はるかわさんの映画レビュー・感想・評価

はるかわ

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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

5.0

洗車も給湯室もニワトリさえも美しい。
きっとこの映画の作り手は、自分が切り取った映像よりも、切り取られる前の世界の方を愛している、だから、すべてのショットがこんなにも優しく力強いのだと思う。

「自分
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Here(2023年製作の映画)

2.8

さすがに断片的すぎると思った。この2人がそれぞれ何を抱えて生きているのか何となくしかつかめず。作り手が自分の作り込んだ映像に耽溺し、物語を紡ぐことを怠っているとすら感じ、やや冷めてしまった。
たしかに
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

3.3

個々のショットや言葉ではなく、1日1日の「反復」が生を肯定する。それは、数ある表現ジャンルの中でも、映画だからこそ(映画館だからこそ)可能な、特別な「肯定」の仕方なんだとは思う。

ただ、トイレ掃除と
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となりのトトロ(1988年製作の映画)

5.0

「君たちはどう生きるか」で宮崎駿にお別れを言われたような寂しさが抜けず、感傷的な気分で見返してみた。

子どもたちの心の隙間をワクワクで満たしてくれる、不思議な森の主トトロ。宮崎駿の生み出すひとつひと
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

3.3

テーマや物語は二の次で、とにかく描きたい世界観を全部詰め込んでやった、という印象。「千と千尋」をはじめ過去作品の世界を繋ぎ合わせた「宮崎駿 総集編」みたいな作品に感じられ、「これで最後です、今まであり>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

いくら視点を変えても学校の不誠実な対応が不愉快なのは変わらず。いじめも虐待も把握できない無能さも気になってしまい、トロンボーンのシーンも、子どもにも教師にも満足に向き合えない人に「この作品のテーマです>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.8

恋も仕事も全てがこれから始まる11歳の娘と、挫折とともにすでに多くを通り過ぎてきてしまった自分。父と娘の人生のずれが、いつか訪れる死を予感させて悲しい。

ブラウン管テレビの湾曲した画面に父娘を反射さ
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アリアナ・グランデ excuse me, i love you(2020年製作の映画)

2.7

この作品の特徴は取材者が撮影中に声をかけないこと。アリアナがスタッフを乗せた車を自分で運転しだしたら、普通それについて訊ねたくなる。「なぜ他の人にやらせないのか」「移動中に休みたいと思わないのか」
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THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

3.8

巧みな省略の数々にそうきたか!の連続。
宮城視点にしたとき、その物語から1番遠のくのは流川、次が桜木。そのため、終盤、試合の焦点が三井•赤木から流川•桜木に移るにつれ、コート上のドラマは宮城の物語には
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.7

ボクシングはこれ以上なく密なコミュニケーション。至近距離で向き合って拳を重ね合う2人は、言葉を軽々と超えて交わる。ケイコにとってもこの映画にとっても、それがボクシングでなければならない感じがひしひしと>>続きを読む

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

3.7

過度に相手に期待して終始傷つけてばかりのユリヤの態度に薄っすら嫌な気持ちだったし、章立てで進む演出が特に良いとも思わなかったけど(どうしても全12章のうちの今何章かとカウントしてしまい没入をそがれる)>>続きを読む

街の上で(2019年製作の映画)

3.7

若葉竜也のチャーミングな挙動を堪能する映画。

古着屋、古本屋、バー。それぞれに職場を持ちながら全く労働感がない世界。日々あくせく労働している自分には、この映画で描かれる「下北沢」は理想郷みたいでひた
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牛久(2021年製作の映画)

3.5

入館職員による「制圧」。
10人近い男たちが、半裸の男を地面に押さえつけ怒鳴り声をあげて恫喝する。(しかもその映像は入管側がのちに自分たちの合法性を示すために撮ったもの)

憤るより悲しくなった。この
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誰かの花(2021年製作の映画)

4.0

序盤の焼肉屋で老いた母に
「俺が最高の焼き加減で焼いてやるから」
と見得を切る場面で、孝秋とこの家族のことが好きになってしまったので、最後までハラハラしながら見た。
見ながらずっと、何かを決断したり乗
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永遠に君を愛す(2009年製作の映画)

3.5

相手よりむしろ自分自身を受け容れる話。
大事な相手を傷つけてしまうような自分自身の弱さを。

この映画はあくまで裏切りの「後」について描いてるけど、本当はもっと裏切りそれ自体を、裏切ってしまうような「
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PASSION(2008年製作の映画)

4.8

"可哀想な人だと思った、軽薄ぶって。
素直に小心者として生きればいいのに"

自分がどんな人間かなんて本当は全然わからない。何を大事に思っているのか。いま誰を求めてるのか。どんな未来を望んでいるの
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さがす(2022年製作の映画)

2.0

全編カメラワークが引き締まってて映像は好きだった。坂を駆け上がるショットとか◎
映像が良いので最後まで目は飽きないけど、内容は不快だった。別に映画みて胸糞悪いのはいいけど、胸糞悪いからにはそれでしか描
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マスカレード・ホテル(2019年製作の映画)

2.5

この人はここで疑ってください
この場面で一旦安心してください
これは心温まるせりふです
…ぜんぶ音楽で逐一説明されてる感じ。そのおかげもあって集中しなくても問題なく話についていけてありがたい。
ホテル
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ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

2.8

タイトル通り、ここ何年間かを思い出すだけの映画。思わせぶりなだけの甘い会話多すぎ。たしかに、他人の恋愛なんて、これぐらい他愛なくて恥ずかしいものなのかもしれないけど、わざわざそれを2時間スクリーンで見>>続きを読む

