DONさんの映画レビュー・感想・評価

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こちらあみ子(2022年製作の映画)

4.0

30年後の『お引越し』。でもレンコとは違って、あみ子の世界はもっともっと過酷で容赦がない。
あみ子には自らを「祝福する」に至るだけの時間も余裕もない。「大丈夫」という言葉は、もしかしたら「助けて」とい
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システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたい(2019年製作の映画)

5.0

ただただ素晴らしい。
人が人を救えるという欺瞞を知ってなお残るもの。それこそが、尊厳。主演のヘレナ・ゼンゲルがすべてを圧倒している。

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

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現代的な一組の夫婦から、西欧キリスト教世界の根底にある女性嫌悪を抉り出していく、という話として見た。

「男性」を演じるのがロニー・キニアというのが良くも悪くも本作のミソで、これが例えばカンバーバッチ
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ある男(2022年製作の映画)

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人は見かけ=表象だけで生きているわけではないということを、映画=表象で表現しなければならないことの難しさ。緊張感を欠いた演出はやはり鈍重と言わざるを得ない。

クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男(2019年製作の映画)

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タランティーノにとって、映画=虚構とは現実逃避ではない。いや、むろん最初はそうだっただろう。映画を愛するものにとって、それは誰もが通る道だといっていい。

だが、『イングロリアス・バスターズ』以降に展
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終わらない週末(2023年製作の映画)

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世界の終わりに取り残された人々。
終わりの「渦中」ではなく、あくまでも「傍観者」としての視点を貫くことで、自らの制御や範疇を超えた次元で起こっている終末との距離感が恐怖を生む、はずなら良いのだが。いや
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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

5.0

たかってくる蝿にイライラするディカプリオの描写、あれぜったい『ラスト・ワルツ』のロビー・ロバートソンへのオマージュだよね。

バレリーナ(2023年製作の映画)

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チョン・ジョンソにアクションのポテンシャルが欠けているのが辛いところ…。マーケティングの産物という印象。

ドント・ウォーリー・ダーリン(2022年製作の映画)

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円を描くように何度も浮かび上がる「瞳」のオブセッション。昏睡と覚醒。「あなたならどちらを選ぶ?」とオリヴィア・ワイルドは観客に問いかけてくる。

そう、本当はあなたなしでも生きていけるのだ。真の愛情は
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スマイル(2022年製作の映画)

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多少びっくり系のきらいはあるものの、明確な意図と意志をもって人智の及ばぬ形而上的=鳥瞰的視点を取り入れているところは評価できる。ホラー映画はこうでなくては。

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(2023年製作の映画)

4.0

良き。お爺ちゃんインディの時空を超えたマジカルミステリーツアー。

ある意味で考古学的ロマンティシズムを全否定しながら、郷愁と死に場所を求める老人に「何言ってんだ! あんたはいまを生きるんだよ」と拳骨
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殺し屋ネルソン(1957年製作の映画)

5.0

無垢なる赤子による復讐。
『白熱』のジェームズ・キャグニーといい、ベビーフェイス俳優が繰り広げる暴力は、夢と可能性の国アメリカのイノセンスを極めて象徴的に責め苛む。今ならケイシー・アフレックがぴったり
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怪物(2023年製作の映画)

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技巧=構造と意匠と決め台詞にばかり気を取られてしまった。分かりやすく、あからさますぎやしませんか、と。ラガーマン、テレビの影響、中村獅童、「aqua」の使い方。

リンダ リンダ リンダ(2005年製作の映画)

5.0

終わりを記録すること。

山下敦弘監督の意図は明確だ。それは冒頭のビデオカメラで撮影された文化祭の映像からも分かる。ゆえにここにも終わりから見た現在が持つある種の静謐が流れている。夜の体育館でMCをす
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天然コケッコー(2007年製作の映画)

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もうすぐ消えてなくなるかもしれんと思やあ、ささいなことが急に輝いて見えてきてしまう。

山下敦弘監督作品に流れる「静けさ」。
それは常に「終わり=デッドエンド」の視点から世界を見つめているからかもしれ
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1秒先の彼女(2020年製作の映画)

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とても良い。『熱帯魚』『ラブゴーゴー』のチェン・ユーシュン新作。

一歩間違えれば下世話な御涙頂戴のファンタジーになるところだが、テーマにも通じているように、他者への距離感が絶妙。近づきすぎず離れすぎ
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ハード・コア(2018年製作の映画)

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革命やテロルだと嘯いてみても、現実ではすでに山上徹也という存在がいるわけで。
俳優の個性を生かし、アウトローたちを描く山下×向井コンビの演出力と脚本は太鼓判だとしても、やはり現実に訴求する力が弱く、や
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ラブ・アゲイン(2011年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

再々見。別れた妻に知られないよう深夜にこっそり庭の手入れをするスティーブ・カレルのバックでかかる「This must be the place」。ダメな大人たちを見つめる少年の眼差しで終えるラストカッ>>続きを読む

グリズリーマン(2005年製作の映画)

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ヘルツォークが描き追い求める人間はつねに不変だ。それはドストエフスキーのいう「一杯のお茶のためなら世界など滅んでもいい」という言葉をそのまま実行する人物である。

スピード&ラブ(2022年製作の映画)

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着眼点は面白いのだが、コメディ要素を詰め込みすぎたぶんやや冗長かな。
しかしナワポン作品の中心にあるのは常に愛情と思いやり、誠実であることだ。そこが好き。

マザーズ(2016年製作の映画)

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物語的には『ローズマリーの赤ちゃん』を反転させたような作品なのだが、描き方が異質。人間の生理や五感を支柱としつつ、母親と代理母、その夫と赤子、それぞれの主観=視点を見せ、そこからさらに夢と現実を交錯さ>>続きを読む

デンジャラス・プリズン ー牢獄の処刑人ー(2017年製作の映画)

5.0

素晴らしい。
銃器は封じ、ひたすら肉体の暴力に徹する。
壁と人物の距離感と捉え方。ヴィンス・ヴォーンが存在している場所すべてが「牢獄」のような閉塞感とともに撮られている。リング上で繰り広げられるプロレ
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バビロン(2021年製作の映画)

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チャゼルはつくづく平面しか撮れない人だなあと改めて感じた。画面に奥行きがない。フレーム「内」がすべて。だから『セッション』でもそうだけど、フレーム「外」からやって来る車との衝突場面とか、そういう「ショ>>続きを読む

ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

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かつてのケバいペニーレインと頭空っぽの秀才グラス・オニオン。

『羅生門』的な他視点を律儀に描こうとしているために説明過多で冗長、構成も荒削り。モナリザの眼差し演出もダサい。映画ネタも内輪だけで笑って
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ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(2022年製作の映画)

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微に入り細を穿つ美麗な映像は圧倒的。だが、驚きはない。神よりも、人間よりも、異形のものこそが至上であるというデルトロの愛情はよく伝わってくる。

おそらく、アニメという特性上、「生身」が存在しないゆえ
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スクール・フォー・グッド・アンド・イービル(2022年製作の映画)

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ファンタジーにおける男性中心主義をひっくり返そうという意図の方が物語よりも前面に出すぎている印象。前半は面白いのだけれど、ラストは読めてしまう。

青春学園映画とファンタジーをミックスさせんとする意欲
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