PONさんの映画レビュー・感想・評価

PON

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落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.1

この作品が突きつける”真実とはなにか”という問いの深淵さ、答えのなさになんとも言えない気持ちになる。

事件の真相を突き詰める行為とは、事件の当事者とその周辺にいる人物、そしてその人間関係を解剖(解体
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そして僕は途方に暮れる(2022年製作の映画)

3.8

「逃げる」はクズだが、憎めない。

この映画は多くの人にとって、純然たるフィクションだ。

菅原が陥った状況は多くの人に起こらないし、きっと多くの人はああいう行動を取らない。

でも、わかるのだ。わか
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.3

その日限り。その人限り。気持ちも、コンディションも。


社会的にはみ出てしまいうるものを持った人をこんなにも優しく見守り、時に包み込んでくれる人がいる世界はそう存在しないかもしれない。たまたま社長や
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.3

一層あわただしく、加速的に押し寄せる"変化"の連続は、ぼくらを幸せに、豊かにしてくれているのだろうか。


道を掃く竹ぼうの音で目を覚まし、ヒゲの長さを昨日と同じにし、スカイツリーともにその日のカセッ
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天使にラブ・ソングを…(1992年製作の映画)

4.1

金曜ロードショーで頻繁に放送されているのを見かけたものの、ちゃんと観たのははじめて。

今の時代の映画にはない、力が抜けてどこか牧歌的な、根源的な映画の楽しさに満ちた作品だった。

作為を感じさせず、
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映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ(2016年製作の映画)

2.8

アートに昇華しない、悲しき自己満足。


病院と建設現場。死と隣り合わせの職場で生きる2人。

東京オリンピックに向かって、焦っているかのように開発が進む東京。
その開発を裏側で支える建設労働者。重要
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.3

入り混じる、現実と夢、記憶と記録。

お互いへの愛情あふれる父娘。普段は会えないふたりの、かけがえのないトルコへのバケーション。娘がまだ小さいからこそ成立している関係性の中、ただただ貴重で、楽しいはず
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NETFLIX 世界征服の野望(2019年製作の映画)

3.3

新参者による創造的破壊、業界リーダーのイノベーションのジレンマ、そして株主資本主義の構造的欠陥が詰まったドキュメンタリー。

世界的な物言う株主、カール・アイカーンの失策中の失策がなければ、ブロックバ
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BLUE GIANT(2023年製作の映画)

3.8

映画ならではの体験と、映像表現だからこその残念さが同居した、複雑な読後感。

マンガでは自分だけの想像の音でしかなかった、大がJassが奏でるサウンドが、劇場の大音量で浴びられるという幸せ。

それも
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家族を想うとき(2019年製作の映画)

4.2

ノンフィクションのような、フィクション。

どんどん希望が失われていく日々に、目を背けたくなる。

これは、この家族だけの話だろうか。
これは、衰退傾向が続くイギリスの地方都市だけの話だろうか。
これ
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RRR(2022年製作の映画)

4.3

小賢しさゼロ。刺激の応酬が脳に直接訴えかけてくる、脳みそ直撃映画。

でも不思議と疲れなくて、なんだかハッピーな気分になる。

「これやったら、オモロくない?」という根源的なクリエイションの欲求が詰め
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偶然と想像(2021年製作の映画)

4.3

言葉にならない感情といちいち丁寧に向き合って、それらを言葉にできる人々。

その自分だけの感情を丁寧に掬い上げて、定型句に逃げずにひとつひとつ言葉にする。

その応酬が長回しで繰り返されていく。

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ある男(2022年製作の映画)

4.7

本が先か、映画が先か。


出自、名前、国籍、職業、経歴、役割、ルックス、といった"ラベル"。

その人間が持っているラベルに付随する情報や性質によって、その人間のことを素早く理解する。そういった人間
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エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

3.7

あなたの存在がいつのまにか、誰かの希望になっている。


ヒラリーは、観客に映画という特別な時間を提供する立場にありながら劇場で映画を観たことがない。職務を果たす責任感も相まって、束の間自身の勤務する
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アス(2019年製作の映画)

3.5

ゲットアウトの読後感を期待して観ると、裏切られる。

スリラー/サスペンス要素とコメディ要素がアンバランスで、コメディに振れすぎているように感じた。

そのせいで劇中で起こる出来事をどう理解/解釈して
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フリー・ガイ(2021年製作の映画)

3.3

レビューを書こうと思い立つも、さほど記憶に残っておらず、設定の妙があり安定した王道エンターテイメント作品という印象。

ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

「自分が自分らしくあること」を貫き、生き続けること。2つの時代をクロスオーバーし、その困難さの対比を描く。

驚きと哀れみと心痛さがないまぜになり、茫然とエンドロールを見つめていた。

60年代にはじ
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ジェントルメン(2019年製作の映画)

