喜連川風連さんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

西部戦線異状なし(1979年製作の映画)

3.5

あらゆる理想や規範が崩れ去る。

愛国青年たちが、希望を膨らませて向かった戦場。絵描き志望の主人公が、徐々に人を殺すための道具になっていく。

戦場にロマンはない。

主人公が心躍らせた過去の文化はな
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音楽(2019年製作の映画)

4.0

あふれる初期衝動。

音楽の理論とかテクニックとかどうでもいい。かき鳴らしたいようにやりゃいいんだ!!という熱にうなされたような70分。

ギャグのキレ、作画の波がそのまま熱となってこっちに伝わってく
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生きちゃった(2020年製作の映画)

-

言えない主人公が主人公。

言葉を発せないのではなく、本心が言えないし、最終盤まで本心が自分でもわかってない。体良くその場を取り繕ってしまう。

日本人の特性として3つ書かれたものがある。
・付和雷同
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走れ、絶望に追いつかれない速さで(2015年製作の映画)

4.0

苦手なはずのオフビート映画でも、切実に訴えかけられる中川作品。

親友が死に、その足跡を辿るが最後までなぜ死んだのか分からない。

親友と主人公の間に深い関係性があったはずなのに、憎まれもせず、相談も
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聖なるもの(2017年製作の映画)

4.5

自主映画にありがちなチープなクオリティを逆手にとるフェイクドキュメンタリー風の撮影。

主人公に課せられた「面白い映画を作りたいならば、まずは自身の生活を映像に記録してみよ」という呪い。

撮りたいと
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もののけ姫(1997年製作の映画)

4.6

少しずつ、宮崎アニメを書いてます。

「生きるということは同時に何かを殺すこと。」人間は殺しすぎているのか?それとも自身の欲求や経済発展のために、まだまだ自然を殺さなければならないのか?

もののけ姫
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mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

4.0

令和の時代に、16mmフィルム撮影の新作映画が見られると思わなかった。

脚本も映像も呼吸をするように美しい。

明るいシーンと暗いシーンが息を吸って吐くように繰り返され、良質なリズムになっている。
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TENET テネット(2020年製作の映画)

4.0

脳で理解することを諦めた時、心から映像を楽しめた。

どんな賢い人でも言語化を拒むようなヤバいものを見てしまったという後味。すごい。

追いつかないレベルで合理的に作り込むことで、考えるな!感じろ!的
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風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)

4.5

小さい頃から何度となく観てきた作品。

よく宮崎駿さんがおっしゃられている「人間なんて、滅んだほうがいいんですよ」を垣間見た。

覇道で世界を制覇しようとするトルメキアのクシャナ。
王道と対話で世界と
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イソップの思うツボ(2019年製作の映画)

-

着ぐるみが大暴れするのを期待して見たが、そのシーンは全くなかった。

高校生の恋愛モノを大学生でやる違和感。

大学では珍しいクラス制度、2ヶ月だけの非常勤講師、地味な女の子の片思い、お風呂で泡をぶく
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柄本家のゴドー(2018年製作の映画)

-

柄本明の演出論。

自分の演出イメージを人に伝えるのは、難しいが、こんな方法もあるのか。

身体を全面に押し出した説明。
声色を変えつつ、理想の表現に向けて舞台を作り上げていく。

柄本家の三人。とん
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ようこそ映画音響の世界へ(2019年製作の映画)

4.0

鳥肌が立てば良い音楽。

そう語ったのをなぞるように、最後鳥肌が立った。

日常の音、全て音楽である。
そういうと大げさかもしれないが、途方もない量の音の階層が積み上がって、映画という交響曲が奏でられ
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拝啓天皇陛下様(1963年製作の映画)

4.0

慶應卒、野村芳太郎監督一流の、痛烈な皮肉がきいた戦争映画。朗らかに、軍隊生活を描きながら、底流では徹底的にバカにしている。

「恐れ多くも天皇陛下におかれましては」
と言うだけで、背筋を伸ばす軍隊を何
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続・男はつらいよ(1969年製作の映画)

3.5

ディスカバージャパン。
落語の寄席に行った後のような快さが寅さんにはあって、ついつい観てしまう。

話の細かい筋は覚えてないが、良いものを見た気にしてくれる。

ある師匠が言っていた
「角を曲がりゃ、
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男はつらいよ(1969年製作の映画)

4.0

なぜこれほどまでに、郷愁と共感を感じるのだろう。そしてなぜヒットしたのか。

同時代。日本のいちばん長い日がヒットした理由について
「オリンピックを目標に走ってきた日本人が、どこへ向かえばいいか分から
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淵に立つ(2016年製作の映画)

3.5

突然踏み込まれた他者によって奪われる平穏。

他レビューに「地獄の寅さん」とあったが、言い得て妙。

他者が入ってきたときの異物感を丁寧に描写。家族3人の朝食シーンでは、絶えず会話があったものの、4人
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らくごえいが(2013年製作の映画)

-

落語を映画化した映画。
三部構成。
最後の猿後家がいちばん面白かった。

part1 1.0 元ネタねづみ
感情移入もないままに、取ってつけたような葛藤と脚本家のあるある話。

身内ネタも甚だしく、こ
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悪い男(2001年製作の映画)

