archさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.0

時代を敢えて、錯誤する。この映画のフィルム的な映像感は"かつての物語"を想起させ、紙で電話番号を伝える仕草(スマホは登場する)やラジオが生活の中心として何度も出てくる場面があり、映画館の映画のラインナ>>続きを読む

翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~(2023年製作の映画)

3.7

アクロスザスパイダーバース並のハイコンテクストな情報の波になっていてびっくりした。
大宮アルシェにガチャガチャが置いてあって、それがミニ大宮駅の描写として笑いポイントなのを利用者以外誰がわかるんだ…
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ピンクカット 太く愛して深く愛して(1983年製作の映画)

2.6

女の子だけの美容室ものってことでシャンタル・アケルマンの『ゴールデン・エイティーズ』の思い出すことになるとは…
蓋を開けてみれば伊藤克信無双という感じで、彼の他に類を見ないノロマっぷりで最後まで観れて
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演劇2(2012年製作の映画)

4.3

Ⅱになってようやく平田オリザが本名であることを知った。
ⅠとⅡは同じ撮影期間の中でテーマ毎に分けて編集した作品で、Ⅰは「演じる」ことについての平田オリザ論を見せつけられるような作品だった。Ⅱは「演劇」
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野獣死すべし(1959年製作の映画)

3.3

相変わらず仲代達也の発声が素晴らしくて、メロメロになってしまう。

表の顔と裏の顔を使い分けるエリート殺人鬼の映画で、『アメリカン・サイコ』なんかも連想させる作品。
表では優秀な教授助手、裏では女学生
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演劇1(2012年製作の映画)

5.0

平田オリザの主宰する演劇団を追ったドキュメンタリー。
平田オリザの哲学を端的に表すワークショップの様子や言葉が、このドキュメンタリーを演劇という一芸術形態の枠から、「演じる」という行為へと敷居を広げ、
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ユンボギの日記(1965年製作の映画)

3.0

大島渚 韓国ドキュメンタリー三部作(?)の三つ目 ラ・ジュテ

忘れられた皇軍(1963年製作の映画)

4.1

日本軍として戦場に派兵されていた在日韓国人のドキュメンタリー。全員が傷痍軍人として腕や足、眼を失っておりそわな彼らが日本国籍出ないが故に一切の補償も受けられてなかったというところから始まる。昭和38年>>続きを読む

憧れを超えた侍たち 世界一への記録(2023年製作の映画)

4.0

野球好きの父親から色々と補足を受けながら鑑賞

スポーツ観戦に全く興味が持てない人間だが、本作みたいに要点を要領よく並べた約2時間の作品にしてくれるのであれば楽しめるんだなぁとしみじみ思っていた。
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マエストロ:その音楽と愛と(2023年製作の映画)

4.0

脚本が開発され、最初はスコセッシやスピルバーグが監督になりかけていたが、結局はブラッドリー・クーパーへと流れた。(スコセッシは『アイリッシュマン』、スピルバーグは『ウエストサイドストーリー』をやること>>続きを読む

ブルーを笑えるその日まで(2022年製作の映画)

3.0

想像以上にこの映画が救ってくれる"あの頃の君"は限定的で、だからその少数の為に作られた本作は尊いだろうし、「俺のことは救ってくれない」という残念さはある。
トークセッションでも言っていたように「届くべ
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柄本家のゴドー(2018年製作の映画)

3.6

柄本家3人で作る「ゴドーを待ちながら」。

立ち芝居初日から初演までを追ったドキュメンタリーだが、超面白い。演技が達者で有名なはずの祐と時生の掛け合いを爆笑しながら観る柄本明の構図に震える。(本心とし
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「A」(1998年製作の映画)

4.0

地下鉄サリン事件の1年後に、オウム真理教の広報担当副部長荒井の密着取材を敢行したドキュメンタリー。

家庭用のビデオカメラで潜入した見切り発車感は特に音声の聞き取りづらさに見受けられるが、題材の旬を感
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市子(2023年製作の映画)

4.2

本作を楽しみにして監督の処女作『ねこにみかん』を鑑賞した時は気絶するほど苛立たしい作品で、楽しみにしていた本作を観ることは正直かなり悩んだ。

だが率直に観てよかったと感じている。
市子という女性の人
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ア・ストーリー・オン・ザ・ショア(2019年製作の映画)

3.0

是枝監督がホゥシャウシェンに言われた言葉を我々に共有する、それこそが本作を観る価値そのものだ。

3つの海、『海街Diary』から『万引き家族』までの期間の是枝監督を追った作品で、その言葉一つ一つな金
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黙ってピアノを弾いてくれ(2018年製作の映画)

4.0

「普通の世界なら俺が演じなくとも音楽を聴いてもらえた」

その言葉は音楽業界、ひいてはエンターテインメント業界の俗物的な本質を見事に捉えた経験者からしか生み出せない言葉だと思った。

狂人的振る舞いで
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21世紀の女の子(2018年製作の映画)

4.1

“自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていることというテーマで14人の実写映画監督+1人のアニメーション監督のオムニバス。
各作品の評価は下に示すが、「写真」や「撮影」がモチ
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リアリティ(2023年製作の映画)

