西東京さんの映画レビュー・感想・評価 - 15ページ目

西東京

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ガーデン(1995年製作の映画)

4.5

勝手に幻想的なおとぎ話とかだと思ってたけど、ラストの通り地上50cm程度の不思議なことしか起こらない、だからこそ愛おしくなるような日常に融けたファンタジー。季節が移り変わっていく構成と綺麗とは言えない>>続きを読む

東海道四谷怪談(1959年製作の映画)

4.0

男と女が強調され、画面から色気が滴ってる。カット数があまり多くない故、個々のショットのインパクトが強い。鮮烈な赤色と耳に残る環境音。天井にお岩さんが張り付いてる高速ティルト興奮した。

殺人幻想曲(1948年製作の映画)

5.0

完璧。ひとりの男のウジウジした脳内が昇華する気持ちよさ。現実は上手くいかないが、またこれも映画に昇華されているというメタフィクション。執拗に繰り返される落下。
過剰なセリフ量の会話のテンポが心地よく、
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吸血鬼(1932年製作の映画)

5.0

脅威のお化け映画。この映画自体がお化けで、人間が意図して撮ってるとは思えない。たまたまフィルムに焼き付いていた謎の映像を見ている感覚。外から室内に運び込まれる奥行きのある長回しとか凝った撮影はあるもの>>続きを読む

ジョニー・イーガー(1941年製作の映画)

5.0

ラストの後片付けに号泣しつつ痺れっぱなし。夜の道と電車の灯り。
アル中のヴァン・へフリンがかなりいい感じで、ロバート・テイラーとの関係性も不思議なのに自然。同性愛の香りに実らない愛の切なさ。ギャングの
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生きるべきか死ぬべきか(1942年製作の映画)

4.5

設定の下地作りが終わってからの後半、キャストも全員乗ってる感じが出ていて半端なく面白い。バレるかバレないかのサスペンスを畳み掛けるような会話のリズムで盛り上げる。切り返しの表情もいちいち素敵。
浮気と
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大砂塵(1954年製作の映画)

4.5

ダグラス・サークの映画を見てたら猛烈に見たくなって。西部劇というよりメロドラマ。このメロドラマは男女が逆転していて愛は歪んで殺し合い、弱い者は下に転落する。風、炎、水の自然。全てが視覚化されている。>>続きを読む

心のともしび(1954年製作の映画)

4.5

間接的に人を殺してしまったボンボンのカス人間が、死んだその人をなぞるように家庭も仕事も人間性も丸ごと乗り移る。殺してしまった罪はその人自身になることでしか償えないのだ。未亡人のジェーン・ワイマンに一目>>続きを読む

イマージュ(1975年製作の映画)

3.8

やけにエロいSMハードコアポルノ。パリの街並みも小説家の設定もモノローグの野暮ったさもおばさんのサングラスも全部がエロのハッタリ。粘度の高い時間からエスカレートする鞭打ちへ。音楽と喘ぎ声、ギンギンのエ>>続きを読む

牛首村(2022年製作の映画)

3.8

生きてる者と死んでしまった者には届かない高低差があり、落下することで接触できる。現実と異界の繋ぎ目を曖昧にする流れるような怪異は生と死を分つ背中合わせの双子とも重なる。過去というか祖母の記憶へと飛び込>>続きを読む

哭悲/The Sadness(2021年製作の映画)

1.0

やってることウンコちんこレベルなのに人を裁くようなフリをする面の皮の厚さに腹が立つ。グロいことは決して否定しないけど、露悪的な描写のみをエスカレートした先にあるのは空虚でしかない。見せ方を工夫しないと>>続きを読む

タバコ・ロード(1941年製作の映画)

5.0

読み書きができないレッドネックによるスラップスティックコメディ。めちゃくちゃ。全員頭おかしいし、ヤケクソな破壊と叫びでゲラゲラ笑ってたら、頭が弱そうなジーン・ディアニーのエロティシズムに罪悪感のような>>続きを読む

