nakajiさんの映画レビュー・感想・評価

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ランボー3/怒りのアフガン(1988年製作の映画)

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「勇敢なるアフガン民族に捧ぐ」というエピローグが告げるように、かつてアメリカはアフガン・ゲリラを支援していた。アフガン民族をゲリラ=「国家に対抗する」(ピエール・クラストル)「戦争機械」(ドゥルーズ/>>続きを読む

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

幽霊も成長するんだなあ。経験し、認識するのだなあ。
ひょっとしたら、人が本当に認識を深め、成長するのは、幽霊になってからなのかもしれない。

『さらば愛しきアウトロー』のロウリー作品。
ロウリーは、こ
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長江哀歌(ちょうこうエレジー)(2006年製作の映画)

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連日、中国の三峡ダムが制限水位を超え、決壊の危機が報道されている。すでに、6月からの大雨と集中豪雨で各地が水没しているが、万一ダムが決壊すれば、被災者は4億~6億人、長江流域の上海、重慶、武漢などの都>>続きを読む

ペイン・アンド・グローリー(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

故郷ラマンチャのイメージと記憶だろう、原色の赤、黄、緑。水、家具。
すぐにそれとわかるアルモドバルの画面。ああ、ボルベール、故郷に戻ってきた。

本作は自伝的だが、そこはアルモドバル。事実を脚色し、経
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デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)

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ようやく足も少しよくなって歩けるようになってきたので、再開後、はじめての映画館へ。

ジャームッシュの新作がゾンビ映画だと聞いたときから、一筋縄ではいかないとは思っていた。
ドストエフスキーの「ボボー
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ハードエイト(1996年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

血のつながっていない者の「父」になろうとする男の物語。
正統な見方でないことはわかっている。
でも、自分にはそんなふうに見えてしまう作品。

ダイナーの前にうなだれたまま青年ジョン(ジョン・C・ライリ
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魂萌え!(2006年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

長く連れ添ってきたし、これからも老後をともにしていくのだろう。漠然とそう思っていた夫が、63歳で急死した。残された59歳の専業主婦「敏子」は、だがまだ充電の残っていた夫の携帯を鳴らす一通の電話から、夫>>続きを読む

キャロル(2015年製作の映画)

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わけあって見返したけど、あいかわらずのケイト・ブランシェットのゴージャスさよ。

ラスト近くで繰り返される頃には、観客はすべてを理解し胸を打たれずにいられない。その冒頭のシークエンスで、「キャロル」(
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ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2018年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

やっぱりドランは、半径3メートルの原体験を未来の他者へと託したいのだろう。その他者は理想的な他者で、もう一人の自分だ。ドラン作品との相性は、この「狭さ」を肯定できるかどうか、だと思う。

ゴダールがド
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

見るたびに印象的なシーンが変わる作品だ。

この前は、地下の「先客」の男(「リスペクト!」)から地上のブルジョア一家の息子に向けた、SOSのモールス信号が届かないというシーンがやけに印象に残った。
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9人の翻訳家 囚われたベストセラー(2019年製作の映画)

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翻訳家は、その存在自体がミステリーだ。
果たして、彼らは作家の側に立つ存在なのか、はたまた出版社に雇われたそちら側の人間なのか。
「間」に立っている彼らは、それだけでダブルスパイ的な存在だ。

原作の
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さよならテレビ(2019年製作の映画)

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ようやくこの話題作を見た。

本作に、「マスゴミ」化するテレビの闇や裏側をえぐり出すドキュメンタリーを期待すると、肩透かしを食らう。
ヌルいといえばヌルい作品なのだ。だが、そのヌルさの中にテレビの本質
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アイリッシュマン(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

ロバート・デニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテル。
豪華にして絢爛。円熟にして芳醇。

派手な銃撃戦があるわけではない。仁義なき殺し合いがあるわけではない。
演技だけで酔わせる、
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宮本から君へ(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

宮本のように、「絶対に勝たねばならぬけんか」が誰にでもあるわけではない――。
などと、絶対に言ってはならぬ。

「これを許したら人生がすべて嘘になる」という闘いに、本当は誰でも日々直面している。
だが
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ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)

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とにかく俳優の顔が凄い。

考えられない世界が展開されているのに、「森」の奥へとぐいぐい引きずり込まれる。
北欧の森の深さにボーダーはあるのか。

私はまだ、この作品を語る言葉を持たない。
この作品を
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帰れない二人(2018年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

ジャ・ジャンクーの中国は、いつも懐かしい。

前作『山河ノスタルジア』の、あるいは代表作『長江哀歌』のタイトル通り、ノスタルジーやエレジーに満ちている。北京五輪あたりから、まるで中国は、かつて日本に起
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

「昔々、ハリウッドでは」、スターとスタンド・ダブルは一心同体だったもんだ。長年一緒にやってきて、セリフにあったような「兄弟以上、妻未満」みたいな。

スタンド・ダブル(単独の「スタントマン」ではない)
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アド・アストラ(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

タイトルの元となったラテン語「per aspera ad astra」は、「困難を克服して栄光を獲得する」という意。

 息子のブラピにとっては、父(トミー・リー・ジョーンズ)への同化(結果的にクルー
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台風家族(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

次男役の新井文浩が、何度も何度も家=フレームを出ようとする。
何度も何度も、この実家とこの家族に背を向け諦めようとする。
だが、そのたびにふみとどまっては戻ってくる。

もしあのとき彼が完全に家を出て
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火口のふたり(2019年製作の映画)

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あの頃に戻って、やってやってやりまくる。
荒井さん、若いわ。

血縁があるからこそ離れられない関係ってあるんだろうね。

国道20号線(2007年製作の映画)

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空族は、登場人物が腐ってるってコメント読んだけど、何を見てるの?