4.0

2017年6月3日、1人の女性の元にFBI捜査官が表れる。
「家宅捜索の令状を持っている」

トランプ政権下で実際に起きた機密漏洩事件を、当時の録音の書き起こしそのままの台詞で、完全再現を行った作品で
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ほかげ(2023年製作の映画)

3.8

戦後の日本、焼け野原に生きるお先真っ暗な市井を描く。

戦争の傷跡を血や死ではなく、生活レベルの著しい低下と精神的な困窮を通して具現化する試みであり、それをタブラ・ラーサたる少年の経験とその眼差しで観
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Peace(2010年製作の映画)

3.5

想田監督の声がかなり入ってる所に、別作品との距離感や感情移入のほどの強さを感じた。

NPOの介護福祉施設を運営している夫婦を追った作品。老老介護のような様子や、切迫した運営、独居老人の孤独、猫。
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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

3.2

昭和31年を舞台としたゲゲゲの鬼太郎のオリジン。
主人公はゲゲゲの鬼太郎にも出てくる目玉おやじの昔の姿、ゲゲ郎と、戦争経験により日本の腐敗した社会構造を内面化しのし上がろうとする水木の物語。

横溝正
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王国(1973年製作の映画)

3.0

支離滅裂で下品で道理に反して「普通」とされているものを否定している。だからアングラ映画なのだが。


穴への謎の執着の変遷。「フラフープは流行じゃない」と叫びながら室内でフラフープを回す姿かから始まり
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鬼婆(1964年製作の映画)

4.0

如何にこの地上に地獄を作り出すか、いやこの地上にこそ地獄があるではないかを、バチバチに決まったライティングと、二人のだけの世界に1人加わり、構成最低人数の社会が形成されることで始まる怪談話のような御伽>>続きを読む

ヨーロッパ新世紀(2022年製作の映画)

3.5

メモ

・『理想郷』的

・教会からいなくなるのがいい


・主人公が真に下らない人間で、彼こそが外を知り「余所者」の普遍的な排他的構造を知っていたのに

・最後、なんだか分からないのに奥行きを利用し
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精神(2008年製作の映画)

3.6

『選挙』に引き続き鑑賞

精神科診療所に通う精神病患者達を群像的に撮る。1人の人物とその周辺を描いた『選挙』に対して、やや散漫な印象を与えながらも人の精神が如何に環境や境遇によって唯一無二な状態を保っ
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選挙(2006年製作の映画)

5.0

想田監督の観察映画一作目。
超面白い。2005年自民党から市議会議員補欠選挙にハッキリと凡人な山内和彦が巻き込まれ、当選するまでの流れを撮ったドキュメンタリー。
山内和彦という男が「選挙」に巻き込まれ
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怪物の木こり(2023年製作の映画)

3.1

サイコパスという言葉が広義であやふやで、めちゃくちゃ軽い。サイコパス=犯罪者は精神病患者=殺人鬼の強引な図式に近しい嫌さを感じさせた。
そこに加えて脳チップなる設定が追加されて、よりその言葉の意味する
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バーチャルで出会った僕ら(2022年製作の映画)

3.8

バーチャルリアリティーの在り方は、実際にその世界を堪能している人と、そこに所属せず外からやいのやいの言ってる人では、その認識の仕方が違う。それをこの映画は伝えてくれるのだ。

かつてなりきりチャットや
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ナポレオン(2023年製作の映画)

3.6

今やこのハリウッドバビロンを彷彿とさせるスケールの史実映画を作ることが出来るのは、リドリースコット位かもしれない。確固たるヴィジョンに裏打ちされたこの一種の"公共事業"のようなスペクタクルは、人がその>>続きを読む

ダゲール街の人々(1976年製作の映画)

3.6

子育て中だったアニエス・・ヴァルダが50m圏内のダゲール街の人々の様子を撮影する。
小売店の中での時間感覚を体験したい、というのが作中での動機として定時されるが、同時に客と店の物理的距離感の近さにも小
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國民の創生(1915年製作の映画)

2.5

あらゆる意味で悪名高い本作を初めて鑑賞。

KKKが映画的な運動たる「馬」の躍動と共に、英雄的に描写され、"悪人=黒人"を成敗していくという後半の展開には目眩がする。既に自分の中にあるKKKへの印象故
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胎児教育(1991年製作の映画)

4.4

面白い!妊娠中の女性が、母体からの胎児への多大なる影響を過信し、「怒らない、驚かない、怖がらない」と感情を抑制してお腹の子ファーストな生き方をしていた。
ある種のコメディーにいくのかと思いきや、そのパ
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極楽ゾンビ(1990年製作の映画)

2.5

カットの連続性の限界に挑戦しているような作品。ところどころ破綻しているけど、異化効果を狙った演技の数々が「まぁいっか」とさせる。

家族にお荷物として見なされた寝たきり老人のおじいちゃんが、ゾンビとし
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バルコニー映画(2021年製作の映画)

4.0

以前シャンタル・アケルマンの『家からの手紙』を観たとき、カメラが持つ市井の人々の日常を変異させる力に驚愕したのを憶えている。
定点カメラが普段の日常空間にあるだけで、"そこ"に映る人々や、"そのカメラ
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