.さんの映画レビュー・感想・評価

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[リミット](2010年製作の映画)

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呼吸は、まだあった。
それだけが、生きている証だった。

土に閉じ込められたのは身体だけではない。
都合よく忘れられる命。
都合よく使い捨てられる労働。
都合よく希望を与えられる、絶望。

「君を助け
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フローズン(2010年製作の映画)

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人はよく言う。
「自然は美しい」と。
でもそれは、暖房の効いた部屋から見たときだけだ。

凍りついたリフトの上、
空は澄み渡り、雪は静かに積もる。
絵になる地獄だった。

助けは来ない。
週末が終わっ
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FALL/フォール(2022年製作の映画)

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高く登れば登るほど、
人は純粋になると思っていた。
空に近づけば、
過去も痛みも洗い流されると思っていた。

――でも現実は、
鉄骨の上で剥がれ落ちるのは、
日焼け止めと幻想だけだった。

友情は、
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インターステラー(2014年製作の映画)

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重力は、忘却の上に降り注ぐ。

言葉も、約束も、
かつての温もりさえも、
時間の底で形を変える。

それでも、誰かは言った。

「そこにいる」
と。

無限の暗闇を漂いながら、
誰かの名を、思い出を、
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TIME/タイム(2011年製作の映画)

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たった一日でも、世界は変えられる。

この世界では、時間は通貨。
命は数値化され、秒単位で奪い合われる。

だが不思議と、絶望ではなかった。
限られているからこそ、人は選ぼうとする。

今日をどう使う
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オールド(2021年製作の映画)

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「時間とは、目に見えぬが、すべてを蝕む刃である」

人は、時間を“持っている”と錯覚している。
だから今日を浪費し、明日を約束されたものと信じる。


だがこの映画は、静かに突きつける。
「それは錯覚
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ミスティック・リバー(2003年製作の映画)

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川の底には、名を失くした声が沈んでいた。

子どものころに落としたもの。
誰かの怒り。
誰かの過ち。

そして、まだ名前のない罪。

本作は、“何が起きたか”ではなく、
“何が取り返せなかったか”を描
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空白(2021年製作の映画)

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「罪は、生きている限り、誰の背にも降り積もる」

逃げようとした少女。
追いかけた父親。
押し殺した店員。
見て見ぬふりをした群衆。

誰かひとりの“悪”で済ませるには、
あまりに静かで、あまりに痛い
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陪審員2番(2024年製作の映画)

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「正義って、誰の都合でできてるんだろうね」

それは、まるで幼い頃の記憶に似ていた。
あのとき、ぼくは悪いことをした。
でも誰にも見つからなかった。
誰も怒らなかった。
だからその罪は、泥のように心の
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プー あくまのくまさん(2023年製作の映画)

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「きみが“いなくなった”だけで、世界はこんなにも歪むんだね」

あの森に、時間はもう流れない。
陽は昇り、鳥は鳴く。
でも、あれはただの幻だよ。
きみが去ったあの日から、すべては止まったんだ。

ぼく
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ジョーカー(2019年製作の映画)

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「笑ってるのに、泣いてるみたいだね」


この街は、いつも誰かを踏みつけて笑っている。
その下で、擦れた革靴が鳴るたびに、誰かの希望が潰れていく。


「僕の人生は悲劇だと思ってた。でも違った。コメデ
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ミッドサマー(2019年製作の映画)

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〈祝祭の肉となる〉

私は見ていた。
笑う花々、踊る少女たち。
白装束の下に蠢くのは、神聖か、悪意か。

誰も怒らない。
誰も止めない。
目の前で焼かれていくものに、祈りと拍手を捧げていた。

ああ、
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