている。

それはスポーツ少年漫画では珍しいことではないだろうし、「ス
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マーダーボール(2005年製作の映画)

4.3

最高のスポーツドキュメンタリー。
アメリカvsカナダの因縁のBO3を軸に進むので、たるむことなく進んでいく。合間合間に彼らのほとんど後転的に発生した身体障害とどう向き合ってきたのかやこのマーダーボール
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ソドムの市(1975年製作の映画)

4.3

これまでみた観た作品の中でも、かなり凶悪

終戦間近、イタリア北部に樹立したドイツの傀儡政権、サロ共和国。大統領含む首脳陣4人は、権力の崩壊を察して、振り絞るかのようにその権能を使い、若い男女複数名を
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アッカトーネ(1961年製作の映画)

3.0

ローマの地方、治安最悪、クズばかり。これこそがリアリズムだとネオリアリズムに宣戦布告した(らしい)作品として、素人キャスティングやエピソードの生々しさに徹底したリアリズムを感じさせる。

撮影自体はか
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.3

正直『ミツバチのささやき』『エル・スール』の内容をあまり覚えてないのだが、「映画」が人生にもたらす影響を作中の大きな力点にするところや、「少女」を探し求め、ある意味で映画-現実間を往来する老人の物語で>>続きを読む

スーパーサイズ・ミー(2004年製作の映画)

3.8

分かりきった結末が用意されながらも、「30日間マックだけを食べたら人はどうなるか?」という問いかけの誘惑には勝てない。その問題提議に込められてるアメリカ的な食文化への警鐘や利益優先の大企業による健康被>>続きを読む

全身小説家(1994年製作の映画)

2.9

人生すらもフィクションにしてしまう…なんて言い方はさすがにロマンチックすぎるが、そういう生き方をした小説家の話。
『ビッグフィッシュ』のドキュメンタリー版とでもいうか。別に嘘つきクリエイターという意味
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