セッセエリボーさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

セッセエリボー

セッセエリボー

映画(1128)
ドラマ(2)
アニメ(0)

アルジェの戦い(1966年製作の映画)

5.0

規格外。これから何年経ったとて二度と誰もこんな映画を作ることはできなかろう。一度は視界を遮った白煙の向こうから、民衆がふたたび姿を現す瞬間。メガホンからの子どもの声に応えて上がり、独立前夜のカスバの街>>続きを読む

望郷(1937年製作の映画)

3.8

ノーテンキさに突っ込んだら話が終わってしまうので本当に言うことがない。これがもう少し抽象的になったらそのまま屁カテという感じの正統的植民地主義映画。都会で田舎の話をするから地元トークは盛り上がるんだろ>>続きを読む

青い目のロバ/マグダナのロバ(1956年製作の映画)

4.2

au hasard Balthazar…
濃密すぎて体感2時間くらいあった。そして『希望の樹』が生まれる、といった趣の悲哀とポエジー。死から甦り飾り立てられた聖なるロバの美しさ、草を盗む子供たちの隠密
>>続きを読む

ハバルダ(1931年製作の映画)

3.5

しっちゃかめっちゃか。文脈がないと理解できない。ソ連がずいぶん長い間自分たちのところで秘蔵してたらしいが、これをどう受け止めてたのか気になる。まさかのどんでん返しオチ。どおでもいい夢のくだりとか引っ張>>続きを読む

ブルジョワジーの秘かな愉しみ(1972年製作の映画)

4.1

自分の中では「おもしろすぎない」でおなじみのブニュエルとしては期待通り、ちょい上回りくらい。定期的にこのくらい煙に巻かれたくなるな。『皆殺しの天使』みたくワンシチュエーションを引っ張るのかと思ったらそ>>続きを読む

ダムネーション 天罰(1988年製作の映画)

4.3

なんかタルベーラって特徴的なショットはあるけど作家性みたいなものはあまりないような気がする。難解に見えるし確かに話は追いにくいけど、昨日観た同時代人ジャームッシュとは違う意味でわかりやすい映画だと思う>>続きを読む

ファミリー・ネスト(1977年製作の映画)

4.0

ハンガリーの遊園地富士急の100倍怖えな。ドキュメンタリーで手法を洗練させた作家が劇映画で唯一無二の独創性を開花させるのはキェシロフスキみたいで良い。とはいえ明らかに演出された箇所もあり、そこは早くも>>続きを読む

アウトサイダー(1981年製作の映画)

3.8

とった席が思ってたより前で画面が全然まともに見れなかったというのもあってか、珍しく没入感ゼロのタルベーラだった。ドキュメンタリーみたいな寄りのショットで撮られた社会不適合おにいの人生。おカネの管理は自>>続きを読む

カンボジアの失われたロックンロール(2014年製作の映画)

4.3

とてもつらい。カンボジアロックがまるで違ったものに聞こえてくる。一体これほどの短期間にこんなすさまじい殺戮がなされたことが他にあるんだろうか…当事者本人の口から話が聞けるミュージシャンがほとんどいない>>続きを読む

放浪の画家 ピロスマニ(1969年製作の映画)

4.2

パラジャーノフもそうだけどこのシェンゲラヤというひとも『アラヴェルディ』と見比べると過度に動きまわるか静的かの両極端を表裏のように撮り分ける作家だ。時系列が入り組んでいるというか断片化されてシャッフル>>続きを読む

ピロスマニのアラベスク(1985年製作の映画)

3.8

画質が良すぎてびびった。パラジャーノフまだご存命で最近デジタルで撮ったのかな、と思ったら全然だった。これはリマスター頑張ったね…
基本はピロスマニ作品のテーマ別乱れ打ち、たまに意味不寸劇。少しシュヴァ
>>続きを読む

アラヴェルディの祭(1962年製作の映画)

