d3さんの映画レビュー・感想・評価 - 13ページ目

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悲しい色やねん(1988年製作の映画)

2.5

派手な舞台こそ社交場にふさわしい、とだれもが信じて疑わなかった時代の物語。道頓堀に反射するネオンサインは、いまから見ると安っぽく感じるかもしれないが、当時は反映の象徴だったはずだ。
壮大な夢は、実現に
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の・ようなもの(1981年製作の映画)

4.0

人は多面性を持っており、誰もが社会での役割を演じているとも言える。職場の顔、家庭での顔、仲間といるときの顔、一人でいる時の顔、それぞれが違って当然である。
つまり、“の・ようなもの”で、世界は成り立っ
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コンフィデンスマンJP プリンセス編(2020年製作の映画)

3.7

プリンセスは、与えられる地位ではない。 自ら慈愛を振りまくことによって周囲へ幸せをもたらし、その影響下から立場を認められるものである。
つまり、誰かのために身を投げ出せる利他的な衝動の持ち主こそがプリ
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砕け散るところを見せてあげる(2021年製作の映画)

3.6

「お前のことは俺が守る」
青春期において、少年は自分のなかにある正義を信じて、守りたいと思える大切な人を見つける。
全力で彼女と向き合うことで、少年の自信は根拠を持つ。これが成長だ。このまま強くなれば
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勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

3.6

ジャン・ポール・ベルモンド追悼鑑賞。
新しい表現が発明される土壌は、新しい表現を求める観客によって培われるのかもしれない。
研ぎ澄まされた会話劇は、本質を求める観客にこそ響く。物語は分かりやすさの外に
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007/ゴールドフィンガー(1964年製作の映画)

3.5

熱いキスが母性本能を呼び覚まし、敵の計画を頓挫させる。
奪うのではなく、自分のものの価値を上げる思考は、巨大IT企業の取る戦略に通じるものを感じた。
ゴールドフィンガーとの最終決戦の結末は必見。飛行機
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007 ロシアより愛をこめて/007 危機一発(1963年製作の映画)

3.6

仕向けられてきた罠に対して、危険を顧みることなく、あえて乗っかることこそ諜報機関の美学だ。かと思えば、終盤になって「スペクターだったのか!」と敵の正体にようやく気づく牧歌的なストーリー展開。
全体的に
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野球少女(2019年製作の映画)

3.5

前例のないことに挑戦するとき、意志の強さが必要だ。 しかし強すぎる意志が仇となり、集団での孤立につながる可能性もある。
人との出会いに恵まれること、これがチャンスをつかむために大切な要素だろう。そのよ
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戦国自衛隊(1979年製作の映画)

3.8

千葉真一追悼鑑賞。
「昭和の時代へ戻りたくないんですか!」
ヘリコプターや戦車、騎馬隊が画面狭しと大暴れ、男たちが身体をぶつけ合うアクションの数々、いまではあり得ない画作りに圧倒される。たとえご都合主
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007 ドクター・ノオ/007は殺しの番号(1962年製作の映画)

3.5

洗練された男前のジェームスボンドが行く先で美女と出会い、任務を完遂する。 後の007シリーズの方向性が決定づけられた第一作。
本作のボスキャラであるドクターノオは、意外と現場に出てきて部下とともに働く
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孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)

4.0

立場の数だけ正義がある。
受け継いだ意志も正義だし、組織が抱える正義もあれば、狂犬には狂犬にとっての正義がある。そして、抗争のない社会を目指すことも正義である。
正義を実現するために手段は選ばれない。
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仁義の墓場(1975年製作の映画)

4.0

のし上がりたい気持ちが強いだけで、簡単に成り上がれるものではない。上手な博打うちは、流れが自分に来ていないときは見に徹しどちらにも張らないし、引き際のタイミングも知っている。勢力図を観察できないようで>>続きを読む

スイートガール(2021年製作の映画)

3.4

殺された親は復讐をしてほしいなどとは思わなくとも、残された子にしてみれば受け入れ難い現実もある。自分の中で折り合いをつけねば次のフェーズへは進めない、と考えるものなのかもしれない。
起きてしまった悲惨
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あの頃。(2021年製作の映画)

3.8

2000年代はデジタルとアナログが入り混じった時代だったように思う。 爆発的に広がった SNS の使い方に皆が戸惑いながらも、自分の感情をぶつけるツールだととらえているものもいた。とにかく、“自分一人>>続きを読む

(ハル)(1996年製作の映画)

4.0

ネットの存在が、生活の中心にはなかった頃の話。
当然ネットリテラシーのような概念は知られておらず、ハンドルネームすら、とりあえずの約束事といった位置づけである。たとえ本名を明かしたとしても、距離が離れ
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この空の花 長岡花火物語(2012年製作の映画)

4.0

過去に起きた悲惨な出来事を繰り返さないためにも、語り継いでいくことは大切だ。 ところが、時が経つに連れ、貴重な語り部が少なくなってきている。
これからは戦争や震災を体験していない世代が、語り継ぐ役割を
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ゴッドファーザー(1972年製作の映画)

5.0

これは家族の物語である。
家長たる父は家族を守ろうとし、長男は父の背中を追うあまり勇み足が災いする。義兄は組織としての一家のために奔走し、次兄は自らの能力不足を認識し、家族の1ピースであることに徹す
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マルホランド・ドライブ(2001年製作の映画)

3.8

己の現状をかえりみたとき、なし得なかった生活を“あり得た別の人生”として思い描くことは、甘く、そして危険だ。
世の中には、叶えられた夢より叶えられなかった夢の方が溢れている。どこまで実現性を持った夢で
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キャタピラー(2010年製作の映画)

