風の旅人さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

偶然と想像(2021年製作の映画)

4.0

観客がどんな人生を送ってきたかによって、三話の印象が変わると思う。
一般的には3→1→2の評価だと思うが、個人的には2→1→3の順で面白かった。
言うなれば、社会の規範から外れた人々の面白さ。
中でも
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

5.0

人は他人を十全に理解することができない。
どんなに親しい間柄だろうと、一つ屋根の下で長い時間を過ごそうとも、わからない部分は消えない。
彼女が自分に見せる顔と、他の誰かに見せる顔は違う。
男性は得てし
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ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)

4.0

クリムトの絵をピカソの絵と間違え、絵の美しさよりも値段に興味を示すパトリツィア(レディー・ガガ)は愚かな女かもしれないが、彼女を職業で蔑むロドルフォ(ジェレミー・アイアンズ)も同じ穴の狢だ。
そしてそ
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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年製作の映画)

3.5

これはスパイダーマンのファンにとっては感涙ものではないだろうか?
過去作のキャラクターたちが一同に集結し、対峙する様は圧巻だった。
だがしかし、スパイダーマンに何の思い入れもない自分のような人間にとっ
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マトリックス レボリューションズ(2003年製作の映画)

3.0

前作までにあった哲学的問いは影を潜め、完全にSF戦争映画に堕していた。
そのアクションも目新しさがなく、既視感の連続だった。
観客がマトリックスに期待するものを満たしているようには思えなかった。

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)

4.0

乙骨憂太の成長曲線は、ドラゴンボールでセル編の孫悟飯が怒りで超サイヤ人化した展開を想起した。
データベース世代である芥見下々は、過去のジャンプ作品の様々な要素を組み合わせて『呪術廻戦』を生み出したのだ
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マトリックス リローデッド(2003年製作の映画)

3.5

アクションは前作よりもパワーアップし、
完全にアクション映画の趣がある。
「預言者」や「救世主」という存在が、あらかじめ決められた役割(プログラム)に過ぎないことが明かされる。
そんな中で狂信者モーフ
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マトリックス レザレクションズ(2021年製作の映画)

4.0

ネオ(キアヌ・リーヴス)が現実世界に目覚めるまでの展開は、ブラックコメディとして非常に面白かった。
しかしアクションはこれまでのシリーズのような斬新さがなく、退屈に感じられた。
一作目はネオが様々な試
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マトリックス(1999年製作の映画)

4.0

スタイリッシュなルック(黒のロングコート、エナメルのボディスーツ、サングラス)、斬新なアクション、意味深な台詞回しは、今見ても古びていない。
公衆電話を使ってマトリックス(仮想現実)から現実世界に戻る
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ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

4.5

光と闇、甘美な夢と悪夢、それらは対極にあるのではなく、常に隣り合わせにある。
夢の中で、現代から憧れの1960年代のロンドンにタイムリープしたエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、そこでサンディ(
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ディア・エヴァン・ハンセン(2021年製作の映画)

4.5

もしかしたらエヴァン・ハンセン(ベン・プラット)とコナー(コルトン・ライアン)は友達になれたかもしれない。
コナーがエヴァン・ハンセンに興味を示したのは、自分と同じものを感じたからではないだろうか。
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エターナルズ(2021年製作の映画)

3.5

Diversity(多様性)時代ならではのヒーローものだと思う。
序盤のバトルは面白く、傑作を予感させた。
しかしエターナルズ再集結の説明的な展開はいただけない。
156分の長丁場は本当に必要だったの
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DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

4.0

意味深な台詞回し、崇高な映像美、壮大な音楽、遅々として進まない物語。
専門用語の連発で、アクションの起こらない中盤までは、???の連続だった。
東洋哲学的な難解さ。
中沢新一の『チベットのモーツァルト
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最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

4.0

「権力なんてものはない。あるのは男の権力だけ」という言葉が象徴するように、男性の価値観が支配する中世、女性は男性の「所有物」でしかなかった。
女性の声は黙殺され、泣き寝入りするしかなかった。
そんな中
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キャッシュトラック(2021年製作の映画)

3.5

ジェイソン・ステイサム演じる謎の男Hの正体がわかるまでは面白い。
しかしHの目的が私怨を晴らすためというのは物語のスケールを小さくし、その原因となった事件を三度も映す演出はくどく感じた。
また強盗団が
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007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2019年製作の映画)

4.0

過去から逃れることはできない。
それはどんなに時間が経とうと、忘却の彼方に葬り去ったつもりでも、影のようにへばりつき、やがて目の前に現れる。
なぜなら過去とは自分自身だからだ。
ならば、背を向けて「逃
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レミニセンス(2021年製作の映画)

3.5

予告編から想像していたのとは違い、SFというより甘美な夢のようなラブストーリー。
新海誠のアニメに近い印象を受けた。
誰もが知っているオルフェウスの神話を喩えに、物語を幸せの途上で切るという発想に感心
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孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)

4.0

他者に危害を加えるとき、普通の人間は多少なりとも躊躇する。
しかし上林(鈴木亮平)にはそれがまるで感じられない。
上林は躊躇なく人を殺す。
そこに迷いがない。

たとえば街中でプロの格闘家と喧嘩慣れし
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BLACKPINK ライトアップ・ザ・スカイ(2020年製作の映画)

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BLACKPINKというスターが誕生するまでの軌跡。
4人それぞれが長く過酷な修行時代を経て、今の栄光を掴んだことがわかる。
華やかな成功の陰には、必ず常軌を逸した努力がある。
人は得てして「才能」と
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竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)