3.8

俺が祭りを盛り上げる!と謎の哲学に取り憑かれたお祭り男が地方のお祭りに馬で殴り込みをかける。記録映画っぽさと劇映画っぽいくだりがかなりちぐはぐなバランスでブレンドされている。終盤の「イモトを探せ!」み>>続きを読む

エリソー(1928年製作の映画)

4.1

おもしろチャンバラ合戦が拝める直談判失敗映画。そういえばそろそろ恵方巻きの季節だな。
お偉いさんの利己的な理由で立ち退きさせられそうな村を正義感強めのキリスト教兄ちゃんが救おうとする。直談判は偉いがそ
>>続きを読む

白いキャラバン(1964年製作の映画)

4.6

画面のテンションが高すぎてひっくり返りそうになりながら見た。落ち着きは皆無なんだけどほとんど躁状態の怒涛のエネルギーにぶっ飛ばされる。グルジアだけが生み得た至宝ハッピー映画…
冒頭、中心人物の上下から
>>続きを読む

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

4.1

本当にスルメ映画で観ている間はよくわからんし結構眠いのに観終わってから何度も何度も見たくなる。こういうの一番困る。
手がかりも何もない、正しい方向に向かっている確証など全く持てないままに、それでも進む
>>続きを読む

鰯雲(1958年製作の映画)

3.7

始まった瞬間いやいやいやキツいキツい!ってなる。社会の教科書か行政文書でしか見ないようなワードがセリフとしてガンガン迸る。潜在的なものも含め、財としての身体のあり方が戦後どのように変わったか。これだけ>>続きを読む

一人息子(1936年製作の映画)

4.1

『長屋紳士録』の軽妙さはないものの、そのぶん小津人情劇のもつ幻想的な美を堪能できる。横並びで歩く二人を斜め後方から追うトラッキングショット、病院の廊下のローアングルなど小津的構図のバリエーションを厳密>>続きを読む

結婚式のメンバー(1952年製作の映画)

4.1

話通じない奴が一番キツい。映画だからというのとブチ切れ方が非常に一貫しているので観ていられたが、現実世界で部署が同じとかだったら本当にキツかった。しかし微妙に訛りのあるエッジの立った発音は耳に心地良く>>続きを読む

長屋紳士録(1947年製作の映画)

4.2

よいのう😢😢
なんてことない話なのに泣ける。このガキかわいいなぁ…お礼だけは絶対言わないのよかった。背中かゆいモーションが同期するのもかわいい。
引かれた線を律儀になぞったり、空隙の多い独特の間合いで
>>続きを読む

お早よう(1959年製作の映画)

4.2

徹夜明けでの鑑賞だったが幸い小気味良い作品で麦睡することなく楽しめた。『生れてはみたけれど』に通じるクソガキブラザーズの健気な抵抗を全編エンジョイできる眼福ムービー。いさむちゃんがかわいすぎる。おなら>>続きを読む

お茶漬の味(1952年製作の映画)

4.1

小津映画の海外での評価の高さが何か納得できた。欧米人にはこんなメロドラマは思いつかないだろう。深夜に茶漬けを仕込むシーンがクライマックスにくる映画が他にあろうか、しかも途方もなく美しい。女中の寝言を聞>>続きを読む

その夜の妻(1930年製作の映画)

3.7

なんか、薄味だったなぁ…。夫がほんとに捕まり損、せめて逃げてくれよ。

生れてはみたけれど(1932年製作の映画)

4.3

活弁つき上映初めて見たけどすごい!澤登翠さん、老若男女どの配役も声音の使い分けで違和感なく命を吹き込む素晴らしい技であった…こんな世界があったのか。そっちに気を取られて画面はあんまり集中して見てなかっ>>続きを読む

13回の新月のある年に(1978年製作の映画)

4.4

めっちゃきちい。あんま何回も見返したい感じじゃないけどおそろしく完成度が高いので何回見返しても得るものはありそう。なんというかあまりに作り込まれていて、作り手の制御を超えて滲み出てくる詩情みたいなもの>>続きを読む

第三世代(1979年製作の映画)

