実力派キャストを擁しながら、二兎を追う者は一兎をも得ずを地で行ってしまった失敗作。
前半部はハイドリヒの後半生を、後半部は彼を暗殺するチェコ人青年部隊を描いているが、致命的に尺が足りていないために出>>続きを読む
カタルシスなき戦い。ハイドリヒを暗殺したところで、代わりの後釜が座るだけなのだ。徹底したリアリズム描写による戦闘場面や正視に耐えぬ拷問場面は、それが凄惨を極めれば極めるほど、戦争の無益を語っている。白>>続きを読む
「啐啄」という言葉がある。
今まさに外界へと生まれ出ようとするひな鳥が、卵の殻を破ろうとして鳴く。透明なヨシカの内なる声と響きはその頂点で歌となり、外側からの呼びかけに即応するかたちで殻を突き割る。>>続きを読む
幼少期にひとつのスタイルを完成させてしまった音楽の天才たちは、自らの「声」やその存在意義を求める。そしてそれこそが、文化や芸術が生まれる根源であり、継承、発展していく動機なのではないか。つまり、表現と>>続きを読む
『ホーム・アローン』の出がらし。赤ちゃんという無垢な存在が徹底してマクガフィン=道具的存在として利用されているので、脚本ジョン・ヒューズの悪意すら感じる。
己の夢や信念に対してどのように向き合うのかというテーマは『花火思想』にも通じるし、おそらく大木監督が描きたかったのはその部分に違いないのだが、残念ながら北沢樂天の「穏当な」伝記映画になってしまっている>>続きを読む
すべてが生ぬるい内輪ネタ。
男女の痴態をどのように見せるのか、作り手の批評性が致命的に欠如している。「外部」の視点がなければ、露悪にも軽薄にも挑発にもなりはしない。ホラー映画の作り手が、誰よりも恐怖や>>続きを読む
うーん、正直あざとさばかりを感じてしまい、まったく乗れなかった(タイトルを含めて)。初期のゴダール=北野武映画の上辺だけをすくい取って大仰にアレンジしただけというか。奇を衒った空疎な時間としか思えず。
爆弾を抱えたままの鬱屈した青春。でもそれを「手段じゃなく目的」だなんて、知ったような口ぶりで言われたくないんだよね。だって、抱えているのは私なんだから。
前田司郎の言葉が描き出す唯一無二の世界は素晴>>続きを読む
テーンエイジ・ゴシックを描き続けるグレッグ・アラキ。シェリル・リーが出ていることもあり、どことなく『ツイン・ピークス』の世界観にも通じるものがあると感じた。
とても風通しの良いドキュメンタリー。上の者が下の者に「教える」というのではなく、ともに「学ぶ」という姿勢がいい。とはいえ、その学習意欲の根底にあるのは、持続不可能な地球や生態系の危機であり、人類の存亡>>続きを読む
「大衆文化」を嫌悪し侮蔑しながらマックでジャンクフードを食べるあみこは、自らもまた骨の髄まで大衆文化に侵食されていることを知っている。だからこそ、変わらぬ校庭の風景を見つめながら、あみこは感情をリセッ>>続きを読む
「地獄とは他人のことだ」。他者の視線の内面化、つまり他人からどう見られるかという問題を容姿の美醜と他人を演じる俳優という二つの観点に集約した設定がまず見事(原作は未読)。そこに『かもめ』や『サロメ』と>>続きを読む
カウン君の押し殺した声と、カメラに背を向けて流す涙が忘れられない。お父さんとお母さんが話す日本語の言葉遣いとイントネーションがなんとも優しく温かい。
マッコールの「失われた時=過去を求めて」というお話なのだけれど、死んだ目をしたデンゼルの虚無と殺気が凄すぎて、そんな物語がどこかへ吹き飛んでしまう。
「お前ら全員殺す」と言い吐きながら、くるりと振り>>続きを読む
完璧な人間はいない。過ちを犯さない人間もいない。すべてをそこから始めること。「脚本協力」に高橋知由。