踊る猫

踊る猫

基準点は 3.8 点

BORDER LINE(2002年製作の映画)

3.4

例えば同じく「子ども」の鬱屈した内情を描いた塩田明彦『害虫』『カナリア』などを想起しつつ、しかしそういった作品と比べて本作がさほど心に響かなかったのはこの映画が時流の波に揉まれて古びてしまったからだけ>>続きを読む

キャロル(2015年製作の映画)

3.7

上品な作品だ。同性愛がタブーだった時代の禁断の愛を描いていて、しかしこちらを煽り過ぎることなく(言わば「俗情との結託」に触れずに)丁寧に描き切ったその真摯さは評価に値する。悪く言えばそういうセンセーシ>>続きを読む

渇き。(2013年製作の映画)

4.2

点数は高くなったがアラはある。話が分かりにくい。過去の事件と現在の事件が交互に語られるので、時としてどちらを描いているのか判断が難しいところがある。また、同監督の『告白』を観ても思ったことなのだけれど>>続きを読む

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)

3.1

酷い。なにが酷いかって、主演している俳優が「演技」をしていないことだ(彼らがアカデミー賞を受賞したのはその意味では酷い皮肉だ)。嬉しければ笑うし、逆に言えば笑うと嬉しそうな感情を見せている……と「表出>>続きを読む

サンドラの週末(2014年製作の映画)

3.6

ダルデンヌ兄弟の作品は不勉強にして『ある子供』しか観ていないのだけれど、二度流れるカーステレオからの音楽を除けば BGM は流されず、扇情的にこちらの気分を持ち上げたり下げたりさせないあたりはダルデン>>続きを読む

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)

4.3

セオリー通りに作った脚本に忠実に(本当に「忠実に」)撮ったという感じ。なるほど黒沢清氏らしさはところどころに見られる。冒頭の取り調べ室の場面は知る者なら『CURE』を想起せざるを得ないだろうし、不吉に>>続きを読む

リップヴァンウィンクルの花嫁(2016年製作の映画)

4.1

「おっ! ラース・フォン・トリアー!?」と思わせる管弦楽器とスローモーションの結びつき、並びにせっかちなカメラワークは美しい。しかし、スマホの導入(それは撮影の媒体としても登場するので、これ自体は極め>>続きを読む

シークレット・サンシャイン(2007年製作の映画)

4.3

なんだろうこの全体に漂うミヒャエル・ハネケ臭は……不勉強にして韓国のキリスト教の影響力の大きさとかそういうものを知らずに観てしまったので、調べてみて恥じさせられたことを告白しておく。このようなある種キ>>続きを読む

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)

4.7

ケン・ローチが、あるいは橋口亮輔氏が挑んでいることに(良い意味でも悪い意味でも)愚直に是枝裕和監督らしく取り組んだ一作。つまり、現実から逃げずに何処まで泥臭く、しかしさり気ないユーモアを含んだ作品とし>>続きを読む

永遠の僕たち(2011年製作の映画)

4.1

加瀬亮氏が主人公をぶん殴る場面にハッとしたのでこの点数に。もう少し丁寧に登場人物の「死」との戯れや根底にある恐怖、恋人同士の触れ合い、等などディテールを掘り下げればより傑作になっただろうと惜しまれる反>>続きを読む

シング・ストリート 未来へのうた(2016年製作の映画)

3.5

「アメリカン・ドリーム」ならぬ「アイリッシュ・ドリーム」はこれは果たせたのか? 私はこの映画を観て『トレインスポッティング』を連想した。ネタを割らないのがこの「レビュー」の方針なので深くは語らないが、>>続きを読む

愛しき人生のつくりかた(2015年製作の映画)

4.2

結果的には高評価になったのだけれど、なかなか悩ましい。もう少し時間を掛けてパパのマザコンぶりや夫婦の不仲、お婆ちゃんと孫の触れ合い、同居人の事情などを丁寧に描けばもっと良くなったのではないかと惜しまれ>>続きを読む

