フリッツ・ラングのノワール作品として最良の作品。「誰かに電話する」という何度も使われるモチーフは、名前の知られない大勢の人間が住む大都会の表象。古典的ハリウッドの語りによって飽きさせない展開に、リー・>>続きを読む
演技するという演技を観る映画。セクシュアリティや「男にはわからない女の気持ち」を女装という仮面を通じて図らずもスパイしていく。ダスティン・ホフマンだから出来た上質のコメディ。
賭けに燃える場末の雰囲気が過剰なまでに漂ってくる。陰鬱ですえた匂いに満ちた苦い映画。
猫に変わる女という題材だが、彼女の「無意識」を映画にしたという点で興味深い作品。特に彼女の夢のシーンは特筆している。精神病的ホラー作品。
混乱と狂騒の中で事件に巻き込まれたオーソン・ウェルズ。彼の才気はほとばしっており、表現主義的な場面や撮影技術の素晴らしさを、90分まるごと楽しめる。美貌の人に影有り、ということで黒幕リタ・ヘイワースを>>続きを読む
絶望だけの物語に目が離せないのは、登場人物が喋りすぎることなく、「顔」で演技をしているからだ。荒漠たる基地の寒村にて繰り広げられる、スクリーン上に広がる冬の青空のような、からりとした暗鬱の持つ力は素晴>>続きを読む
『世界を揺るがした10日間』を書いたジョン・リードとその妻の壮大な物語。第一次大戦中のアメリカにおける共産主義の貴重なドキュメンタリーとなっている点に加えて、ロシア革命の欺瞞にも触れていて、それをラブ>>続きを読む
自らの血に背くかのように理由なき殺人を続ける主人公。どす黒いニッポンの家族社会のルールを撹乱させる彼は、理由なき犯行に実存をかけたのだ。子どもの嫁を父が奪うという今村映画らしい脚本やひときわ可愛らしい>>続きを読む
人間が人間として扱われる状態ではない戦争とはこの上なく喜劇的であり、喜八監督の乾いたユーモアセンスが、戦争の馬鹿馬鹿しい本質をシュールに突いている。
ロリータに対する強迫観念が映像自体から窮屈なまでに漂ってくる。ピーターセラーズの怪演に刮目。
因習と南方の土着の習俗がむせかえるような映画。祭りにおける仮面の役割、そして汎神論とアニミズム。理由もなく足枷をはめられる島の民をじっと神さまはみているのだ。
『誘拐犯が誘拐犯の子どもを誘拐したってわけ』
梶芽衣子の女囚さそりにパク・チャヌクらしいカメラワークが加わり、さらにプロットをいくつも繋げているので、観ている方は何を追っていいのかわからなくなる。『>>続きを読む
映画内で起る物語がとてつもなくヘヴィなのにもかかわらず、画面から漂うのはどことなく明るい「密陽」の雰囲気。何も起こっていないようで起こっている。手持ちのカメラから漂う生活感。コメディにもなりうるし、シ>>続きを読む
ブラインド・ウィリー・ジョンスンのゴスペルがかかる中、この素晴らしい「音付きサイレント映画」はサイレント映画の最良の部分を再現していると言えるだろう。それは顔だけで全てを語る。新約聖書の名場面全てを再>>続きを読む
聞き取れないような囁き声、噂話、因習と性、暴力のもたらす粘りの濃い風俗の中で生きぬく女の力。寓喩的な蒸気機関車のモンタージュやアイロンに映る主人公の歪んだ顔が素晴らしい。
【熱狂的モリッシーファンとして】
これは単なる若者が「何者か」になる前に誰もが経験することに関する映画で、偶然にもそれがいつも憂鬱でひねくれた男の上に起こったということにすぎない。ザ・スミスの素晴らし>>続きを読む
「按摩にするには、もったいないでしょう、ハハ、ハハハ」
あまりにもダークな勝新。女の四肢を揉む時の緊張感、殺しも女も、杉の市の策士ぶりに唖然。祭りに始まり祭りに終わる構成も見事。
