水のまちさんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

水のまち

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寝ても覚めても(2018年製作の映画)

4.4

透明な瓶の中だとは知らず、触れてみて、やっとそれが何かと気づく。内なる想いは目では見えづらいけれども、高鳴る鼓動の単純さが、真っ直ぐな道標となり、大切な場所へと導く、愛の本能。時に痛みを伴うが、当然、>>続きを読む

こわれゆく女(1974年製作の映画)

4.3

原題に対し、『こわれゆく女』の時代錯誤なミソジニー。社会通念、慣習、しきたり、等々、何の根拠もない夫の権威。噛み合っていない歯車を、無理やりにでも回転させる惨い様相。心病んだ人に大声を上げる、傷口に塩>>続きを読む

愛情萬歳(1994年製作の映画)

4.9

どうしてこうなってしまうのだろう。自分のとった行動だから、自分の責任なのだろうが、いつもそうなる堂々巡りは、まるで業とでも言わんばかり。幸せへの道のすぐ隣には、不幸への道があるようで、その隣にはなんで>>続きを読む

木と市長と文化会館/または七つの偶然(1992年製作の映画)

5.0

もし、政策という次の世代への答えに、次の世代が口をはさむことが出来なかったら。現実主義だと語る凝り固まった頭脳が景観に相応しくない奇っ怪な負の遺産を残し、田舎の長所である自然環境を破壊し、利権まみれの>>続きを読む

しあわせ(1998年製作の映画)

4.5

偶然が必然へとかわる時、そこにいるのが私でしょう。からだに未来が入ってきては、過去となって出ていく時、踊っているのが今なのでしょう。死まで有り余る、唯一、止まらぬ時の流れをルールに、人生というゲームを>>続きを読む

好男好女(1995年製作の映画)

4.0

人はいつかは死ぬのだけれども、殺されるというカットアウトは、遺されたものに、より深い悲しみをあたえ、理由はどうあれ、死ぬまでそのやりきれない思いが胸の内から消えることはないようだ。息苦しい水槽の中で、>>続きを読む

青春神話(1992年製作の映画)

4.8

奥底から込み上げてくる不安のようなモヤモヤが、大人になりきれていない体の中につまったまま、苛立ちに似た感情へと変わっていった。勉学に励み、人生をかけて真剣勝負をする普通というものに、理由なく向いていな>>続きを読む

ガスパール/君と過ごした季節(とき)(1990年製作の映画)

3.8

社会から、彼らが捨てられたとするならば、社会は優しさを捨ててしまったことに気づかなければならない。傷ついた心が、誰かと寄り添うことで笑顔へと変わっていく様子に、誰隔てなく優しくできることこそが、真の勇>>続きを読む

Hole(1998年製作の映画)

5.0

男と女をつなぐのが穴という、そのままずばりの隠喩で艶やかに、上の階に住む男の無神経な身勝手さに、下の階に住む女は今まで大切にしてきたものを台無しにされてしまうほど翻弄されるという、男性上位的な恋愛観。>>続きを読む

8月の終わり、9月の初め(1998年製作の映画)

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人と人とのあいだの空気、命を守る為という生活の本意、何気ないことが運命を変える偶然、見えないところでも流れている時間。温かくも、冷たくも、全ては受け止めるしかないと、それに気づくことが出来たとき、長い>>続きを読む

あなたの顔(2018年製作の映画)

5.0

肉的な器に入った霊、表情という魂。あまたの細胞で形成された顔は、シンメトリーであろうはずが、不安な心を持ったせいか、鼻筋を堺に左右がせめぎあって歪み、不確かな自信がそれを覆い隠すとき、滲む重い脂で宇宙>>続きを読む

友だちの恋人(1987年製作の映画)

5.0

相性という言葉だけで終わらせるにはもったいない、人と人とが惹かれ合う、透明で複雑なそれぞれの多面体。好きな気持ちに理由などは要らないと情熱は言うかもしれないが、それよりもっと面白いことがあると教えてく>>続きを読む

緑の光線(1986年製作の映画)

5.0

受け入れてしまえば楽しかったはずの孤独も、心が誰かを求めた途端、孤独という分類から追い出されてしまったかのように、混沌とした虚しさが襲って来る。何処であろうと、恋人と歩けばデートとなるが、一人で歩けば>>続きを読む

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)

4.8

愛する人に思い馳せるが、記憶の中にいる人は、生きているのに無機質で、どれだけ強い愛を以てしても、その人に影がないことを知った。そのうち、現実に生きる人さえも、一視点からしか見えない故に、生きていること>>続きを読む

満月の夜(1984年製作の映画)

5.0

満月の夜は眠れない。と、新月の夜深に頷いてみる。恋愛の上位互換が同棲であり、深い愛の絆という事で、お互いをお互いの所有物のように独占し合う。世間ではそれが幸せであるかのように言われているが、果たして本>>続きを読む

美しき結婚(1981年製作の映画)

4.9

嗚呼、素晴らしい。恋物語を描きながら、恋とは素敵なものなのです、とは一言も言っていない、それどころか、恋に夢中になっている人を喜劇のように見せながら、貴方は大丈夫ですか?と戒めているのではないか。『美>>続きを読む

飛行士の妻(1980年製作の映画)

5.0

胸踊る恋の始まりは一瞬に、胸軋む恋の終わりは永遠に。風をつかめぬ風見鶏、不安な夜も歩き続けたその先に、きっと何かがあるだろう。動き続ける心臓は、その為に止まらないのだ。彷徨え、青年。パリはパリであって>>続きを読む

独裁者(1940年製作の映画)