痴漢電車 弁天のお尻(1998年製作の映画)

5.0

キチガイのポエム。ひとりだと寒く、寂しい7人が身を寄せ合う。優しい静けさを脅かすのは異様にでかい銃声とデメキングの地響き。生きる意味を見つけ、恐らく彼岸へと向かった大黒のラストに泣く。「死んだら肉食べ>>続きを読む

第七の封印(1956年製作の映画)

3.3

例によって白黒のコントラストがバキバキなので木や森の自然が映えてデューラーの版画みたいでかっこいい。それ以外はあんまよく分からず。死ぬのは怖いし嫌だというのは伝わるけど、全員生きてるのも楽しくなさそう>>続きを読む

ピーター・フォークの ビッグ・トラブル(1986年製作の映画)

5.0

カサヴェテスの『深夜の告白』ごっこ。破綻しまくりの大茶番なんだけど、大好きなピーター・フォークとチャールズ・ダーニング、まあまあ好きなアラン・アーキンがふざけてるだけで嬉しい。足の裏コチョコチョされて>>続きを読む

野いちご(1957年製作の映画)

4.0

冷たい死と孤独と後悔がつきまとう旅。過去による優しいジジイいじめ。冒頭の悪夢から終始怖い。なんとなくハートウォーミングな感じで終わるが、全然嘘っぽい。ベルイマンのモノクロの不気味さは拭い切れず、不穏な>>続きを読む

軽蔑(1963年製作の映画)

3.5

俺がこれを見ている横で両親が大喧嘩していたので全く集中できなかった…
だけど内容も大体そんな感じなのであまり問題なし。狭い空間に2人でいるといい方向には向かわないよね。

ポンヌフの恋人(1991年製作の映画)

5.0

ショットの強度とドニ・ラヴァンの動き、移動撮影で捉えた走る姿は全て激情を表す以外のなにものでもなくて、もはや物語はどうでもよい。全く温度を下げないままフィルムに焼き付いたエモーショナルにひたすら興奮。>>続きを読む

ジャッカルの日(1973年製作の映画)

4.0

地味すぎ淡々としすぎで市役所みたいな映画。8年ぶりぐらいの鑑賞。こういう黙々と仕事をするだけの映画はたまに見たくなる。ディテールがいちいちたまらないし、2時間半ぐらいあっておじさんの眠そうな顔で終わる>>続きを読む

ベルイマン監督の 恥(1966年製作の映画)

5.0

キャストもスタッフも全員病んでるとしか思えない。戦時中が舞台ではあるが、焦点はもっと個人の厭な部分に絞られる。戦争によって浮き彫りになる男らしさの問題と夫婦の危機。反戦的なテーマに繋がりはするが、狂っ>>続きを読む

風と共に散る(1956年製作の映画)

4.5

オープニングの数カットだけで凄すぎて見入ってしまう。メロドラマにおけるエモーショナル増幅装置としての映像表現。
大人になると子供ように好きとか嫌いとか無邪気に戯れられない切なさ。子供のままの妹は最後に
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残酷な記念日(1968年製作の映画)

4.0

眼帯とピンクのドレスのビジュアルインパクトだけで強烈なベティ・デイヴィスが母親として息子たち相手にイジメまくる、嫌なコメディ。マジで嫌なことしか言わないし、平気で嘘つくし最悪。結局なにも解決せず、ベテ>>続きを読む

単純な話(1993年製作の映画)

4.5

平成初期のメロウな雰囲気の中に男女のセックスと衝動的な殺し合いだけ。青っぽい夢うつつの世界で理由のない過剰なバイオレンスは自分にとって異常に怖かった。アメリカのノワールや犯罪映画のスタイルだけを換骨奪>>続きを読む

レインボウ(1989年製作の映画)

