十一さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

十一

十一

映画(546)
ドラマ(8)
アニメ(0)

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年製作の映画)

4.0

さよなら、全てのスパイダーマン、とでも言うべき内容。何度も映画化されて語り尽くされた後にできることは、これぐらいしかないとも言えるが、これより先があるのかという場所でもある。

犬王(2021年製作の映画)

3.8

虚構の絵を動かすアニメーションの表現は、存在しないものを記憶と想像力で描くことであり、犬王が死者の言葉を聞き、歌い踊るのと同じ芸の道といえる。また、敗者の物語、平家物語においてさえも、失われた物語を拾>>続きを読む

翔んで埼玉(2018年製作の映画)

3.3

設定は面白いが、映画としての画面の密度はそれほど高くない。良くも悪くも漫画的。

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語(2013年製作の映画)

4.4

公開当時に劇場で観て以来の再見。当時より、震災後の空気を強く感じる。もはや日常というスタンスが欺瞞に過ぎないということが、舞台の書割りのようなCGのテクスチャとして表現される日常の描き方により、努めて>>続きを読む

鳩の撃退法(2021年製作の映画)

3.3

信頼できない語り手に身を委ね、右往左往する筋立てに翻弄されることを楽しむ。考察や辻褄合わせは気にしない。

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

3.7

ウルトラマンとは何かについて語る映画。エヴァがウルトラマンの変奏であったことの答え合わせでもあり、解釈は色々とできそうだが、正直そこまでウルトラマンに興味がないとどうして良いか分からなくなるオタク映画>>続きを読む

岬のマヨイガ(2021年製作の映画)

2.5

流し見。夏休みごろに定期的に発表される、超常的な存在に仮託された、郷土への帰属意識が、学校という社会帰属の練習場で不適合を引き起こした子供を救うという構図の類型。流石に時代遅れなのではないかという気が>>続きを読む

劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編] 君の列車は生存戦略(2022年製作の映画)

4.1

テレビシリーズにあったギャグのクドさが切り詰められて、見やすくなっている。何より、前作の終劇を起点として、二巡目の世界として作品を構成することの誠実さに痺れる。ユリ熊嵐とさらざんまいを経て、それでも何>>続きを読む

ローズマリーの赤ちゃん(1968年製作の映画)

3.5

再見。ポランスキーのヨーロッパ的不安というか人間不信が、耽美的というか神経症的というか、川端的変態性で装飾されて、独特な世界観を形作る。確かに唯一無二の作品と才能であるのはわかるが、これがヒットした時>>続きを読む

TITANE/チタン(2021年製作の映画)

4.1

グロテスク。クローネンバーグ作品を初めて見た時の衝撃に近い。サイバーパンクがファッション化する前、機械に投影された非人間的なものに対する忌避の感覚と、その裏側にある人の肉から出てきたものでない故のイノ>>続きを読む

ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ(2021年製作の映画)

3.2

ヴェノムと主人公の絆が弱い。寄生獣のように互いの命綱を握っているというわけでもなく、少年漫画の主人公のように、ただ、隣に居ただけで肩を叩き合える仲を維持し続けるというのは、関係性として物足りない。

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)

3.7

入れ子構造の無限ループ。カーニバルは宇宙を内包する。詐欺師の詐術もここでは見せ物の一部にしかない。ギークを卑しみ、優劣感で見下ろす観客。騙される側から、騙す側へ。しかし、見下ろしていたのは自らの内面に>>続きを読む

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.5

言語を閉じ込める標本箱としての演劇空間を、車という閉鎖空間内での会話劇と対比し、手話を含む、多言語による意思疎通の限界を相似構造として提示することで、世代や夫婦の間で生じるディスコミュニケートの構造を>>続きを読む

キャンディマン(2021年製作の映画)

3.1

前作は、都市伝説がホラー映画という枠の中で現代の神話として語られるライブ感に、感じ入った部分があったが、そのようなテーマや手法も長い間に陳腐化してしまい、現代にアップデートすると、このようなポリティカ>>続きを読む

ザ・ファイター(2010年製作の映画)

3.8

毒親問題を乗り越えて、兄弟がリングで成功をおさめる話。本作のテーマとは関係ないが、結局、素人がスポーツ観戦を楽しむのは、選手が厳しい訓練で培った技術を競うのではなく、人生を賭けてリングに登っている、そ>>続きを読む

ナイル殺人事件(2022年製作の映画)

3.2

ミステリ映画の役割は、トリップムービーとして、見知らぬ土地を魅力的に描き、旅行気分を盛り上げることと、メロドラマとして、適度に入り組んだ人間関係を描き、ラブロマンスに浸ることで、古典としての枠組みを本>>続きを読む

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)

3.3

震災後世代の価値観を反映したキャラの造形なのだが、あまりにシンジの印象が強すぎて、そのベクトルとしてしか見られないのが勿体無い。

ウエスト・サイド・ストーリー(2021年製作の映画)

3.9

カメラワークのダイナミズムは技術進化もあるだろう。個人的に巨匠の要件の一つと思っているのが多人数の画面の捌き方で、さすがに抜群に巧い。巧いという以上に凄い。ずっと自分ならこう撮るというイメージがあった>>続きを読む

