名前や役割が与えられる以前に、私たちや植物や物はちゃんと存在しているんだって再確認できる。
純粋な、ただここに在るという喜び。
街のどこかで買い物したり、セラピーに行ったり、泣いたり、仕事したり。
ありふれた日々を、少しばかり寂しく思いながら生活する様は、何て愛おしいんだろう。
「おもかげ」というタイトルが、この映画一本に漂っている。
あの二人の感情は大きく捉えれば「愛」なんだろうけど、それを表す適切な言語が見当たらない。言語化したそばから、感情がすり抜けていく気がする。
正義感を盾に自己と他人の境界が曖昧になることは、誰にでも容易く起こること。「相手を他人として接すること」は、薄情なようだけど、思いやりがないとできない。自戒の念をこめて、時々思い出したい映画でした。