4.0

「見かけの自己」と「抑圧された自己」というテーマを描くために用いられるあからさまな『美女と野獣』のオマージュ(鈴=Belle、竜=Beast)。
そこに児童虐待を加えた脚本はお世辞にも上手いとは言えな
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ブラック・ウィドウ(2021年製作の映画)

4.0

ニルヴァーナ「Smells Like Teen Spirit」のマリアJによるカバーが流れる陰鬱なオープニング。
暗殺者として育てられた姉妹(ナターシャとエレーナ)は、自分たちを洗脳したスパイ組織「レ
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Mr.ノーバディ(2021年製作の映画)

4.0

うだつが上がらない中年親父が実は……だったという話。
設定はありきたりだが、見せ方が上手い。
毎週同じことの繰り返しのような毎日で(いつも火曜日のゴミ出しが間に合わない)、家族からも蔑まれているハッチ
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クルエラ(2021年製作の映画)

3.5

後天的な悪ではなく、先天的な悪。
母親の死から、生きるために悪の道を選ばざるを得なかった不幸な女の話かと思いきや、実は生まれながらのサイコパスだったという落ち。
しかもやっていることはただの復讐なので
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るろうに剣心 最終章 The Beginning(2021年製作の映画)

3.5

どんなに綺麗事を並べようとも、「人斬り」という事実からは逃れられない。
男がした理論武装を女は無効化する。
女の言葉は核心を突き、男は自問自答する。
自分がやっていることは本当に正しいのかと。
雪代巴
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ANNA/アナ(2019年製作の映画)

3.5

サッシャ・ルスの七変化するファッション・ショーに酔い痴れる。
ただそれだけの映画。
時系列のシャッフルに必然性を感じなかったし、濡れ場の多さに辟易した。
リュック・ベッソンの趣味全開。
『アトミック・
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るろうに剣心 最終章 The Final(2021年製作の映画)

4.0

志々雄真実が日本制服という野望を動機にしていたのに対し、雪代縁は緋村抜刀斎への「私怨」を動機とする。
恐らく単純な強さだけで言えば、志々雄真実の方が雪代縁よりも上だろう。
しかし対緋村抜刀斎においては
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るろうに剣心 伝説の最期編(2014年製作の映画)

3.0

脚本が酷過ぎる。
①十本刀の雑な扱い(哀れな宇水さん)。
②必殺技の未描写(牙突零式・二重の極み)。
③伊藤博文の小物感。
④志々雄真実を寄ってたかって攻撃する様がただのリンチにしか見えない。

以下
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るろうに剣心 京都大火編(2014年製作の映画)

4.0

前作で不満だったドラマ部分が強化され、相変わらずの疾走感溢れるアクションも見事だった。
「最強」という幻想に囚われ、抜刀斎を追う四乃森蒼紫(伊勢谷友介)の登場に胸が躍った。
蒼紫対翁(田中泯)の決闘は
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るろうに剣心(2012年製作の映画)

3.5

『るろうに剣心』の面白さは登場人物が過去と対峙し、現在をどう生きるかにあると思うのだけれど、剣心以外のキャラクターの掘り下げが頗る甘い。
相楽左之助(元赤報隊)と鵜堂刃衛(元新撰組)の過去は描かれず、
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ノマドランド(2020年製作の映画)

4.0

広大な自然描写と一人の人間の対比。
眼前に広がる風景に刻まれた時間に比べれば、人生はあまりに短い。
恐竜が滅びたように人類もやがて滅びるだろう。
この映画には「物語」がない。
人々の会話から、それぞれ
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あのこは貴族(2021年製作の映画)

3.5

予告編から、階層の違う二人の友情の物語を想像していたら、全然違った。
本来出会うはずのない二人が、共通の男を間に挟んで出会い、自分の人生を見つめ直していくというもの。
映画『愚行録』に「日本は格差社会
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あの頃。(2021年製作の映画)

4.0

年齢や職業もバラバラの大人たちが「ハロプロが好き」という共通項で集まり、仲間を形成していく。
その様子に羨ましさを覚えた。
何かに夢中になっている姿は、その対象に興味のない者にとっては「キモい」のかも
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花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

4.0

現在大学生の若者よりもかつて大学生だった30〜40歳くらいの社会人の方が刺さると思う。
と言うのも、作中に登場する固有名詞に懐かしさを感じたからだ。
『ショーシャンクの空に』は95年公開の映画で、僕が
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.0

「あなたが私を見つめているとき、私もまたあなたを見つめているのよ」

画家とモデルは、見つめる主体と見つめられる客体という関係ではなく、互いに「見つめ合う」関係にある。
マリアンヌ(ノエミ・メルラン)
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ブレンダンとケルズの秘密(2009年製作の映画)

4.0

絵本のような世界でデフォルメされたキャラクターが自在に動く。
個人的にはトム・ムーア監督作品で一番面白かった。
樫の木やクリスタルの表現の美しさに息を呑んだ。
キリスト教の一なる神に対するケルト神話の
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ソング・オブ・ザ・シー 海のうた(2014年製作の映画)

3.5

素朴な絵柄のキャラクターを用いながら、アニメーション表現は驚くほど豊かだ。
そこかしこにジブリの影響を感じさせるが、ケルト神話を元にしたストーリーは独自性を有している。
ただ波瀾万丈な物語を期待して見
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