kotaさんの映画レビュー・感想・評価

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僕たちは変わらない朝を迎える(2021年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

言葉はいつも追いつかない。今ここで、伝えるべきときに声にならない。
息苦しいほど胸を占める想いは、喉を通らず、重力に沈んでいく。
それでも時間は過ぎて、そこで、行動を選ばなくてはならない。伝えないまま
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すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.8

このレビューはネタバレを含みます

受刑者、技能実習生、風俗嬢、障がい者、
生きにくい人々こそ、その中にある温かさを描く。

温かさこそ、本質であれ。
筋の通らないものへの憤怒、
生きにくさを嘲笑するものへの憤怒、
壊された脳に、支配さ
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マチネの終わりに(2019年製作の映画)

4.8

胸がえぐられ続ける。
旋律に始まり、出会ってしまった心通ずる存在、たたみかける情熱。気遣いの優しさ。あまりに運命的なすれ違い。強すぎた愛からの歪み。持ち去られた一人子、置き去られたt-rex。首を絞め
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ランド・オブ・プレンティ(2004年製作の映画)

-

16年前の日記から。
………

9.11後のアメリカ。でもそれだけでなく、40年前のベトナムも痛烈に引きずっている。

時間の中で人がつくられていく。
強く信じたものを疑わない。疑ってみようという気な
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劇場版 荒野に希望の灯をともす(2022年製作の映画)

4.5

その土地に足を運び、
求めを感じ、
必要とされることを、
心動かされるところに依拠して、
その土地の人々の生きる姿に従いながら、
自分の意思を見つめもしながら、
関わる中でまたその思いも育ち、
行動し
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グリーンブック(2018年製作の映画)

4.0

人はどんな時に心を交わしていくのだろう。

秀でた才能に触れたときか、
助けられたときか、
傷つくことを知ったときか、
同じ飯を食べたときか、
優しさを感じたときか、
困難を共にしたときか、
必要とさ
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娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)

4.0

見せ物としての「戦争映画」ではなく、虐殺の記録。そこに呑み込まれる準備をしてから観はじめた方が良いかもしれない。

街の破壊、生活の破壊、人生の破壊、人体の破壊。

そんな死地になぜ残るのか、そんな死
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ガリーボーイ(2018年製作の映画)

3.5

カセットテープ・ダイアリーズからの流れで視聴。

なんというか、ストーリーそのものは想像通りの展開。
身分制度、貧困、宗教、家父長制、そういうなかで絶望的に抑圧され、葛藤にもがきながら、新しい世代の仲
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日日是好日(2018年製作の映画)

3.8

表千家の師範として生きてこられた人生と邂逅し、ふともう一度観たくなって鑑賞。


ただその日、その時を感じながら、
同じような繰り返しかもしれない日々を、
しかし一度たりとも同じことはない今日として、
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恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)

3.9

世代の中でしか築けないもの。
世代を超えてこそ気づきあえるもの。
捨てきれないものを諦めない。いつからだって。
しなやかに弾む。もう一度。

清々しいなあ。

それにしても小松菜奈の表現力ったら。

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

大切にし続けたい人との未来のために夢を売って、うわべの成功を手にしながらも、
偏屈なまでのこだわりをまるごと大切にしてくれる理解者であったからこそすれ違って、傷ついて、心無い言葉で突き放して、
それで
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PLAN 75(2022年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

胸が不穏にざわついて、いたたまれずに足を運んだ。映画館に行くのは何年振りだろう。

徹底して描かれるのは末端のひとびと。
徹底して描かれないのは中枢のひとびと。

やまゆり園とか、アウシュビッツとかを
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マイ・インターン(2015年製作の映画)

4.0

丁寧に歩んで、重ねてきた経験があって、
それでいて謙虚に、しかし求められれば大胆に、誰かのために自分を活かすことに誠実な大人。
ロバート・デ・ニーロ、ずるいくらいに素敵です。
生きてきた時間の積み重ね
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ガッジョ・ディーロ(1997年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ロマ音楽に誘われて鑑賞。

「ノラ・ルカ」を探してさまよい辿り着いた、屈託のないちょっといたずらっぽい笑顔が印象的なロマン・デュリスの、ロマの村での滞在記。文化人類学的な作品。

酒、感情、表情、ジェ
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ニューヨークの巴里夫(2013年製作の映画)

