dojiさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

ペパーミント・キャンディー(1999年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

冒頭はただ混乱の只中にいる主人公への謎と疑問しかないけれど、時代を遡りながら主人公の来し方を辿る最中、とにかく男性としての彼の有害性に嫌悪感を抱く。けれどもさらに時代が遡るごとに、彼の中にある弱さをと>>続きを読む

マエストロ:その音楽と愛と(2023年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

フェリシアの表情の上にタイトルが出て、彼女こそがマエストロだ、と言わんばかりのラストに、やや割り切れない思いが残った。彼女が「幸せだった」とはかならずしも言い切れない一方で、レナードは彼女の存在によっ>>続きを読む

日の名残り(1993年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

ときどき思い返して観る本作だけれど、冷静に考えると、第二次大戦へと向かっていく世界の不穏な空気とお屋敷に勤める執事たちの暮らしの描き込みにおもしろさがある映画だなと、あたりまえのことを思ったりしたのだ>>続きを読む

ブルー・ジェイ(2016年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

ラストでマーク・デュプラスが感情を爆発させるシーンで、想像を超えるほど女々しく、情けないのがすごくいい。たしかに、あんなことがあったら駄々をこねるような声を出してぼくも泣いてましうんだろうなと思った。>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

ややこしい人だったんだろうなとは思っていたけれど、ここまで男らしさにとらわれた、弱さを認められない弱い男としてナポレオンが描かれていることにおもしろさがあった。ハンカチーフで涙を拭う姿や、犬と戯れあっ>>続きを読む

雪豹(2023年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

街に降りてきてしまった熊たちを報じるニュースが増えてきたいま観ることに意義があるような映画だと思う。山地で暮らす人々と雪豹たちの関係性は、神秘的な捉え方ができるようでいて、あくまで生存原理に基づいたバ>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

小ネタにくすくす笑いながらも、これは意図、意図、意図の折り重なりの連続で、ひとつひとつに納得と賛同を繰り返しながらもたどりついた先に感じたのは、なんともまあ難解な映画をつくったものだ、という驚きだった>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

必要以上に長すぎるアクションの連続で徐々にイーサン・ハントとして観ることは不可能になるし、あんなにプロモーションでは嬉々として飛び降りてた崖のシーンも劇中ではビビりまくっててギャグにしか見えない。そん>>続きを読む

サントメール ある被告(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

筋書きからはカポーティの「冷血」をどうしても感じさせたし、ありえたかもしれない自分の姿を法廷で感じることは村上春樹の「アフターダーク」内の描写を思い出したりもした。村上春樹は「壁抜け」として歴史を超え>>続きを読む

私たち(2021年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

「私たち」というタイトルは、あくまで監督自身が観察者ではなく、当事者でもあるという視点の表れであって、郊外に住む市井の人々を写すやさしいまなざしだけではなく、ジャーナリストとして人々を周縁に押しやって>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

クィア・パルム受賞を疑問視する声をたまたまtwitterで見かけていて、気になったのでどのようなことが言われているのかを先に読んでいた。すぐにはその真意はわからなかったし、映画を観終わったあとのとても>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

ここまではっきりとキャンセルカルチャーについての作品とは思っていなかったので少し驚きながらも、主題として扱うにあたっての描き込みと、表現と演出のsubtleさに唸った。Tarがもし男性であったらなら嫌>>続きを読む

午前4時にパリの夜は明ける(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

映画を観ていて幸福だなと思えるのは、ものがたりに身を委ねるというよりも、いまなにが起こっているとか、このあとどうなるかだとか、そういった視点を忘れて、ただ目の前で動くひとびとの瞬間の積み重ねにじぶんも>>続きを読む

シェルタリング・スカイ(1990年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

これは勝手な妄想にちがいないんだけれど、後半の展開はジョン・マルコヴィッチ演じるポートの破滅への恐怖と、逆説的にそれを望んでしまうことを映像化したようなもののように思えた。ポートは丁寧に会話をする落ち>>続きを読む

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

「特別処置」「最終結論」といったことばで事実を直視することを巧妙に避けながら、虐殺や殺人について真顔で議論を進めていく。効率化と簡略化の推進が妨げられるのは、当然ながらその対象が人間だからであり、その>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

