「勇敢なるアフガン民族に捧ぐ」というエピローグが告げるように、かつてアメリカはアフガン・ゲリラを支援していた。アフガン民族をゲリラ=「国家に対抗する」(ピエール・クラストル)「戦争機械」(ドゥルーズ/>>続きを読む
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幽霊も成長するんだなあ。経験し、認識するのだなあ。
ひょっとしたら、人が本当に認識を深め、成長するのは、幽霊になってからなのかもしれない。
『さらば愛しきアウトロー』のロウリー作品。
ロウリーは、こ>>続きを読む
連日、中国の三峡ダムが制限水位を超え、決壊の危機が報道されている。すでに、6月からの大雨と集中豪雨で各地が水没しているが、万一ダムが決壊すれば、被災者は4億~6億人、長江流域の上海、重慶、武漢などの都>>続きを読む
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故郷ラマンチャのイメージと記憶だろう、原色の赤、黄、緑。水、家具。
すぐにそれとわかるアルモドバルの画面。ああ、ボルベール、故郷に戻ってきた。
本作は自伝的だが、そこはアルモドバル。事実を脚色し、経>>続きを読む
ようやく足も少しよくなって歩けるようになってきたので、再開後、はじめての映画館へ。
ジャームッシュの新作がゾンビ映画だと聞いたときから、一筋縄ではいかないとは思っていた。
ドストエフスキーの「ボボー>>続きを読む
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血のつながっていない者の「父」になろうとする男の物語。
正統な見方でないことはわかっている。
でも、自分にはそんなふうに見えてしまう作品。
ダイナーの前にうなだれたまま青年ジョン(ジョン・C・ライリ>>続きを読む
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長く連れ添ってきたし、これからも老後をともにしていくのだろう。漠然とそう思っていた夫が、63歳で急死した。残された59歳の専業主婦「敏子」は、だがまだ充電の残っていた夫の携帯を鳴らす一通の電話から、夫>>続きを読む
わけあって見返したけど、あいかわらずのケイト・ブランシェットのゴージャスさよ。
ラスト近くで繰り返される頃には、観客はすべてを理解し胸を打たれずにいられない。その冒頭のシークエンスで、「キャロル」(>>続きを読む
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やっぱりドランは、半径3メートルの原体験を未来の他者へと託したいのだろう。その他者は理想的な他者で、もう一人の自分だ。ドラン作品との相性は、この「狭さ」を肯定できるかどうか、だと思う。
ゴダールがド>>続きを読む
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見るたびに印象的なシーンが変わる作品だ。
この前は、地下の「先客」の男(「リスペクト!」)から地上のブルジョア一家の息子に向けた、SOSのモールス信号が届かないというシーンがやけに印象に残った。
息>>続きを読む
翻訳家は、その存在自体がミステリーだ。
果たして、彼らは作家の側に立つ存在なのか、はたまた出版社に雇われたそちら側の人間なのか。
「間」に立っている彼らは、それだけでダブルスパイ的な存在だ。
原作の>>続きを読む
ようやくこの話題作を見た。
本作に、「マスゴミ」化するテレビの闇や裏側をえぐり出すドキュメンタリーを期待すると、肩透かしを食らう。
ヌルいといえばヌルい作品なのだ。だが、そのヌルさの中にテレビの本質>>続きを読む
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ロバート・デニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテル。
豪華にして絢爛。円熟にして芳醇。
派手な銃撃戦があるわけではない。仁義なき殺し合いがあるわけではない。
演技だけで酔わせる、>>続きを読む
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宮本のように、「絶対に勝たねばならぬけんか」が誰にでもあるわけではない――。
などと、絶対に言ってはならぬ。
「これを許したら人生がすべて嘘になる」という闘いに、本当は誰でも日々直面している。
だが>>続きを読む
とにかく俳優の顔が凄い。
考えられない世界が展開されているのに、「森」の奥へとぐいぐい引きずり込まれる。
北欧の森の深さにボーダーはあるのか。
私はまだ、この作品を語る言葉を持たない。
この作品を>>続きを読む
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ジャ・ジャンクーの中国は、いつも懐かしい。
前作『山河ノスタルジア』の、あるいは代表作『長江哀歌』のタイトル通り、ノスタルジーやエレジーに満ちている。北京五輪あたりから、まるで中国は、かつて日本に起>>続きを読む
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「昔々、ハリウッドでは」、スターとスタンド・ダブルは一心同体だったもんだ。長年一緒にやってきて、セリフにあったような「兄弟以上、妻未満」みたいな。
スタンド・ダブル(単独の「スタントマン」ではない)>>続きを読む
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タイトルの元となったラテン語「per aspera ad astra」は、「困難を克服して栄光を獲得する」という意。
息子のブラピにとっては、父(トミー・リー・ジョーンズ)への同化(結果的にクルー>>続きを読む
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次男役の新井文浩が、何度も何度も家=フレームを出ようとする。
何度も何度も、この実家とこの家族に背を向け諦めようとする。
だが、そのたびにふみとどまっては戻ってくる。
もしあのとき彼が完全に家を出て>>続きを読む
あの頃に戻って、やってやってやりまくる。
荒井さん、若いわ。
血縁があるからこそ離れられない関係ってあるんだろうね。
空族は、登場人物が腐ってるってコメント読んだけど、何を見てるの?
