任侠の遺風に殉ずる鶴田浩二や高倉健と渡世の作法を屁とも思わぬ松方弘樹。東映任侠路線最末期にふさわしい映画。
これまでと微妙に構図が逆転している。待田京介、北島三郎、安藤昇、鶴田浩二と侠客が次々と斃れていく一方で、山本麟一がむき出しの欲望を滾らせながらかつてない謀略と殺戮を繰り返す様は任侠路線の終焉と実録路線>>続きを読む
かなりの大物役者が出演しており、さらに人間関係が錯綜しているのにも関わらず、程良い時間配分で整理し見せ場を盛り上げている。この頃になると、実録路線の萌芽がみられるようになるのは気のせいか。
好色及び残虐であると共に信義に一途な、自身に正直である神話的英雄が、世に容れられず破滅する。彼は新聞記事の虚報を事実にする程偉大だったが、その偉大さ故に末期の際に自らの罪を認められなかった。
時流により変化を余儀なくされながらそれでも各々の侠気を貫いた男女の群像を過不足なく活写する。『日本侠客伝』シリーズの原型は第一作にて既に完成されている。
長門裕之の運転手の同僚を殺されて激情と悔恨に迫られつつ、宮園純子に止められながら仇を討とうとする演技が秀逸。
台詞とそれに続く場面転換でのユーモアが上手く奏功している。散乱するくず屋の古着や柳生家門前に列を成す町人、山と積まれる壺など、過剰なほどに大袈裟な描写が新鮮。
ロッキーのアポロと007のジョーズが対戦している。ダム爆破の特撮は素晴らしいが、ドイツ軍の戦車がT-34だったのは残念。
非道だが小粋な都会風の小池朝雄が、地味な(確実に童貞である)荒木一郎にあっけなく刺されて死ぬという対比の妙が面白い。巨悪ではなく小心で大組織の顔色を伺う凡庸な中小組織の親分役という河津清三郎も良い。
巨大タコ退治など『髑髏島の巨神』に踏襲されたシーンがあり啓発される。ドラマパートに有島一郎が出演しており、どうしても喜劇映画にみえてしまう。
ラストシーンの菅原文太の台詞は『人生劇場 新・飛車角』の(あの作品にも志村喬が出演していた)オマージュか。
妻が殺されそうになったのは、ジョン・ウェインが牛を盗んだからだと言えなくもない。
言わずと知れたアメリカ版Uボート映画。序盤のパーティーや軍港のシーンは西ドイツ版のオマージュか。
湖水が割れるシーンや爆破の煙から大魔神の巨影が立ち現れる場面など神々しいカットが前作よりも多いように思える。
堅物のリー・マーヴィンと軟派なバート・ランカスターのコントラストが面白い。荒涼たる砂漠にて各人の欲望が渦巻くなか愛を貫くクラウディア・カルディナーレが艶やか。
魔神の巨体と人間の小躯が違和感なく同じカットに映っている。左馬之助が巫女を斬殺するシーンもおどろおどろしくて良い。
入植者の家の奥が屋外に開け放たれておりその先にハリーケリーが立っているシーンは『捜索者』に先立つ構図であり、西部劇を象徴する画題ではないか。
コメディだと思って観ると、後半ノワールのような慄然とする不気味さを覚えるシーンが多く、起伏にとんだ一作。
冒頭で前線から帰ってきた兵士達が何事もなかったかのようにラストシーンで再び前線へ向かってゆく。
ジェンマの無双を引き立てる演出が悉く格好良い。師弟対決においてクリーフが老獪な策を弄するのに対して、臆することなく立ち向かう雄々しい背中も決闘後は哀愁ただよう背中に変貌する。
白鯨や捕鯨船の特撮が精密に仕上がっており、それが実物大に再現した19世紀の港町や船舶と違和なく連続している。船長の狂気が船中に冉冉と伝染してゆく様に畏懼する。
嵐寛寿郎が見せる殺陣の素晴らしさは言うに及ばず、燭火に照らされた琴糸路の妖しい美しさに魅せられる。
丹下左膳と奉行方の殺陣が俯瞰して撮影されており、しかも塀や堀に囲まれている為、大多数に対する孤立が際立っており、絶望と狂気が強調されていて良い。
阪妻の軽快で機敏な演技が安兵衛役に適役である。決闘の最中に熱狂する群衆は映画を観る我々に似る。