純さんの映画レビュー・感想・評価

純

1995

エンドレス・ポエトリー(2016年製作の映画)

4.5

人生なんて、全て比喩。これは、極限の透明度と彩度を共鳴させながら、断片的で瑞々しい記憶を、正直に、丁寧に、愛を込めて描いた唯一無二の自伝映画。全方向に強烈な感性が散らばって、また集まって、形や角度を変>>続きを読む

婚約者の友人(2016年製作の映画)

4.1

孤独を他人の優しさで埋めて生きるひとはきっといつまでもひとりぼっちのままなんだろうなと虚しくなると同時に、その優しさをどうか自分のために使ってあげてねと声をかけたくなるくらい優しいひとが、遠くない未来>>続きを読む

ドリーム(2016年製作の映画)

4.9

「理不尽」に立ち向かう姿勢は、そのひとがどんな信念を持っているかを語るし、逆境をどう生き抜くかは、そのひとの強さと誠実さを示すものなんだろう。

まだ科学技術が発達していない1960年代、宇宙開発に必
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人生フルーツ(2016年製作の映画)

5.0

豊かな暮らしは、きっと誠実さでできている。誰もができることを、誰よりも真剣に、丁寧に、心を込めて続けるのは、なんて難しくて、なんて気持ちのいいことなんだろうね。そのときにすべきこと、できることを、その>>続きを読む

ミックス。(2017年製作の映画)

3.9

これは、挫折したひとが、自分なりに決着をつけにいく物語。大事な何かを、取り戻しにいく物語だ。ミックスというペアの競技を通して、誰もが本当はたった一人で闘っていたんだと、私は言い切っていたい。それは、仲>>続きを読む

ブラック・スワン(2010年製作の映画)

3.6

自分以外の誰かを演じるということの重み、痛み、苦しみ。きっと誰もが「本当の自分」を求める中で、他者の欲望に踊らされることほど、自分を見失わせるものはないんだろうと思う。

バレリーナのニナは美しく、誠
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パターソン(2016年製作の映画)

4.8

同じことを繰り返す毎日でも、どの日もほんの少しの不確かさを持って、たった一度しかない「今日」でいようとしてくれる。思いっきり平凡な毎日こそ、本当は退屈から最も遠いところで、私たちに両手を広げている。そ>>続きを読む

ダンケルク(2017年製作の映画)

4.4

何か見えても、何も見えなくても恐ろしい。何か聞こえても、何も聞こえなくても震えてしまう。動いても、留まっていても、命が脅かされる。ドイツに攻められて逃げ場のない英仏軍の、絶望、恐怖、孤独、混乱が、全て>>続きを読む

トリュフォーの思春期(1976年製作の映画)

4.7

子どもたちを中心に、彼らの目線から世界を見た、子どもと大人のための物語。授業終わりに一斉に教室から飛び出し、学年もまばらに町中を走り抜ける冒頭から、笑顔の子どもたちがスクリーンいっぱいに映し出されるエ>>続きを読む

おしゃれ泥棒(1966年製作の映画)

4.5

邦題のセンスが良い。主演のふたりが手探りで、時にスタイリッシュに、時にお茶目に繰り広げる最初で最後の大犯罪。古典名作らしく綺麗に話がまとまる完結型の単純明快なストーリーで、観終わった後の幸福感がピカイ>>続きを読む

昼下りの情事(1957年製作の映画)

4.5

「初恋は特別なものらしいね」「そうね、初めてのハイヒールのようなものよ」古典映画の言い回しは、本当に愛くるしい。女の子が初めてハイヒールを履くときって、数センチ分だけ景色が高く見えて、鏡に映る自分もい>>続きを読む

ベイビー・ドライバー(2017年製作の映画)

4.7

久々に2時間ぶっ通しでわくわくが止まらない映画を観た。『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』ぶりの興奮。最初から最後までノンストップで体内を駆け巡る高揚感がとにかく快感、とにかく痺れる!特にオープニ>>続きを読む