4.2

1940年6月22日、独仏休戦協定に調印し、ナチス・ドイツによってフランスは陥ちたのだが、翌、23日にラストの名演説シーンが撮影されていたと知れば、それだけでチャップリンは偉大だと言わざるを得ない。云>>続きを読む

サマーフィーリング(2016年製作の映画)

4.4

各々胸の内にある、自分でも分からず、掴みきれない、複雑な好意を映し出す至極の色彩。生きる人、その中に生きる人、巡りゆく夏。恋心は、理性ではなく気分であって、誰かを好きになるのではなく、好きになっている>>続きを読む

イット・カムズ・アット・ナイト(2017年製作の映画)

3.8

STAYHOME期間を終え、親しかった職場の人と久しぶりに会ったのだが、相も変わらず親密なディスタンスで話してきたので、え?って思ってしまう自分がいた。だが、この映画を観たら、そこまでして生き残る意味>>続きを読む

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)

4.8

Don't they know it's The End of the World. 右往左往と、レイシストからオカルトまで、皆が勝手な事を言っている、まるで現実世界だな。で、私もzombieなのだろ>>続きを読む

浮き雲(1996年製作の映画)

4.5

時計の進みが、昨日よりも遅く感じていた時、雲は世界から切り取られたように静止している。しかしながら少し少しと変化し続けている雲と下界。どれだけ時間が経ったか定かでないが、次に空を見上げた時には、もうあ>>続きを読む

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)

4.6

コーヒーとウォッカが心を潤し、ROCKとエンジン音で間を埋める。豆切らして、いざ港。女の口説き方なんてものを知っているのは、下卑た根性が低俗な情報を掻き集めたからだ。見ろ、いたいけな男が、好きな気持ち>>続きを読む

コックファイター(1974年製作の映画)

4.3

博徒が賭けてるもんはさ、金じゃないの、人生なの。だから、負けた時には死にたいくらい惨めになって、勝った時には今まで生きてきた中で、味わったことのない恍惚の光を手にするわけ。レートじゃないんだよな、レー>>続きを読む

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)

4.8

誰彼構わずに打ち明けられない好きなもの、好きなのに嫌いと言う愛の原石。緑の田園風景、透明なエーテル、どこで呼吸していても、その歳になればかかる病。彼らの姿は、葛藤の重さに耐えかね、折れ曲がった、蹴りた>>続きを読む

反撥(1964年製作の映画)

4.7

口を開けば、男は女、女は男のことばかり。馬鹿ばっか、と言えるほど図太くないから、眠たそうに、爪を噛んで、髪をも噛んで、心の底からひび割れていく。やっと誰もいない部屋なのに、下心の大行進のように突入され>>続きを読む

コード・アンノウン(2000年製作の映画)

4.4

つまりは、悲しいことに「知り得ない」が正解だと言っている。伝達手段として完璧なような「言葉」は、結局はそれがただ便利なだけに過ぎず。「孤独」というのも、生きることに余裕があれば、精神的なものに留まるが>>続きを読む

殺人狂時代(1967年製作の映画)

3.7

『人類補完委員会』は、この映画の『大日本人口調節審議会』から着想を得たと思われるが、もしかして『碇シンジ』の”シンジ”もまた、主人公『桔梗信治』から来たのかもしれない。と、庵野秀明でなくとも、岡本喜八>>続きを読む

秘密の子供(1979年製作の映画)

4.8

心よりも近い距離で重なる身体、触れ合う肌、溶け合う唇は、容易に別れがあることを知っていた。どうしていいのか分からない、それぞれの葛藤、そんなことを分かち合いたいわけではないはずなのに、側にいる時、何故>>続きを読む

薄氷の殺人(2014年製作の映画)

4.3

ネオン管の放つ光彩を、ただ美しいと表現したのでは何か足りない。その輝きのために構造的な危険性を併せ持つからなのか、それともネオン街の裏に潜む危うい印象からなのか、理由はわからないが、危険と共存したよう>>続きを読む

マンディ 地獄のロード・ウォリアー(2018年製作の映画)

4.0

血塗れのBlack Metalの皮をかぶったDrone Doom。ストーリ仕立てのアルバムのような復讐劇に、何かを求める方が野暮なのか。精密に描かれたジャケットのような様式美のpsychedelicも>>続きを読む

5つ数えれば君の夢(2014年製作の映画)

4.4

普通なんていうものは定かでないが、当たり障りのないように普通でありたいと思う心は、少し普通ではないということのコンプレックス。言うなれば、まるでE♭。薄暗いところへと、柔らかくも真っ直ぐな光がさすよう>>続きを読む

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)

4.5

説得力。

阿南惟幾の割腹自決と、指で押す抗議のハッシュタグ。そう比べたら、平和な時代になったわけだが。

シテール島への船出(1983年製作の映画)

4.3

完成形と思われたイデオロギーも崩壊し、止む無く故郷に帰ったが、妥協できない精神の為、また疎外。さざなみを立て、靄の中へと吸い込まれていく、飽くなきユートピアへの探求の船出。その行き先が土地ではなく、隣>>続きを読む

GO!GO!L.A.(1998年製作の映画)

3.5

曇りがちなオフビートな冷たさと、夕日の似合うロマンスの熱が、どうしたって混ざり合えない滑稽さ。ただ素直に笑わせてくれないのは、身に覚えのあるような、それが恋の話だから。ここはハリウッド、映画の中でしか>>続きを読む

風が吹くまま(1999年製作の映画)

4.7

”生活”という二文字に、生きとし生けるものの全てが集約されているかのような一片。果てもわからぬ広大な宇宙の中で、生きているようであり、生かされているようでもある、この一つの命の中に、善と悪とでは理解し>>続きを読む