アナと雪の女王(2013年製作の映画)

3.7

エルサが主題歌を歌う場面、自己解放の喜びと、それが共同体からの隔絶なしには得られなかった悲しみが同時に襲って、複雑な気持ちにさせられるすごいシーン。
「王子様のキス」を裏切る展開もとてもよかった。
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

3.8

家族の中での役割に縛られ続けてきたルビーが、歌うことと出会って自らを解き放つ。ルビーが生き生きと歌う場面はどれも感動的で、その歌う姿を喜びたくても聞くことができない家族の姿は、切なくて色々考えさせられ>>続きを読む

バクマン。(2015年製作の映画)

3.4

仕事に夢中になってる人はとても魅力的だし清々しい。背表紙のエンドロールが本当に素晴らしく、素人目にもこんなところに手間かけてるというのが伝わってきて、この映画もまた多くの大人が夢中になって作ったんだろ>>続きを読む

レディー・ガガ:Five Foot Two(2017年製作の映画)

4.5

大スターの裸の姿。繊細で傷だらけで不安定、焦っていらだって満たされない姿。弱さを超越した人ではなく、常に弱さを秘めている人。だからこそ多くの人の心に訴える音楽を生み出せるのだろうし、その音楽にガガ自身>>続きを読む

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)

3.8

見上げるか見上げないかで対立するのが本当に馬鹿馬鹿しくて、その滑稽さがリアルでゾッとした(空を見るなんてその場ですぐできるのに…)
現実には自分もこの愚かな大衆の1人だいうことを胸に刻みたい。

破滅
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キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002年製作の映画)

3.8

犯罪少年の孤独と更生の物語。華麗な詐欺や逃亡よりも、それに対峙する捜査官の姿勢に胸を打たれた。いつでも少年の話し相手になり、居場所をつくり、最後は信じて待つ。少年と向き合った捜査官の年月が報われるよう>>続きを読む

9人の翻訳家 囚われたベストセラー(2019年製作の映画)

3.2

9人の中で1番好きだったのは、家族の存在を恨んでしまう作家志望の女性。「才能がないという現実に向き合えず人生を見失った」と語るシーン、本当に素晴らしかった。
だからこそ、彼女の唐突な結末には心底がっか
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ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(2019年製作の映画)

3.3

これは自殺じゃない他殺だ
犯人はこの屋敷の中にいる!

…ザ名探偵コナンな王道設定。それでも巧みな語り口で最後まで楽しかった。
ラストで連行される犯人よりも他の人たちにスポットライトが当たるのが秀逸。
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クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

2.5

テーマがよく分からず、最後まで見づらい映画だった。老人と少年が友情を育むこと自体は別に物語の推進力にはならない。その関係性のなかで、老人が何を乗り越え、少年がどう成長していくのかをもっと深めてほしかっ>>続きを読む

ジェームズ・ボンドとして(2021年製作の映画)

3.3

コスパ最高の作品。関係者を対談させて、その音声に映画本編やワイドショーなどすでにある映像をかぶせただけ。何も新撮してないのに、おもしろかった。

欲をいえば、ボンドに抜擢されたダニエル クレイグが当初
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偶然と想像(2021年製作の映画)

5.0

すごくよかった。
特に第三話は生涯ベスト級に好き。
ことばを通じて、私たちはとても深く交わることができる。そして、お互いを励まし合える。
誰かとしゃべっても別に心に空いた穴が埋まるわけじゃないけど、そ
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おおかみこどもの雨と雪(2012年製作の映画)

3.7

物語の着地が好き。人間とオオカミの両方の生き方を子どもたちにきちんと取っておこうとする母の姿に胸打たれた。

圧倒的マイノリティの雪は自分を隠して周りに懸命に同化しようとする。草平の「知ってた、誰にも
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ナイトクローラー(2014年製作の映画)

3.8

盗みで生計を立てる無職の男が、事件撮影の仕事に出会い、それまで抑圧されてきた自己実現を果たしていく。その行動がどんなに常軌を逸していようと、仕事について人一倍研究して結果でのし上がっていく姿には、善悪>>続きを読む

007/カジノ・ロワイヤル(2006年製作の映画)

3.3

007完全初心者のくせにスカイフォールから先に見てしまったせいか、カジノロワイヤルは映像もストーリーもところどころたるく感じた。拷問は名シーン。最後、Mがいろいろ説明し始めるのは急激に違和感あった。

ズートピア(2016年製作の映画)

4.5

現実社会の差別や偏見を肉食/草食動物を通して描く。天才的な発想に感服しながら見た。示されるメッセージが真っ当すぎて(多様性は尊い、自分の中の偏見を疑え)、やや道徳の教科書みたいだったけど、もし自分に子>>続きを読む

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)

1.5

突っ込みどころが非常に多いうえに、何がテーマなのか最後までわからなかった。ジャスティンが謎。個人を特定する能力を手に入れたのだ!って、あんたが1番秩序乱してるじゃん。正義ヅラしないでよこわいなあ。現実>>続きを読む

るろうに剣心 最終章 The Beginning(2021年製作の映画)

2.2

終始血まみれの映画だからこそ、セックスは命を感じるシーンとしてちゃんと描いてほしかった。戦意のない相手も含め次々殺しまくるわりにその動機がゆるく感じられ、主人公の行動をどうみればいいのか最後までわから>>続きを読む

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