竹やぶに囲まれた閑静な邸宅は夜露に濡れていた。大きな雨音の消えない部屋の中で男は寝間着姿で散弾銃を磨いている。そこに短刀を差した男が現れ、男は無残にも刺されて命を落とす。こうして浅利組組長の浅利源治>>続きを読む
線路の鋭角な分岐を越えて、鈍重な列車は今日も佐原駅に来た様々な旅の人々を無事に町へと降ろす。船木信太郎(和田浩治)は重たい大きな荷物を背負いながら、新しい街の空気に心躍らせる。キオスクで今日行われる>>続きを読む
闇市の夜をモンペ姿の女が不安げな表情を浮かべ、周りをキョロキョロしながら歩いている。やがて彼女は警察に連行される数人の女性を目撃する。脚を引っ張られながらもその場にしがみついて離れない女たちは警察に>>続きを読む
線路の前で(といってもスクリーン・プロセスによる合成だが)学校をさぼったセーラー服姿の3人の女性たちが侠客に思いを巡らす。そのうちの1人は身内にヤクザがいて、もう1人は仁侠の世界に狂信的に憧れを抱い>>続きを読む
大正時代初期、素行不良で「悪太郎」と呼ばれた紺野東吾(山内賢)は神戸の神聖学院をクビになり、母親に連れられて列車でとある場所へと向かう。通路を間にして左右に分かれた母と息子はたいした会話もないまま、>>続きを読む
ホテルの路地裏に人垣が出来ている。やまとホテルの1階の1室で、男女の変死体が発見された。男はベッドに突っ伏すように倒れ、女は彼に覆いかぶさるように静かに死んでいた。陰惨な死だった。刑事は遺書のような>>続きを読む
夜中の米軍基地、車のエンジン音を聞いた米兵が施錠された門を開けると、2台のトラックが侵入する。2つの組の武器・弾薬の取引現場となる路上に、猛スピードで現れたペプシコーラのトラックは、彼らの間を突っ切>>続きを読む
空手部の稽古場、ひと際テキパキとした動きで目立つ高校生の海津英次(和田浩治)は校外でもモテモテで、スケート場では彼と滑りたい女性たちの順番待ちが出来るほどだった。英次は空手部の友人である春男(糸賀靖>>続きを読む
早朝の居間、姉の初子(松本典子)が飯を食べている傍らで制服姿の吉野次郎(川地民夫)は慌しく学校へ出掛ける準備をしていた。靴がみつけられない彼は居間の隣に併設され、今は開店に向けて工事真っ歳中の喫茶ス>>続きを読む
三代目襲名披露の厳かな儀式。中心に所在なさげに陣取るハイティーン、まだ蒼さを残した松原孝次(和田浩治)が違和感を抱えながら聴衆の視線を浴びていた。土建業を営んでいた先代の父が急死し、アメリカの学校か>>続きを読む
人は家を離れる時、中の全ての荷物を整理し終えた時点ではあまり実感が湧かないものの、物が全てなくなった部屋を見つめると途端に寂しさが襲う。そこにはかつて人の笑い声や活気があったが、今はその面影はどこに>>続きを読む
トロッコ列車に揺られる一行の横で、散弾銃を握りしめた男(二谷英明)が帽子を顔に乗せて、呑気に眠っていた。やがて山のふもとの村に辿り着くと、男は村の人々が魔の山と恐れ、誰も登ろうとしない鷲霊山に散弾銃>>続きを読む
開巻早々の暗転したフレームの中。けたたましい爆撃音を上げながら、日本兵は森の中をうろうろと右往左往する。やがて退路を断たれた部隊長は意を決して最前線に飛び出すが、あえなく爆撃に散る。あれから15年、>>続きを読む
トグロ巻くような鳴門の渦潮をひとしきり捉えた後、カメラは淡路島を空から眺める。よくぞ日活もBライン映画で空撮を許したものだと思った矢先、和田浩治がぶっきらぼうに歌うハマクラ・メロディが終わりを告げる>>続きを読む
成田凌くんがコミュ障の役かと周りのコミュ障の人々を思い浮かべながらため息をついてしまったし、 いくら映画出演だとしても主演でもないのに小泉孝太郎さんもよくこんな役を受けたとしみじみ思った。『まともじ>>続きを読む
交通量の多い道路をバイクがけたたましい音を立てながら、スピードを上げて走る。その様子を羨まし気な様子で見つめていたサブ(藤巻三郎)の背中を見て、19歳の健(赤木圭一郎)は「乗るか」と声を掛ける。それ>>続きを読む
思えば最初から夫婦の意識は違ってしまっている。妻は話が違うじゃないかと憤りを隠せないが、夫は水と土と空気に魅了されこの地にやって来たと言い張る。そこで夫としては妻にわかってもらえるまで誠心誠意、説明>>続きを読む
ブルー・クリッパー号で2年ぶりに日本に帰国した植木順平(芦田伸介)は検疫を通過し、家族の待つ日本に降り立つのを楽しみにしていた。停留する大型旅客船の元に急行する自動車の対比。家族だけでなく、娘の啓子>>続きを読む