おくりびと(2008年製作の映画)

4.8

落涙してしまった。アラがないわけではない。ムダを削ぎ落として(主人公がチェロを河原で弾く場面を削って)、父親との確執をもう少し丁寧に描いていたらと思わなくもない。だが――私の狭い観測範囲になるが――ど>>続きを読む

おみおくりの作法(2013年製作の映画)

3.6

良く言えば手堅く作られたムダのない映画。悪く言えば何処までも地味な映画。自らの「死生観」を問い直すにあたってこの映画に臨んだのだが、どんな逆境に置かれても堅実に仕事を続ける主人公の姿は確かに感動的だ。>>続きを読む

悼む人(2015年製作の映画)

3.9

天童荒太氏の原作は例に依って未読。だから原作を何処まで周到に活かしたものかは分からないが……そもそもの設定自体ツッコミどころ満載だし、「死」と「生」をテーマに重く描こう/問おうとしている意欲は大いに買>>続きを読む

COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック(2015年製作の映画)

3.1

悩んだが、この点数になってしまった。ニルヴァーナの誕生と成功がかなり端折られて語られているからというのもあるし、彼らが支持された背景を分析していないからでもある。また、これは好みの問題でしかなくなるの>>続きを読む

独裁者と小さな孫(2014年製作の映画)

4.4

「とある国」が舞台となっている。つまり世界の何処にある国なのかハッキリしない。そういう抽象的な設定だからかこの話はリアリティがない。良い意味で言えば寓話的で、つまり私たちにも当てはまり得る教訓を引き出>>続きを読む

(1990年製作の映画)

4.4

興味深い。私はキューブリックを(なんなら近年のデヴィッド・フィンチャーも)理解出来ないほど映像に関しては鈍感な人間なので、最初の二話が「いや映像として凄いのは分かるんだけれど……」と退屈に感じられて投>>続きを読む

アメリカン・サイコ(2000年製作の映画)

4.3

二度目の鑑賞になる。原作が重厚だった(悪く言えばしつこかった)のをかなりコンパクトに纏めたという感じで、初見の時はそのコンパクトさが物足りなくて「愚作」と決めつけていたのだけれど、なかなかどうして悪く>>続きを読む

71フラグメンツ(1994年製作の映画)

3.8

挑戦的な作品だ。なんなら挑発的と言っても良いのだろう。一応は大学生が銀行強盗を行い自殺する事件が描かれているのだが、そこに難民や義理の家族、冷え切った関係の夫婦や親子の話が絡み合い、しかしそうした明ら>>続きを読む

恋する惑星(1994年製作の映画)

3.4

これは「言い訳」でしかないが、私は自分が発達障害者だからか顔つきの見分けがなかなかつかない。だから前半のストーリーと後半のストーリーは男女ふたりがそれぞれ同一人物を「変装」したりして演じているのだろう>>続きを読む

隠された記憶(2005年製作の映画)

4.4

怖い……スジの整理からボンクラな私はデヴィッド・リンチ『ロスト・ハイウェイ』的なものを想像していたのだが、この怖さは思いつく限りでは(私の不勉強がここで祟って来るのだが)なによりも黒沢清氏と似ているよ>>続きを読む

シュガーマン 奇跡に愛された男(2012年製作の映画)

4.7

大泣きに泣いた。いや、アラはある。失礼を承知で言えば主人公となったミュージシャンのロドリゲスの音楽は、リスナーとしての私からしてみれば結局ボブ・ディランに代表されるフォークの亜種としか言えないので、ア>>続きを読む

ベニーズ・ビデオ(1992年製作の映画)

3.9

撮影されたら手ブレも生々しく、再生されても粒子が荒い映像でしか映し出されることのない「ビデオ」の画像とミヒャエル・ハネケの映画本来のクールな質感の画像が溶け合って、曰く言い難い世界を作り出しているよう>>続きを読む

