koheiさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

EUREKA ユリイカ(2000年製作の映画)

5.0

まだこんなにみずみずしさに満ちた日本映画があったんだっていう驚き、自分にとって100本に1本あるかないかの作品だった。とか中身のないことを言っていてもしょうがなくて、観た今日になんか書いとかないといけ>>続きを読む

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

4.7

ゲイリーとアラナのふたりに同期しているようなカメラワークが愛おしい。カメラは走り続けるかれらを迎えることはあっても追いかけることはせず、同時に動き出し、同じ速度で走り、突然の失速や後退に振り落とされた>>続きを読む

スローターハウス5(1972年製作の映画)

3.7

過去現在未来を主人公が行ったり来たりしてるというよりは、ただ彼の人生を時系列ぐちゃぐちゃにして見せてるだけのように感じる映像。SF映画というよりはちょっと複雑な一代記ドラマという感じで。原作がどういう>>続きを読む

あなた自身とあなたのこと(2016年製作の映画)

4.4

ホンサンスの中でもかなり好きなほう。ミステリアスな不条理劇なんだけど、一風変わった日常劇としても観れる。ちょうどいま聴いていた柴田聡子の「部屋を買おう」なんかにもリンクすると思う。自分という存在をひた>>続きを読む

人のセックスを笑うな(2007年製作の映画)

3.3

ひたすら蒼井優がかわいい。こんなふうに長回しで画面の前方と奥を行ったり来たりするだけの映画あんまり見たことない。画面に動きはないけど不思議と停滞感もない。異様なほど会話に意味を持たせないのも特異。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007年製作の映画)

4.5

面白い。弟に夢を語らないながら、変化に気づいたときのダニエル・デイ=ルイスの顔がめっちゃいい。血と炎と石油と黒煙が画面を引き裂くとき、その顔を見逃さずにいられない。もっとも上質な部類の映画だと思う。

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

2.8

このレビューはネタバレを含みます

「血は水よりも濃い」というセリフがさらっと登場するけど、これは『そして父になる』にもあったセリフだ。血縁は何よりも強い絆になるということわざ。そういった是枝映画で何度も描かれてきた血縁と非血縁の家族を>>続きを読む

ブギーナイツ(1997年製作の映画)

4.2

何本見てもPTAの作家性ってあんまりよくわからない。ぜんぶ違ってぜんぶいい感じがする。コーエン兄弟とかタランティーノの映画を観るとすごくアメリカっぽいと思うのだけど、これも同じ空気が流れてると思った。>>続きを読む

あなたの顔の前に(2020年製作の映画)

3.6

どんどんシンプル、アケルマンみたい。ところどころ『恋の秋』的な軽さがあるけど全体的には微妙。おなかさすった3分後とかに昨日ご飯食べすぎたみたいな話するのはリアリティがあっていい。息子の恋人との関係性ち>>続きを読む

三姉妹(2020年製作の映画)

4.5

かなり素晴らしい映画だと思う。一方でめっちゃイカれてる映画だと思う。クレイジーだけどド傑作。


それが自分の鏡像であると自覚しながら、家父長制や男性中心社会に怒りを差し向ける次女の姿はどこか成瀬映画
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MADE IN YAMATO(2021年製作の映画)

3.4

5つの短編を見終わると、けっきょくひとつ目が一番面白かったなぁという思いが残った。後半に対する少しの期待はずれとともに。ひとつ目(山本英「あの日、この日、その日」)は、林にシート敷いてワイン注いだりサ>>続きを読む

恋は光(2022年製作の映画)

4.5

フェティシズムの塊みたいな映画だから好きだと言うのはなんか猛烈に恥ずかしくなるけど、これだけつくり手の好きなイメージを詰め込めたのはすごいと思う。恋とは、誰しもが語れるけど、誰しもが正しく語れないもの>>続きを読む

わたし達はおとな(2022年製作の映画)

4.3

加藤拓也監督、映画がうますぎる…
きょねん劇団のほうも観に行って題材的には今回のと似てたし藤原季節がクズ男役ってのも一緒だったけど、圧倒的にこっちのほうが面白い。音楽がない、のにテンポがいい、カメラが
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こちらあみ子(2022年製作の映画)

4.0

原作のディテールを忘れてしまったけど、あみ子の一人称視点で語られる物語ではなく、絶妙な位置からそっと見ているようなカメラワークだったのが今村夏子的であり、きっと原作もそうだっただろうと思う。背中と、こ>>続きを読む

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

美しい物語だと思った。この映画にとって美しさは大事なキーワードだと思うけど、一方ではどうしようもなく美しくなさ(ゲロ吐くレベルのもの)が充満している映画で、さらにこのリアルな世界はもっと美しくない。で>>続きを読む

