三兄弟の、父親殺しに対する復讐譚、のはずなのに、それぞれ女に惚れ、兄が弟の女に「弟に近づくな」と言って兄弟喧嘩になり自滅。その兄もワルの罠に簡単に引っかかり、殺される。女たちも兄弟も死んで、ワルは生き>>続きを読む
死体が累々と倒れているさまを俯瞰で見せる場面は、一幅の絵画のように怖く、そして美しい。話はやくざ映画の脚本に変更も可能な面白さ。男優陣の顔も演技も半端じゃない。存在感の競い合いだ。暴力と裏切り。支配と>>続きを読む
前作がヒットしたためか、今回はかなりカネをかけて作っている。脚本作りも、大阪、滋賀、和歌山の取材成果を活かしており、物凄い情報量を惜しげもなく注ぎ込んでいる。(出演者の藤原紀香まで俎上に)。鉄道ネタ(>>続きを読む
「黄色い家」とは刑務所のことだ、と冒頭のナレーションは言う。しかし『監獄の記憶』のような感動的要素は本作にはなく、『神の結婚』のように理路整然とした作りでもない。ブラック・コメディと呼ぶにはあまりにも>>続きを読む
醜悪で不快。井上梅次の70年代駄作群を凌ぐ愚作。コメディのつもりのようだが、まったく笑えない。ホテルの従業員の鼻をかむ繰り返しがギャグのつもりらしいが、鼻をかむ行為がなんの効果も生んでいない。階段の接>>続きを読む
同性愛は犯罪であるとして、精神病院で電気ショックや、脳をいじくりまわして廃人にしてしまう。放っておいても無害なのに…。現在でも犯罪としている国は多い。異物を憎悪する権力の恐怖。裁判のやりとりは、無力な>>続きを読む
タイトルから裁判劇かと思って観たのだが、がっかり。検察と弁護側の対決はなく、判決前に回想で真相を明かしてしまうので、ミステリーにもなっていない。原作もそうなのか、脚本で何とかならなかったのか、役者の演>>続きを読む
良い作品だと思う。それにしても、人の心を斟酌できない検察官の存在が恐ろしい。そういう人だから、自分の子供の気持ちも理解できないのだろう。水を浴びたい。対面できない。これはもうひとつの『渇水』だ。小生も>>続きを読む
葉山と金子の内紛が芦川の幸福への再出発を奪う。やくざの気質の娘への贖罪。『冬の華』の原型のようにも見える。芦川の役柄は面白味に欠け、反発と依存の振り幅があまりにも極端。心変わりのきっかけが看病だけで不>>続きを読む
井上梅次の『死の十字路』と同じ56年作品。相変わらず楽団が出てくるのは井上の趣味のようなものか。本作は、主演の三橋の静かな演技に対して、相手役の月岡の演技がうるさいのだ。目をきょろきょろさせ、落ち着き>>続きを読む
空港の保安検査員の女性が薬物取引に巻きこまれ、二人の男を殺しての逃避行。中国の女性監督、ハン・シュアイのスリラー。ジャンプカットの多用、極限まで削り込んだセリフは、会話のキャッチボールがほとんどない。>>続きを読む
クロアチア人の女性、クリスティンの話をしよう、というペルーからアメリカにわたってきた少年の主観で描かれる悲惨な青春映画。英語学院で知り合う兄弟とクリスティン。兄弟の母親は男にだらしがない。兄弟はそんな>>続きを読む
パットは、レイシストで支配欲の強い母親から逃れ、フランスへ。そこでも警察の介入により、スイスへ。パットは恋人(同性愛)と暮らすが、やがて静かな暮らしを択び、猫に囲まれて亡くなる。彼女は「居場所」を求め>>続きを読む
『モンペさん』
田中重雄の戦意高揚映画(44年)。戦闘機製造工場や、隣組での訓練などが描かれるが、面白味に欠ける。飛行機製造の必然性がなく、病院勤務だってかまわないのだ。
『別れも愉し』
これも田中>>続きを読む
フランソワ・オゾンの犯罪コメディ。いや、無名の女優であるヒロインは犯罪を行っていないのだが、(同性愛の)弁護士と結託して無罪を勝ち取り、売れっ子女優となる。そこへ真犯人が現れる…。ネタは盛沢山だが、深>>続きを読む
ロウ・イエのスパイ・サスペンス、しかしロウ・イエがエンタメ系の作品に仕上げるわけがない。やはり劇中劇と現実をだぶらせ、話をわかりにくくしている。これがチャン・イーモウだったら『崖上のスパイ』のようにメ>>続きを読む
『踊りたい夜』のリメイク。悪い箇所の手直しはせず、そのまま。手品師の父親の搾取、飛行機事故もそのままで、良いところを見出すことはできなかった。
小生が井上梅次を評価しないのは、彼の作品をリアルタイムで見始めたのが60年代末から70年代という駄作を連発していた松竹時代で、彼に対する信用はゼロだった。それでも『死の十字路』、『第三の影武者』など、>>続きを読む
