皿男さんの映画レビュー・感想・評価

皿男

皿男

マイ・エレメント(2023年製作の映画)

4.4

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エンペドクレスの四元素説において、元素を結合させるのは愛で、分離させるのは憎だそうです。
また、アリストテレスにおいては、四元素は熱/冷・湿/乾の性質の組合せとされ、見た目の違いが構成要素の本質ではな
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福田村事件(2023年製作の映画)

4.7

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CinemAsia Film Festival in Netherlands

類型的なキャラクターと演出、その全てがこの映画の主張する日本に蔓延る悪弊の表現なんだろうから凄い映画だ。

本筋から浮い
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ニモーナ(2023年製作の映画)

4.7

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社会的に殺される。
1000年の間、ヴィランのレッテル貼りをされ続けた少女。かつての魔女裁判や現代のネットリンチから、マイノリティ排他の例を挙げればきりがない。
ニモーナがバリスターに近寄ったのも、追
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

4.6

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依存と自己肯定という名の救いの物語。
愛であれ、信仰であれ、人は依存先からの肯定を以て幸福を得る。
他方、依存先からの否定は破滅を招く。 

自身の信仰からセクシャリティを否定されたアラン。
チャーリ
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シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

4.3

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言われているほど悪くない。

エヴァンゲリオンにおける等身大の人間ドラマ、内輪のニヒリズム論争成分が仮面ライダーの影響だと言うことなのかもしれない。

シン・ユニバース作品群は、エヴァンゲリオンシリー
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いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)

5.0

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絵画のように、窓枠に縁取られた"普通の家庭"を眺める生業。
どこにでもある普通の家庭。片親・低所得な自己否定と引き換えに、子供を託す"普通"は自分以外の場所にならどこにでもあると思っていた。
残された
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

5.0

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期せず、"エヴエヴ"と対照的なテーマを描いた今作。

片や、様々な可能性を排しても家族や出逢いという人との業を尊んだ。
片や、そのような人との合をも断ち切って、嗜好や才能といった事物との業を選ばざるを
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ベネデッタ(2021年製作の映画)

4.5

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信仰心を模した権力欲。
異性愛を模した同性愛。

欺かれているのは主観か客観か。
はたまた従うべきは主観か客観か。

マリアの乳房を欲したベネデッタが、最後まで異性"イエス"の承認を後ろ盾としたのが興
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

5.0

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量子力学における確率論的なマルチバース解釈。
"量子"を大々的に宣伝しながら結局どこかで見た異性物の生息域にしかできなかったMCUよりも、かなり真面目に考えられている。
そこに、自己や他者との対峙にお
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逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

5.0

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鑑賞前に、やたらと「汚い」「皮肉」「意識高い系」何てレビューを目にしてしまったのでだいぶ身構えてしまったが、そんな不安を軽く吹き飛ばす秀作でした。

公開が近いからといって、汚い映画としてバビロンなん
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アントマン&ワスプ:クアントマニア(2023年製作の映画)

2.0

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量子世界に入ってしばらく、絵面の変化に乏しい立ち芝居の連続に耐えきれずに寝てしまった。
ピムとジャネットの御老体がメイン張ってる時点でこういう進行にならざるを得ないのだろうが、ジュラシックワールド最新
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アントマン&ワスプ(2018年製作の映画)

3.6

今作も前作から大きく印象は変わらず。
親子関係がテーマであるが、ゴーストの掘り下げは不完全と言わざるを得ない。
キャシーが完璧な娘過ぎるが、次作でどうなるか。

物語は楽しめるものの、力・質量・体積・
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コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

4.5

計画になかったことが、一番の思い出になる。

自分の過去のどの旅もそうだった。

バビロン(2021年製作の映画)

3.3

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映画は沢山の人の人生の一部ではあるけれど、決して誰の居場所でもない。
普遍の価値観も無ければ、手法が違えど同じことの繰り返しでもある。

一番ニュートラルな立ち位置に見えるマヌエルが一番共感し難い存在
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イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.8

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三つの同性愛と、二通りの両性愛。
知らぬのは当人だけ。

閉鎖的な地味な島を舞台装置に、非常に重層的にテーマが描かれる。
めちゃめちゃ面白かった。

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)

2.5

とにかくストーリーの進行が遅いのと、
自伝映画として極端に客観性が欠如していること、
そして、登場人物それぞれの行動にロジックが欠け過ぎていて鑑賞が辛かった。

3回意識が飛んだ。

とにかく光に注目
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モリコーネ 映画が恋した音楽家(2021年製作の映画)

4.5

本当は医者になりたかった。
本人の口で語られるモリコーネは、まるで大村益次郎のような人物だ。

出自などから傍流・亜流の扱いを受け、またその様な自認もありながら、与えられた環境の中で最大限自分の創作に
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ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)