3.8

スパニッシュ・アパートメントを観たのが15年前くらいだったか。3部作目が出ていたとは知らず、たまたま発見してついつい鑑賞。図らずしてまたしてもグザヴィエと同じくらいの年頃に見ることとなった。

だから
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カセットテープ・ダイアリーズ(2019年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

陳腐な言い回しだけれど、弾ける青春を感じる作品。

自らのルーツ、移住を余儀なくされた歴史、民族性の伝統と道徳、吹き荒れた新自由主義と、それに助長された人種主義。

そんな諸々に挟まれ、追いやられ、押
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家へ帰ろう(2017年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

50年よりもっと、時が過ぎたんだろう。
それでもずっと、遂げられず心残りだったんだろう。

逃れられず人生と向き合わざるをえなくなって初めて、はっと気付かされたように、衝動的なほどに突然に、自分を突き
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浅田家!(2020年製作の映画)

4.8

家族にとって大切な、在りたい姿をのこす。
その一瞬を切り取る。
そこに写っていない存在も含めて。

そんな一瞬を切り取る感性を育むのもまた家族。
何になりたいのか、どうありたいのかを、大切にしあう家族
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(2020年製作の映画)

3.6

今を生きていながら、過去を引きずって心のどこかが留まったままでいる、そんな人には少し、刺さるものがあるかもしれない。

在りはしないこと、起こりはしないことだけど、
こんな別の人生もあったかもしれない
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ラストレター(2020年製作の映画)

3.8

成就しないまま、整理のつかないまま途絶えた繋がりは、わだかまりを残して心にずっと留まり続ける。
時間だけは後戻りできず進み続けて、心一つ取り残したまま着々と変化を積み重ねて、ずっと先まで行ってしまう。
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こどもしょくどう(2017年製作の映画)

3.8

一つずつでもいい、一つだけでもいい。
少しずつでもいい、少しだけでもいい。
誰かが生きていくことの、力になれるなら。
一人ひとりが、一つひとつに、少しだけでも手を伸ばせたら、
世界がじわりと動き出して
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あの日のオルガン(2019年製作の映画)

5.0

大きな波に吞み込まれるなかで、
それぞれのいろんな思いが交錯した。

日1日と可愛くなるばかりの我が子を、
毎日抱きしめても飽き足りないほどの我が子を、
それでも手放さなくてはならない心境はどれほどの
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この世界の片隅に(2016年製作の映画)

4.3

激動の時代に、飲み込まれていく普通の生活、壊されていく暮らし、家族、身体。
それでも生きていく毎日を、やさしく、やわらかく、淡々と描く。
その静かさがむしろ沁みてくる。
ただただ生活を描くことで、戦争
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万引き家族(2018年製作の映画)

4.5

つくられた社会の中で、その中で置かれた状況の中で、生きるため、生活をするための知恵を使いながら、大切なことを守りながら、間違いながら、守られながら、温かくつながりながら、生きているということ。
そこに
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湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)

4.5

家族を失った家族を、また家族にしていく。
本当の家族よりも、強くたくましく、家族になっていく。本気で大切にし続けることで。
そこに生き様を遺すように。
ぶれない芯。たくましい喜怒哀楽。人間くささ。
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ビューティフル・マインド(2001年製作の映画)

4.0

1つ。私の目から見える彼と、彼の目に見える世界、彼が生きている世界とには、大きな隔たりがあることを肝に銘じて、人を理解することに対して謙虚でなくてはならないということを、思い返される。

1つ。私が彼
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ぐるりのこと。(2008年製作の映画)

5.0

何度だって観たい。

頼りないけど温かい、
愚直で不器用だけど愛おしい、
そんな2人が、素朴でいてとてもいい。
憧れてしまう夫婦。

ただ言葉でじゃなく、生きることで、
私にとってあなたが大切なんだっ
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LION ライオン 25年目のただいま(2015年製作の映画)

4.0

自分の中にも、
あの日に置いてきてしまった大事なものがあって、
それが今と誠実に向き合えないわだかまりになっているんじゃないか。
それがここ何年もの煮え切らなさの元にあるんじゃないか。
映画の途中で、
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