4.5

セルフの少ない、画で語る映画が好きだ。
是枝作品の長回しは冗長で苦手だが、キム・ギドク作品は見てしまう。

情報が極限まで削ぎ落とされているため、長回しでもあれこれ考える余地が残っていて好きだ。

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ベテラン(2015年製作の映画)

4.0

あーこれぞ、エンタメ。韓国語は口論が様になる。声がでかく、言い合いに見入ってしまう。

警察官が負傷した傷でマウントを取り合う様に笑った。

序盤をオシャレなカットバックでつなぎ、見せる部分は見せる。
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激動の昭和史 軍閥(1970年製作の映画)

3.0

わずか2時間で足早に226事件からサイパン陥落までを描く。

東條英機が「まだ日本は戦えるし、負けることはあり得ない」と力説しながら、悲惨な戦争写真が背景で流れるシーンが白眉。

まるで演劇のような、
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台北セブンラブ(2014年製作の映画)

-

蜷川実花をやろうとした台湾映画。

資本主義や承認欲求の虚像が、ヘルタースケルターによく似ている。

カッコいいイメージを持たれがちな「デザイン」を丸裸にしていく。

デザインという言葉は、日本に輸入
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ラストムービー(1971年製作の映画)

3.0

デニスホッパーの幻の映画。

ハリウッドが門外不出とした理由も分からなくないが、作家性全開で大変良い。

映画はウソだ現実をみろ!という映画はたくさんあるが、映画撮影を過剰にやることで、現実をぶち壊す
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アキラ AKIRA(1988年製作の映画)

4.0

パトレイバーが押井守の描く東京ならば、AKIRAは大友克洋の描く東京。

どちらも、都市開発や地上げにより、失われつつあった東京がたくさん出てくる。

AKIRAの連載が始まった1982年。終戦からわ
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ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)

4.0

映画を実際に作ろうとするとき、どうしても色々な言い訳が頭をもたげる。

カメラがない、スタッフがいない、役者を集められない、金がない。
そしていつしか脚本はお蔵入りになっていく。

それでも作ったらい
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機動警察パトレイバー2 the Movie(1993年製作の映画)

4.7

パト1でエンタメ娯楽をやり、パト2で骨太社会派思想ドラマをやる!

不正義の平和か、正義の戦争か。
禅問答のような問いかけが全編にわたって続く。

魚眼レンズで歪められた表情・幻影のような東京の街並み
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機動警察パトレイバー THE MOVIE(1989年製作の映画)

4.0

1989年インターネット黎明期の期待感がたまらない。

埋め立て・再開発・地上げ、時代が後ろに下がっていく寂しさ・復讐心と犯人の動機が絡み合っていく。

節操のない東京という街への復讐。
この映画の主
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老人Z(1991年製作の映画)

4.0

1991年からすでに言われていた高齢化社会。

これを全自動介護ロボットの導入による科学技術によって、乗り越えようという話。

介護ロボットや街の作画に、高い技術力を感じる。

老人の乗る介護ロボット
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スチームボーイ STEAMBOY(2003年製作の映画)

3.0

圧倒的な作画とロストテクノロジーがもたらす世界観に酔いしれ、小学生の頃に、よく観ていた。

蒸気機関で動く空中船を、機関車で引っ張って地上に叩き落そうとするシーンが好き。
破壊につぐ、破壊はこの映画最
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選挙(2006年製作の映画)

3.5

政治信条と魂がある政治家がいれば、権力を手にしたいだけの政治家もいる。

小泉改革のなか、中身のない「改革」を叫び、川崎市議会議員選挙に挑む男のドキュメンタリー。

政策について、質問されてもしどろも
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なぜ君は総理大臣になれないのか(2020年製作の映画)

4.6

今年、劇場公開映画で1番の傑作。

13年にわたって1人の純粋な理念を持った政治家に密着し、等身大の悩みに迫る。

ここには、キャラとしての政治家やうわべだけの虚飾が一切ない。

国を良くしたいという
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悪太郎(1921年製作の映画)

3.5

世界三大喜劇王バスター・キートン
著作権切れのため、YouTubeで見放題。

かの有名な蒸気機関車の先頭に座って客席に突っ込んでくるシーンを見られてよかった。

平面の構図を逆手に取ったギャグは言葉
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超高速!参勤交代(2014年製作の映画)

2.5

教科書のような脚本。
「参勤交代」というイベントを娯楽として仕立て上げていく仕掛けも見事である。

言葉遣いにこだわり、東北・茨城の方言で移動距離を表現していたのも、よかった。

それ以外は、ご都合主
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T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)

4.0

老いたレントンたちと対比するかのように、冴え渡るダニーボイル編集と音楽。

見た目は変わっても本質の部分はなんら変化していなかった悪童たち。
lust for life
「生きるための欲望はなんだ?」
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パルプ・フィクション(1994年製作の映画)

3.5

個別に見れば崩壊しているが、全体を見れば調和している。

そんな離れ業をやってのけた名画。

映画の脚本において意味のないセリフ(会話)はご法度とされるが、そんなの関係なし。
特に意味のないセリフの応
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プリティ・ウーマン(1990年製作の映画)

4.0

名画の影に名音楽あり。

音楽のタイミング、編集ともに完璧。

ちょうど「プリティウーマン」が終わるタイミングで次のカットに変わる。

彼女が垢抜けていく様が、周りの表情で語られるのが、極々映画っぽく
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