ありがとう、トニ・エルドマン(2016年製作の映画)

4.7

これは、「見せない」物語。優しさや、苦労や、弱さや、涙を、見せないで頑張ろうとするひとたちが、一生懸命に足掻いて、もがいて、ほんの一握りの幸せに微笑む物語。

きっちりした性格でキャリアウーマンの娘イ
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黄金のアデーレ 名画の帰還(2015年製作の映画)

4.2

所詮1枚の絵なのかもしれない。ナチスに迫害された過去を持つ人々にとって、芸術の価値は命に及ばないのかもしれない。でも、その大切な命を守りきった人々が取り戻したくても取り戻せない日々の思い出が、その1枚>>続きを読む

ストップ・メイキング・センス(1984年製作の映画)

5.0

こんなデタラメな秩序が、こんな刹那的な永遠が存在するなんて。全ての音が、その一瞬のタイミングと感情の高まりによって生み出されているのに、完璧に計算されているような美しさとバランスを保っている。空気が震>>続きを読む

心が叫びたがってるんだ。(2015年製作の映画)

3.5

心が叫びたがってる。じゃあ身体はどうなのか。口は。喉は。頭は。

過去のトラウマから、必死に口を塞いで、声を殺して、思考を遮断しようとする主人公。自分がおしゃべりなせいで家族はバラバラになった、自分が
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素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店(2015年製作の映画)

3.4

常に後をついてくる「死」の気配がはじめは気味悪いものとして感じられるのに、途中から心地よい「生」の賛美歌に代わり、最後には静かな「死」の美しさに圧倒される。

自殺を支援する代理店だなんて物騒な、とい
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セント・オブ・ウーマン/夢の香り(1992年製作の映画)

4.6

卑屈で横柄で最低で、だから何なんだと言いたいし、素直で謙虚でまっすぐで、だから偉いなんて言いたくない。在り方とか生き方とかを、立派だとか優秀だとかいう言葉で殺したくないな。どんなひとだって信念を持って>>続きを読む

パリ、テキサス(1984年製作の映画)

4.7

1番好きな他人と、自分の夢を守るために、孤独に「なる」のではなく、孤独を「選ぶ」ということ。会わなくても、相手がどこかに存在していると知っていること。そして、それだけで良いのだと思えること。憧れの夢を>>続きを読む

イヴの総て(1950年製作の映画)

4.5

女性の強さと弱さ、恐ろしさと繊細さ、いろんな「本物」が名優たちによって演じられた、「本物」の映画だった。

キャストが豪華なだけでなくて、脚本がすごく面白い。会話劇としてもコミカルさが散りばめられてい
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人生はビギナーズ(2010年製作の映画)

4.3

「完璧とは言えないし、自分が何をしているのか分からない。だけど、私はここにいたい」アナのこの台詞を、自信がなくても、きちんと声に出して言えるようになりたい。私たちは、子どもも大人も、一度きりしかない人>>続きを読む

突然炎のごとく(1961年製作の映画)

4.0

「戦争・死・月は男性名詞で、太陽や恋は女性名詞、そして人生は中性名詞」ひとつひとつの台詞とカットが、とにかく詩的で優雅。刺激的なのに上品で、馬鹿馬鹿しいのに切なく思えるのは、フランス映画独特の雰囲気と>>続きを読む

20センチュリー・ウーマン(2016年製作の映画)

4.7

政治も産業も何もかも高速で駆け抜けた20世紀。手に届く日常だけが守られたようにゆったりと過ぎていき、人々は不完全な自分と不恰好に向かい合って生きてきた。淡い光が切なくて眩しいひと夏がノスタルジックに描>>続きを読む

マンチェスター・バイ・ザ・シー(2016年製作の映画)

5.0

ひとは、どんなに辛い記憶でも、自力で背負って生きていく。こびりついた記憶は、目を背けても、暴言を吐いても、いつまでも痛く、重く、とんでもなく深く、寂しい。そんな記憶をひとりで抱えるのはあまりにも酷で、>>続きを読む