3.0

戦地から戻った男は、村人たちから軍神として崇め奉られるが、四肢を失い、ものを言えず、意思表示できない状態になっている。
神であるということは拝まれ担がれるだけの存在であり、他の人と交流を図ることはでき
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東京オリンピック(1965年製作の映画)

4.0

当時はリアルタイム中継で観戦できる競技は少数であり、ましてや気軽に東京の会場まで見に来れる人は限られていた。その事を考えると全国の人がオリンピックを感じられるこの映画の意義は現代の我々が想像する以上の>>続きを読む

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

4.0

若い男女が出会って別れる、それだけのことだが、そのいつか終わってしまうパーティーは長い人生においてどれだけ輝かしい時間だったのだろうか。互いの想いは交錯し、相手の気持ちを思い遣るからこそ、自分たちの先>>続きを読む

見えない目撃者(2019年製作の映画)

4.0

やりたい仕事を見つけ、就くことができれば、悩み、挫折しながらも人生において確かな道を歩める。さらに、やりたい理由が“誰かのためになりたい”、“世の中のためになりたい”ということであれば、仕事と使命感が>>続きを読む

ゴッドファーザーPART II(1974年製作の映画)

5.0

組織が大きくなり、戦ってきた敵の存在が小さくなると、身内の脅威が増してくる。身内だからとリーダーが判断を誤れば、後々になって大きな遺恨を残すだろう。
処断は不幸の連鎖の始まりだ。それでも組織を維持する
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ラストレター(2020年製作の映画)

3.7

手紙は一方的に想いを伝えるだけのツールではない。手紙を書くとき、送る相手を思い浮かべると同時に、自分の心の内側へも向き合うことで文章は紡ぎ出されていくからだ。
そのため意識していなかった心の深層まで旅
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ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ(2018年製作の映画)

4.0

不幸の入口は予期しない日常のなかに現れるものだ。軽い気持ちで受け入れたことが、深い闇への入口だったりする。いちど関われば抜け出すことは容易ではない。思いがけぬ報酬は、なにかの代償なのだ。
正義の名を冠
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仁義なき戦い 完結篇(1974年製作の映画)

4.0

暴力団から政治結社へと看板を掛け替えたとしても、なかの人間が同じならば体制は変化するものではない。
会議で意思をはかっているようでも、暴力に裏付けされたそれぞれの意見力が決定事項に反映される。
ながら
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仁義なき戦い 頂上作戦(1974年製作の映画)

4.0

戦後の混乱期から高度経済成長期へと時代は移り、暴力団の存在が社会から問題視されるようになる。
暴力を背景に利権を奪い合う組織に、かつての義侠の姿はない。トップが逮捕されるたび組織は分裂し、強大な全国組
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仁義なき戦い 代理戦争(1973年製作の映画)

4.3

義理が絡めば、面倒は増える。
対立した組織同士のパワーゲームは、呉、広島に止まらない。さらなる後ろ盾を求めて外交した結果、強大な外部組織が介入してくるようになる。
数の論理の前に、個人の思惑は通用しな
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仁義なき戦い 広島死闘篇(1973年製作の映画)

4.5

社会の価値観が変わったからといって、人間の中に残った価値観がすぐに対応できるわけではない。
戦場へ出向くことを信じて疑わなかった若者は、戦後どこへ進めば良かったのか。時代に乗り遅れ、浮き足だった感情は
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仁義なき戦い(1973年製作の映画)

5.0

貧困の中では社会の倫理性は失われ、生存本能がむき出しとなる。 食わせられる者のもとに人は集まり、それはやがて組織となる。
組織はまた別の組織と対立し、そこでも激しい生存競争が繰り広げられる。
腹が満ち
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幼い依頼人(2019年製作の映画)

4.2

“児童虐待は紛うことなく悪であり、断罪されるべきだ”、我々がこのように憤ることができるのは、物語を通すことで客観視できるからである。
しかしながら同じような事が身の回りで起きていた場合、防止するための
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グラディエーター(2000年製作の映画)

4.0

たとえ優秀な人材が指導者の座に就いたとしても、個人の思いで政治を担つてしまえば幸せな国にはなりえない。
国を成すのは人であり、民衆一人ひとりの思いが反映される形こそ、国家の幸せに近い形だからだ。
指導
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黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)

4.0

いくら崇高な理想を掲げたとしても、凝り固まった社会システムのなかで正義を実現することは難しい。
既存の価値観を打破するためには信念が必要だ。 信念は伝播し、人々に考える力を与える。
ただし信念は諸刃の
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バクラウ 地図から消された村(2019年製作の映画)

3.8

利権の上にあぐらをかき、民衆を支配することが政治ではない。くだらない議員の思惑にNOを突きつけた住民たちは、むしろ地図から消えることを望むのではないか。
強烈な自治には、共有すべき未来へのビジョンなど
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第三夫人と髪飾り(2018年製作の映画)

4.0

与えられた環境のなかであらがうことなく育ってきた少女は、やがて親になる。親になって、幼き我が子抱いて思うのは、この子はこの世界で幸せになれるのだろうか、ということだ。
無自覚に抑圧されてきた記憶が、大
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ウィズアウト・リモース(2021年製作の映画)

3.3

政治にとって都合の悪いものから目を背けさせるために仮想の敵を用意する。三流以下の政治家が考える下策だ。
国益とは、個の幸せの上に成り立つものであるはずだが、国は国益の名のもとに忠誠を誓った者を簡単に裏
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