kekqさんの映画レビュー・感想・評価

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暗殺の森(1970年製作の映画)

4.8

小難しい!

ベルナルド・ベルトルッチ初期キャリアの代表作であり、映画史に残る紛れもない金字塔。

冒頭から不親切極まる堂々たる初見殺しの複雑怪奇な脚本、そして意味と実験を幾重にも重ねた絵画のようなめ
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ノマドランド(2020年製作の映画)

3.4

観るのが20年早すぎた映画。自分もいつかこの作品に共感を持って接する日が来るのだろうか。

大きな喪失を抱えたまま時が過ぎ、もはや失ったものを嘆くことも慈しむことも取り戻すこともせず、老いていく肉体と
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TAR/ター(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

絶頂と転落。何かが起きそうで起きない細切れのカットと意味深なセリフのオンパレード。あまりにも不可解なラストを見終わった後、無限に解釈と考察が可能なとんでもない作品であることに気が付いた。

多くの人が
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コレクティブ 国家の嘘(2019年製作の映画)

3.8

ルーマニアを舞台にインフラとしての医療が腐敗しきるとどうなるかを見せつける壮絶なケーススタディ。

途中からドキュメンタリーを観ているのを忘れるほどダイナミックで緊迫感のある展開が凄まじかった(若干の
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ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

3.5

司法の対象にすらならない女性たちが自らと子供たちの未来を守るための決議を下す現代劇。
ドラゴン・タトゥーの2人が対照的な役を演じているのがおもしろい。

極度に虐げられた女性の尊厳がテーマになっている
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GIFT(2023年製作の映画)

3.9

濱口竜介×石橋英子による観客を巻き込んだダイナミックな実験。

しっかりとドラマのある"映画"に、劇伴ではない"演奏"を直接ぶつけるという、そのときその場所でしか味わえない贅沢で特殊な体験だった。
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ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

3.7

奇妙なタイトルとケリー・ライカート監督の評判に惹かれて鑑賞。

移民の3家族が雇った道案内ミークのせいで枯れ果てた荒野を5週間さまよい続ける絶望的西部劇。
アンビエント・ミュージックのようなLess
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別れる決心(2022年製作の映画)

4.5

一体何を観せられた?prime videoで夜中に見たが脳が振り回されすぎて吐き気がするほどすごかった。ハイレベルな韓国映画の中でも屈指の問題作。

ストーリーだけ追うと特に目新しいものはない。展開も
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.9

哀れなるベラが「面白そうかどうか」の判断基準だけで突っ走る大冒険活劇。周りは散々。

プロモーションが上手くいって話題作になっているけどこの監督初見の人がどう感じるのかいろいろ心配になる作品。

美術
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雨月物語(1953年製作の映画)

3.8

ジャパニーズ・クラシックの金字塔。
美学、精神性、時代考証、あらゆるレベルで純度の高いジャポニズムが張り巡らされており、海外で高く評価されるのも納得がいく。そして物語が普通に面白い。

古典的なエンタ
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カモン カモン(2021年製作の映画)

4.0

2024年1本目。コンパクトな人間関係の中に深い苦悩と優しい希望が美しく詰め込まれた佳作だった。

A24は明確なコンセプトをブレることなく掘り下げる作品が特徴的だが、今回は「子供」という非常に描きづ
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異端の鳥(2019年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

2023年〆の一本。ある程度覚悟はしていたが、ちょっとしんどすぎた。
あまりにもまともじゃなさすぎる。安全が脅かされすぎる。だが最後まで観てよかったと思える、素晴らしい作品だった。

全体的に異常に寡
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AIR/エア(2023年製作の映画)

3.4

ふとっちょマット・デイモンの奮闘っぷりを2時間堪能できるお仕事ムービーに見せかけたギャンブルムービー。

見る前からオチは読めており視聴後のインパクトは弱いが、人物像とエピソードの作りこみがとても上手
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この世界に残されて(2019年製作の映画)

3.8

1948年、国全体がおびただしい傷を負い、なお不穏な空気に包まれるハンガリー。ホロコーストを生き残ってしまった16歳少女と42歳婦人科医による密やかで複雑な心の映画。

PTSDの多様さ、難しさを丁寧
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1987、ある闘いの真実(2017年製作の映画)

4.1

1987年韓国、崩壊寸前の軍事政権と激怒する民衆による血まみれのターニングポイント。芯をとらえた邦題がいい仕事をしている。

すべての映画要素に気合いの入った渾身の社会派サスペンスだが、とりわけ実験的
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秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)

3.6

セリーヌ・シアマによるコンパクトなファンタジー。ささやかなシーンの時間の使い方がとても贅沢な良品。

映像だけみると可愛いふたごの女の子がひたすら遊んでいるだけだが、背景の葛藤と少し不思議な関係性を加
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女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)

4.2

18世紀、戦時のイングランド王宮を舞台に繰り広げられる清々しいほど腐り切った情欲と権力欲の争い。互いに貪り尽くした果ての圧倒的な虚無感が素晴らしい。

「わしがヨルゴス・ランティモスじゃい!」と言わん
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行き止まりの世界に生まれて(2018年製作の映画)

3.8

イリノイ州ロックフォード。
過酷な環境に生まれ落ちた少年たちが少年ではなくなるまでを追った12年間の映像記録。

貧困とは"Denial of the opportunity"(機会が奪われていること
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べイビーわるきゅーれ(2021年製作の映画)

3.9

なんとも愛せる2人による奇跡のゆるふわバイオレンス。アクションをアクションとして、コミュ障をコミュ障として徹底的に魅せるこだわりの演出が素晴らしい。
映画の100分やそこらで人間はそんなに成長しない!