4.2

「やき」

こんな映画あったのか。最近のゴダールを劇映画にしたみたいな、ロブグリエの色彩感覚を限界まで悪趣味にしたみたいな印象。ずっと賢しい哲学をぶっててそれは右から左なんだけど、徹底的に計算し尽くさ
>>続きを読む

ガートルード/ゲアトルーズ(1964年製作の映画)

4.4

完全に早かった。もっと人生終わる直前とかに観るやつだった。小津さんもそうだけど何で遺作でこんな死期を悟ったみたいな映画つくれるんだろう。
「あなたが私を訪れたこともやがて記憶になる。私はときどき、昔の
>>続きを読む

奇跡(1954年製作の映画)

4.1

体感長すぎたが凄いことしてるんだろうなぁとは何となくわかった。異様に引き延ばされる役者のモーションと室内パンショット。視線を合わせることなく部屋の各所に配された人物たちが時折ハッとするほど強烈な印象を>>続きを読む

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(2004年製作の映画)

4.5

「はらわたは品切れでっす」

キュアロンの荘重なタッチと俳優陣の突然の円熟により前2作とまるっきり別の映画みたいになった個人的にシリーズ最高傑作。特に冒頭から特急列車くらいまでがサイコー。飛び去るマー
>>続きを読む

ハリー・ポッターと秘密の部屋(2002年製作の映画)

5.0

「何かわしに、言いたいことはないかね?」

ずっと佳境。採算度外視の過剰なサービス精神で押し寄せるコロンバス監督2作は本当に人類の宝だと思っている。こんなに満遍なく子供心をくすぐる映画は他に知らない。
>>続きを読む

偶然と想像(2021年製作の映画)

4.2

「魔法」好きすぎる。ずっと観ていたい。「魔法よりもっと不確かなものを、それでも信じてみる気はある?」
残りの2話はあまり見たことのない濱口竜介のユーモアが窺えて面白かった。2話目の棒読みはさすがにラデ
>>続きを読む

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)

-

「このスタイルの映画はドライヤーの他の作品も含め映画史上この一本しかない」ってアフタートークで聞いて安心した。ほんとに9割がた顔面だけで展開されるのはすごいんだけど何でこれで対話してるって理解できるの>>続きを読む

ワン・プラス・ワン(1968年製作の映画)

3.4

さすがにねむすぎちゃう。こうなるともうストーンズ関係ないやん〜。ずっと「悪魔を憐れむ歌」のだるいリハしか聞けないのと全体の半分ぐらいはBGMなしの社会派おもんな寸劇を見せられるのでどんどん意識が遠のい>>続きを読む

モア(1969年製作の映画)

3.8

すばらしく贅沢な絶景のなかで繰り広げられるヤク中映画。セクシーなやつかなと思ってたけど全然だった。というかミムジーファーマーの魔性とは無関係に男が勝手にクスリで自滅していくのに「危ないから関わるな」と>>続きを読む

ある夏の記録(1961年製作の映画)

4.0

これもまたよくわからない。答えではなく問いをたてる芸術。これじゃ観客に全投げではないか。
めちゃくちゃ頭でっかちなモチベーション先行で作られてはいるけど真実味を失わずに美しい瞬間を何とか捉えようという
>>続きを読む

MONOS 猿と呼ばれし者たち(2019年製作の映画)

3.9

グミには詳しくなれるが何の話かはよくわからなかった。テレビで踊りたい人が何の因果でこんな組織に入っちゃうの?
恐らくは空虚な中心のまわりで繰り広げられる前半部は俯瞰・遠景のショットにより兵士たちの行動
>>続きを読む

COME & GO カム・アンド・ゴー(2020年製作の映画)

3.7

大阪出張ついでにお初に訪れたシネ・ヌーヴォでたまたま監督挨拶付き上映をやっていたので折角だから観た。別に大阪に限らないだろうが、経済的な収奪構造が性的搾取とあまりに強く結びついてるのが問題なんだと思う>>続きを読む