50年代のはとバスの営業所の牧歌的な風景。花形バスガイドの緑川奎子(左幸子)は昼の仕事を終えた途端、同僚から夜のデートに誘われる。美人で愛嬌のある彼女は職場で引く手数多だった。奎子はバスガイドの副業>>続きを読む
夜の帳の中に聞こえる微かな足音。背広に身を包んだ男はマンホールの下に首尾よく潜り込む。上ではマンホールの中から物音がすると信じられない様子で若者が話し合っている。まるでアンジェイ・ワイダの『地下水道>>続きを読む
黒ずくめの汽車は山間の小駅で寂しそうに停車している。駅長室にはこの列車に乗るはずだった乗客たちの怒鳴り声やクレームが鳴り響く。水害で不通になった列車だったが、次の列車は来る気配がない。時刻は深夜2時>>続きを読む
夜の帳の中、照準器から狙う殺し屋の姿。何も囚人の護送は夜でなくともと思うが、刑務官の多門(水島進太郎)は複数の囚人たちをたった一人で護送していた。やがて多門は夜の暗闇の中に浮かび上がる女の姿を確認す>>続きを読む
日夜競争を繰り広げる2人の男は偶然街中で出会い、連れの女と3人で食事に行かないかと声を掛けるが丁重に断られる。当然だ。極東新聞の香取(長門裕之)と日東新聞の仁科(小高雄二)は大学時代の親友ながら、今>>続きを読む
餌を啄ばむカッコウの映像に突如挿入されたドギツイ赤字の人工的なタイトルの配色の組み合わせが、この監督の非凡な才能を露わにする。その後もトリッキーで得体のしれない不穏な出来事を、グラフィックに長けた絵>>続きを読む
ダニー・フリンダーズ(アリシア・ヴィキャンデル)はグリーンランドを想定した水中訓練に励んでいる。深海を想定した海底数千マイルを体験しながら、潜水服の中から見つめる世界のイメージ。ダニーはそんな訓練の>>続きを読む
Lou Reedの『Perfect Day』がかき鳴らされる中、幾つかの美しいパリの風景が描写され、自然豊かな土地にある邸宅へと足を踏み入れる。観光客がいない朝方に撮られた無人の風景はパンデミックの>>続きを読む
しんしんと雪が降るカナダ・ケベック州。男は何か物音を感じ取り目覚めると、クタクタになった手帳に何かを書き留める。外はもう昼間の光を放ち、男は釣り糸を垂れる老人たちに昼の挨拶をする。おんぼろのあばら家>>続きを読む
時は1870年、南北戦争の終結の余韻冷めやらぬ時期。退役軍人のジェファーソン・カイル・キッド(トム・ハンクス)は街から街へと転々としながら、10セントで人を集めては新聞のニュースを読み聞かせることで>>続きを読む
筏に自転車を乗せて男は自然豊かな田舎町に到着する。空を見上げると鳥の群れは旋回するように飛び、薄曇りの空に朝日が昇る。イギリスのサフォーク州の田舎町、この地に降り立った男は自転車に乗り換え、自然豊か>>続きを読む
目覚めた彼はカーテンのない窓越しに、朝日が昇るのを仁王立ちでずっと眺めていた。朝のスイミング・プール、水が嫌いなフィン(カンピーノ)は25mプールに飛び込もうとするが勇気が出ない。彼のアート・オフィ>>続きを読む
サーモ・グラフィ・スコープで覗いたLAの深夜の街並み。全体的にブルーがかったその中で輝く赤や黄色。その色はぼんやりとした暖色である。やがてフレームは女性のシルエットを映し出すと肌は明るい暖色を示して>>続きを読む
ステディカムの動きを好奇の目で見つめる人々の姿。やがてオープンカーに乗って現れた初老の男が、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブはどこにあるのかと呟く。太陽は燦燦と輝き、すっかり日に焼けた老人たちがアロ>>続きを読む
吊り下げられた女性が語る「暴力を定義してみて」の問いに共演する俳優はおろか誰も明確な答えを出せないまま、ワイヤーで固定された女性は引っ張り上げられる。だが次の瞬間、想定外の爆発が起こり、顔が命のはず>>続きを読む
メル・ギブソンさんの映画は主に、ギブソンさんが「頑張っている」映画と「頑張らない」映画に大別されるんだけど、今作はどちらかと言うとあまり頑張らない作品でした。というか原題『Force of Natu>>続きを読む
今夜は冷え込むので1本で切り上げて帰ろうとしたのだが、そこでこの映画のポスターと目が合ったような気がしてふと立ち止まり、しばらく逡巡したあと再び映画館の暗闇に潜り込んだ。そのデザインは近年の邦画のポ>>続きを読む
ちらしや絵葉書は毎日とめどなく届き、幾つも積み重なりカラフルな色を成し、フレームの中に敷き詰められて脳にインプット出来ないほどの膨大な量となる。その中から主人公は1枚の絵葉書を下の方からそっと抜き出>>続きを読む