十一さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

十一

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ピータールー マンチェスターの悲劇/ピータールーの虐殺(2018年製作の映画)

3.4

言葉は風の如し。語るほどに、言葉を積み重ねるほどに、実態と言葉が致命的なまでに乖離して悲劇に至る様子を克明に描く。歴史のスコープで俯瞰すると、悲劇に至る狂騒も滑稽みを帯びる。この時期に作られた理由とし>>続きを読む

思い、思われ、ふり、ふられ(2020年製作の映画)

3.0

A-1 Picturesのカラフルでいながら、存在感のある背景描写が見事だが、この作品のリアリティラインに対しては、やや硬いと感じるのは、自分の少女漫画観が古臭いだけなのかもしれない。

エンド・オブ・ステイツ(2019年製作の映画)

3.1

インディージョーンズ最後の聖戦を例にひくまでもなく、シリーズ作品が観客と同時に歳を重ねるものであってみれば、個人の戦いが家族の引き継がれる物語にシフトしていくのは、マーケティングの必然か。元軍人の不仲>>続きを読む

キッズ・オールライト(2010年製作の映画)

3.4

家族が壊れる過程は二時間の脚本の尺に収まるが、家族に成る時間の積み重ねを映画で描くのはなかなか難しい。生物学的父親の登場を起点にし、劇的なドラマを重ねても家族の在り方は揺るがず、あえてスタート地点に戻>>続きを読む

バケモノの子(2015年製作の映画)

3.3

再見。おおかみこどもに内包された矛盾と混沌に比べ、王道と言えば聞こえが良いが、物語とキャラクタに厚みがない。熊徹に屈託なさ過ぎる。碇ゲンドウと言わないまでも、もう少し、歪な何かが、あっても良いのではな>>続きを読む

おおかみこどもの雨と雪(2012年製作の映画)

4.8

再見。母性を理想化し過ぎているとの批判は、確かに当たらなくもない。だが、幻想に手向けられたフィクションの誘いとして、奇妙なリアリティを本作もまた細田作品の例に漏れず維持されている。
花の笑い。どんな苦
>>続きを読む

サマーウォーズ(2009年製作の映画)

4.5

再見。家族を描くにはその断絶から描くのが近道だ。外部から訪問した他人である主人公の受容と、かつて、大家族から疎外された侘助の帰還がドラマを駆動する。前者は、家長、栄の承認によってなされるが、後者は、栄>>続きを読む

時をかける少女(2006年製作の映画)

4.1

再見。公開初日に、新宿で監督の舞台挨拶を聞いた。ゴールドベルグの幾何的なニュアンスを時間を抽象化したCG空間に乗せるセンスはアニメの次世代を感じさせるのに十分な衝撃で、今に至るも、サイバー空間の描写で>>続きを読む

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)

4.4

脚本についての評をいくつか読んだか、判断を保留にしている。鈴を一人で東京に行かせる周囲の大人の無責任さ、また、ネット上で身バレすることの危険についての想像力の欠如。ストーリーラインも散らかっているよう>>続きを読む

家族の庭(2010年製作の映画)

4.0

格差社会と言われて久しいが、それは経済的なものだけではない。豊かな人間関係もまた、持てるものを中心に集積されていく資産の一形態であり、より人間性の根幹に関わるため、より悲劇的な様相を日常に展開しうる。>>続きを読む

ハード・コア(2018年製作の映画)

3.5

計算された緩さはあざといが心地よい。今の日本に生きづらさを感じるなら、秘密結社で徳川の埋蔵金を探すしかない。それでも耐えられないなら、日本を出るしかないという主張。ユートピアはどこにもない。

ゴーストシップ(2002年製作の映画)

3.6

おそらく再見。冒頭シーンとプールの銃弾に見覚えあり。CGほど誇張されない特撮の味がある。衣服だけずり落ちるとか、なかなか思いつけない演出。誰もいなくなった幽霊船のエピソードに一通りの解釈を与えているの>>続きを読む

ゴジラvsコング(2021年製作の映画)

3.7

予想外のあの怪獣の登場で往年のファンはテンションが上がる。監督が変わって、前作にあった神秘性はなく、明快なアクション映画として分かりやすい。香港のネオンをバックにした怪獣プロレスは派手で見栄えはするが>>続きを読む

少女☆歌劇 レヴュー・スタァライト 再生産総集編 ロンド・ロンド・ロンド(2020年製作の映画)

3.7

総集編だか、編集により新しいストーリーに仕立て直されている。TVシリーズにあったキャラクターを立てるための日常パートをごっそり落とし、スタァライトの世界観、レビューシステムにフォーカスされて、スッキリ>>続きを読む

泣きたい私は猫をかぶる(2020年製作の映画)

3.6

岡田麿里脚本らしく、自分のためだけに自分らしい、ウザさ一歩手前のヒロイン造形を、佐藤順一監督らしいジュブナイルキャラに着地させている。もはや、現代的とは言えないかもしれないが、自分はもっとクレバーに立>>続きを読む

カポネ(2020年製作の映画)

2.3

全盛期のカポネの逸話ではなく、記憶と現実の間を彷徨う晩年を描く。着想は面白いが、幻覚と現実の境界が曖昧過ぎて、カポネである必然が見えない。釣り船、庭のワニ、など、絵的に面白いシーンはいくつかあるのだが>>続きを読む

ホームズマン/ミッション・ワイルド(2014年製作の映画)

4.0

これまで、クリント・イーストウッドが「許されざる者」で西部劇を総括したという言説を無批判に受け取っていたが、本作はその先、西部劇に潜むマチズモを解体していく。男性社会に追い詰められた女性を護衛して、大>>続きを読む