エレファント(2003年製作の映画)

4.2

数多いガス・ヴァン・サントの映画を全て観てきたわけではないので憶測になるが、彼の映画は(この作品のようにひとりひとりを長回しで淡々と撮るという工夫が為されていても)そのキャラクターたちの「人間性」「個>>続きを読む

追憶の森(2015年製作の映画)

3.4

マシュー・マコノヒーと渡辺謙氏の演技が良いのは(特にマシューの頑張りは)大いに評価したい。また、樹海の木々の葉の青さを美しく捉えたその映像美も買いたい。だが、それ以上のものとなると……そのあたりで悩ま>>続きを読む

マルホランド・ドライブ(2001年製作の映画)

4.3

三度目くらいの再鑑賞になる。『ロスト・ハイウェイ』や『インランド・エンパイア』と比べるとさほど点が高くならなかったのはこちらが期待し過ぎたせいか。先に挙げたふたつの映画は主観の歪みを映像に依って見事に>>続きを読む

アンチクライスト(2009年製作の映画)

4.3

アンドレイ・タルコフスキーに捧げられているこの映画は確かにタルコフスキーを思わせる作風が似ているように感じられる(あとは、時折不穏な音と映像の合体で魅せるあたりデヴィッド・リンチをも想起した)。冒頭の>>続きを読む

ぐるりのこと。(2008年製作の映画)

4.6

橋口亮輔作品はまだまだ観ていないものが多いのでなんとも言い難いが、時流を敏感に捉えながら骨太のヒューマン・ドラマで魅せて行くあたり、見事だと思う。逆に言えばその時流を捉える視点はややもすると表層的な「>>続きを読む

ハッピーアワー(2015年製作の映画)

4.9

五時間掛けて描かれるのはこれと言ったダイナミックなドラマではなく、四人の女性たちのそれぞれの人生を彩るミクロな出来事と彼女たちが交錯することに依って生まれるこれもまたミクロなドラマの数々。四人の女性た>>続きを読む

インランド・エンパイア(2006年製作の映画)

4.6

前作『マルホランド・ドライブ』でこれでもかと濃厚に描いた「女性たち」の持つセクシー/エロティックな側面がここでは更にどぎつく描かれている。あと注目すべきは登場人物とカメラの距離感だ。あまりにも接写し過>>続きを読む

ロスト・ハイウェイ(1997年製作の映画)

4.5

評価が分かれる一作。私は久々に鑑賞し直したのだけれど、「思わせぶり」なプロット「だけ」に注目していてはこの映画は楽しめまい。私自身スジに拘って映画を観てしまう人間なのでこの映画も単に「思わせぶり」なハ>>続きを読む

告白(2010年製作の映画)

4.3

悩みに悩んだ挙句この点数となった。アラはないではない。肝腎の殺人場面やその他もっと感情を煽り立てる場面が多用されるスローモーションや映像の質感に寄り掛かってしまっているため、こちらに表層的な刺激(眼の>>続きを読む

悪人(2010年製作の映画)

4.6

これは面白い。群像劇なので発達障害者の自分は多分顔と名前が一致しないだろうな、もしくはまたこの作品もネタの仕込み段階が長ったらしいんだろうな……と思っていたのだけれど、それぞれのキャラがきちんと立って>>続きを読む

ルーム(2015年製作の映画)

4.1

極限状態の脱出、つまり閉じ込められている「ルーム」から外に出るということは恐らくこの世界に「生まれ落ちる」という出来事を暗示しているのではないか……と思ってしまった。その意味では有り触れたスジの整理に>>続きを読む

ブリッジ(2006年製作の映画)

3.8

ゴールデン・ゲート・ブリッジから飛び降り自殺を図った人々の友人や遺族と、たったひとりだけ生還した人間が語る体験談に依って構成されたドキュメンタリー映画。自殺を幾度となく考えた身としては身に沁みるところ>>続きを読む