4.3

待ち焦がれていた、ロックストックやスナッチ以来、久しぶりな、らしさに溢れたガイリッチー作品。

登場人物、一人一人に流儀やスタイル、人間らしさや愛嬌があって、魅力的。

見慣れた俳優陣も、それぞれに新
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ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)

4.0

ひとつの憎しみが復讐を生み、それがまた新たな憎しみを生む。憎しみの連鎖は止まらない。さらなる憎しみを生まないような誰かが、それを止めない限りは。

憎しみに従って行動するたびに、生きるための選択肢がひ
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ミセス・ノイズィ(2019年製作の映画)

4.2

他者への想像力は、どこから生まれるのか。

常識。普通。当たり前。

あたかも「世間的な共通見解」として使用されるこれらの言葉には、得てして、その人の価値観や尺度が投影される。それは、実は「あなた的な
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ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019年製作の映画)

4.2

底抜けに明るく描かれる、生き方のオルタナティブ。

色々なところに細やかに目配せが利いた、とても現代的なハイスクールムービー。アメリカらしい肯定感とポジティブさに満ち満ちている。

「こんなにも、みん
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きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)

4.5

ずっとこの3人を見ていたいと思った。
ストーリーは特段あってもなくても良かった。
そんな風に感じさせられた映画だった。

視線、距離感、立ち位置で、感情を引き出す。
わざわざセリフを口にしなくても、各
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透明人間(2019年製作の映画)

4.5

とんでもなく、傑作だった。

リメイクとなると、大概は表層だけをなぞって今風に作り替え、本質的には原作の人気をただただ利用しているに過ぎないのものばかり。オリジナルを超えるリメイクには、そうそう出会え
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グリーンブック(2018年製作の映画)

4.3

社会問題に光を当てた作品は、「世の中をちゃんと理解するためにも、観とかないといかない。でも、気分が滅入りそうでなかなか観る気分にならない」という心のせめぎ合いの末、観ないままになっていることがとても多>>続きを読む

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

原作を読んだことのある人にとっては、現代的なアダプテーションの妙や映像化のクオリティに、グッとくるのだろうか。

原作未読の自分には、「それなりに面白く、この時代らしくなく、主人公の自分を大事にする選
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EXIT(2019年製作の映画)

3.8

注ぎ込まれるアイデアの量と、要所要所の工夫がすごい。

作り手の尽きない熱意と遊び心を感じずにはいられない、でも肩肘張らずに観られる、エンターテイメント作品。

アルプススタンドのはしの方(2020年製作の映画)

2.8

とても評判が良いけれど、実際は観る人をとことん選ぶ作品。

最初の5分を観て波長が合わないと感じたら、勇気を持って観るのをやめたほうがいい。

その後も、その合わなさは解消されることはないから。
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TENET テネット(2020年製作の映画)

5.0

普通の世界が、普通じゃなくなる。


映画館で映画を観ているときでさえ、それがどんなに良い映画であっても、なんのきっかけもなく現実の世界に引き戻されることがある。

それは進行中の仕事の心配事だったり
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ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(2019年製作の映画)

3.6

週末夜に観るのにぴったりな、良き娯楽作品。

サスペンスもので、嘘をつけない性質のキャラクターというのは大いなる発明。

見えない目撃者(2019年製作の映画)

4.0

クリエイティブファーストで作られたことを感じさせてくれる、稀有な邦画サスペンススリラー。

邦画作品を観ると、クオリティを高めること以外の意図を節々に感じることが多々ある。

その役を演じるのに到底ベ
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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

4.1

私たちの多くが十分に持ち合わせていない、当たり前を疑う姿勢、それを表現する言葉、行動に移す熱。

そこに通底するのは、自分に素直に生きるという態度。

同じ言語を話す日本人ではあるものの、この作品で垣
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

3.5

とてつもなく、パンクな映画。

物語としての繋がりが無いシーンの連続で、2時間経っても、いつまで経っても本筋が見えない。

やきもきさせられながらも、俳優陣の存在感ありありの好演にいつかはこのモヤモヤ
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ボーダーライン(2015年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

不協和音たっぷりの音とミニマルな絵。その掛け合わせで、初めから終わりまで理由のない緊張感を与えられ続ける。

この感じ、『メッセージ』に似てるなと思ったら、それもそのはず同じ監督の作品だった。

主人
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search/サーチ(2018年製作の映画)

4.5

「ワンアイデアの一点突破もの」という期待値とともに観たものの、これは予想の遥か上をいっていた。

いまや我々の生活のありとあらゆる場所に張り巡らされたスクリーンやカメラ、それらを通した映像で作品を構成
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