距ててて(2021年製作の映画)

4.4

ぜんぜん「距ててない」展開の連続に笑ってしまう。アコとサンの取り巻く環境にどんどん人が入ってきて居座ってしまうのだ。でも侵食してくるのになぜだか嫌な感じがしない。人と人の間に流れる空気感がめっちゃ自然>>続きを読む

明日は日本晴れ(1948年製作の映画)

4.2

ハロプロのMVの“ワイワイリップ”と呼ばれるような場面でしか見たことない、何人もの人がひとつの画に収まるシーンのなかで、席を譲れだの税金払ってないのはやばいだの他愛もない話を繰り広げるところの運転手の>>続きを読む

仮面(1987年製作の映画)

4.3

『ニュー・シネマ・パラダイス』のじいちゃんと同一人物だったなんて。んん?と思わず目を見張るシーンがめっちゃあった。特に銃出してからの鏡にMのとこと鳥投げちゃうとこと野原を遠景から撮ってるところの空白の>>続きを読む

マイスモールランド(2022年製作の映画)

4.3

どこの国の出身ですか、って確かに気軽に聞いてしまっていることがあったかもしれない。今の肩書きってなんですか、って聞いて困らせてしまったことも最近あったけど、人のアイデンティティに関わることは適当に話し>>続きを読む

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

3.9

ほとんどヴィジュアル面しか褒めるところないけどそれでもシンシリーズはかなり好きかも。マーベルよりは今の自分に合ってる。謎の画質の粗い映像とか、端々のちゃっちい感じが真面目に不真面目してて妙にツボ。

夜を走る(2021年製作の映画)

4.0

なんとなくポスターとタイトルだけで藤井道人的(デイアンドナイト)な映画かと思ったけどぜんぜん違った。物語はぶっ飛んでるというよりところどころ破綻してると思うのだけど、なんでこんなに面白いんだ。ずっと興>>続きを読む

ベルイマン島にて(2021年製作の映画)

4.3

『グッバイ・ファーストラブ』に最近射抜かれた自分としてはミア・ハンセン=ラヴの新作をこのタイミングで観れるのは嬉しい。恋のタイミングと社会的属性のなかでたゆたいながら生き方を模索する主人公の姿は『グッ>>続きを読む

カモン カモン(2021年製作の映画)

3.6

泣いてる甥に泣いていいんだよと言い、歩きながら気絶した伯父に恥ずかしいことじゃないよと言う。聴くことと発すること。同じ筋で大好きな映画の『都会のアリス』は、放浪するルポライターの話だった。見ることと書>>続きを読む

私、君、彼、彼女(1974年製作の映画)

4.1

特集の一番最後にこの映画を観て、アケルマンのことが怖くなった。砂糖の爆食い、男の話を聴きながらニヤけるアケルマン、レスリングみたいに激しいセックス、家で見てたら爆笑してた。動物園の猿山を眺めるのが好き>>続きを読む

オルメイヤーの阿房宮(2011年製作の映画)

3.9

商業映画然とした映画にお馴染みのアケルマン印を見つけるとあがる。特にニナが寄宿学校を出て街を歩くところの横移動。顔のクローズアップは今回の特集の映画には他にない気がするけどここでは2回くらいあった。『>>続きを読む

アンナの出会い(1978年製作の映画)

3.7

読解力がなさすぎて話の筋がぜんぜんわからないんだけど、答え合わせしたいとは全く思わない。見えたものが全てだなという感慨を得るのがアケルマン映画。今回も惨敗だったけど母への語り以降 目をとんがらせて見た>>続きを読む

M/OTHER(1999年製作の映画)

4.2

舞台演劇みたいな立派な部屋の全貌を一番映し出せる位置にカメラが置かれるのが最後のカットで、そのカットを見てああ自分はこの映画好きだったなとなんか思えた。フィクションであることを忘れさせるような固定カメ>>続きを読む

囚われの女(2000年製作の映画)

3.6

ところどころ寝ちゃった。最後ぜんぜんその人に見えなかったんだけど、ほんとに?冒頭の尾行劇が固定カメラで奥にずんずん進まれても緊迫感なくてそのうえ音楽は過剰でしっくりこなかった。別にいわゆるストーカーで>>続きを読む

おかえり(1996年製作の映画)

3.7

夫と妻のいる場所の温度感の対比が凄まじい。寺島進の寄り添い方、突っ込まなさ。映画としては逃げてるようにも感じるけど、ただああするしかない。

イゴールの約束(1996年製作の映画)

4.1

異常にテンポの速い語り口と「約束」が効いてくる周到な脚本があって、アート映画かと思いきやとても見やすい。劇伴なしの環境音だけで作り上げられる映画って絶対映画館で見た方がいい。エンディングまで没入が続く>>続きを読む