純さんの映画レビュー・感想・評価

純

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枯れ葉(2023年製作の映画)

5.0

忘れられてしまううつくしさというものがあるとしたら、この映画は、きっとそのときの光景を思い出させてくれる。もうすでに明日の労働が押し寄せるいつもどおりの帰り道、ふと運命のルーレットが回ったのに気づく。>>続きを読む

トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

4.3

空を飛ぶ彼らも地上にいる我々も、あの日共に闘ったんじゃないか。

36年前の後悔は終わらない感情だとしても、こうして変わりゆくものであるという希望を観た2022年だった。

心と体と(2017年製作の映画)

4.9

触れたくて仕方ないのに、触れられるのはこわい。そんな心のやわらかなところを、あなたが夢の中でただ見つめてくれるから、わたしは今日も眠りにつく夜がすこしも怖くないのです。

涙よりも血を選んでしまう繊細
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リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

3.6

全然格好もつかず、こんなにもすれ違ったまま、憎めない君のもとへ走って行く。

オードリー・ヘプバーン(2020年製作の映画)

4.0

息子にキスする横顔も、助けを求める人々に触れる指先も、やさしい光が舞っているようだった。

出演者のひとりが言っていた。「愛されなかった人たちはひねくれてしまうことが多いけど、彼女は愛することの方が得
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はちどり(2018年製作の映画)

4.5

ウニは子鹿のような目をしていた。あどけないのに、大人も知らない悲しみをどうしていいかわからないでいる。彼女のまなざしの奥にある、凍えた孤独をあたためたいとおもう。

話すことよりも、歌うことで同じもの
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ライフ・ウィズ・ミュージック(2021年製作の映画)

4.0

わたしたちはみんな、どうやって愛するか学んでいるところなのだ。愛に見守られて生きている。愛がわたしたちを手放さないように、わたしたちも決して愛を手放したりしない。

Siaは、死を忌み嫌わず生を慈しめ
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カモン カモン(2021年製作の映画)

5.0

大人になると、意味以上のものを見つけられないと、何処かで聞いたような気がする。だけど、忘れたくないと思った日々に意味のある名前がつけられなくても、わたしはその時間を抱きしめたい。何度も、何度も。

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やさしい女(1969年製作の映画)

3.9

男が言う、「君がほしい」
女は言う、「あなたに苦しまないでほしい」
美しいレースと共に空を舞った彼女の沈黙は、「やさしい」と表現するにはあまりにも哀しく、ささやかな抵抗と、潔い受け入れのように思えた。
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アネット(2021年製作の映画)

3.8

今でもやっぱり、閃光のように愛を走り抜け、闇を彷徨う彼がいる。いつだって彼の中で、愛は目覚めの儀式であり、破滅への疾走は止められない。「俺は彼女の隣で目覚めた。そしてすぐに一番デカいバイクを買った」こ>>続きを読む

ベルファスト(2021年製作の映画)

5.0

生活を愛するって、きっとこういうこと。明るい空の下で笑い声をあげて。安心と温もりに抱きしめられて。ベルファストがこんなに美しい場所だって、内緒の景色を見せてくれてありがとう。あなたたちのたったひとつの>>続きを読む

金の糸(2019年製作の映画)

3.7

ふたりのおばあちゃんは傷だらけで、少しでも触れると壊れてしまいそうだった。だから、金の糸でもう一度紡いでみる。失われた時代を彷徨って、それでも今ここにいることを慈しむダンス。あの美しい所作のひとつひと>>続きを読む

イングリッシュ・ペイシェント(1996年製作の映画)

4.7

砂漠は、女性の背中のようだと思う。あのなめらかな曲線も、熱を帯びる身体も、永遠の深さで空を見つめている。砂漠を渡り歩くとき、わたしたちは罪深く、女神の肩甲骨をなでているのではないかしら。だけど、その女>>続きを読む

林檎とポラロイド(2020年製作の映画)

4.0

記憶を無くした彼を見て、「ここに傷ついたわたしがいる」と思った。愛し合うひとたちが顔を寄せて笑っている。たったひとりで遠くの幸せを見つめる横顔に、あなたは誰の顔を重ねるだろう。

頭から布団をかぶりた
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ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)

3.7

狂っているのは世界か、わたしたちか、全てか。

この映画を最後まで「ばかみたいだよね」って他人事のように観れたら、純粋に笑えるんだろうな。

ダイエットは成功しなくていいのです。

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

4.1

あなたを愛してない。もうわかるのか? 