空族見ないから、人間が腐るんだろ。
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深田晃司は、ずっと「間=あわい」に立ち騒ぐ〝何か〟を撮ってきた人だ。
旧作のタイトルでいえば、「ほとり」や「淵」を見つめてきた人。
ある事件が起きる。
でも、この監督が捉えるのは直接の加害者や被害者>>続きを読む
悪くはなかったし、評判通りシシースペイセクが美しくチャーミングだったけど、
レッドフォードの「アウトロー」ぶりがあまりにも享楽的すぎたなあ。
最後も「彼は笑っていた」だし。
やっぱりレッドフォードの>>続きを読む
美しい17歳の少年カルリートス(ロレンソ・フェロ)が、木漏れ日のなか道を歩いて来る。
ふいに、木々の切れ目から垣根を乗り越え、白昼堂々、留守の民家に忍び込む。
「みんなどうかしてる、もっと自由に生きら>>続きを読む
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しばらくして、じわじわくる作品。
ある夏の真っ盛りの朝、ベッドの隣に寝ていた恋人のサシャが、仕事に出たきりそのまま帰らぬ人に。
目覚めたら最愛の人を喪っていたロレンスは、きっと真夏の夜の夢の続きを見>>続きを読む
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郁男(香取慎吾)が変わるのは、石巻を去ろうとしたその瞬間である。
駅のTVに、昔の同僚の渡辺が映し出される。
印刷工場を解雇され、腹いせに暴行事件を起こし逮捕されたという。
前夜、渡辺は「競輪で大>>続きを読む
監督のトリアーは、極度のうつ病に悩まされていた『メランコリア』の時期、記者会見で「ヒトラーにシンパシーを感じる」と発言し、カンヌ映画祭から永久追放となった。「もう二度と来るな」と。
本作のエンドロー>>続きを読む
オープニングからエンドロールまで一部の隙もない。
見ていて、何度も「くっー!」とうなってしまった。
まったく、いやらしいほどうまい。
うますぎる。
これは極上のワインやね。
相当、悪酔いするけど。
嘘つきは恋のはじまり。
化けの皮剝がれりゃ恋の終わり。
でも、恋のマラソンのゴールは、そのまま愛のスタートライン。
偶然(検索)は一人で装えるけど、奇跡は二人でしか成し得ないから。
ある日父が、「何もかもが遠い」と言った。
認知症は、治癒ということがない。せいぜい進行を遅らせられるぐらいだ。
それは、一度なってしまえば後戻りできない、最期のお別れに向けた、長く緩慢なレッスンとなる>>続きを読む
区切りの卒業の前は、時空の狂った野生の山林だ。
たとえ立ち入り禁止区域があっても、それを踏み越えて、見るもの触れるものすべてが新しい未踏の地を、ワイルドにかき分けて突き進みたくなる。
名づけられてい>>続きを読む
イーサン・ホークという俳優は、いつも目の奥に憂いや哀しみをたたえている。
乗りこえがたい矛盾をじっと見つめているような。
ラスト近く、なかなか式典に現れない牧師のイーサン・ホークを探しに、彼の教会が>>続きを読む
「撮影にはうんざりだ」。
『愛の世紀』の頃だったか、ゴダールはそう言った。
重要なのは、撮影ではなくモンタージュ。
「私たちに未来を語るのはアーカイヴである」。
ゴダール88歳(イーストウッドと同じ>>続きを読む
「愛がなんだ」かは、たぶん永遠にわからない。
けれど、ぶつかり合うことでしか、象のように動かない事態というのは、確かな感触としていつもある。
人は、ぶつかってはじめて、相手の立場で考え込むから。>>続きを読む
4Kレストア・デジタルリマスター版がかかると聞いて、劇場に駆けつける。
何度見ても、ペパーミントキャンディーは、爽やかで透き通った味。
だけど、いつしか必ず涙で辛くなる。
一度でも「人生は美しい」>>続きを読む
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スパイク・リーはいつもあまりに直球なので、ある時期からちょっと食傷気味だったが、これは彼の最高傑作ではないか。
まずは、原題「BlacKkKlansman」(黒の一族の人間)が多義的で示唆的。
今作>>続きを読む