櫻さんの映画レビュー・感想・評価

櫻

星の数での評価はしません。静かな日常や人間の機微を描いた作品、善悪があわいにあるような作品を好んで観ます。

映画(655)
ドラマ(9)

新釈四谷怪談(1949年製作の映画)

-

本作でのお岩さんは、気の弱い夫に巻き込まれて薬殺されたのに、夫を恨むことなく、こちらへ来てくれるのをただ待っていた、哀しくも健気で優しい女性であった。いつの世も、なぜ女は恨みぶかき性質を過剰に描かれて>>続きを読む

愛の嵐(1973年製作の映画)

-

ナチスを愛してしまった少女時代。時が経って別の人と一緒になり、忘却したように思えていたあの頃のこと。再び出会ってしまったが最後。反復するフラッシュバックのすえ、時間が巻き戻ったかのように堕ちていくふた>>続きを読む

はなれ瞽女おりん(1977年製作の映画)

-

流れるように生きてきて、人知れず息絶えた命、寂しからずや。耳に残る三味線の音と懐かしい波の音。赤い古着物はまだ哀しく木々に張り付いたまま。

生まれつき盲目の女。幼いころに瞽女集団に入り芸を磨くも、掟
>>続きを読む

南京の基督(キリスト)(1995年製作の映画)

-

白い百合が綺麗に咲き乱れ、一枚ずつ花びらが落ちる。その落ちた花びらには、赤い血が染みていくよう。花の命はいつの世も短い。

しがみつくように、十字架に向かって祈りを捧げている少女。家族を養っていくため
>>続きを読む

旅の重さ(1972年製作の映画)

-

十六歳の夏の朝、私は家を飛び出した。はじめてのひとり旅。丈夫な棒を杖のかわりにし、一歩一歩自分の足で歩いていく。時にはヒッチハイクをして、転がるように日々を生きていった。

たどり着く先々で出会う人と
>>続きを読む

ハートストーン(2016年製作の映画)

-

水中から無理やり出されて、お前じゃなかったと再び投げ戻される魚の気持ちなんてわからない。朝に草原を包みこむ霧に溶けてしまいそうなくらい透き通った白い肌を赤く火照らせながら、君たちは何を考えていた?なん>>続きを読む

道頓堀川(1982年製作の映画)

-

宮本輝の長編小説の映画化。
「夜、幾つかの色あざやかな光彩がそのまわりに林立するとき、川は実像から無数の生あるものを奪い取る黯い鏡と化してしまう。」(『道頓堀川』宮本輝 より引用)

亡くなってしまっ
>>続きを読む

落下する夕方(1998年製作の映画)

-

おだやかに落ちていく夕日のような日々がずっと続いていけばいい。ゆるやかにすれ違うくらいが心地よいのだ。ゆっくりと時間をかけて失っていく恋。「引越そうと思う」がすべてのはじまり。あらゆる匂いは消えていく>>続きを読む

東京の宿(1935年製作の映画)

-

妻に逃げられてしまった男。子がふたりいるが、職も宿もなにも持たず。明日など見えやしないから、下を向くしかないけれど、やはり見えるのは砂の粒のみ。モノクロームが彼らの目の前をなおさらまっくらにさせる。そ>>続きを読む

2つ目の窓(2014年製作の映画)

-

奄美大島の青い海は、生も死も抱きしめる。宙吊りにされながら剃刀で切られ血を流すヤギ、と少年と少女がみずみずしく寄り添いあう様のコントラスト。

生み出し続けるだけでは、きっと生命は繋がれていかない。何
>>続きを読む

ちいさな哲学者たち(2010年製作の映画)

-

フランスのある幼稚園ではじまった哲学の時間。蝋燭に火をつけて、先生が静かに開会の合図をしたら、はじまりはじまり。大人と子どもの違いは何?友達って?死んでしまうとは?愛するとは?、、、毎回出されるテーマ>>続きを読む

サルトルとボーヴォワール 哲学と愛(2006年製作の映画)

