oさんの映画レビュー・感想・評価

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わたしたちの家(2017年製作の映画)

3.6

「この家から誰もいなくなったら良いな
この家から誰もいなくなったら嫌だな」
誰もいなくなって暮らしの記憶が満ちた家だけが残ることを空想する少女と、記憶を失って世界から1人だけ取り残されたような女の話。
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ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)

3.1

イタリアを旅するロシアの詩人が18世紀に同じ場所を訪れた同郷の音楽家の足跡をたどる話。

「一滴に一滴を加えても一滴だ」
「最初より大きな一滴になる」

水辺のシーンが多くて陸地もその続きであるかのよ
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カドリーユ(1937年製作の映画)

3.4

俳優と女優、編集長と記者の四角関係の話。

理屈っぽいセリフが多くて深刻なシーンもあるけど途切れることのない軽快な会話のおかげで明るくリズミカルな印象。
書かれたものが書いた本人の意図を超えて働くとい
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ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争(2023年製作の映画)

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存在しない映画『奇妙な戦争』の予告編。
スペイン内戦から現在のロシアやイスラエルの戦争まで。
一つの画面に多いときは4,5個ほどの絵画や映像やテクストがモンタージュされて過去のどの作品にも劣らず複雑。
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すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

3.2

ある日の多摩ニュータウン、3人の女性が交差する話。
引っ越した友人には会えず自分の昨日の夕食さえ思い出せないけど、知らない誰かのダンスを真似て踊り4500年前の人々について想像する。記憶は花火のように
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かげを拾う(2021年製作の映画)

3.1

美術作家青野文昭とその妻を撮ったドキュメンタリー。

展覧会の関連企画として上映された映像が元になっているせいか少し分かりにくい。
白紙から芸術作品を制作するのではなく生活の痕跡の残る廃棄物を拾って独
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ぼくの好きな先生(2002年製作の映画)

3.1

フランスのある地方の小学校で年齢の離れた生徒たちを1人で受け持つ教師を撮ったドキュメンタリー。穏やかで理性的。

動物、動物たち(1994年製作の映画)

3.9

パリの国立自然史博物館の改修工事のドキュメンタリー。
人間、動物たち。
人間は博物館のコンセプトを語ることもなく、展示する動物標本の間隔やケース内の埃の対策など機械的な議論ばかり。途中、動物の標本のシ
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市子(2023年製作の映画)

3.2

プロポーズを受けた翌日に失踪した女の話。

若葉竜也の視線と表情がとても良かった。

映画 ○月○日、区長になる女。(2024年製作の映画)

3.1

ベルギーでNGO職員をしていた女性が区政に問題意識を持つ住民たちから擁立されて投票の2ヶ月前に帰国して選挙戦を戦う話。

普通の住民の日常生活から生まれた要求を政治に繋げること。
住民に周知せずに住宅
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

3.6

職場の同僚である男女がそれぞれの持病をきっかけに助け合う関係になる話。

2人だけでなく他のキャラクターも過去の傷や弱さゆえの想像力があって優しい。

症状として現れる攻撃性が周囲の他人から許される限
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エロス+虐殺(1970年製作の映画)

3.8

大杉栄と伊藤野枝、1969年当時の男女が並行して描かれる。
長尺なのに俳優の顔も構図も演出もずっと異次元に振り切っている。

甘粕事件ではなく日蔭茶屋事件のほうが自分の最期にふさわしいという意味のこと
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風よ あらしよ 劇場版(2023年製作の映画)

2.7

伊藤野枝の生涯の話。

俳優も脚本も衣装やセットも悪くないけど『エロス+虐殺』と続けて観ると、映画というより単なる再現ドラマのような印象。

吉高由里子の青鞜社講演会の演説がよかった。
伊藤野枝から内
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.6

自ら命を絶ったベラの奇妙な蘇生と成長の話。

元夫への対処はベルのそれまでの考え方と矛盾してシニカル。
グロテスクと紙一重の美しさ。空が怖い。
リスボンのダンスシーンが特に良かった。

さらば、わが愛/覇王別姫 4K(1993年製作の映画)

3.6

京劇役者の養成所で稽古を受けた男役と女役の2人の少年の話。

親にも実子や拾い子にも恵まれなかったけど別の形で継承される京劇の伝統。
日中戦争や文革の状況のなかで運命に抵抗しながら最終的には運命に忠実
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乳房よ永遠なれ(1955年製作の映画)

3.4

若い歌人の不幸な結婚生活と病、子供達、いくつかの恋愛の話。

最期が近いことを知ってから様々な拘束から自由になった印象はあるけど、手術後に出会った記者との関係がよく分からなかった。もう一度観たい。
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VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

2.8

高齢のため自立した生活が困難になりつつある夫妻とその別居の中年息子の話。

分割画面。
日本にもある状況。それぞれがそれぞれの問題を抱えながら話し合い支え合い終わりに向かっていく。

3-4x10月(1990年製作の映画)

3.8

草野球チームと暴力団の抗争の話。

草野球パートもガダルカナル・タカパートも沖縄パートもそれぞれ面白い。
先を考えながらの妥協をすることなく破滅を選ぶ。

女性は添え物か一方的な犠牲者としてしか描かれ
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拳銃魔(1949年製作の映画)