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

4.0

ハリウッドの鬼門中の鬼門、伝説のSF「DUNE」をついにまともに映像化した作品。
タルコフスキーの「ソラリス」くらいの抽象度を覚悟していたが、思いのほかきちんとしたスペースオペラで拍子抜けするほどだっ
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8 1/2(1963年製作の映画)

3.6

映画人からオールタイムフェイバリットに挙げられやすい愛されメタ映画。
映画について考えすぎるあまり「映画について考え過ぎている自分」を映画にした映画。ややこしい。

本作より先にアレハンドロ・ゴンザレ
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

3.9

レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの友情物語というだけでベタな熱さがあり、背景を知ってても知らなくても何の教訓も得られない物語も最高。
ディカプリオのキレ芸ファンにもたまらない十分なキレっぷり
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ショック・ドゥ・フューチャー(2019年製作の映画)

3.5

ハウス、テクノが産まれる少し前、黎明期電子音楽の可能性に魅せられた女性のとんでもなく濃密でエモーショナルな1日。

個人的に電子音楽が今も昔も本当に大好きなので、強いシンパシーを持って楽しめた。
アク
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ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男(2017年製作の映画)

3.9

ウィンストン・チャーチルの首相就任からダンケルクの作戦遂行までを描く歴史ドラマ。
演出の要求に応え切るゲイリー・オールドマンの役者根性が凄まじい。

人心をつかむ高いスピーチ能力と戦って勝つことへの強
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沈黙の艦隊(2023年製作の映画)

3.9

30年前の日本を震わせた伝説的社会派バトルマンガを実写化するという、色々な意味で野心的な作品。

安易な商業映画ではなく、多くの批判も覚悟しながら「それでも今これをやる必要がある」という気合いと、どう
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ファンタスティック・プラネット(1973年製作の映画)

3.5

フランス産実験アニメの伝説的作品。
造形、設定、社会性、音楽、さまざまな要素がリッチに詰め込まれており、サイケ全盛の当時のカルチャーに驚きと創作的刺激を与えたのはよくわかる。

とはいえ現代の視点でみ
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ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

3.9

1962年のフランス映画。時空を超えた0.5時間の壮大な紙芝居。60年経ったいまも紛れもなく"映画"として成立している説得力に唸らされる。

まず印象的なのはフレームごとの写真の格好良さ。
一枚一枚の
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マリアンヌ(2016年製作の映画)

3.8

ゼメキス監督によるリッチなアメリカンシネマ。わかりやすく、おもしろく、細部にまで意匠を凝らした安心の一本。

冒頭から主人公二人のほとばしる色気と危うい関係性に見惚れてしまう。スパイとしての優秀さの見
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ブラッド・ダイヤモンド(2006年製作の映画)

3.9

1999年シエラレオネ。ダイヤ密売を巡る正義なき争いの混沌を描く物語。
真に迫る社会派ドラマと迫真のアメリカンアクションが両立した稀有な映画。デフォルトが怒り顔のディカプリオ作品にハズレはなかった。
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ルクス・エテルナ 永遠の光(2019年製作の映画)

3.6

ギャスパー・ノエ×51分の相性のよさ!
「これまだ1時間半もあるの…?🤢」が「あと30分で終わる!🤪」の希望の光に変わる。
この人は濃い短編ばっかり撮ってほしい。

冒頭の画面2分割の雑談が絶妙に長く
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犬王(2021年製作の映画)

2.9

湯浅政明、野木亜希子、松本大洋、大友良英という昭和ギリギリ生まれくらいの元オタクにはたまらない布陣で製作された室町ドラマ。

「ピンポン」以来の湯浅政明×松本大洋コラボレーションはやはり嬉しく、癖の強
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モーリタニアン 黒塗りの記録(2021年製作の映画)

3.7

グアンタナモ基地で起きた非人道的行為を生々しい筆致で書き綴った映画。
物語の抑揚は少ないが、現実の冷たさが心に突き刺さる。

冤罪とされた被収容者を善、拷問を行った米軍を悪と描いているようにみえるが、
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ウインド・リバー(2017年製作の映画)

3.8

ラスト一行のキャプションに戦慄する。

死がすぐそこにある極寒の地で繰り広げられる残酷な物語。アメリカが抱えた歴史的なカルマを生々しく伝える描写がとても重く響く。

主人公含む強く正しい人たちだけでな
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.3

よかった。とんでもなく面白かった。
「風立ちぬ」をさらに枯れさせたようなしっとりとした作品を覚悟していたが、完全に外された。
明らかに監督としての"成長"を感じさせる、ブチ壊れた方の宮崎駿作品だった。
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リズと青い鳥(2018年製作の映画)

4.1

繊細すぎる。

ドラマは本当に大したことは起きておらず主人公ふたりが声を張ることもなく女子高生のグロテスクな内的葛藤を中心に砂浜の砂を手ですくうようにサラサラと美しく流れていく。

ただ、ほんの僅かな
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アナザーラウンド(2020年製作の映画)

3.5

アルコールの功と罪。

中年男性の危機を若者のような短絡的な発想で乗り切ろうとする切なさに溢れた物語。

テーマがテーマなだけに説教くささは否めないが、最終的にたいした反省も後悔も行動変容もしておらず
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