-

幾度となくため息をつきながら観ていた。自由であれと放られてもサルトルを愛し、振り回され苦悩していたボーヴォワール。作家は新しい刺激に触れつづけなればならないと、好き勝手に数々の女性と関係を持っていたサ>>続きを読む

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)

-

日常とは、なんて脆いものなのだろう。あなたでなくては完成しない幸福なんてそんなものは幻想だと思うよ、と肩をとんっと叩かれながら言われたような気がした。好きな名言にオスカー・ワイルドの「自分らしくあれ。>>続きを読む

夏の妹(1972年製作の映画)

-

腹違いの兄妹というよりも、離ればなれだった恋人たちというべきか。母体は同じであるはずなのに、遠ざけられた時間が長すぎたせいで愛情が深化しすぎてしまった。型も約束も血縁もすべてがいらない。灼熱の眩しい太>>続きを読む

悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)

-

太陽はあまりに眩しくて、心はあまりに寂しかった。心にはきっと悲しみを貯めるコップがひとつあって、それが溢れると涙が出てくる仕組みになっているんだ。フリダはまだ6歳で、親の手なしではとてもじゃないけれど>>続きを読む

按摩と女(1938年製作の映画)

-

ゆったりとした川のように流れゆく時間だった。きっと白と黒はどの色よりも鮮明で、想像を掻き立てる。目が見えないことで見えすぎてしまうことってあるんだろう。いつも夜の闇のように暗いけれど、脳内には強い光が>>続きを読む

バルタザールどこへ行く(1964年製作の映画)

-

しゃくり上げるように、呻くように痛々しく啼いていた声がまだ聞こえてくるよう。バルタザール、この世界は君にはどう映ったのだろう。美しく澄んだ世界だなんて、口が裂けても言えない。惨たらしくて汚らしい酷い世>>続きを読む

恋恋風塵(れんれんふうじん)(1987年製作の映画)

-

風はそよそよと葉を揺らす。街の小道を。家までの階段を。数えきれないほど、寄り添うように並んで歩いた。少年は少女と、少女は少年と。兄妹のように、つがいの馬のように。

風に揺れているのは、葉だけではない
>>続きを読む

バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>(1987年製作の映画)

-

空と砂漠と山と一軒のさびれたカフェしかないように見えても、彼らの日常は色鮮やかに染められていく。空が、青、オレンジ、赤、ピンク......と色彩を変えていくように。

なんにもないと思っていた日常も、
>>続きを読む

ガイアシンフォニー 地球交響曲第二番(1995年製作の映画)

-

とても個人的な話になるのだけど、私には、尊敬してやまぬおばさまが3人いる。そのうちのひとりは、本作に登場していた佐藤初女さん。この方のもとには、全国から心を病んでしまった人や悩み苦しんで自殺まで考えて>>続きを読む

不死鳥(1947年製作の映画)

-

「誰も知らないの。わたくしが、どんなに幸福か。」そう微笑みながら彼女は言っていた。遠くの海を、海辺を走る我が子を見つめるその眼は、とてもうつくしかった。不遇に不遇が重なり、それに覆いかぶさるように戦争>>続きを読む

走れ、絶望に追いつかれない速さで(2015年製作の映画)

-

絶望に追いつかれない速さが、もしも時計の秒針の速さだったとしたら、あと少しだけはやく走ればよかった。でも、絶望はそんなにわかりやすい速さで存在するものではない。日常生活の中で普通の顔をしてそこにあって>>続きを読む

青の終わりはぐるぐると(2007年製作の映画)

-

くるくるとずっと同じところを回っていたい。いつも空は藍色だった。日々の摩擦によって、優しさや自尊心からすぐに細く弱くなっていくけれど、それでも人や音楽を愛したり、好きなことに目を輝かせて、生きていきた>>続きを読む

夜叉ケ池(1979年製作の映画)

-

泉鏡花原作。坂東玉三郎がひとり二役を演じている。しっとりとして妖艶で美しい。

日照り続きで水不足に陥った村。それは、人間の心の渇きのようだ。そのはずれにある、一軒の家。竜の棲むという、夜叉ヶ池から湧
>>続きを読む

外科室(1992年製作の映画)

