滑らかな生地に一針一針丁寧に縫われた刺繍。褐色肌にしっとりと沿うニット。手の平に感じる重みや店内に漂うシンとした空気、大衆浴場に立ち込める湿気。
穏やかな声色でゆっくりと漏れる言葉たちに癒されたと思>>続きを読む
冷蔵庫の残り野菜をしこたま入れて煮込まれるトマト色のスープ。グツグツと音を立てるターコイズブルーの背の高い鍋。それだけで満ち足りた気持ちになる。
むせた男の背中をそっと撫でる同僚との関係、肩が当たっ>>続きを読む
あなたが分かった。世の痛みに耐えられない少年よ。
娼婦であることは男の所有欲を危うくするの?
ベラの投げかける全ての質問は純度が高く、本質を直視する瞳も潔くて、わたしの毛羽だった気持ちをストンと落ち>>続きを読む
数学者モノというだけで心底ゾクゾク前のめりになってしまう。だけど、短剣で突き刺すような韓国の情が絡んでくるのか…と怖気付いてなかなか観られなかった本作。
渋い王道なおじさんにシンプルなストーリー。何>>続きを読む
重みを感じるページを1枚ずつめくるように、ゆったりとした語り手の声で進められていく。まるで絵本を堪能しているような穏やかさに、甘いため息が出る。『恋に落ちるとは心配することだ』という冗談みたいな言葉に>>続きを読む
ダニエルを包む赤いタートルネック、インディゴでもウォッシュでもないスタンダードなブルーのデニム、柔らかそうな肌と丸い瞳を覆うマッシュルームカット。どこから見ても地下鉄のザジなのに、死ぬほど心が踊らない>>続きを読む
胸の中がチリチリと焼ける。光の一粒一粒が眩しくて、両手でそっと包み込み瓶に入れて保存したくなる。できるわけがないから儚く、よけいに美しい。
ぎっしりと並べられた本にカセット。この人の皮膚の中にはそれ>>続きを読む
何の気なしに観た予告。お酒のくだりで胸を撃ち抜かれ、一瞬で目がハート。ときめきを受け止められず、震える指で一時停止。あぶね、あやうく結婚するとこだった。
着倒したコート、温めに失敗したグラタン。等身>>続きを読む
キュートな音楽の中、小気味良いリズムで浅瀬を跳ねていく。あまりにも軽く心に何も引っかからないので序盤はソファに溶け込みそうになったが、途中から少しワクッと身を乗り出す。が、その先に期待したものは見当た>>続きを読む
潔いうなじ。それだけでまるっとサンドラの味方になる。昔からショートカットに弱いんだ。
父親の介護、子供の世話、友達だった人との恋愛。全部が仕事や生活と絡み合って日常となっていく。クリスマスだって皆平>>続きを読む
あなたが幸せだと嬉しくて涙が出る。これは愛だと思っていいですか?マッコールさん。
シンプルなストーリー。何も変わらないロバート・マッコール。善意で満たされた世界は、今にも崩れてしまいそうで酷く不安に>>続きを読む
予告で興奮した崖からのダイブに加え、ドアのない車で振り回されて、垂直な電車の車両を乗り継いで…弱めな三半規管をブン回してくるこの映画。トム様に恋しない方が無理な3時間。「どうせなら限界まで振り回された>>続きを読む
2ヶ月ほどバタバタとしていて、なかなか映画館に行けず。再開記念はコレと決めていた本作。
どうしてもスクリーンで観たかったけど、大画面だからこそ目立つCG感。ブッ飛んでいる内容かと思いきや、意外と入り>>続きを読む
ミンユンギと書いて愛と読む。
こんなにも音楽に取り憑かれて、生きるために必死な青年を見たのは初めてなんだ。
この人の言っていることは昔から今まで何一つ変わっていない。現実をそれと腹に落とし、弱さを>>続きを読む
誠実であることの美しさを教えてくれた人。
なめらかな身のこなしと建設的な考え方。いつだって明るく慎ましく真っ直ぐに生きているホビ。後ろに隠していたものがこんなにも熱いものだったのかと、このアルバムを>>続きを読む
オスカーアイザックの灰色の目…これだけでまずごちそうさまですと言いたいけど、それだけだった。闇を抱えている割にすんなりと青年に肩入れし、すんなりとファンキーセクシーさんと恋へ発展。あれ?闇薄くね?謎?>>続きを読む
シルキーな話し方で穴ぼこ系眼球なんてホラー系のドストライクだし、青少年への執拗な拷問は目も当てられないし(でも見た)、視覚的に収まりが悪い拘置所面会での映像もゾミゾミする。血の中に流れる闇の部分を拾い>>続きを読む
ソフィの視線が、自分の幼少期の感覚に繋がっていく。子供の頃、大人になると違うものに変化するんだと思っていた。持て余していた幼少期や思春期の多感さは、早いとこ手放したかった。
年齢を重ねて振り返ると子>>続きを読む
