dojiさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

ザ・メニュー(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

ずいぶんといじわるな映画で、その徹底っぷりが気持ちよくて笑いながらみれた。食にうるさい客人はそのままSNS時代の観客と鏡写しになるものとして描いているし、その最たる象徴としてのニコラス・ホルトの役柄が>>続きを読む

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

ロードムービーとしてのオープニングからさっそく主人公は万引きでつかまってしまい、ルーシーともはなればなれになってしまう。すべてのトラブルの先にお金の問題が差し掛かり、みるみるうちに貧困の底へと落ちてい>>続きを読む

キラーナース その狂気を追跡する(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

キラーナースが問題の焦点ではあるものの、その周りにある、彼の凶行を結果的黙認するようなかたになってしまった病院というシステムへの問題意識も描いていて、おそろしさを何倍にも増す構成になっていると思う。た>>続きを読む

グッド・ナース(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

セピアの色彩設計の中でスリラーとしての恐怖とドラマとしての葛藤、そして実話に基づくものがたりとしての重みをじっくりと描いていく。骨太で誠実なつくりに拍手を送りたくなる作品だった。なによりエディ・レッド>>続きを読む

エノーラ・ホームズの事件簿2(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

ミリー・ボビー・ブラウンの野心や第四の壁を破ること、女性たちのホームズを描くこと、そしてアクション!という、それぞれの試運転的な前作を経て、なんとも正統的で、かつ磨き上げられた続編としての佇まいにびっ>>続きを読む

理想郷(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

ジャック・ロンドンの「ホワイトファング」の冒頭で、野生の狼に囲まれるシーンがある。冬の飢えた狼たちの前に、人間はなにもすることができず、話の通じないことの恐怖がそこにはあった。小説自体はそこから違う展>>続きを読む

その道の向こうに(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

静かに傷が癒えていくまでの過程ではなくて、ただその痛みの記憶との付き合い方を、何度も訪れるそのフラッシュバックとただただ変わらない現実が堆積していくことで、徐々に身につけていくということ。その静かなよ>>続きを読む

エマ、愛の罠(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

bjorkやarcaがどういわけかレゲトンのビートを取り入れはじめていて、なんとなくこの音楽ジャンルを気になりはじめたタイミングでみたこの作品、なんとも絶妙なレゲトン映画としてこころに刻まれるそうな一>>続きを読む

スペンサー ダイアナの決意(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

忘れられた父のジャケット、アン◦ブーリンの処刑、狩られるためだけに育てられるキジ、すべてのモチーフが、家という男性主権の敷居の中であらゆることを奪い取られてしまう主人公の苦しみを描いている。テーマとそ>>続きを読む

アフター・ヤン(2021年製作の映画)

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『海辺のカフカ』に出てくる佐伯さんという登場人物が「私のことを覚えておいてほしいの」というセリフが好きで時折思い出すのだけれど、この映画は「覚えておくこと」がだれか/なにかが存在していたことのなにより>>続きを読む

ブレット・トレイン(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

もともと伊坂幸太郎の小説にあるガイ・リッチー感が映画に変換されてもまだ残ってるのがなんだかおかしいというか、たしかに伊坂幸太郎の文体がメディアをまたいでも存在感があるというのがとても興味深かった。台詞>>続きを読む

セイント・フランシス(2019年製作の映画)

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母のことや姉のこと、子どもを持つかどうかについて話したことのある友だちや知人、そして母となりまるで別の世界へと行ってしまったかのように疎遠になってしまったかつての友だちのこととか、いろんな顔が浮かんだ>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

そうか、JAWSをやりたいのか、とわかった瞬間のたのしさといったら、やっぱり映画が好きだからこそ感じられるものでもあるし、それはジョーダン・ピールの意図が最大限成功しているということでもある。じわりじ>>続きを読む

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

アメリカン・ニューシネマという時代を男たちの憂鬱に独占されてしまったことへの怒り、そんな意志を感じる。まったくの無気力で意思決定を放棄する主人公は、最初はどこかカリカチュアライズされたユーモアを感じる>>続きを読む

