イトウモさんの映画レビュー・感想・評価 - 50ページ目

イトウモ

イトウモ

映画(1914)
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15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)

2.1

本当の決定的瞬間はオランドの演説。人為的に作られた映画のタイムラインが現実のニュース映像に器用に乗り入れる。その点、列車というモチーフが巧い。偶然の事件をそれでもこうでしかありえなかった運命に書き直す>>続きを読む

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017年製作の映画)

2.5

外科医は人間を物として扱わなければならないプロとして登場する。父親を失った少年が仕掛ける呪術まがいの復讐に、診察、レントゲン、MRI、PETと効果を発揮しない検査が行われる。これは人を物理や化学の現象>>続きを読む

ハッピーエンド(2017年製作の映画)

2.8

ものすごく退屈だが、こういう退屈な映画が堂々と作られる豊かさみたいなものを僕はある程度支持したい。ハネケの真髄はそれではないか。人生にいつも意味はなくても良い

マルセイユ(2004年製作の映画)

3.8

初めて見たし、わけがわからなかったけど、とてもとても良かった

アナイアレイション -全滅領域-(2017年製作の映画)

2.9

日本人が福島を題材にこういう映画をNetflixのコンテンツとして撮ることもできたのでは

ラブレス(2017年製作の映画)

4.4

運動原理主義が描く親指とスクロールの映画。イエの復権についての批評的解釈。消費社会をニヒルに切り取る鋭さはハネケよりもバーホーベンよりも上手

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書(2017年製作の映画)

3.9

室内をカメラが絶えず旋回し、VR向きの長回しを濫用するので構成がぶっ壊れそうになるが、ほとんど壊れない。ヒッチコック『ロープ』、ウェルズ『黒い罠』の映画史的な遺産が活き活きと運用され、実話は記号化され>>続きを読む

ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた(2017年製作の映画)

2.6

ボストン・マラソンに参加した元カノの注意を引こうとした男は会場でテロに巻き込まれ、両足を失う。災い転じて復縁するも、対テロのヒーローとして祭り上げられることに嫌気がさし、親身に介護してくれる彼女に、ど>>続きを読む

母という名の女(2017年製作の映画)

3.3

ハネケ以来の嫌系映画で欲動に忠実なミドルエイジを描く。10代で妊娠した娘から母親は大人の権力と経済力でなにもかも奪い去る。冷たい固定カメラは人間を追わず、彼らの動作が一切テマティックな記号を残さないの>>続きを読む

大和(カリフォルニア)(2016年製作の映画)

2.0

タイトルに掲げた土地の特異性とヒップホップの使い方に消化不良を感じたが、ただ女の子二人が仲良くなる朴訥とした物語はぐっとくる仕上り。酔っ払った遠藤新菜がかわいい。レイの前では歌えなかったさくらが、林の>>続きを読む

ラッカは静かに虐殺されている(2017年製作の映画)

4.0

映画よりもシューティングゲームなISのプロモが能動的ならRBSSの隠し撮りはまさにヴェルトフ的な単なる眼、「静かに殺される」受け身の映像。携帯カメラから報道から自撮りから、画面内画面、方法論としてもこ>>続きを読む

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)

3.5

覗き映画。少年は自動車の止まる音に気づき到着したばかりの新しい居候を窓から見下ろす。開け放した窓と扉、楽譜を記す「音」である少年はフレームに外在し、彼が画面の外から聞こえる音を合図に隣人の様子を伺うこ>>続きを読む

ザ・スクエア 思いやりの聖域(2017年製作の映画)

2.3

これは美術の皮を被ったナショナリティに関する映画。表現の自由が保証する「なんでも」はスローガンでしかなく、あらゆる作家のあらゆる作品が展示される美術館は存在しないように、あらゆる民を救済する公共事業も>>続きを読む

グッド・タイム(2017年製作の映画)

4.0

ボスの息子の仇を討って刑務所に入ったチンピラが出所後に家族を求めて旅へ。ゴーカート、車、バイク、舟そして列車。執拗なまでの乗り物リレーに、ルベツキもびっくりのワン集落・ワンカット。飛び道具っぽいが列車>>続きを読む

凱里ブルース(2015年製作の映画)

3.7

ボスの息子の仇を討って刑務所に入ったチンピラが出所後に家族を求めて旅へ。ゴーカート、車、バイク、舟そして列車。執拗なまでの乗り物リレーに、ルベツキもびっくりのワン集落・ワンカット。飛び道具っぽいが列車>>続きを読む

リズと青い鳥(2018年製作の映画)

3.9

「インポ野郎」「どこで覚えたんだそんなこと」「ここだよ」という幽霊に死後の生活の時間の流れを感じさせるしょうもないセリフと最後の「なんで今言ったの」は泣きそうになった

天国はまだ遠い(2015年製作の映画)

4.2

空間の中の造形であり時間の中の表情でもある顔。カウンターに3つ並んでばらばらに展開する画面の情報量に驚く。愛想の良いコミカルさと乾いた悲哀が共存する画面に締め付けられる。題材のわりにセリフの後の余韻が>>続きを読む

犬ヶ島(2018年製作の映画)