朴正煕大統領の側近理容師役のソン・ガンホが実に味わい深く演じている好作品。民衆から見た一韓国史として興味深い作品。
悪魔に復讐する為に悪魔となる男が復讐を終えた時の喜びと哀しみ。チェ・ミンシクの演技力に脱帽で、中弛みはあるものの、ひたすら殺しまくりの2時間は韓国映画の最暗黒=ノワールだ。
漢江に架かる橋といえば朝鮮戦争時に韓国軍が、攻め入る北朝鮮軍に圧されソウルを「棄てた」際に自ら爆破した橋。自殺の名所でもあり、漢江の奇跡他、政治的な意味合いも大きい場所。分析すれば面白いだろうが、とも>>続きを読む
馬鹿みたいなオタク擁護にこちらもあんぐり。日本映画の凋落はここら辺から始まる。
日本映画の最底辺。観るだけで吐き気を催すようなシロモノ。
小林正樹監督にとって、彼の生来の問題であった「天皇制と戦争」「体制と人間」は東京裁判のドキュメンタリー映画まで作ってしまった。国際社会の激動の中で、現在まで引きずられている東京裁判の貴重な記録。それぞ>>続きを読む
高倉健の『神戸国際ギャング』と同じで、東映実録は「俳優映画」であるからまず鶴田浩二を如何にアンチ・ヒーローにさせるかが問題だが、結局健さんと同じく彼はヒーローだった……。東映脱獄ものはユーモラスで悪辣>>続きを読む
どうしてあの時ヒロインが主人公の頬を叩いたのか、わからないまま今も生きている。
剣の業に憑きまとわれてその道を行くしかないダークヒーロー、机竜之助の最後の10分の狂乱が素晴らしい。それ以外はとてもダレるが連作ものなので仕方ないところか。
なぜこれほど三隅作品の題字は素晴らしいのか!雷蔵の顔が三島由紀夫に見える時があるほど三島の原作に忠実で、剣道というものに絶対を求め、その絶対への極めて純粋な意志が、抽象的に描かれている。映画としては道>>続きを読む
藤村志保が出てくる一番初めのワンショットからの緊張感が全編をピンとさせている。特に良いのは渚まゆみで、のちの東映やくざ映画で散々な目に遭う以前の彼女のケレンさが見どころ。
都会の色、特に60年代のサイケな風潮の切り取り方がさすが大映の宮川カメラマン。プログラムピクチャーらしくストーリー的に難があるが、それをカバーする雷蔵の魅力がある。西村晃・内田朝雄の悪役も良い。
雷蔵の眠狂四郎的虚無が、蛇のようで最後はチャーミングな成田三樹夫とギラギラする野川由美子の間で光っている。特攻崩れという設定も素晴らしいプログラムピクチャー。
北朝鮮に自由があるわけではないし自由で民主的な韓国にもわけではない。「網」というメタファーで伝えられる人間を縛るシステムや思想が、ただ生活を送っているだけの人間を傷つけていく様が良い。ギドクらしいネチ>>続きを読む
これはフィクションではなく、ひとつのドキュメンタリーである。脱北をテーマにした初めからハッピーエンドなど存在し得ない題材の映画であるが「雨」は国境を越えて降るものなのである。この「雨」の表象によって苦>>続きを読む
韓国ノワールの潜入捜査で、なんとか新しい基軸を描こうと努力しているがあまり響かない。バディものとしては素晴らしい。やくざと手段を選ばない警察の間で揺れ動く二人の「次の動向」への関心が映画を引っ張ってい>>続きを読む
ユートピアにはいつまでもいられない。優しくきびしい猫好きにはたまらないアニメ映画。
映画が光で世界を切り取るというものであるとするならば、この映画こそ実に美しく光の世界を見せ、世界の切り取っている。フレーミングも素晴らしい。しかしながら4時間近くある、思春期の淡い恋と不良少年グループ>>続きを読む