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

徐々に惹かれ合うふたりのラブストーリーとしてだけでなく、未熟な10代の男性の惨めな滑稽さと、アイデンティティの確立のために揺れる20代半ばの女性の痛みを感じさせるドラマとしても機能させているのがシンプ>>続きを読む

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

なにより胸が苦しくなるのは、彼女はworst person in the worldなんかでは絶対になくて、こんな別れは世界中のどこにでもあふれていることであり、それでも「わたしは最悪」だと胸を痛めて>>続きを読む

否定と肯定(2016年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

レイチェル・ワイズを主演に据えた法廷ものという体裁だけど、実質的な主役はトム・ウィルキンソンその人で、主題は「正義感を他者に託すことができるのか」ということだと思う。歴史的事実としてホロコーストがなか>>続きを読む

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

アイヒマンをモンスターではなくあくまで普通の男として捉え、システムによって生み出された悪を分析したアーレントの『イエルサレムのアイヒマン』執筆時のものがたりとして、当時の彼女の葛藤とそれを取り巻く状況>>続きを読む

アイヒマン・ショー/歴史を写した男たち(2015年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

”悪の陳腐さ”を書いたハンナ・アーレントの『イエルサレムのアイヒマン』に通じる考えを監督のレオが強調して語っていて、それは事実なのか本作におけるアレンジなのかが気になった。ドキュメンタリー監督としての>>続きを読む

ムーンフォール(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

テレビがない生活を10年以上続けているので、テレビのある風景というのはもう子ども時代へのノスタルジーでしかない。だからこんな思いになるのかもしれないけれど、金曜日にエメリッヒの新作が配信されて、タオル>>続きを読む

宮本から君へ(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

男は女を守るものだという、呪いでもあり社会全体に刻まれたスティグマのようなものを、じゃぁ実際にそれってどういうことなのかと観客に突きつけるような映画で、終始ぼくのような男性社会から爪弾かれてきた人間と>>続きを読む

アバウト・タイム 愛おしい時間について(2013年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

なんとなくじぶんには合わなそうだなと思って観ていなかったのだけれど、思ったよりもラブストーリーより家族について焦点があてられていて、親であることや兄弟の存在、そして生まれてくるものたちへの視線が胸に残>>続きを読む

風花 kaza-hana(2000年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

人生に絶望する、それが映画の主題としてリアルに感じれるほど、歳を重ねたなと思いながらみてしまった。浅野忠信独特の薄い演技で「ほんとうに死ぬことないじゃないか」と叫ぶシーン、キョンキョンの肩の細さがとて>>続きを読む

ミスター・ルーズベルト(2017年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

元カレ、猫、ヒッピー、ワンナイトラブ、酒などなど、そういった要素で破壊と再生を描くインディ映画の定番的な手法なのだけれど、監督を務め主人公を演じるノエル・ウェルズを中心に、俳優たちの魅力が全編を彩って>>続きを読む

若い女(2017年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

劇伴もなくどこか淡々と事実だけ突きつけるような展開から、ほんとうに主人公がどこに向かい、行き着くのかが読めずに不安になってしまう。とはいえ、ぼくの人生の中でも、この主人公のような境遇や特質のようなもの>>続きを読む

カモン カモン(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

こどもたちはまっすぐ未来へと射られた矢のように、これから続いていく途方もないようで有限な時間を命のなかに孕んでいる。それはまぶしくて見つめていると目が痛くなるし、触れるとその鋭さと勢いによって傷つけら>>続きを読む

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

すごく複雑な文脈が作品の中に入り込んでいる、いまの映画ならではのよくない影響が出ているなと思ってしまった作品だった。庵野秀明なのか樋口真嗣なのか問題をはじめ、原作愛と新規ファン獲得のあいだで揺らぐ視点>>続きを読む

アネット(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

ミュージカルという形式のせいか、カラックスにしては大味な感じもあって、普段だったら7thや9th、13thとか、テンションコードを多用する作曲家が、マイナーコードのトライアド主体の曲を書いたような感覚>>続きを読む

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

予告の段階であざやかな色使いとライティングの創意工夫が凝らされているのを感じる華やかで明度の高い画づくりが新鮮で、ビジュアル的な奇抜さとサイケデリック性が肝となるドクター・ストレンジのシークエルとして>>続きを読む