朱音さんの映画レビュー・感想・評価

朱音

朱音

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

4.4

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虹彩鮮やかな光と、けたたましく、時に親密にフィットする音楽のまにまに伝わってくる、彼らの息遣いと体温、ゼロ距離のリアルタイム性が感じられる青春ドラマの新たな可能性。

映画は「時間の芸術」とも呼ばれ、
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バルド、偽りの記録と一握りの真実(2022年製作の映画)

4.1

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前々作『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)で、主人公リーガンの抱える苦悩や逆境を、そのまま自身の実人生と重ね合わせるメソッド・ディレクティングによって表現し、映画による>>続きを読む

佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)

4.7

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「友達って何だろう?」
ということを考えた。何となくいつもつるんでいるから友達?困っているときに手を差し伸べてくれる存在?時間を持て余した時の暇つぶし相手?同じ感情を共有した仲間?

そして自分の友達
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呪詛(2022年製作の映画)

3.9

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東西様々なホラー演出の手法を巧みにクロスオーバーさせ、呪いの深淵から最深部へと観るものを誘う、そして観客をも巻き込む掟破りの圧巻のトリックによって、"最悪"の映画体験を齎す。
"ジャンル映画"で出来る
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事故物件 恐い間取り(2020年製作の映画)

1.2

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『女優霊』『リング』で日本中を震撼させたJホラーの旗手、中田秀夫監督の凋落ぶりが凄まじい。

"小中理論"を実践・アップデートする気概はもうないのだろうか。どこまでもチープで、非実在性感のない、直接的
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レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)

4.4

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雄大にして苛烈を極める大自然の中、獰猛な生命のやり取りが繰り広げられる、圧巻の映画体験。


原作は作家マイケル・パンクが2002年に発表したウェスタン伝記小説『蘇った亡霊:ある復讐の物語』(The
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パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

4.2

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西部劇の小説で知られるトーマス・サヴェージが1967年に執筆した同名原作を映画化した、1920年代のモンタナ州が舞台の本作、時代はまさに"ローリング・トゥエンティーズ"の真っ盛り。

ローリング・トゥ
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2012(2009年製作の映画)

3.0

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4K Ultra HDに惹かれて観てしまった。
『インデペンデンス・デイ』や『デイ・アフター・トゥモロー』など、超ビッグ・バジェットのディザスタームービーを作り続けてきたローランド・エメリッヒ監督の総
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インターステラー(2014年製作の映画)

4.8

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地球の終わりは人類の終わりではない。
本作、『インターステラー』は世界で最も有名な理論物理学者の1人で、一般相対性理論の偉大な専門家、キップ・ソーンの監修という堅固な基礎の上に成り立っている。

「彼
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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(2014年製作の映画)

4.5

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アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督流『8 1/2』あるいは『気狂いピエロ』、つまりは映画による現実への克服のアプローチだ。

優れた映画監督という生き物はある一定の評価や、商業的成功を収めると
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マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

3.6

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原作は平庫ワカの同名作、2019年にオンライン・コミックCOMIC BRIDGEにて連載された全4話の漫画だ。連載が始まるやいなやSNSなどで話題になり、輝け!ブロスコミックアワード2020・大賞や、>>続きを読む

ほの蒼き瞳(2022年製作の映画)

3.9

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ルイス・ベイヤードが2006年に発表した原作小説、『陸軍士官学校の死』を映画化した本作、原題は『The Pale Blue Eye』。文学的なタイトルが映画の雰囲気にとても良く合っている。
エドガー賞
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ホワイト・ノイズ(2022年製作の映画)

4.1

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本作はアメリカのポストモダンを牽引する小説家ドン・デリーロが1985年に発表した原作小説がもとになっている。

デリーロ作品の特徴は、大きな出来事に揺れる大衆や社会の不安心理を独自の切り口で描いてゆく
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LAMB/ラム(2021年製作の映画)

4.0

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視点をひっくり返して観ればなるほど、人間に我が子を奪われたばかりか、(愛しているかどうかは別として)妻を無惨に殺され、我が子は人間同然として、人畜の如くに育てられている。その怒りと憎しみは正当なもので>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.4

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その村は、まるで現世に現れた"ヘヴン"のような場所だった。

村人が着用する、それぞれに異なる刺繍やデザインが施された白い民族衣装風の服。ナイーヴアートのように素朴な筆致の壁画。村を埋め尽くす花々。記
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ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)

4.7

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本物の恐怖を与える類まれなる映画体験。

2019年に公開されたA24配給、アリ・アスター監督の『ミッドサマー』は、ジャンル映画としては異例の大ヒットを遂げ、ロングラン公開され、映画ファンのみならず、
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ファーザー(2020年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

映画だからこそ表現できる怖さと不安。

本作、『ファーザー』は老いによる喪失感と親子愛を、"認知症の父"という画期的な視点によって描き出した傑作だ。
原作は、本作で長編デビューを飾ったフロリアン・ゼレ
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整形水(2020年製作の映画)

3.0

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韓国で発展し世界に広がった漫画のプラットフォーム、Webtoonは多くの韓国ドラマや映画の原作となり、韓国コンテンツの世界化に大きく貢献している。
『奇々怪々』は、グローバルでの累計閲覧数が31億回以
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返校 言葉が消えた日(2019年製作の映画)