岸田首相による「社会が変わってしまう」発言のニュースがあった日にみたこの映画は、変化についての作品のように感じてしまった。

生の意味と死の存在を意識することで変わってしまうコルムと、この島にはなにも
>>続きを読む

さがす(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

視点が変わることでものがたりの質そのものが別のものになる点では『ゴーン・ガール』を思わせたし、スリラーの中で深刻なテーマを扱うことで、ストーリーとともに現実感をともなう重たさが観客をおそう。衝撃的では>>続きを読む

RRR(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

MCUやザック・スナイダーのようなアクションの劇画性のようなものを志向する作家たちが地団駄踏みたくなるような、アイコニックな画作りに溢れすぎている3時間。退屈する暇もなかったし、エンターテイメント性こ>>続きを読む

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

彼女たちが記者に打ち明けるとき、遠巻きのショットからカットが切り替わることによって表情を捉えるような編集が印象的で、まるで社会のなかの名もなき存在、ないことにされてしまった声に耳を傾けていく記者たちの>>続きを読む

さかなのこ(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

前田司郎さんの性暴力報道がなかったら、2022年に観たもっとも好きな日本の映画だった。以下は観終わったときの走り書きで、報道の内容を読み返したあとになんだかいやになってそのままにしていた。下書きに残っ>>続きを読む

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

絶妙なバランスの演出の映画だったとおもう。時計を写すカットから部屋の全景へとパンしていく一連のシークエンスで時間をたどる演出も、恋愛映画の中では定番化してきた時系列の編集の中ではユニークだったし、部屋>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

ボクシング映画はボクシングを選び取った主人公が情熱を注ぎ込む姿を描くことが多いけれど、この映画のケイコはなぜボクシングをはじめたのかが描かれず、打ち込んでいるようでそのことにも迷いがある。なぜそんな姿>>続きを読む

ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

定石を外すことに命をかけるライアン・ジョンソン、シリーズ2作目として前作から傾向はわかっていたので、ブノワの役回りがミステリーの定型とは違うことは予想できるし、後半のジャネール・モネイがステージ中央に>>続きを読む

アバター(2009年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

新作に向けての復習としてみたら、この映画のものがたりの「小ささ」は別にわるいものではないなと思った。現在のようにミラーワールドやメタバースといった、アバターという概念があたりまえになる以前に、じぶんと>>続きを読む

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

傷ついたクジラとこころを通わすシーンで、思わずうるっときてしまった。大きな生きものと意思疎通をはかりたいというのはこどものころの夢だったし、キリやロアクたちの不安定なこころを、動植物が包み込むような描>>続きを読む

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

男のいやなところを煎じ詰めたような映画という前評判を聞いて、いろいろと自戒にもなりそうだと思ってみた。田舎町の男たちの顔がすべて同じだという演出から、体型や人柄などの違いはあっても、男であることの悪は>>続きを読む

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

セリーヌ・シアマというだけで観にいったのであらすじもなにも知らなかったのだけれど、母の背中を映すカットで示される「petite maman」というタイトルから、どういうものがたりかがわかる。観ながら、>>続きを読む

ドント・ウォーリー・ダーリン(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

さすがにこのネタバラしに対して新鮮味というのはそもそもねらってはいないと思うので、どちらかというと、オリヴィア・ワイルドがどのようにつくられた現実に対しての反旗を翻す描写をするのかの方が気になってはい>>続きを読む

ザ・メニュー(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

ずいぶんといじわるな映画で、その徹底っぷりが気持ちよくて笑いながらみれた。食にうるさい客人はそのままSNS時代の観客と鏡写しになるものとして描いているし、その最たる象徴としてのニコラス・ホルトの役柄が>>続きを読む

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

ロードムービーとしてのオープニングからさっそく主人公は万引きでつかまってしまい、ルーシーともはなればなれになってしまう。すべてのトラブルの先にお金の問題が差し掛かり、みるみるうちに貧困の底へと落ちてい>>続きを読む

キラーナース その狂気を追跡する(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

キラーナースが問題の焦点ではあるものの、その周りにある、彼の凶行を結果的黙認するようなかたになってしまった病院というシステムへの問題意識も描いていて、おそろしさを何倍にも増す構成になっていると思う。た>>続きを読む

グッド・ナース(2022年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

セピアの色彩設計の中でスリラーとしての恐怖とドラマとしての葛藤、そして実話に基づくものがたりとしての重みをじっくりと描いていく。骨太で誠実なつくりに拍手を送りたくなる作品だった。なによりエディ・レッド>>続きを読む