何度も出くわす同じ標識、死をもたらす黒い車、そして暴かれていく家族の本当の姿……。
不条理な状況に飲み込まれた家族の姿を、シンプルかつ独創的に描いた作品が本作『-less』である。
しかし、この映画>>続きを読む
実力派二枚目であるクリフ・ロバートソンの表情の使い分けが見事であり、誘拐事件時の切羽詰まった厳しい顔つき、亡き妻と似た女性と出会った時の茫然自失の状態、愛に満ちた優しい穏やかな微笑みから裏切りを知った>>続きを読む
なるほど、これは確かに″クソ映画″だ。
クソ映画なのだが、「どいつもこいつもクズばかりだな」と、厭世的な気分の際に観ると、製作者がそっと肩を抱いてくれるような気がする″癒し系映画″であることもまた確か>>続きを読む
まず、こういったホラー映画に慣れた者ならばそれなりに予想が付くと思う。
しかし、そうならないところが本作のミソだろう。
作品の紹介文に″ジャンル・スイッチ・ムービー″という表現があったが、一見、いわ>>続きを読む
女なら誰しもが一度は夢見る″シンデレラ・ストーリー″が一変するとき、物語は動き出す…。
一見、DV(ドメスティックバイオレンス)をテーマに持ってきているように見えるが、そんなに真面目に問題提示をして>>続きを読む
実は″殺人マシーン″だった主人公が、憎き悪党と真向かい、直接的に、淡々と、「宣戦布告」する。
それを演じるデンゼル・ワシントンの″目″がヤバい。
″ヤバい″とはいかにもチープな表現だが、本当にヤバいの>>続きを読む
本作、『パラサイト・バイティング 食人草』は、まるでビデオスルー作品の様な陳腐な邦題を付けられているが、中身は全米″TOP10″入りしたこのジャンルにおいての良作である、と、まず始めに伝えておきたい。>>続きを読む
大学のレポートを横目に流れるエンドロールを見ながら、「ああ、久しぶりにまあまあ凄い映画(良い意味でもあり、悪い意味でもある)を観たなあ」と思った。
どんなに目を伏せても、耳をふさいでも、ついつい溢れか>>続きを読む
数多のミステリー作品のもはや「礎」とも言えるものが、アガサ・クリスティのミステリーだと思う。
それは「王道」であり、ありきたりに感じようが、展開が強引で腑に落ちないと感じようが、否定出来る術は無い。>>続きを読む
これはもう本当に″ベタ″な「モンスター・パニック」もの。
昨日の後悔も、明日の心配も、全てを忘れて純粋に楽しめる。
モンスター・パニックなんざ、奇をてらった斬新な趣向や批評家を唸らせる深遠なテーマを>>続きを読む
「特捜部Q」とは、過去に起きた事件で未解決のものを捜査する部署。
アメリカのTVドラマでいえば「コールドケース」と同じ役割を果たしている。
かつて、ヨーロッパで貴族の娯楽と言えば″狩猟″だった。
金>>続きを読む
予告編や宣伝では″神童″と呼ばれる少年少女がその才能を駆使し、戦争をサバイバルする話のように思えてしまうが、そうではない。
子供たちが生き残れるかどうかは、彼らの努力とは関係のないところで勝手に決めら>>続きを読む
疲憊した。
TSUTAYAのレンタルコーナーで見つけた当時は、「狂人が罪なき青年を″セイウチ″にしようとする話?おいおい、ワクワクすっぞ」と小躍りしていたのだが、今となってはあのときの自分をぶん殴って>>続きを読む
軋む。
古い車体が、錆びた鉄扉が、そして満身創痍のヒーローの身体が。
不死身だったはずのヒーローが、老い、拭い去れない悔恨を抱え、死に場所を求めるかのように最後の旅に出る。
メキシコからカナダへ。>>続きを読む
これは、女性に対して″性欲″の代わりに″食欲″を感じ、これまで欲望の赴くままに女体を文字どおり「食らってきた」男がついに見つけたと思った、″真に愛し合える者″を失う物語だ。
18禁ということで「カ>>続きを読む
本作はデンマーク人の著者、「ユッシ・エーズラ・オールスン」のデビュー作であり、タイトルである「特捜部Qシリーズ」の第一作目を映像化したものだ。
物語はデンマークの首都、コペンハーゲンの町を舞台に展開>>続きを読む
レオナルド・ディカプリオが喉から手が出るほど欲しかったオスカーをついに獲得した本作。
グリズリーに可愛がられほぼ半死状態からのウルヴァリン並みの回復力、口から泡吹きながらの″顔相撲″に生魚や生レバーの>>続きを読む
燃え盛る巨大な炎をバックに黒い肌のヒーローがニカッと笑う。
そこには、ありとあらゆる葛藤を超えた映画的カタルシスが満ち溢れ、「ああ私は″映画″を観たのだ」という真っ当な満足感に包み込まれた。
正直、>>続きを読む