スパイラル:ソウ オールリセット(2021年製作の映画)

2.9

久々のソウシリーズ。長い遍歴の末の原点回帰なのだろうが、続編他、散々影響作品が出し尽くされた後なので、本家に期待していたのは、セルフイメージの破壊なのだと気付いた。

グーニーズ(1985年製作の映画)

4.8

再見。明るい80年代の雰囲気。貧乏で地上げにあって街を出ていく事態になっても、どうにかなるという将来への希望と楽観が眩しい。

ゴーストバスターズ/アフターライフ(2021年製作の映画)

3.7

子供の頃にゴースト退治のガジェットに心躍らせた記憶。媒体に焼きついた光の再演という原理上、フィルムが過ぎた時を写すものであるのなら、すべからく映画とは亡霊を召喚し、死者との舞踏を演出する儀式に違いない>>続きを読む

死霊館 悪魔のせいなら、無罪。(2021年製作の映画)

3.3

相変わらず、夫婦ののろけ話が脚本を駆動する。光と闇の対比をライティングでわかりやすく描く。

地球外少年少女 後編「はじまりの物語」(2022年製作の映画)

3.8

だいぶ端折られていたが、仕込みの数々から本当に描きたかったことを予想する。なぜ、バンジーに乗ることになったのか。これは重力から逃れて再び衛星軌道に乗るための加速を得るのが理由。セブンがプリンタで作って>>続きを読む

地球外少年少女 前編「地球外からの使者」(2022年製作の映画)

4.2

SFが若者のものであった時代、ハインライン的なジュブナイルの香気が充溢している佳作。特筆するほどのアイデアは見当たらないが、冒険活劇の始まる高揚感をこの時代に甦らせているだけでも大したもの。

マトリックス レザレクションズ(2021年製作の映画)

3.2

恋愛が若者だけのものではないとしても、過ぎ去った青春の影にいつまでも付き纏われるのは、ある種の悪夢ではないか。とはいえ、抱いた夢がコンピュータの作り出したイリュージョンだったとして、夢の続きを歩くのが>>続きを読む

ファーザー(2020年製作の映画)

4.0

認知症患者の主観的現実を、エンタメで培われた、スリラー、ホラーの技法を駆使して観客に擬似体験させる。何を演じても知的で威厳に満ちた風に見せてしまうアンソニー・ホプキンスの起用さえも、その最大の効果を狙>>続きを読む

キングスマン:ファースト・エージェント(2020年製作の映画)

3.5

ロシアのパートは脚本としては冗長な気がするが、絵面として面白かったので、快感原則に従って楽しむのが、この作品の流儀なのだろう。

夢と狂気の王国(2013年製作の映画)

3.9

夢の国、ディズニーランドへの憧れから始まったジブリ。その差分が狂気であると看破するドキュメンタリーの精度が素晴らしい。

崖の上のポニョ(2008年製作の映画)

4.0

再見。とりとめもなく、雑感。
リサと父親、グランマンマーレとフジモト、ポニョと宗介。ポニョの元の名はブリュンヒルデ。愛する伴侶を死なせる運命にある戦乙女の名だ。男女小さなバケツで飼われている可愛らしい
>>続きを読む

千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)

4.6

再見。冥府下りの構造は本作でこそ際立つ。本作で特徴的なのは、冥府の構造が二重に多層化されていることだ。湯屋自体、三途を越えたところにある彼岸であるが、そこは中間層に過ぎず、本当の冥府の深淵はその先、永>>続きを読む

もののけ姫(1997年製作の映画)

4.5

再見。タイトルは「もののけ姫」となっているが、物語はアシタカの視点で始まる彼の物語であろう。冥府降りの構造が、本作では多重化されている。最初にアシタカの出発点を、本筋とは別の村からスタートすることで、>>続きを読む

紅の豚(1992年製作の映画)

5.0

再見。ラピュタ同様、地上と空を逆転しての冥府下りの構造が、雲の上で戦友に再会するシーンなどで際立つ。さらに本作は郷愁の源泉と死者の国が近いところに位置付けられている。自分を豚に変えてまで、空、すなわち>>続きを読む

魔女の宅急便(1989年製作の映画)

4.5

再見。頭に載せた大き過ぎる赤いリボンが、思春期の自意識の表象と聞いて納得。人生の全盛期、無敵の子供時代の全能感が飛行という行為に現れるのは、次回作の紅の豚でも同様。飛べなくなったことをスランプとして描>>続きを読む

となりのトトロ(1988年製作の映画)

4.4

再見。死者の国へ行って帰ってくる冥府下りに、宮崎映画のパターンを見る。トトロも例外ではない。子供は無邪気に死と戯れる。しばしはその恐ろしさを理解しないままで、ただ大人になって振り返って、その意味をよう>>続きを読む

天空の城ラピュタ(1986年製作の映画)

5.0

再見。溌剌とした主人公2人のおかげで明るいイメージがあるが、ナウシカは終末後の世界に劣らず、本作の物語は死者に近い。すでに活気を失った鉱山の町から始まり、大昔に滅びた遺跡に至る道のりは、死の匂いに満ち>>続きを読む