3.7

差別はいけない、子供たちの革命という素朴な使い古された物語に回収される結論と、グロテスクで執拗なまでの情報の透明化、キレッキレのカメラワークが乖離し空回り。こだわりは強いが主張は凡庸で退屈。グランドブ>>続きを読む

愛と殺意(1950年製作の映画)

3.3

金持ちの旦那と別れたい美女が過去に一緒に殺人をした元カレとヨリを戻すぐずぐずの不倫劇。だらだらした情事、車を降りた場所の開けた広場、石段の河川敷が後の作風を彷彿させるアントニオーニ処女作。寝室、車内、>>続きを読む

万引き家族(2018年製作の映画)

2.8

児童虐待、遺体遺棄、年金の不正受給、パチンコ、風俗…生活臭のある社会問題を細やかな生活風景、季節感のあるエピソードを配した脚本にこめるバランス感覚はさすがだが、最後の擬似父子エピソード、松岡茉優のアル>>続きを読む

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)

4.8

2時間耐久!絶対に笑ってはいけないオートクチュール。PTAのコメディセンスは達人の域に達しており、得意のカメラワークでグリーンウッドのふざけたロマンチック歌謡と丁々発止の掛け合いを見せ、ダニエル・デイ>>続きを読む

レディ・バード(2017年製作の映画)

4.2

現代の、女性の、「大人は判ってくれない」

とにかくバーバルな構成で、絶えず現状について何か巧いことを言いたいシアーシャの演技が締め付けられるほど愛しい。口下手な母親が彼女にかける"I want yo
>>続きを読む

椿なきシニョーラ(1953年製作の映画)

3.9

終盤にかけて構図がバッチリ決まった野外群衆シーンが続くが、これは駄作では。というよりも、アントニオーニが艶笑喜劇ばかり当てられる大根の美人女優という俗っぽい題で、テンポのたるんだコメディをやったという>>続きを読む

ルイ14世の死(2016年製作の映画)

3.8

久しぶりに映画館で眠ってしまったがそれがまた心地よかった。上映中、客席の鑑賞者だけでなくゆっくりと死に向かう被写体のルイ14世も動かない。拘束された身体同士の睨めっこ。唇だけがワインを啜り、ビスケット>>続きを読む

それから(2017年製作の映画)

3.5

ちょっと間抜けなカメラのズームが板についてきて、相変わらず他人との分かり合えなさを主題にミニマルな恋愛劇を描く。快活でおバカでちょっと暗いホン・サンスは韓国映画の闇だ

夜の浜辺でひとり(2016年製作の映画)

4.0

ホン・サンス版『マルホランド・ドライブ』或いは『ことの次第』。本作でヒロインがうたた寝する浜辺はまるで映画館。私たちはそこでしばし、現実を逃避するのではない。暗闇は私たちを別の場所に連れ去り、以前とは>>続きを読む

タイニー・ファニチャー(2010年製作の映画)

3.3

リーマンショックの裏で大学を卒業し、恋人にフラれ、定職にも就かず、22歳の女は実家に逃げこみ「アーティスト」と称しユーチューバーになる。ギャラリーに展示されたブラウン管に映る実物より小さな彼女は部屋の>>続きを読む

ハングリー・ハーツ(2014年製作の映画)

2.0

完全菜食主義の母親のせいで胎児の頃から発育不全になった子どもを、生まれた後は養育方針を巡って父母が奪い合う。
テーマ、俳優以外に特に見るものなし

ネオン・デーモン(2016年製作の映画)

2.1

写真家の彼がモデルたちに服を脱げといい、モデルたちは衣服としての粘液を皮膚に塗りたくり、整形によって身体を改変する。それは剥ごうとする男、剥がされまいとする女たちの皮膚の上の闘争である。


本作が女
>>続きを読む

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)

4.4

大変素晴らしい。佐藤泰志原作の映画の中では一番好き。「楽しさ」を、それが朽ちていくところまでこんなにみずみずしく、みすぼらしくせず、誠実に描けるなんて。パーティーの去り際についての最適解の映画

未来のミライ(2018年製作の映画)

1.7

裕福で保守的で良き消費者でもある若い夫婦に日本の未来を担ってほしいという願望があまりに露骨に描かれ、『君の名は』以降より顕著に日本のある種のアニメーションはすごく保守的な思想の中に自分の居場所を見つけ>>続きを読む

正しい日 間違えた日(2015年製作の映画)

3.8

同じ事実たちでも正しく並べれば真実に到達し、間違えて並べれば到達に失敗する。正しい並べ方=語りを知っているのは彼が映画監督だから。真実への近道を知った女は「監督の映画は全部見ます」と応える。監督は真実>>続きを読む

暗殺のオペラ(1970年製作の映画)

4.1

革命家だった父親を殺した犯人探しのクエストは美学的にはロッセリーニとアンゲロプロスに位置。古典映画ではただ一つの正しい物語にだけ展開する記号だった画面がネオレアリズモ的時間イメージではいくつもの可能世>>続きを読む

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)

2.0

メタ映画というのは結局、みんなが映画という「あからさまな嘘」を娯楽として、夢として信じ続けるための自殺行為なのだと思う。目の前の現実に条件反射的に熱狂する観客、役者、ゾンビ。労働と映画