-

泉鏡花の原作を壊さぬまま映像化されていて良い。

麻酔剤は眠っているうちに譫言を言わせるから、麻酔はしないでそのままメスを入れてくれと頼む夫人。途方もない痛みよりも、大切な秘め事があるなんてどんな気持
>>続きを読む

グッバイ・ゴダール!(2017年製作の映画)

-

突拍子がなくて、こどもみたいで、自分勝手なゴダール。偏屈さの奥にある優しさを心配そうに見つめていたアンヌ。言葉は少なく、くいっと上がった口元で何かを訴えている。それを言葉にするために、脳内で模索してい>>続きを読む

ドイツ・青ざめた母(1980年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

結婚してすぐに愛する人を兵隊にとられ、たったひとりでヒール靴を履き、瓦礫の中を、果てのない雪道を、空襲の中産んだ我が子をおぶって歩く彼女。私はこの子と生きていかなきゃいけない。あなたとこの子と暮らして>>続きを読む

ライムライト(1952年製作の映画)

-

人生は舞台。頭上で照らすスポットライトは、ついたりきえたりする。暗い哀しみに落ちたとしても、踊り続けるのが運命。時にはおどけて喜劇役者のように、人生の哀しみをポップにユーモアへと昇華させよう。きっと哀>>続きを読む

式日-SHIKI-JITSU-(2000年製作の映画)

-

「明日は 私の誕生日なの」
そう、毎日毎日繰り返す彼女。しかし、誕生日は一向に来ず、現実という名の誕生日から逃れようとしているよう。今日は昨日の繰り返しで、永遠に明日が来なければいい。明日は来るけど、
>>続きを読む

沙羅双樹(しゃらそうじゅ)(2003年製作の映画)

-

翳りゆく光。光がさす陰。となりで巡る時間。その中で生きているわたしたち。夏になるとざわつく残像は、きっとあの日消えた兄の姿。陽のあたる場所で、心にある陰を隠す。忘れるんでもなく、消えるでもない。踊れ踊>>続きを読む

詩人の生涯(1974年製作の映画)

-

かたんかたんと糸車の音。残された糸と息子。消えてしまった母の姿。心が冷えきってしまわぬように、人々に火を灯すようなことばを紡ぐ男。詩人の心は、極寒の中でもあたたかい。誰もが疲弊して、心が空洞になってい>>続きを読む

少女邂逅(2017年製作の映画)

-

それまでは、切れ味のいい刃物みたいな教室で、消えてしまいたいと思いながらおろおろと下を向いていた。いつまでも一緒にいようね、と呪縛みたいな言葉で連れ出してくれた。ジョバンニとカムパネルラのようなふたり>>続きを読む

名前(2018年製作の映画)

-

あなたは一体誰なんだ?と問われれば、私は名を名乗る。はたして私を私だと証明するものは、ほんとうに名前だけなんだろうか。日常のふるまいの中で私たちは、いくつかの立場を形容する名詞を引き受けて、それに合わ>>続きを読む

2/デュオ(1997年製作の映画)

-

圧倒的な自己と他者の差異をまざまざと見せつけられてしまい、はーっと息をつくことしかできない。どんなに一緒にいようが、相手を理解しようと努力しようが、自己と他者の個体差の隔たりは埋まるわけもなく、絶対的>>続きを読む

(2017年製作の映画)

-

希望よりもっと不確かなものを探しているんだ。

この世界が見えているということ。光が当たっているから、ものを見ることができる。想像してみて、目の前が暗くなっていくのを。見えているものが見えなくなってい
>>続きを読む

あん(2015年製作の映画)

-

ほのかに紅をつけた桜が綺麗に咲いていた。桜にとても惹かれるのは、その美しい佇まいはもちろんなのだけど、すぐに花が散ってしまうとわかっているからだ。その短命な桜の花に、万物のはかない命を思うのだろう。>>続きを読む

>|