ピエールカルダンのドキュメンタリー。
流れるように紹介される凄まじい功績の数々。それらを生んだ張本人は、自己顕示欲が強そうに見えてなんだか謙虚にも見える不思議な人柄。
100歳近い今も現役であらゆるプ>>続きを読む
ソフィアコッポラの新作は刹那的な若さの煌めきから離れ、自己肯定感の揺らぎと愛情について綴った父への手紙のような優しいコメディ。
普遍的なコミュニケーションの齟齬によるドラマや、センスの良さや文>>続きを読む
余命3ヶ月の祖母に病気を悟られないようにする親族総出の嘘。
祝いの場も懐かしい再会も、その中心にあるのは悲劇。そのぎこちなさと祖母の変わりない笑顔の対比がより悲しく映る。
死生観の違いを理解しつつ>>続きを読む
悪意のない無意識の差別が着々と押し潰す個人の尊厳。映画的な必然性はあまり感じないが、このテーマを直接的に中心に据えたのは珍しく感じる、同時代的な必然性によって生まれた作品。
親や文化による過去>>続きを読む
純粋無垢な少女性とバイオレンスなアクションを組み合わせた、いわゆるジャンル映画。
そして異能力バトルものというジャンル映画としても正面切ってやり切った秀作。
ジャンル映画に敬意がありすぎるからか、驚く>>続きを読む
夫婦の愛情が周囲の影響で錯綜し、駆け引きや不信感へとつながる秀逸な会話劇。
濱口竜介と野原位の脚本が凄くて弛緩するポイントが一切ない。そしてカメラワークと照明、音響の組み合わせが素晴らしく不穏で間違い>>続きを読む
宗教団体の宣伝でもなく告発でもない、あくまで日常的な宗教的マイノリティと差別。
実際の当事者にとっては扱いが軽すぎるのかもしれないが、「見たいものだけを見る」といった信仰と信頼についての揺らぎを、思春>>続きを読む
アーロン・ソーキン監督脚本の見事すぎる会話劇。豪華キャストも配置やテンションが絶妙で皆素晴らしい。サシャ・バロン・コーエンは賞レースを荒らす気がする。
自らの些細な不作為が不平等に結びつくやるせなさを>>続きを読む
美化した過去に囚われることと、未来を見つめて生きること。生きていく上での「強さ」を示すテーマは一貫しつつも、自己犠牲の賛美と死への恐怖が入り混じる。
説明過多で、大画面ならではのカットがもっと欲>>続きを読む
大きすぎる喪失と愛情という、理解できないからこそ否応なく狼狽えてしまう感情への向き合い方。
自らへの赦しを得るまでの10年間という時間の重みや三島の「真夏の死」を想起するような海描写が美しい。広角レン>>続きを読む
女性だけの満ち足りた空間に土足で男が入り込むという反復が、個人の抑圧を強調するアルジェリア映画。
自由への渇望もありながら、一方でアラブ文化への愛を強く感じ、それらが信仰を利用した人に>>続きを読む
アイルランドのアニメ会社カートゥーン・サルーンの新作。文明と自然、ケルト土着信仰とキリスト教などの対立構造を使い、線が動く喜びを目まぐるしく展開させる傑作。
匂いを視覚化して肉体から解放された「動き」>>続きを読む
特別養子縁組の真っ当な意義と、その周囲の人たちの人間ドラマ。
ストーリーから若干浮いてまで差し込まれているドキュメントやテーマ自体は素晴らしいし、この手の話の「生んだ母親」へ焦点を当てることに>>続きを読む
夫に先立たれた75歳の孤独を彩る空想の声たち。冒頭の襖の奥の描写からこの映画が普通では無いことが分かるのが楽しい。
人生を俯瞰で見る喜びと切なさ、時折挟まれる棘のある本音がリアルで地味>>続きを読む
2020年を強調しながら90年代を編み込んで安易な悩みや憧れに喚く青春劇。
退屈で憂鬱な日常の象徴を「郊外の集合住宅」から「湾岸のタワーマンション」へと変えているのは面白い。でも相変わらず憧>>続きを読む
よくある異能力バトルものとして存分に楽しめるし、カメラもキャラもよく動いて実に楽しい。音楽やシーンごとに参照元のアニメが思い浮かぶが、どれにも愛がある。黒い領域の出現や瓦礫演出などはA>>続きを読む
彩りのない人生で、新しい感情に触れる喜びと戸惑いが恋に転換される危うさ。
「価値がある」ことを強いられる辛さや、自由意志を盾にケジメをつけないままにする無意味さが身に染みる。いつの時代も普遍的な「遠く>>続きを読む
アニメスタジオ「ライカ」の新作ストップモーションアニメ。劇場公開してくれるだけでも大感謝。
技術が凄すぎてもはや人形を使っている意味を考えてしまうほど。
三者三様にアイデンティティを見出すまでの真っ当>>続きを読む