スモーキーな色のシャツに長く伸びたストレートパンツ、ゴッという設置面の大きい革靴の音。髪の毛の先まで構成する要素全て直線的なケイト・ブランジェットは凛々しくて、獲物を見据えるキツネのような目にグラリと>>続きを読む
暑すぎる夏。頭がのぼせて自分と世界の境界線が分からなくなる。素肌と擦れるシーツだったり、突然頬に受けた雨粒だったり、駅でぶつかった道行く人の肩だったり、境界線がハッキリとするのは一瞬だけ。そんな時に実>>続きを読む
別れ際のアンバランスな会話。側だけセーフと握り合った浮気。ちっとも満たされない顔した女性が欲望のままに生きている。満ち足りては足りなくなっての繰り返し。年ごと、いや極端に言えば秒ごとにそんなものが繰り>>続きを読む
手出しのできない壮大な景色に息を呑む。今わたしはどこに居たんだっけ? 膝に掛けた上着を剥ぎ取って1歩前に踏み出したら自然の中に混ざり合ってしまいそうだ。
全てがドラマチックに繋がることばかりが人生で>>続きを読む
テレワークの残業中にプシュしたい衝動に駆られたことはある身としては他人事ではない作品。(就業報告した直後にプシュした自分を褒めてあげたい)
お酒がないと話ができないということは経験がないけど、あれば>>続きを読む
想いが込められた音楽や物語、絵画が時代を越えて受け継がれるように、何かに落とし込まずとも人の想いに形があったのなら。
強い気持ちが形となって残り、その想いとは別次元で徐々に変化していく。溢れんばかり>>続きを読む
ノルウェーの田舎町。サスペンダーの爺さんとレトロスーツのおじさん。色数と音数の少なさが想像できるあらすじ。金土と仕事で華やかな場所にお邪魔していたので、ようやく1人でホッと一息つけた日曜午後。これだ、>>続きを読む
待ってました。おフランスのおじさま×マダム×ロードムービー。昨夜の宴の片付けもせずにお昼に起きたけど、ダッシュで掃除洗濯化粧して滑り込み。
美しいよ。喜びも悲しみも怒りも。
余裕のない生活でギスギ>>続きを読む
ぎゅむっと太い指から置かれるサイの目切りのリンゴに胸が締めつけられる。
わたしは、神や宗教が人間の支えになることはあっても、足かせになるべきではないと強く思っている。自らを蝕む呪いのような思想に触れ>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
エスターが…エスターが…昔のままのエスターだ!(感激)
終始ザックザクにブッ刺される人間、だいたい血まみれのエスター。今回は最初からトップギアだ。
狂ったお強めのマミーにおバカなチャラ息子、何から>>続きを読む
テレビの中の憧れの人。0.1秒も見逃したくなくて瞬きすら惜しい。情熱が抑え切れずに大声で奇声を発したり、「僕はこの瞬間のために生まれた!」と空に向かって叫んだり。小さな身体に入り切らないほどの“好き”>>続きを読む
驚くような手口とか、見事な逆転劇とか、振り落とされそうなスピード感とか、この映画の中で何か鮮やかな部分が見つかると思った。この女性の中にもどこかカッコいい部分を見つけられるはずと思った。でも実際は、復>>続きを読む
恋に落ちた。薄く開けた瞼で、からかうように落とされた視線。掴めない句読点と、冗談と本気のあやふやな境界線。えっ…?とこちらが動揺している隙に掴まれている指。ダメ押しで、何かを約束するみたいに渡された真>>続きを読む
誰が何を咎められるのだろう。人間が決めた物差しで測ることに、一体何の意味があるんだろう。慈しみや約束は、物差しなんかで測ることができるのだろうか。
美しい音楽や物語を共有し、ウィットな会話を楽しむ上>>続きを読む
大好物!大好物なんだよー!キリキリに冷えた画面も、振り落とされそうなスピード感も、音を骨まで響かせてくれことも、繊細で執拗な気難しい主人公も、金髪ボブの美人な奥さんも。
でもどこか刺さらない。
予想>>続きを読む
青に赤にオレンジに…この映画に出てくる光はどれもキャンディのようでロマン心が揺れる。どんよりと重く青みがかった色は常にどこか物悲しくて息がしづらい。
「明日、焼き菓子を」
その日の夜に入った店のカウ>>続きを読む
会社のお昼休みにお弁当を食べながらかぶりついて観ていたアカデミー賞。この作品、予告編で何度観ても自分好みではなさそうだし、観ることはないなと思っていたけれど、編集賞のスピーチにキュンとしてしまったので>>続きを読む
グリーンとベージュの柔らかなニット。細い首までスッポリと包んだ幸せな配色のタートルネックは暖かそうで、寒い国の小さな命を守っていることに胸が詰まる。
国や役職者のメンツは、人間の命よりも大切なものだ>>続きを読む