DONさんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

永い言い訳(2016年製作の映画)

-

極めて逆説的だが、人は理屈=正しさだけで生きているのではないということを、西川美和の脚本と演出は徹底して正確無比な論理と言葉=台詞でもって表現しようとしているように思える。

だから、身に沁み入るよう
>>続きを読む

ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画(2013年製作の映画)

-

ヒッチコックというより、ポランスキー的な、例えば『ローズマリーの赤ちゃん』における電話ボックスの場面のような、何の変哲もない日常を異化させるサスペンス演出でありつつ、ケリー・ライヒャルトはそのさらに一>>続きを読む

はじまりへの旅(2016年製作の映画)

-

子は親が思うほど子どもではなく、親は子が思うほど大人ではない。二つの死がそう告げ、やがて再生をもたらす。熾火のような愛情のもとで。

子どものように純真で、あらゆるものを見通せる賢者のようなヴィゴ・モ
>>続きを読む

レディ・バード(2017年製作の映画)

5.0

ちょっと言葉にならない。きっと生涯にわたって一生愛し続ける作品。

何の変哲もない、ありふれた小さなひとつの季節を見つめるグレタ・ガーウィグの眼差しは、例えばウディ・アレンやノア・バームバックやレナ・
>>続きを読む

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

5.0

人は極貧の生活なかでもハミングすることはできる。いや、どのようなときであっても、人生はハミングとともにあらねばならないのだ。ケリー・ライヒャルトは地を這う現実の厳しさ、逞しさに宿る美しさを、等しく映し>>続きを読む

キングピン/ストライクへの道(1996年製作の映画)

-

もう何から何まで最高なのだけれど、例えばラストの死力を尽くした決戦の後で、ウディ・ハレルソンが義手になったのはビル・マーレイのせいだと“かつては”思っていた、と答える場面。そこに至るまでの道中と相手の>>続きを読む

溺れるナイフ(2016年製作の映画)

-

自主映画時代の『あの娘が海辺で踊ってる』で描いた、地方の少女が女優やアイドルという「消費財」として東京で一花咲かせるというテーマを、『おとぎ話みたい』を挟んで商業映画の土俵でさらに追求した結果、中身を>>続きを読む

(500)日のサマー(2009年製作の映画)

-

「グリーティングカードも、映画も、ポップスも、嘘ばかりだ」。その通り。
でも、嘘っぱちの物語を見たり聴いたりすることで、人は再び生き直すことができる。そして、その生き直された時間のなかでしか、私たちは
>>続きを読む

卒業(1967年製作の映画)

-

どこへ行くのかもわからず、ただ恋する心だけが頼りだった2人を置き去りにするマイク・ニコルズの客観と冷徹こそが、ともすればナルシスティックに陥りがちな青春の輪郭を滑稽さとともに精確に描きだす。

しかし
>>続きを読む

アメイジング・スパイダーマン2(2014年製作の映画)

-

ラストのエピローグ、危機に瀕した街の人々のなかから、ひとりの子どもがスパイダーマンのマスクをかぶり、敵と対峙する。

マーク・ウェブが描くのは、つねに男の子の自己形成と成長物語だということ。

アメイジング・スパイダーマン(2012年製作の映画)

-

危機に瀕した子どもを眼の前にしたアンドリュー・ガーフィールドが、何のためらいもなくスパイダーマンのマスクを脱ぎ捨て、正体を明かす場面は何度見てもグッとくる。

「物語のテーマはひとつしかない。それは自
>>続きを読む

沈没家族(2017年製作の映画)

-

『あるみち』と同時に鑑賞。
ともにいわゆる「自分探し」、自らの拠って立つルーツを主題にしているものの、『あるみち』がフィクションとしての強度を獲得しているのに対し、本作はより柔弱であるがゆえに親密で愛
>>続きを読む

あるみち(2015年製作の映画)

-

監督本人や母親、友人も自分自身を演じているということは、おそらく作品づくりのきっかけでしかない。

真に驚くべきは、エドワード・ヤンに通じる「透明な眼差し」、観察者でありながら、人物たちをさりげない優
>>続きを読む

ピーターラビット(2018年製作の映画)

-

怪作・問題作。
イギリスの庭園文化を下敷きにした淑やかな絵柄の原作世界を、アメリカの学園映画にある悪ノリと乱痴気騒ぎ満載の世界に移植させたといえばいいか。ウサギや動物たちが純粋でノーテンキな高校生その
>>続きを読む

マリアンヌ(2016年製作の映画)

-

嘘でしか語ることのできない本当がある。ロバート・ゼメキスの演出、スティーヴン・ナイトの脚本、アラン・シルヴェストリの音楽、すべてが身震いするほど素晴らしい。

Wise Blood(原題)(1979年製作の映画)

-

唯一無二。神なき世界における神の御業。PTAもこの高みには到達できない。
当初はヘイゼル役にトミー・リー・ジョーンズ、イーノック役がブラッド・ドゥーリフだった。

デリンジャー(1973年製作の映画)

-

大恐慌時代に追い求めたもうひとつのアメリカの夢、もうひとりのダグラス・フェアバンクス。

民衆の敵はもはや映画という虚構のなかでしか生きられない。エンドクレジット後のナレーションに映画人ジョン・ミリア
>>続きを読む

レポマン(1984年製作の映画)

-

レポマンの事務所で編み物をしている同僚。誰もが身勝手に生き、身勝手に死に、身勝手に空を飛ぶ。

勝手に生きろ、とエステヴェスに別れを告げた後に見せたハリー・ディーン・スタントンの泣き顔を、やけっぱち田
>>続きを読む

トッド・ソロンズの子犬物語(2015年製作の映画)

-

老若男女、マイノリティにメジャリティ、人間に犬。トッド・ソロンズは変わらずに生きとし生けるものすべてを分け隔てなく黒い理不尽で塗りこめる。

祈りの幕が下りる時(2017年製作の映画)

-

原作もテレビシリーズもまったくの未読未見ながら、びっくりするほど面白かった。

序盤の病院の場面で、聞き込みに来た刑事を案内する看護師が出てくるのだが、この関西弁のおばちゃんがまあよく喋る。滔々と、し
>>続きを読む

エクスプロラーズ(1985年製作の映画)

-

初期衝動=夢に理屈は要らない。いや、むしろ理屈が分からないからそれは初期衝動なのだ。
宇宙への探索を前に遺書を書くイーサン・ホーク。子どもにとって、夢を信じることは命がけなのだということ。後半の悪ノリ
>>続きを読む

アバウト・レイ 16歳の決断(2015年製作の映画)

-

祖母は同性愛の偏見とどのように闘い、片親である母は娘をどのように育て、娘はそのような祖母や母を見て何を思い、どう生きてきたのか。

「3世代」という原題を持ちながら、3人が辿ってきた過去が見えてこない
>>続きを読む

THE PROMISE 君への誓い(2016年製作の映画)

-

トルコによるアルメニア人虐殺という史実を題材にした物語だが、同監督の『ホテル・ルワンダ』ほどの完成度はない。
虐殺の史実を伝えようという志が先行するあまり、オスカー・アイザック、シャルロット・ルボン、
>>続きを読む

リトル・ボーイ 小さなボクと戦争(2014年製作の映画)

-

こういう戦争の描き方もあるんだなあと素直に感動。あざといという誹りを振り切って加速し、繋いでいくプロットと編集の潔さ。しかし何といっても、いつも泣き出しそうな表情をしている主役の少年が素晴らしい。