石橋義正は、『狂わせたいの』、『オー!マイキー』で忘れられない映画作家だ。そして本作は、『マイキー』の静止画のような女たち、日常と非日常を行き来する会話も『マイキー』的だ。しかし、女たちの集落の説明が>>続きを読む
RRの監督作はいつも大満足を与えてくれる。『スパイキッズ』、『マチェーテ』から『シンシティ』まで、自分の納得できる世界観を作り上げる。本作は。催眠術、超能力という陳腐な題材でありながら、強引で斬新な、>>続きを読む
本作のキーワードは「理由」。理由があるはずだ。いや、理由はないのです。このやりとりが諄いまでに強調される。だが、家族が集まってからは、世渡りの不器用な人々の、怒り、妥協に不快感が残る。実際にはお近づき>>続きを読む
殺し屋がターゲットを狙いながら、オフのセリフで、自戒などを述べる。次の章は、一転してセリフを極限まで削った、メルヴィルを思わせる静かな世界だ。そして、レストランでのティルダとの会話は緊張感がありながら>>続きを読む
婚約者は犬アレルギーだった。そのため愛犬を手放すことに。従兄と一緒に愛犬の里親探し。しかし、訪問先では逆に犬を押し付けられ、犬の数が増えてゆく。犬肉鍋店に売られそうな犬を買い取ったり、捨て犬を拾ったり>>続きを読む
オクラホマの先住民オーセー族の富を、殺害などの方法で搾取する白人たち。ディカプリオは結婚という方法で搾取を計画する。インシュリンに毒物を混合するのだが、妻はそれを知っていながら受け入れていたのか。ヒッ>>続きを読む
公的な事件が、次第に私的事件に矮小化される。視点も定まらず、これは孫娘の母親の視点で描くべきではなかったか(母親の様子をまったく描いていないから、母親の狂言かと思った)。議員秘書も有能な日常の仕事ぶり>>続きを読む
AIロボットを護ろうとする男と、抹殺しようとするグループ。AI少女のキャラは可愛げがなく、『ゴールデン・チャイルド』のようなユーモアもなく、闘いの繰り返しで話を転がしたエンタメ作品の域を出ていない。ど>>続きを読む
「きさらぎ駅」が面白かったので観てみたが、前作には及ばなかった。脚本に問題があるのだろうか、視点が定まらず、これなら番頭の視点で描くべきではないか。坊主の説明セリフから経文とカミフダに依存するので、面>>続きを読む
本作はエンタメ系の作りではない。商業性に左右されることのない、作家主義の映画である。従って、面白さを見出せるか否か。観客を選ぶ作品といえよう。
4つのエピソードで構成。話は繋がっているが、独立している>>続きを読む
ガイ・リッチー、ジェイソン・ステイサムのアクション・コメディ。AIを奪い返すのに、俳優を仲間に引き込んだり、段取りは面白い。しかし、作戦を実行に移すととたんに盛り上がらなくなる。それは指示役がいるから>>続きを読む
静かで、無駄なセリフを排除し、少ない登場人物で作り上げた感動作。ヒロインの上品で清潔なキャラクター。男も誠実で応援したくなる人物だ。北野武監督脚本の「あの夏、いちばん静かな海。」と共通する世界だ(やく>>続きを読む
取り敢えずは面白い。しかし、粉飾過多で、蔵の鍵はなくても話は成立するし、階段の油などの寄り道は本筋の伏線になっていないので、いらない。写真からの推理は強引だが、ぎりぎり許容範囲か。出演者は豪華だが、客>>続きを読む
若き尼僧が、悪魔祓いの使命を帯び、イタリアの学校(元協会)へ。学校のエピソード(校長の娘がいじめられている)と尼僧のエピソードが、イタリア到着でひとつになる。広々とした田園風景と閉塞的な学校の対比。生>>続きを読む
救いのない、ダークな世界。殺戮の基準が、心が残っているか、否かというもの。要介護でない若者にも心のない人間は巷に溢れているから、説得力はない。むしろ「救済」と言った方が理解できる。出産を対比しても、鑑>>続きを読む
塩田明彦のコメディ。登場人物は変な人ばかり。悪人は登場しないが、柄本佑がちょっと毒のあるキャラクターでヒロインを翻弄する。先生も真の性に目覚め、ヒロイン弓子も成長(あるいは転落)する、変なハッピーエン>>続きを読む
人物のキャラクター作りは見事。しかしあまりにもご都合主義的設定は目に余る。足に障害があったり、隠し子がいたり、それが押し付けられた結婚から救うことになるのだが、女性が奮然と式場を後にするシーンから列車>>続きを読む
斉藤寅二郎にしては、笑いが乏しい。脚本に問題があるのだろう。貧富格差、傷痍軍人、孤児といった終戦後のすさんだ世相を反映しているのだが、それがコメディから逸脱させ、斉藤寅二郎の持ち味を奪っている。