4.6

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アウシュビッツ収容所の設立ががいかにして決まったか。
その会議は90分。この僅かな時間内で、如何に濃密な議論が醸成され、歴史的な決定がなされたのか。

錚々たる面々が集合し、いよいよ会議が始まる。
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SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

4.6

問題はワインスタイン以上にシステム。

被害者については言わずもがな、
プロダクションは蛮行の示談の為に大金を使い、彼に関わる多くの人がキャリアを失い、当の本人すら、快楽を享受しているというより、治療
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離ればなれになっても(2020年製作の映画)

4.5

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ジュリオが娘を生家に連れていき、自分の考えを貫けというようなことを言うところ、素晴らしかった。

四者四様の生き方があり、それぞれに自分の考えや生き方の正しさを自己肯定すること。
社会的な成功と信念の
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ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

4.6

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やっぱエドワード・ノートンだったら爆破してやらんとね。

非常宣言(2020年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

旅客輸送と未知のウイルス。
そう聞いて真っ先に思い出すのは、'20ダイヤモンドプリンセス。

天災にせよ、人為にせよ、この映画と同等の実際の経験を、私達はごく近い過去に持っている。

この映画の中枢を
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かがみの孤城(2022年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

孤城の一年を通しても、現実は何も変わらない。
不合理な現実には、自分で立ち向かうしかない。

この厳しい事実と、それでも、時を経たどこかに自分のことをわかってくれる誰かがいるかもしれない可能性。そのほ
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宇宙戦争(2005年製作の映画)

4.0

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あまりにも無力な人間の有様。
私達も偶々生きてるだけだなーと思える。

スピルバーグの映画に超人はいない。運が良い人がいるだけだ。
クレーンの操縦が上手かろうが、何の役にも立たない。

埋めた時代にも
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すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

1.0

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すずめが自分の過去に戸締まりする話だった。

彼女一個人の話、震災の受け止め方としてはそれでも良い。どうでもいい。
しかし、実際に現実で起こった出来事、観客一人ひとりにとってもそれぞれの身にふりかかっ
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ミセス・ハリス、パリへ行く(2022年製作の映画)

4.3

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サルトルから学ばずとも、実存主義を地で行くエイダ。

時代の変容期には、かつて"本質"としていたものが崩れ去る。

"本質"に生き辛さが生まれるならば、"実存"を振り返ろうという映画だった。

「ミセ
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ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ(2021年製作の映画)

4.6

このレビューはネタバレを含みます

猫という具体を通して、世界という抽象を描く。

猫という取るに足らないミクロな存在を通して、マクロな世の中の普遍を解く。

孤立した夫婦・家族・個人が、絵を通して世の中と深く繋がる。

電気が認知され
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そばかす(2022年製作の映画)

4.7

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まず第一に、私のための映画だった。

家庭・交友関係・職場。あらゆるミクロな"常識"の中に蔓延る生き辛さ。
「はちどり」のような鑑賞感。

この映画が誠実なのは、母親であれ、妹であれ、あるいはマホであ
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.7

このレビューはネタバレを含みます

話して楽になることもあるんじゃない?
相談しても何も解決しない。

恐らくケイコにとって、話す事は本当になんの解決にもならなくて、一方で、リズミカルに撃ち合う事が最も楽になる自己表現であるように思えた
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ある男(2022年製作の映画)

4.7

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人が先天的に背負わされる"業"としての国籍・家柄・血縁。
一方、この世に生を受けた後に自らの手によって記してきた後天的な"人生"。
前者も後者もひっくるめて、初めて人のアイデンティティーは形成される。
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THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.2

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「ウェイオブウォーター」と梯子して観たせいもあり、"出来の良い兄と比較される弟についての映画"として強く印象に残った。
宮城家に根明な妹がいて良かった。彼女がいなかったらとっくの昔に家庭崩壊していたか
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アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

3.6

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家族が砦と言いながら、言行不一致で一人ひとりを顧みないジェイクに違和感。
"I see you"も口先だけ。
マイルズはもちろんの事、ジェイクも老害化著しく、過去の世代の人物になっている模様。
子供達
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アバター(2009年製作の映画)

4.4

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ジェイクとトミー。
軍人と科学者を志した兄弟は、本人にはどうしようもない不可抗力により、道半ばで志を絶たれた。

マイルズとグレースも同じく軍人と科学者。彼らはその道で功をあげてきた人物。サリー兄弟と
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ザ・メニュー(2022年製作の映画)

4.6

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虚栄で塗り固められた高尚なMENUをナプキン代わりに食べるチーズバーガーは最高だ。

最期にそんな作品を遺すには、意を汲んでそのように食べてくれる人が必要だった。

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022年製作の映画)

2.7

このレビューはネタバレを含みます

個人的な体調の問題もあったが、ネイモアとの決戦部分に辿り着かずに寝てしまった。

絶賛された前作の波に乗れていないだけに、ティ・チャラの死についてはかなり一般化して捉え直さないと、映画全体を覆う歪なテ
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