ikumatsuさんの映画レビュー・感想・評価

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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

3.0

ソフィの視線が、自分の幼少期の感覚に繋がっていく。子供の頃、大人になると違うものに変化するんだと思っていた。持て余していた幼少期や思春期の多感さは、早いとこ手放したかった。

年齢を重ねて振り返ると子
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TAR/ター(2022年製作の映画)

4.0

スモーキーな色のシャツに長く伸びたストレートパンツ、ゴッという設置面の大きい革靴の音。髪の毛の先まで構成する要素全て直線的なケイト・ブランジェットは凛々しくて、獲物を見据えるキツネのような目にグラリと>>続きを読む

サマーフィーリング(2016年製作の映画)

4.4

暑すぎる夏。頭がのぼせて自分と世界の境界線が分からなくなる。素肌と擦れるシーツだったり、突然頬に受けた雨粒だったり、駅でぶつかった道行く人の肩だったり、境界線がハッキリとするのは一瞬だけ。そんな時に実>>続きを読む

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

4.2

別れ際のアンバランスな会話。側だけセーフと握り合った浮気。ちっとも満たされない顔した女性が欲望のままに生きている。満ち足りては足りなくなっての繰り返し。年ごと、いや極端に言えば秒ごとにそんなものが繰り>>続きを読む

帰れない山(2022年製作の映画)

4.0

手出しのできない壮大な景色に息を呑む。今わたしはどこに居たんだっけ? 膝に掛けた上着を剥ぎ取って1歩前に踏み出したら自然の中に混ざり合ってしまいそうだ。

全てがドラマチックに繋がることばかりが人生で
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アナザーラウンド(2020年製作の映画)

3.8

テレワークの残業中にプシュしたい衝動に駆られたことはある身としては他人事ではない作品。(就業報告した直後にプシュした自分を褒めてあげたい)

お酒がないと話ができないということは経験がないけど、あれば
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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

4.6

想いが込められた音楽や物語、絵画が時代を越えて受け継がれるように、何かに落とし込まずとも人の想いに形があったのなら。

強い気持ちが形となって残り、その想いとは別次元で徐々に変化していく。溢れんばかり
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キッチン・ストーリー(2003年製作の映画)

5.0

ノルウェーの田舎町。サスペンダーの爺さんとレトロスーツのおじさん。色数と音数の少なさが想像できるあらすじ。金土と仕事で華やかな場所にお邪魔していたので、ようやく1人でホッと一息つけた日曜午後。これだ、>>続きを読む

パリタクシー(2022年製作の映画)

4.0

待ってました。おフランスのおじさま×マダム×ロードムービー。昨夜の宴の片付けもせずにお昼に起きたけど、ダッシュで掃除洗濯化粧して滑り込み。

美しいよ。喜びも悲しみも怒りも。

余裕のない生活でギスギ
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

3.9

ぎゅむっと太い指から置かれるサイの目切りのリンゴに胸が締めつけられる。

わたしは、神や宗教が人間の支えになることはあっても、足かせになるべきではないと強く思っている。自らを蝕む呪いのような思想に触れ
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エスター ファースト・キル(2022年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

エスターが…エスターが…昔のままのエスターだ!(感激)

終始ザックザクにブッ刺される人間、だいたい血まみれのエスター。今回は最初からトップギアだ。

狂ったお強めのマミーにおバカなチャラ息子、何から
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ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2018年製作の映画)

4.0

テレビの中の憧れの人。0.1秒も見逃したくなくて瞬きすら惜しい。情熱が抑え切れずに大声で奇声を発したり、「僕はこの瞬間のために生まれた!」と空に向かって叫んだり。小さな身体に入り切らないほどの“好き”>>続きを読む

パーフェクト・ケア(2020年製作の映画)

2.6

驚くような手口とか、見事な逆転劇とか、振り落とされそうなスピード感とか、この映画の中で何か鮮やかな部分が見つかると思った。この女性の中にもどこかカッコいい部分を見つけられるはずと思った。でも実際は、復>>続きを読む

Summer of 85(2020年製作の映画)

4.5

恋に落ちた。薄く開けた瞼で、からかうように落とされた視線。掴めない句読点と、冗談と本気のあやふやな境界線。えっ…?とこちらが動揺している隙に掴まれている指。ダメ押しで、何かを約束するみたいに渡された真>>続きを読む

愛、アムール(2012年製作の映画)

-

誰が何を咎められるのだろう。人間が決めた物差しで測ることに、一体何の意味があるんだろう。慈しみや約束は、物差しなんかで測ることができるのだろうか。

美しい音楽や物語を共有し、ウィットな会話を楽しむ上
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ブラックボックス:音声分析捜査(2021年製作の映画)

3.3

大好物!大好物なんだよー!キリキリに冷えた画面も、振り落とされそうなスピード感も、音を骨まで響かせてくれことも、繊細で執拗な気難しい主人公も、金髪ボブの美人な奥さんも。

でもどこか刺さらない。
予想
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林檎とポラロイド(2020年製作の映画)

4.5

青に赤にオレンジに…この映画に出てくる光はどれもキャンディのようでロマン心が揺れる。どんよりと重く青みがかった色は常にどこか物悲しくて息がしづらい。

「明日、焼き菓子を」
その日の夜に入った店のカウ
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

2.7

会社のお昼休みにお弁当を食べながらかぶりついて観ていたアカデミー賞。この作品、予告編で何度観ても自分好みではなさそうだし、観ることはないなと思っていたけれど、編集賞のスピーチにキュンとしてしまったので>>続きを読む

潜水艦クルスクの生存者たち(2018年製作の映画)