3.4

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『返校』は、台湾のインディーズ・デベロッパであるRed Candle Gamesが2017年に発表したホラー・アドベンチャーゲームだ。呪われた学校に閉じ込められた少年・ウェイと少女・ファンが、徘徊する>>続きを読む

異端の鳥(2019年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

ポーランドの作家イェジー・コシンスキによる1965年の著『ペインティッド・バード』は、作者自身がホロコーストの生き残りであり、迫害や暴力を生々しく自叙伝的に書き記した内容が、当時のヨーロッパ諸国で問題>>続きを読む

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)

4.4

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物語の舞台設定は1970~1971年のメキシコシティのコロニア・ローマ。高級住宅地で暮らす医師の一家の日常が描かれ、住み込みで働いている先住民の若い家政婦クレオが主人公となる。

彼女は監督のアルフォ
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コリーニ事件(2019年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

本作の原作、『コリーニ事件』を執筆したのはドイツを代表する小説家フェルディナント・フォン・シーラッハ。
ボンの大学で学び、ケルンでの研修を経て1994年よりベルリンで刑事事件弁護士として活動。元東ドイ
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灼熱の魂(2010年製作の映画)

4.7

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子らによる親の再発見、憎しみに彩られた悲劇の連鎖を断つ物語。


レバノン出身の劇作家ワジディ・ムアワッドによる原作戯曲『焼け焦げるたましい incedcies』にインスパイアされて作られたのが本作、
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パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)

4.4

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本作、『パンズ・ラビリンス』の世界観は1891年のエドウィン・シドニー・ハートランド著『おとぎ話の科学 童話についての調査』から着想を得ているらしい。
分類されパターン化された童話のファクターを再構成
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容疑者、ホアキン・フェニックス(2010年製作の映画)

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ホアキン・フェニックスが自身の私財数億円を投じ、2年間に渡るすべての俳優業を棒に振ってまで世に問いたかったものとは何であろうか。

このような大々的なスケールで身を張ったイタズラを仕掛けるのは個人的に
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静かなる叫び(2009年製作の映画)

4.2

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1989年12月6日に起きた、モントリオール理工科大学内での大量虐殺事件。反フェミズムを掲げる男の手によって犠牲になった14人の被害者はいずれも女性で、その痛ましい惨劇と傷痕を、実話をもとに架空の人物>>続きを読む

MOTHER マザー(2020年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

2014年に実際に起きた“少年による祖父母殺害事件”に着想を得た本作は、母親の歪んだ愛情しか知らずに育った少年が、その母親の一言がきっかけで凶行に走るという痛ましい事件を描き、救いの手が届かない日本社>>続きを読む

ファースト・マン(2018年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

これは稀有な映画体験だ。

現代の地球に生きていれば誰もが、ニール・アームストロング船長が月に最初の一歩を踏み下ろした時に言った名言「これは小さな一歩だが、人類にとって大きな一歩である」を聞いたことが
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暗数殺人(2018年製作の映画)

3.8

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この映画の邦題となった『暗数殺人』

暗数(あんすう、英:Dark Number)とは、実際の数値と統計結果との誤差で、なんらかの原因により統計に現れなかった数字の事で、主に犯罪統計において、警察など
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白夜行-白い闇の中を歩く-(2009年製作の映画)

2.0

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東野圭吾氏の有名な著作だが、この『白夜行』は一本の映画にするにはあまりに不向きだ。
760ページという長編に加え、14年の歳月を往き来する複雑な構成、"犯罪"で結ばれている男女主人公の衝撃的な関係と結
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ジョーカー(2019年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

すべてジョークなんだ。笑えるだろ。


バットマンの宿敵が誕生するまでの経緯を、独自のストーリーで描いた本作、『JOKER』は何故こんなにも人の心を鷲掴みにし、ざわつかせ、娯楽作品の枠をはみ出して社会
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ハイテンション(2003年製作の映画)

2.8

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アレクサンドル・バスティロ、ジュリアン・モーリー監督の『座敷女』(2007年)、パスカル・ロジェ監督の『マーターズ』(2008年)、サヴィエ・ジャン監督の『フロンティア』(2008年)、そして本作、ア>>続きを読む

Diner ダイナー(2019年製作の映画)

2.4

このレビューはネタバレを含みます

『さくらん』や『ヘルタースケルター』ではもう少し地に足がついていたな、という印象だが、平山夢明の著作『ダイナー』という独特の世界観と、グロテスクな意匠と、排他的な美学が詰まった荒唐無稽な原作を手掛ける>>続きを読む

ダークナイト ライジング(2012年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

『ダークナイト』トリロジーを締め括る壮大なスケールの最終章。

『ビギンズ』はバットマンの成り立ちと、自身の"正義"とはなにか、を確立する物語であった。
そして前作『ダークナイト』はそうしたバットマン
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ダークナイト(2008年製作の映画)

4.9

このレビューはネタバレを含みます

本作『ダークナイト』の以前と以後、ヒーロー映画の歴史が変わったのだ。

『ダークナイト』は公開から14年経った現在も、ヒーロー映画のベンチマークであり続けている。本作はヒーロー映画全体に大きな影響を及
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ルーム(2015年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

親にとって、子供は守るべき存在であるが、同時にまた、親にとっての子供は救済でもある。本作はそんな普遍的なテーマを、非常にトリッキーな物語設定と、前後編の二段構成で描いた作品である。


ふたつの再生の
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