ダラス・バイヤーズクラブ(2013年製作の映画)

4.0

偏見に凝り固まったカウボーイが、南部男の強情さや情の厚さを持ちながら、価値観を変化させ、これまで合わなかった人々と心を通じ合わせるようになるというプロットが既に映画的に良い。

劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト(2021年製作の映画)

4.3

クラシックな意味でのアバンギャルド。正しく、幾原監督の系譜として、舞台演出のアップデートを果たしている。ただ、決闘シーンの密度に対する、回想シーンの凡庸さが、演出の空回りを感じさせ、手段が目的と入れ替>>続きを読む

ロボコップ(2014年製作の映画)

3.2

再見。エリートスクワッドで見せた、権力と暴力の結合への批判性は健在で、バーホーベンの批判性とも繋がっていて、リメイクとして真っ当ではあるが、リメイクならではの新味は薄い。

インサイド・ヘッド(2015年製作の映画)

3.9

脚本ライティングの教科書をそのまま作劇に転じたようなメタ脚本。喜びと悲しみは同じ出来事の両側面であることは、この二人の髪の色が同じであることで、最初から示されている。是非とも思春期編を見てみたかったが>>続きを読む

フライト(2012年製作の映画)

3.8

デンゼルワシントンが身持を崩した傲慢キャラを演じるのが多いのは、若い頃のイメージの反転か。ホテルでの誘惑の一夜ではなく、本当の自尊心が試される審問にて転換点を持ってくるのプロットの外し方がうまい。そも>>続きを読む

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)

4.1

近しい存在だからこそ距離感が掴めなくなることがある。兄のリアクションは現実的に見れば大袈裟で戯画的に映るが、家族の断絶を活写する上では劇的だ。上滑りするテンションの居心地の悪さと、甘い感傷が同居する、>>続きを読む

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

4.2

当時の討論の様子がそのまま映画に耐える密度をもっていることに慄く。今日、これだけの熱量を持った議論が行われていることがあるだろうか。ドキュメンタリーの構造としては、当時を振り返る関係者の証言で、当時の>>続きを読む

フォロイング(2017年製作の映画)

3.1

色々と雑なところが気にはなるが、アジアンな混沌とした世界観が独特で印象に残る部分もある。呪いの押し付け合いという点で、倫理的というより因果論的で、それを解決するのが隠者に生贄を捧げるというのも、宗教的>>続きを読む

あなたを抱きしめる日まで(2013年製作の映画)

4.1

赦しの聖性が本質的に、教会という権威の側ではなく、その外側で苦難を引き受ける受難者にしか宿りえないという教団の矛盾を、母親の擬似的な息子として設定した記者に批判させることで、浮き彫りにし、教義本来の赦>>続きを読む

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2014年製作の映画)

3.7

コンピュータサイエンスに関わる人間なら一度は名前を聞いたことのあるチューリング。エニグマ解読の伝説が映像化されるというだけで見る価値があると言うもの。ただ、技術面の描写は控えめなのは仕方ないとしても、>>続きを読む

親切なクムジャさん(2005年製作の映画)

3.8

再見。途中まで見たことを忘れていた。漫画的な演出で、残虐な行為の生々しさを抑え、童話的な見せ方になっている。クムジャさんの純真さがそのまま復讐心の苛烈さのベクトルと一致しているのは、キャラクタ造形と配>>続きを読む

アクアマン(2018年製作の映画)

3.6

見どころを詰め込んで飽きさせない。海洋ロマンから、インディジョーンズばりの遺跡探索に、怪しいマスクのヒールとの対決、巨大怪獣を繰り出しての大戦争と盛り沢山。お腹いっぱい。

塀の中のジュリアス・シーザー(2012年製作の映画)

3.4

元になっているジュリアスシーザーを読み込んでいないとちょっとついていけないところもあるが、話の進行でおおよその意図を察する。演劇とドキュメンタリーの距離を詰め、虚構と現実を近接させる。モノクロにこだわ>>続きを読む

キングダム見えざる敵(2007年製作の映画)

3.5

サウジアラビアでアメリカがテロ捜査をする話。興行的には仕方ないとは言え、サスペンスとアクションに半端に落とすより、せっかくの題材なので、操作の糸口にこぎ着ける駆け引きの政治劇をメインにしてくれた方が唯>>続きを読む

荒野の用心棒(1964年製作の映画)

3.3

黒沢明リスペクト。やかましいぐらいに銃声の音を全編に敷き詰めているのがレオーネらしいが、後期の作品を見た後だと少々物足りない。

ジェヴォーダンの獣(2001年製作の映画)

4.0

再見。フランス的グロテスク趣味のホラー要素に、カンフーアクションとチート主人公、ガリアンソードに鉄扇などの特殊武器を配した、中二病の夢が詰め込まれた傑作。とは言え、以前に見てから10年以上経ち、ガリア>>続きを読む

ハウルの動く城(2004年製作の映画)

4.3

再見。テーマという切り口でみると何度見てもよく分からないが、ついつい引き込まれる不思議な映画。ハウルには最初からソフィの魂しか見ておらず、ソフィもまたハウルが怪物に変じても驚かない。さらにハウルの言動>>続きを読む

夕陽のギャングたち(1971年製作の映画)

3.3

制作の経緯のゴタゴタからか、冗長で演出も抑制を欠く印象。爆音が全編を彩るが、少々やかましく、内容の乱雑さを誤魔化しているような気がしないでもない。