4.0

現代的で自由奔放な女性をケン・ラッセルが描くとモラルから数歩分はみ出してしまう。性と宗教と家族と戦争、それを包括する時代が彼女を悩ませつつ、虹を掴みに家を飛び出すロマンチシズム。変だしズレてるけど魅力>>続きを読む

愛に関する短いフィルム(1988年製作の映画)

5.0

オールタイムベストのひとつ。
裏ロメールみたいな童貞と熟女の恋愛劇。愛とはパンツの中で射精すること。そして距離。
日曜の夜みたいな憂鬱を感じるフィルムの撮影が好き。暗い階段上がって団地の屋上にでるショ
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終わりなし(1984年製作の映画)

4.5

死んだ夫が現実を徘徊し、残された妻は空虚に過ごす。映画全体を鬱っぽい死の匂いが充満し、それは妻の内面も侵食していく。夫の気配=死。愛もセックスも死と同列に並び、冷え切っている。意図した暗さというよりそ>>続きを読む

ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

3.6

エドガー・ライト版『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』ともいうべき、切り裂きジャック被害者への鎮魂歌。ただ男性不信の描写は取ってつけたような処理の仕方だったので、エドガー・ライト自身はその>>続きを読む

(1972年製作の映画)

4.3

高尚な気味の悪さ。気が滅入るような始まりから付き纏う日本的厭世観。人形の異様な動きと三味線の楽曲が共鳴する時、活劇のような興奮がある。

小原庄助さん(1949年製作の映画)

4.5

見栄張って食い潰すダメおじさんと寄ってたかって食い尽くす村人のグロテスクさ、でも裏を返せば行雲流水、諸行無常的な日本人の美徳でもあることがのんびりした農村風景の中で描かれる。主人公の流されていくような>>続きを読む

汚れた血(1986年製作の映画)

4.0

腹話術とかマジックとか、映画でしかできない表現でありつつバカバカしさと表裏一体。それが突き抜けると、ボウイの疾走場面のようにエモーショナルで美しくなる。ショットの意外性とか色の鮮烈さとか、カットの繋ぎ>>続きを読む

哀しみの街かど(1971年製作の映画)

5.0

大好きな「街の映画」。街からしっかり冬の匂いがする。生々しいしロクなことないけどメソメソしてないというか、起きたことを事象としてただ並べてるだけ。悲劇ぶらないのがよさ。
ポテト食いながらパチーノの知り
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オープニング・ナイト(1978年製作の映画)

4.0

老いと私生活で悩んでる上に少女の亡霊が出現してボロボロ。ぶっ倒れながら舞台に立つジーナ・ローランズがかっこいい。成功してるのかどうかも分からない初日、拍手があったから結果オーライだけどクリエイター側と>>続きを読む

ジェラシー(1979年製作の映画)

4.0

入院中に見てたら急に容態が悪化して中断してたので最初から再見。無理して最後まで見てたら余計に体調悪化してただろうから見なくて正解だった。
過去と現在、エロスとタトナスを行ったり来たり。階段を登ったり降
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お引越し(1993年製作の映画)

4.5

平成のファンシー雑貨みたいな可愛らしさから一転、彼岸に触れる後半が美しい。大人になっておめでとうございます。単なる通過儀礼を越えてどこに連れていくのか。自分は大人になってしまったので、あの場所には二度>>続きを読む

暗くなるまでこの恋を(1969年製作の映画)

3.8

ドヌーヴ演じるファムファタルをベルモンドの懐の深さで抱きしめて真の愛へ結実、みたいなノワールになりそうでならない映画だった。前半の方が立ち位置の激しい入れ替わりだったり色々と演出も冴えてて、後半はトー>>続きを読む

呪いの館(1966年製作の映画)

4.0

バーヴァでよく出てくる朝焼けみたいな空に女が絶叫して串刺しオープニング、からのヨイショヨイショと棺桶を運ぶロングショットでグッと心掴まれる。箱庭みたいな村と迷路みたいな館でグルグルするだけなのに構図と>>続きを読む