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ(2016年製作の映画)

4.0

東京が眠らない街なんて嘘だった。確かにあちこちが光ってはいるけれど、街はきちんと静寂の傍にいて、目を閉じている。動いて、音を鳴らして、瞬きを繰り返して、生きているのは私たちだ。

大好きな最果タヒさん
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カフェ・ソサエティ(2016年製作の映画)

4.2

過去への羨望、懐古、哀愁といえばウディ・アレン。今作も、レトロな空気感の中に漂う曖昧さに酔いしれたり、キラリと光る一瞬に心を鷲掴みにされたりと、彼お得意の世界観の魅力がたっぷりの1本だった。

始まり
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美女と野獣(2017年製作の映画)

4.2

美しい。夢と魔法が詰まったアニメーション世界が、これでもかというくらい忠実に描かれていた。実写化作品は、オリジナルに馴染みがあるひとほどなかなか踏み出せないのがお決まりだけど、今作はむしろ逆。アニメ版>>続きを読む

夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)

4.2

93分間ノンストップ。身の程知らずの速度で駆け抜ける、京都の春夏秋冬と特別な一夜。鮮やかで極端な色彩はあまりにも非現実で、でたらめにぶちまけられた絵の具たちのよう。なのに、はじめはうるさく感じるかもし>>続きを読む

名探偵コナン から紅の恋歌(2017年製作の映画)

3.7

瑞々しい春に観る、紅葉色の112分。迷宮の十字路と同様に、京都に住んで観ると、一瞬自分の思い出と交錯する風景が何度かあって感慨深い。

前作とは打って変わって黒の組織は登場しないし、題名から推測できる
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ムーンライト(2016年製作の映画)

5.0

夜の月、夜の海は、いつだってひとを不思議な気持ちにしてしまう。月光下でしか輝けない青春そのものが不完全に青くて、ぞっとするほど純粋で、深くて、なんて優しい色をしているんだろうと思った。この映画を、ただ>>続きを読む

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)

4.8

この映画をデートで観た後に、隣に座る恋人じゃない別のひとを愛しく思えないなら、きっと心が錆びてしまっている。恋愛に限らずとも、この映画を観て頭に浮かぶひとは、観たひとにとって一生忘れられない、一生守り>>続きを読む

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)

4.5

乱暴で騒々しいのに、繊細で濃密。感情が剥き出しなようで、実は誰もが、脆すぎるほどの密かな思いを、大事に大事に隠している。作品を通して雰囲気は暗く閉塞的で、不穏な空気に息が詰まりそうだった。観るひとによ>>続きを読む

未来を花束にして(2015年製作の映画)

4.5

闘うには覚悟がいる。何が捨てられなくて、何なら諦められるのか。ひとは誰かに訴えたいことがあるとき、全力で相手にぶつかっていく。最初は言葉で。そして中には、それがだめなら文字通り死ぬ覚悟で、体当たりする>>続きを読む

みかんの丘(2013年製作の映画)

5.0

隣人とは何か。敵とは何か。ひとばかりが増えすぎてしまった世界で、私たちは自分と「同じ」何かを持つひとなら自分を受け入れてくれるはずだと、自分に危害を加えるはずはないと勘違いして、またそんな頼りない希望>>続きを読む

スモーク(1995年製作の映画)

5.0

皆、嘘だ偽物だと知りながら、いつも何かのふりをして生きている。それは決して、逃げではなくて、また私たちの弱さから生まれたものでもない。現実や真実よりも何か守りたいものがあるから、私たちは今日も「気付か>>続きを読む

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

4.8

「なぜ夜に、しかもひとりで、こんな恐ろしい映画を観てしまったのか」という後悔を味わうと同時に「なんて完成された名作…!」と感動に浸ってしまう、超問題作であり大傑作の1本。今考えると周到に練られた内容や>>続きを読む

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