極力第三者の解説を排し、妹島和世本人の声とフリージャズ的なインプロ音源(演奏は石若駿!)が流れ続ける映像資料。
膨大な模型の数や検討の過程を視覚化して突きつけるのはわかりやすくて面白い。ただ>>続きを読む
ハーマン・J・マンキウィッツが『市民ケーン』の脚本を書くまでの顛末とその意味。
ハリウッド映画が危機を迎え、メディアによる市民の分断が明確にされる2020年に、『市民ケーン』がここまで>>続きを読む
戦禍のスーダンから逃げ延び、英国へ亡命した夫婦に与えられた家が実は、、、というよくできたホラー。
新地での疎外感によるストレスや不安描写も見事ながら、壁の中に当たり前に「何か」がいる描写、さらには内戦>>続きを読む
白人の貧困層の病理と“正しく”生き抜くことの難しさ。まずこれが事実ということに驚き、祖母役が本人に似すぎていてグレンクローズだということに気づかなかった。
貧困による諦めや後悔を感じ、家族であっても他>>続きを読む
女性らしい女性しか描けないジレンマや、どの時代にも通念する生きづらさを交えながら、芸術家として見たいもの、愛する者としての知りたいことに狂おしいほどに惑う恋愛劇。断ち切られるから愛おしく、取>>続きを読む
ブラジルの片田舎で繰り広げられる理不尽な事柄。権力者や侵略者による搾取といった社会的な側面を見せつつも、はっきりとしたジャンル映画なのできちんと血みどろ。
冒頭のSF感のミスリードから>>続きを読む
広大な山々の風景も、汚い路地裏も、等しく美しく映し出すとにかく映像が美しい青春映画。
メインの役者の実在感が見事なので、ノスタルジアに溢れていながらも、ファンタジーにまで振り切らないのが美しい。特に安>>続きを読む
理不尽な暴力と“前途有望な若い女性”を抑圧する仕組みに巻き込まれた友人のため、また自身の生きる理由として、無責任な加害者擁護へ唾を吐き、“優しい人”の行いに啖呵を切る。ここで加害性のバリエーションと、>>続きを読む
思いがけず早く訪れた最後の瞬間を生きる、とあるカップルの愛の物語。
共に歩んだ歳月の長さと濃密さが説明をせずとも見て取れる豊かな描写と演技の数々には溜息が出るほどに美しい。二人で過ごせる時間の終幕を意>>続きを読む
『時をかける少女』以降、今度こそは、今度こそはと期待して観に行っている細田守監督作品。今回は前作への意見が相当酷かったのか、冒頭からネットやSNSでの誹謗中傷への憎悪が溢れ出す。
その後ツッコミどころ>>続きを読む
中絶のために従姉妹と共にNYへ行って帰るまでの物語。ほとんどドキュメンタリーのように描かれ、17歳の少女が他人に身を預けたり人を信じたりすることが、如何に困難なのかを見つめる。
街に溢れる人々の些細な>>続きを読む
フライングドッグ10周年記念アニメで、ひと夏の青春映画でありながら音楽愛に溢れた音楽映画。シンプルなプロットながらテンポよくキャラクターが生き生きと描かれ、今の時代の青春の風景と80年代ポップカルチャ>>続きを読む
子どもの純粋さをフィルターにして見るイスラエルとパレスチナ。
宗教対立以前の信仰の差を描きつつ、さらりと過去のいざこざを織り交ぜるのは丁寧だけどやっぱりファンタジー。チコの過去や心の>>続きを読む
いわゆる「騒音おばさん」の事件を元にした映画、というイロモノの印象を大きく覆した傑作だった。
事柄の一面性のみにフォーカスし、勝手な判断のもと正義を振りかざす愚かさと悲しさ。社会的なテーマ性に向>>続きを読む
断捨離を通して過去への決別を図るが、簡単には埋まらない人間関係の溝。
所詮人間関係の整理などは自分勝手な行為であり、たとえ相手のためを思ったものであっても自意識の渦中からは逃れられない。そんな>>続きを読む
ワンダーウーマンの新作は80年代風のなんだか懐かしいテイストを残したアクション大作。
ほとんどギャグのスーパーパワーの描写や移動についての時間、チーターのビジュアルなどツッコミど>>続きを読む
誰しもが過去に持つ青春という名の可能性の数々を「佐々木」に反映して見つめる普遍的な成長譚。
ふと振り返る過去と現実のギャップに打ちのめされる時と、絶望の渦中にふと未来への希望を見つける時とで徹>>続きを読む
マイノリティの視点を通して人生の選び方と社会の寛容さを描いたミュージカルの映画化。
常々「プロム」がない文化で育ってよかったと思ってたけど、ここまでトラウマの象徴として扱われているのを見>>続きを読む