空族見ないから、人間が腐るんだろ。

よこがお(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

深田晃司は、ずっと「間=あわい」に立ち騒ぐ〝何か〟を撮ってきた人だ。
旧作のタイトルでいえば、「ほとり」や「淵」を見つめてきた人。

ある事件が起きる。
でも、この監督が捉えるのは直接の加害者や被害者
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さらば愛しきアウトロー(2018年製作の映画)

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悪くはなかったし、評判通りシシースペイセクが美しくチャーミングだったけど、
レッドフォードの「アウトロー」ぶりがあまりにも享楽的すぎたなあ。
最後も「彼は笑っていた」だし。

やっぱりレッドフォードの
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永遠に僕のもの(2018年製作の映画)

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美しい17歳の少年カルリートス(ロレンソ・フェロ)が、木漏れ日のなか道を歩いて来る。
ふいに、木々の切れ目から垣根を乗り越え、白昼堂々、留守の民家に忍び込む。
「みんなどうかしてる、もっと自由に生きら
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サマーフィーリング(2016年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

しばらくして、じわじわくる作品。

ある夏の真っ盛りの朝、ベッドの隣に寝ていた恋人のサシャが、仕事に出たきりそのまま帰らぬ人に。
目覚めたら最愛の人を喪っていたロレンスは、きっと真夏の夜の夢の続きを見
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凪待ち(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

郁男(香取慎吾)が変わるのは、石巻を去ろうとしたその瞬間である。

駅のTVに、昔の同僚の渡辺が映し出される。
印刷工場を解雇され、腹いせに暴行事件を起こし逮捕されたという。

前夜、渡辺は「競輪で大
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ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)

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監督のトリアーは、極度のうつ病に悩まされていた『メランコリア』の時期、記者会見で「ヒトラーにシンパシーを感じる」と発言し、カンヌ映画祭から永久追放となった。「もう二度と来るな」と。

本作のエンドロー
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誰もがそれを知っている(2018年製作の映画)

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オープニングからエンドロールまで一部の隙もない。
見ていて、何度も「くっー!」とうなってしまった。
まったく、いやらしいほどうまい。
うますぎる。

これは極上のワインやね。
相当、悪酔いするけど。

パリ、嘘つきな恋(2018年製作の映画)

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嘘つきは恋のはじまり。
化けの皮剝がれりゃ恋の終わり。

でも、恋のマラソンのゴールは、そのまま愛のスタートライン。
偶然(検索)は一人で装えるけど、奇跡は二人でしか成し得ないから。

長いお別れ(2019年製作の映画)

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ある日父が、「何もかもが遠い」と言った。
認知症は、治癒ということがない。せいぜい進行を遅らせられるぐらいだ。
それは、一度なってしまえば後戻りできない、最期のお別れに向けた、長く緩慢なレッスンとなる
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ワイルドツアー(2018年製作の映画)

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区切りの卒業の前は、時空の狂った野生の山林だ。
たとえ立ち入り禁止区域があっても、それを踏み越えて、見るもの触れるものすべてが新しい未踏の地を、ワイルドにかき分けて突き進みたくなる。

名づけられてい
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魂のゆくえ(2017年製作の映画)

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イーサン・ホークという俳優は、いつも目の奥に憂いや哀しみをたたえている。
乗りこえがたい矛盾をじっと見つめているような。

ラスト近く、なかなか式典に現れない牧師のイーサン・ホークを探しに、彼の教会が
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イメージの本(2018年製作の映画)

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「撮影にはうんざりだ」。
『愛の世紀』の頃だったか、ゴダールはそう言った。

重要なのは、撮影ではなくモンタージュ。
「私たちに未来を語るのはアーカイヴである」。
ゴダール88歳(イーストウッドと同じ
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愛がなんだ(2018年製作の映画)

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「愛がなんだ」かは、たぶん永遠にわからない。
けれど、ぶつかり合うことでしか、象のように動かない事態というのは、確かな感触としていつもある。

人は、ぶつかってはじめて、相手の立場で考え込むから。
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ペパーミント・キャンディー(1999年製作の映画)

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4Kレストア・デジタルリマスター版がかかると聞いて、劇場に駆けつける。

何度見ても、ペパーミントキャンディーは、爽やかで透き通った味。
だけど、いつしか必ず涙で辛くなる。

一度でも「人生は美しい」
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ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

スパイク・リーはいつもあまりに直球なので、ある時期からちょっと食傷気味だったが、これは彼の最高傑作ではないか。

まずは、原題「BlacKkKlansman」(黒の一族の人間)が多義的で示唆的。
今作
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