3.8

グリーンとベージュの柔らかなニット。細い首までスッポリと包んだ幸せな配色のタートルネックは暖かそうで、寒い国の小さな命を守っていることに胸が詰まる。

国や役職者のメンツは、人間の命よりも大切なものだ
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逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

3.4

モデルを辞める時はセレブになる時と言いつつ、汚れた足で未知の場所や事に自分から向かうヤヤ。セレブとか忘れるくらい自分にのめり込ませてみせる!と意気込んでいたのにも関わらず、緩衝材をプチプチ潰すみたいな>>続きを読む

スーパーノヴァ(2020年製作の映画)

3.8

流れ星を見た気がした。それくらいほんの一瞬、窓の端から誰かの人生を覗かせてもらった感覚だった。

覗いた先には辛い現実があったけれど、さあ考えなさいとテーマを突き付けられた気は全くしない。そこに充満し
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ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

3.0

ファンタジー色の強いものは、よっぽど琴線に触れないと白目になってしまう夢の見られない大人です。

自分の好みから外れそうでヒヤリとしながらだったけど、崖っぷちでしっかりと繋ぎ止めてくれたシャラメの造形
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エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

3.7

歳の差恋愛に職場不倫、統合失調症に白人至上主義。諦めかけた夢への再出発に幼き頃の親子の摩擦。人生は1つのことが終わるまで何かが待っていてくれるわけではない。自分が生きながら全てが並行して進んでいて、せ>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.7

このレビューはネタバレを含みます

「衝撃の結末とは!?」チラシにミスリードされたおかげでエンドロールの瞬間から自分の中でスタートしたこの映画。

突然の絶縁に投げつけられる指。横暴な警官に噂話が好きな店の女。吐き気がする。しかし他人事
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ライダーズ・オブ・ジャスティス(2020年製作の映画)

3.4

ギリギリまで張った系。何気ない小石でプツリと切れた感覚を知っている。泣き崩れたり叫んだり、物にぶつけたり人に当たったり。

ジャケットからポップでオーセンティックな復讐劇かと思いきや、思いのほか辛さと
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トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

5.0

バキバキに張り詰めた緊張感。息をしてる暇なんてない。瞬きすら惜しいくらい0.1秒も見逃したくないシーンの連続でカパカパに乾いたコンタクト。

呼吸困難なんて朝飯前。手に汗握る?いやいや、汗どころじゃな
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ファーザー(2020年製作の映画)

4.6

一瞬、胸の隙間に北風が入り込んだのかと思った。全然違った。

誰も覗くことができない、ましてや触ることなんて到底できない誰かの頭の中。心の中。

人間の記憶は曖昧で、忘れてしまったり、創り上げてしまっ
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ヴィジット(2015年製作の映画)

4.3

生まれて初めて訪れた祖父母の家。扉を開けた先に宅配物のようにドッカリと置いてあった恐怖。祖父母の狂気に脳みそが追いつかないながらも、「老い」という理解しなくてはならない現実への歩み寄りの気持ち。

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アスファルト(2015年製作の映画)

5.0

脇腹をこそぐられながら始まった団地生活。薄白く曇った日々にポトッとあたたかいしずくが落ちる。

少しの傲慢さと小さな嘘、こっそりと抱きかかえていた悲しみに、目を見開くような事故。散り散りになった霧のよ
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まともな男(2015年製作の映画)

3.8

このジャケットの疲弊した顔。立ち込める不穏の空気に、荷物も持たずダイブしたくなる。行きはよいよい帰りは怖い。

ヤスリで角を取っていくようなこの男の嘘を、責める正義感も青さもわたしは持ち合わせていない
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男と女、モントーク岬で(2017年製作の映画)

2.7

“おじさま”というだけでひいき目に見てしまう。その目で見ても、このおじさまには呆れてしまった。キーとなる“後悔”というものに何の魅力も湧かない浅はかなわたしの目だからなのか、“加齢=思慮深さ”を無意識>>続きを読む

ヴィンセントが教えてくれたこと(2014年製作の映画)

3.9

沈みがちな日曜夜、良い気分で眠りにつきたくて、軽く選んだこの作品。顔面で受けたド直球パンチ。

聡明な少年とひねくれ者のじいさんなんて、良くないわけがない。わかりやすい設定に予想できる展開、それがなん
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

4.0

韓国映画ということだけで、どこか土臭さを期待してしまっている気持ちを他所に、心から楽しめた。軽やかなテンポも散りばめられたユーモアも、わたしにはとってもエンターテインメント。

ただし、ガーデンパーテ
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フレンチアルプスで起きたこと(2014年製作の映画)

4.0

誤魔化せないしすり替えられないしうやむやにできない。

自分の人生で不意にピンが立った時、一瞬で視界がクリアになる。優先順位は明確になるし、周りの反応もダイレクトに入ってくる。

わたしも性格上、母親
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息もできない(2008年製作の映画)

4.0

壊れてしまった心や燃え尽きてしまった心。つぎはぎでみっともなくて嘘だらけで、なんて不完全な生き物なんだろう。なりふり構わず大切なものを守ろうともがいたり、勢い任せに傷付けたくなったり。なんて身勝手で浅>>続きを読む

トム・アット・ザ・ファーム(2013年製作の映画)

3.7

前日に作ったスパイスをたっぷりと入れたキーマカレーを食べながら鑑賞。気がつくと眉間にシワが寄っている。そのくらいの緊迫感。たまに生唾を飲み、こわばる体を頭のどこかで感じながらも夢中で観入ってしまう。>>続きを読む

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