「レスラー」「ブラック・スワン」で人間の心の普遍的な脆さと闇を立て続けに描きつけたダーレン・アロノフスキーの最新作が、″ノアの箱船″だと聞いた時は、とても怪訝に思ったことは否めない。
ある意味、スペク>>続きを読む
「2年半以内に、94人の65歳の男性を期日通りに殺害せよ」
と、ナチスの残党のマッドサイエンティストが命令する。
そこには壮大で恐るべき計画が秘密裏に進行しており、その陰謀を年老いたナチスハンターが追>>続きを読む
思い切り殴られた口元を押さえつつ、部屋を出て行く部下の背をやや虚ろな目で追う主人公のジョン・エドガー・フーバー。
彼は痛みを感じているのではない。
殴られた直後に奪われた唇の感触に恍惚としているのだ。>>続きを読む
尊大な作家と作家の妻の愛人、奇妙な大邸宅内で繰り広げられる男と男の″淫靡″な闘い。
この奇抜な会話劇を織りなす上で、ジュード・ロウ×マイケル・ケインという二人の英国俳優は、それぞれに妖しさと美しさを>>続きを読む
「音楽」に造詣が深いわけではなく、指揮者の違いによるオーケストラの善し悪しなんて、正直分からない。
だけれど、「音楽」という表現には、″幸福″と″狂気がそれぞれ平等に混在し、携わる人間の人生を導き、支>>続きを読む
良い映画だった。まず最初にそう言っておきたい。
シンプルに、登場する人物たちの言動、展開される青春物語に感動した。
ベタで押し付けがましくもなりがちなプロットだけれど、それを独特の切り口で表現しており>>続きを読む
鑑賞後、興奮してカラカラに渇いた喉に一気にコーラを流し込んだ。
映画は常に没頭して観ているつもりだけれど、それでもこれほど″無我夢中″になった映画はあまりない。
そして、これほど監督をはじめとする製作>>続きを読む
とても辛く悲しいことがあって、こういう時だからこそ敢えて理屈抜きに大笑いできる映画を観ようと思った。
普段は積極的にこの類いの″コテコテ″のコメディ映画は観ない。
だからベン・スティラーの映画を観るの>>続きを読む
アンソニー・ホプキンス×ライアン・ゴズリングという新旧の個性と実力を兼ね備えた二人の競演作でありながら、日本国内未公開どころか今なおDVDスルーにも至っていないことが、まず腑に落ちない。
内容がお粗末>>続きを読む
テネシー・ウィリアムズの戯曲『欲望という名の電車』に着想を得ているものだろうと感じた。
そこに犯人探しのミステリーを織り交ぜるため、時系列の操作と三人の主要人物の主観描写を入れた『羅生門』スタイルで見>>続きを読む
収容所で育ったデビッドは脱走する。
温かい心を知らず、愛を知らず、笑うことも知らず、信頼するということも知らず、″自分は自分である″という強烈なアイデンティティだけを羅針盤に、自由を目指して歩き続ける>>続きを読む
色鮮やかな色彩世界が、徐々に色を抜かれ、ついには雪と夜のモノトーンに終着する。
若者たちの、熱く燃え上がった恋はあっけなく霧散した。
彼らのことを愚かだとは思わない。
ただ若かっただけ。
すっかり大人>>続きを読む
恥ずかしながら、初めてオーソン・ウェルズの監督作を観た。
冒頭の長回しは勿論のこと、随所に散りばめられた映画手法は、まさに革新的かつ秀麗。
50年前にこのような多彩な映画手法を生み出した天才が、もし今>>続きを読む
許されない恋に没入していく二人の女性が、強烈に惹かれ合い、惑い、激しく揺れ動く。
惹かれ合うほどに、喪失と決別を繰り返す二人がついに辿り着く真の「恍惚」。
ラスト、大女優の甘美な微笑は、この映画を彩る>>続きを読む
″Starring Jennifer Lawrence Chris Pratt″
エンドロールのクレジットで、先ず表示されたのは主演俳優二人のクレジットだった。
それはハリウッド映画において大して>>続きを読む
タランティーノばりに馬鹿馬鹿しい映画だなと思った。
勿論褒め言葉である。
ヤクザが雁首付き合って罵り合い、殺し合い、血みどろになる。
ただそれだけの映画だと言って良い。
それだけで面白いのだから良い>>続きを読む
本作は、″自己増殖を続ける″という、幽霊屋敷「ローズ・レッド」で巻き起こる恐怖の現象を描いた、天才作家スティーヴン・キング製作総指揮・脚本のホラーTVM、いわゆる洋館ホラーである。
テレビとい>>続きを読む
ジャケットの中央に立ついかにもな″ナチ女″のキャラクターが、実際は意外に純真なヒロインだったことは、残念でもあり、キュートでもあった。
月の裏側からナチスの残党が挙党を組んで地球に攻めてくる!という>>続きを読む