DONさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

バビロン(2021年製作の映画)

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チャゼルはつくづく平面しか撮れない人だなあと改めて感じた。画面に奥行きがない。フレーム「内」がすべて。だから『セッション』でもそうだけど、フレーム「外」からやって来る車との衝突場面とか、そういう「ショ>>続きを読む

ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

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かつてのケバいペニーレインと頭空っぽの秀才グラス・オニオン。

『羅生門』的な他視点を律儀に描こうとしているために説明過多で冗長、構成も荒削り。モナリザの眼差し演出もダサい。映画ネタも内輪だけで笑って
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ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(2022年製作の映画)

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微に入り細を穿つ美麗な映像は圧倒的。だが、驚きはない。神よりも、人間よりも、異形のものこそが至上であるというデルトロの愛情はよく伝わってくる。

おそらく、アニメという特性上、「生身」が存在しないゆえ
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スクール・フォー・グッド・アンド・イービル(2022年製作の映画)

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ファンタジーにおける男性中心主義をひっくり返そうという意図の方が物語よりも前面に出すぎている印象。前半は面白いのだけれど、ラストは読めてしまう。

青春学園映画とファンタジーをミックスさせんとする意欲
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すべては大丈夫(2022年製作の映画)

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「歴史に文法や教訓はない」。

不確かで混沌とした人類の歴史=愚行に、リティ・パンは偏執的とまでいえるような確固たる世界を作り込む。その解釈=文法と創造はそのまま抵抗であり批評であるということ。

あのこと(2021年製作の映画)

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撮影、構図、音響、編集、すべてがとても巧妙に作られている。そしてそれらはみな、望まない妊娠をし、中絶という「犯罪」をおかして自らの人生を歩まんとする主人公アンヌと同一化するための手段である。

ゆえに
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花様年華 4Kレストア版(2000年製作の映画)

5.0

不倫をされた隣室の夫婦同士が、代償するように自らも不義に手を染めていく。引越しから屋台でのすれ違い、小説を書く男と読む女、そして中毒的に繰り返される梅林茂の音楽。すべては鏡像のように、追いかけては反復>>続きを読む

コロンバス(2017年製作の映画)

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小津のミニマリズム=最小限の要素で最大限の効果を得ることの継承。それは「真心のあるモダニズム(Modernism with soul)」という言葉へと繋がっている。

さかなのこ(2022年製作の映画)

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「本気」であることと、それを対象化=演技することの差異を真摯に見つめ、ときに笑いに昇華し、両者の境界を限りなく近づけてきた沖田修一作品にあって、本作も同様のテーマとアプローチを継承している。

だが、
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告白(2010年製作の映画)

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そのミルクは血の味がする。

少年少女の無垢と純真を逆手にとっていると見せかけながら、その実、剣を突きつけられているのは彼彼女らを鏡にした大人たちのほうなのだ。子どもたちのイノセンスと母性原理への幻想
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来る(2018年製作の映画)

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十分に楽しんだのだけれど、やっぱり『エクソシスト』は偉大なホラー映画なのだと思ってしまう。

それは中島監督の個性であるカオスと饒舌さが、決定的なショットを撮れない「言い訳」にも見えてしまうからだろう
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呪詛(2022年製作の映画)

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薄っぺらい糞リアリズム。POV手法の悪い点ばかりが目につく。作り手には、映画とはカメラ=撮影であり編集であるということをもう一度肝に銘じてほしい。それは再構成されたもうひとつの現実なのだ。虚構=フィク>>続きを読む

騙し絵の牙(2021年製作の映画)

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結局、最後には「面白い」ものだけが勝つ。だからこそ、我々は娯楽を信じられる。だが、その「面白さ」とは何だろう。「面白くない」作品でも、巨額の宣伝広告費をかければ大ヒットして利益を生み出すことを我々は知>>続きを読む

ミッション:インポッシブル2(2000年製作の映画)

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復習その2。いま見るとアクションシーンの切れ味はあるが、ツッコミどころ満載で大味感は否めない。
さすがのトムも香港アクションの体術はスローで誤魔化さざるを得なかったか。エンディング曲にメタリカ。

ミッション:インポッシブル(1996年製作の映画)

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復習。「映画はいかがですか?」「いや、映画は映画館で観たいんだ」。
全編に炸裂するトム=デ・パルマの映画愛。「視線」と「見ること」、「眼」に対するオブセッション。

トップガン(1986年製作の映画)

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米ソ冷戦の時代、ミグに撃墜されるパイロットの名は「ハリウッド」だ。そのソ連機を追うのは「アイスマン」であり、「マーヴェリック」であるということ。

トム・クルーズというスターは、ハリウッド=英雄と異端
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オフィサー・アンド・スパイ(2019年製作の映画)

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ポランスキーが描くドレフュス事件。重厚で飽きさせず、特に法廷場面の緊迫感たるやさすがの演出。だが、所々に自作の焼き直しが散見されるなど、全盛期の冴えはない。

最も致命的なのは、「史実」に忠実な脚本が
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悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ(2022年製作の映画)

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ジュヴナイル路線に方向転換と思いきやのラスト。もはや現実における恐怖や不安を冷笑するしかないのであれば、『ドント・ルック・アップ』はその極点において正しい。だが、ホラー映画としてその方向性をとるのはや>>続きを読む

カモン カモン(2021年製作の映画)

5.0

いわゆる映画史上の「名作」とは違い、きっとこの先何度も見返すだろうという映画があって、その筆頭にあげられるのが私にとってはマイク・ミルズという作家の作品なのだと、本作を見て改めて思った。

大人も子ど
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悪魔のいけにえ(1974年製作の映画)

5.0

ある時代、ある環境に生まれ落ちざるをえない人間という実存が本質的に抱える怒りと悲しみの刻印。改めて見ると、撮影方法が翌年の『ジョーズ』に与えている影響も大きいのではと思う。不朽の名作。

JUNK HEAD(2017年製作の映画)

4.2

素晴らしい。有機と無機の質感、微視と巨視の均衡、不死と有限の衝突から生まれるヒューマニズム。グロテスクで、健気で、可愛い。それはつまり、生命そのものだ。続きが見たい。

仁義なき戦い(1973年製作の映画)

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キノコ雲とともに産声を上げ、遺影に手向けられた銃弾の弔いで終わる戦後日本の裏面史を活写した金字塔的作品。

我々の社会はいまもなお、御輿を担いで甘い汁を啜ることで成り立っていることを肝に銘じなければな
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パラダイム(1987年製作の映画)

4.0

惚けた人間を憑かれたゾンビのように見せてしまうカーペンター演出の力技たるや。

驚くなかれ、「聖ゴダール教会」で甦る悪魔の王子は、眠っている人間の脳内に画像として直接指令を送ることができるのだ。夢=映
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さがす(2022年製作の映画)

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「あなたが探しているのはこれでしょう?」

日々欲望を喚起され、「コンテンツ」を消費し続ける私たちは、世界はすべて「需要と供給」で動いていると思い込んでいる。だから、人が人に救いを与えることができるな
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エクストロ(1983年製作の映画)

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面白い。『未知との遭遇』と『E.T.』に真っ向から刃向かうエログロの凶暴さ。

ゼイリブ(1988年製作の映画)

5.0

サングラスをかけるか、かけないかという問題はつまり、そこにある「真実」を直視するのか、あるいはそこから目を背けた「無関心」のまま現実に飼い慣らされて生きるのかという問題であって、そう考えると二人のプロ>>続きを読む