ウェス・アンダーソン監督映画は、圧倒的な色彩バランスに見惚れ、独特のユーモアに笑っていると、最後に少し寂しくなるあの瞬間好きになる。夢は夢でしかないけれど、そ
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ユンヒへ(2019年製作の映画)

5.0

角砂糖が溶けていく間に、あなたの街には雪が降り積もっていく。音もなくしんしんと舞い降りる雪はどこまでも白い。すべてが美しく光る雪景色の中で、こんなに可愛い子、どうして見失っちゃったんだろう。

離れな
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都会のアリス 2K レストア版(1974年製作の映画)

5.0

何も感じない風景を何枚撮っても、大切なたった4枚の証明写真にはかなわない。撮影することが、耐え難いことを撃つものとは限らないよ。写せないものを記憶して、次の街へ行こう。

ふたりを通り過ぎて行かない街
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トムボーイ(2011年製作の映画)

4.7

「どうしてこんなことしたの?」そう聞かれても、自分のせいでみんなを泣かせてしまっても、赤色の水着のほうがずっと心配だった。でも、青色のワンピースはきれいだし、ミカエルもずっとこの場所に残してていいんだ>>続きを読む

フェアウェル(2019年製作の映画)

4.5

ビリーが、両親には言えない、自分でも申し訳ないだとか情けない、恥ずかしいっていう気持ちをおばあちゃんには言える、そのたったひとつの場所がほんとうに愛おしくて切なくて。これから似たようなことがあったとき>>続きを読む

TOVE/トーベ(2020年製作の映画)

4.5

わたしが初めてムーミンに出会ったのっていつだろう。それは思い出せないほど幼い頃であると同時に、とても自然な風景としてわたしの心に描かれたと思う。自分が誰なのか、あなたが何を見つめているのか、まだ何もわ>>続きを読む

ショック・ドゥ・フューチャー(2019年製作の映画)

3.6

エレクトロミュージックならではの浮遊感。夢心地になって、お酒を飲んで、踊って、笑って。重力を忘れさせてくれる独特の音楽を生み出す過程がとても自然で、それでいて音楽を愛するひとゆえのどきどきがちゃんと伝>>続きを読む

プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

この映画は、ライアン、マディソンのような立場の人間へのメッセージ性がいちばん強いと感じた。直接的に性暴力を行なっていない、だけどその存在を知っている、知っているのに何もしなかった傍観者たち。自分が巻き>>続きを読む

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.4

わたしたちは結局、他人をどこまで受け入れたらいいのか、いつまでもわからないまま、抱き合って眠るんだろう。

夜明け、青みがかる世界の中で、音の影がわたしたちの瞳に映る。そして音の声が鼓膜に届く。ああ、
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パーマネント・バケーション(1980年製作の映画)

4.0

これは、"そこ"から"ここ"、いや、"ここ"から"ここ"への物語。同じフレーズを繰り返すサックス。Over the Rainbowと遠ざかる景色。いつの景色?過去と現在と未来と。永遠の休暇を生きる僕は>>続きを読む

真昼の決闘(1952年製作の映画)

3.9

2時間に満たないこの闘いの中で、ウィルは正義のために何を守り、何を失ったんだろう。

愛を行動で示したエミイを連れて、昼下がり、孤独な背中がこの街を去る。胸につけた栄光の星は、輝かしい過去へと投げ捨て
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ミステリー・トレイン(1989年製作の映画)

4.5

自分の足で歩きながら移動するときに見えるものと、電車に揺られながら考えることはシンクロするんだろうか。同じ時間、同じ場所にいても、それぞれの違う1日をひとは生きていて、それはあまりにも当然なのだけれど>>続きを読む

ベルヴィル・ランデブー(2002年製作の映画)

4.3

小さな世界からはぐれてしまった孫の足あとを、ひとつずつなぞっていく。寡黙なおばあちゃんの愛と知恵が、いちばん優しくて強いよ。最後の1フランの使い道に、これっぽっちも悩む必要なんてなかったさ。

両親の
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海辺のポーリーヌ(1983年製作の映画)

5.0

朝焼けがうつくしいのは、ここにはいないあなたを、ここで思い浮かべているからなのね。結局、あの部屋にいたのがあなたでなかった可能性も、あなただった可能性と同じくらいなの。同じくらい、寂しくて置いてけぼり>>続きを読む

ファーザー(2020年製作の映画)

4.2

赤と青の世界線。定まらない焦点。誰が死んでしまって、誰が生きているの。あなたなの。今日ここにいるあなたは誰。ああ、あなたなのね。ねえ、あなたは誰。

すべての葉がなくなっていくようだ。

アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)

4.5

立ち上がるときに必要なのは、誠実さと、ひとりひとりの信じ合う力なのだと思う。

パフォーマンスの究極形を見た。ステージに登るパフォーマーたちと、演奏する楽器。わたしたちが耳にするのは、すべて、彼らから
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アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン(2018年製作の映画)

4.1

これが、「神聖」の意味。この世に生まれた己の命に、ありあまる幸福を感じる人々の熱、涙、祈り。こんなに心震わせる美しい声がひとりのからだに宿っていること、ひとりの歌声で、あの場所にいた全員が天国の光景を>>続きを読む

ヘカテ デジタルリマスター版(1982年製作の映画)

4.0

クロチルド。古風で美しい名前。彼女は、太陽の光を浴びるときと月光の中でたたずむときとでは、まるでひとが違う。彼女は不思議で、上品で、なまめかしくひとを誘う。彼女が特別何かをするわけでもない。それなのに>>続きを読む

夏時間(2019年製作の映画)

5.0

姉弟たちがおじいちゃんの家に着いたあの瞬間だった。記憶の縫い目が、やさしくほどかれていくかすかな気配。遠くから、幼い頃から知っている空の色と、夏の匂いがしたんです。景色はいつでも、わたしたちのあの頃に>>続きを読む

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