3.7

銃に異常な愛着を持つ男が女と出会って逃避行する話。

幼い頃に生物を撃ったトラウマ、山猫を撃つように唆す友人達、女との射撃勝負、泥と霧のラストシーンなど、とても良い。
ルールから自由な犯罪者なのに暴力
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奇跡(1954年製作の映画)

3.7

宗派の違いのために仲違いする2つの家族の話。

自分を救世主と称して異常者として扱われ荒地のような丘をさまようボーエン家の次男ヨハネス。
三男アナスの結婚に唯一理解を示して、みずからの犠牲となった顔を
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吸血鬼(1932年製作の映画)

3.3

吸血鬼のいる村を訪れた青年の話。

影の使い方が面白い。
生者でも死者でもない存在であり吸血鬼そのもののような影。実体から離れて自由に動き回ることさえあり次第に存在感を増して僅かに残る光は小さなロウソ
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ショーイング・アップ(2023年製作の映画)

3.2

陶芸家リジーの制作と生活の話。
鳩は翼を骨折してリジーの作品は窯で焼かれすぎて焦げが付いてしまい父や兄の生活には不安要素ばかり。限りなく不完全だけど壊れずに進む世界。

夜ごとの夢(1933年製作の映画)

3.2

夜の仕事をしながらシングルマザーとして子どもを育てる女の話。

栗島すみ子の幸薄そうな表情が良い。
小津安二郎『東京の女』と同年公開で、内容も同じく恐慌後の不況のなかで家族のために自分を犠牲にして働く
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あるじ(1925年製作の映画)

3.5

暴君のような夫とその妻や子ども達の話。

どの場面も画面が息が詰まるほど完璧で強烈だけど、絶対に屈しない頑固な乳母、長女が父に手紙を渡す時に使う鳥の形の可愛いおもちゃなどのコミカルな設定もあって楽しい
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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

3.5

⻄部開拓時代のオレゴン、他の男達のような暴力性も富も持たない2人が出会い協力して成功を求める話。
『ウェンディ&ルーシー』と同じように、時に社会的に罪とされる行為を選択するけど単に利己的なのではなく自
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十字路(1928年製作の映画)

3.6

87分。
遊郭の女にのめり込む弟、心配する姉の話。

遊郭の狂騒。うなだれる姉。
十手の男の邪悪な動物のような笑顔。

演出について、弁士の片岡一郎さんが「『十字路』は『狂った一頁』よりも狂っていて洗
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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

3.0

三島と学生達との討論のドキュメンタリー。

出演のどなたかが回顧して言っていたように三島の応対がとても誠実。虚勢を張った学生の空回りした言葉は老人になっても変わっていなかった。

階級関係 -カフカ「アメリカ」より-(1984年製作の映画)

3.5

故郷を追われた青年がアメリカ各地を転々とする話。
ホテルボーイをしていた時の上司などを例外として抑揚の少ない発話、ほとんど無表情の顔。ほぼ動かないカメラ。ルノワールや濱口竜介と違って、ニュアンスを抜い
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(2023年製作の映画)

3.0

障がい者施設で働き始める女性(宮沢りえ)の話。
相模原障害者施設殺傷事件がモデル。

ゆけゆけ二度目の処女(1969年製作の映画)

3.5

乱暴された少女と孤独な少年がマンションの屋上で過ごす話。

顔も歌もセリフも画面も新鮮。
古さを感じない。
結末近く、異様な格好ではしゃぐ2人がとても良い。

舟を編む(2013年製作の映画)

2.1

辞書編集部で働く青年の話。

俳優陣が豪華。
同じく辞書作りを題材にした『マルモイ』や『博士と狂人』のような時代状況を絡めた展開はない。辞書作りのディテールや人物にも新鮮さを感じなかった。

かもめ食堂(2005年製作の映画)

2.3

フィンランドで食堂を営む日本人女性の話。

トナカイおにぎりのネタや小林聡美の空気感はおもしろい。
作品全体に漂うほのぼのした雰囲気は独特だけど、個人的には好みではなかった。

卍 まんじ(1964年製作の映画)

3.5

妖艶な光子(若尾文子)を中心に、光子の恋人(川津祐介)、光子に溺れる園子(岸田今日子)、いつのまにか光子に魅惑される園子の夫(船越英二)の4者の関係の話。

若尾文子の魅力に溺れる岸田今日子の表情が圧
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八日目の蝉(2011年製作の映画)

3.7

不倫相手の娘を誘拐した女と、その娘の成長後の話。

小池栄子「私はきっと一生だれかの奥さんにはなれない。でもさ、母親にならなれるんじゃないかな、あんたと一緒に。ダメ母でも2人いればマシだよ」
「奥さん
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東京の女(1933年製作の映画)

3.4

弟の学費を稼ぐことを目的に後ろ暗い仕事をする女の話。

弟への愛情のために自分を犠牲にする女。

『大学は出たけれど』と同じく家族のための自己犠牲。
『大学は出たけれど』の男よりはるかに重い自己犠牲な
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大学は出たけれど(1929年製作の映画)

3.2

不況の中、大学出であるという自尊心のために就職できずにいる男の話。

母を安心させたいという孝行心のために自尊心を犠牲にする男。

ロイドのSpeedy

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