つかれぐまさんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

つかれぐま

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エクス・マキナ(2015年製作の映画)

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<重層的な話を貫くアート>

"エヴァ”の美しく斬新な造形。自然の中の無機質というロケーション。監督デビュー作とは思えない、風格ある映像センスだ。

社長、青年、エヴァ。この三者それぞれの視点に切り替
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街の上で(2019年製作の映画)

4.0

21/5/19@UL吉祥寺#3

<遠回り>

若い頃、マニュアル見て「最短距離」を選んでいた我々バブル世代には、羨ましい豊かな時間。中間にあたるアラフォー今泉監督が見せてくれた草食世代が「遠回り」す
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エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)

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ポスターの印象とはだいぶ違う。良い意味で。

複雑で、シニカルで、その奥の深~い底にある微かなロマンを、観る者が能動的に見つけ出す。そんな構造の凄い脚本。

共感できなかったり、倫理的にアウトな人も出
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キャビン(2011年製作の映画)

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人の<好き>を笑う悪趣味。

久しぶりに嫌いな作品。
B級ホラー好きにしか分からない構造を取りつつも、その作り手とファンへ痛烈な皮肉をかます。「人の好きなものを、そいつらのやり方で笑ってやろう」という
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アルゴ(2012年製作の映画)

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<絶妙なバランスの上で>

史実の力を最大化するフィクション。CIA、映画産業、アメリカ、それらを貶すでも讃えるでもない。そしてアメリカ対イランという「表層」を、個人対集団という「本質」へ見事に変換。
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彼らが本気で編むときは、(2017年製作の映画)

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愛されなければ、愛せない。

育児放棄という負の継承。
その連鎖を止める愛の話。

人をバカにしたような「レンタネコ」と同じ監督とは思えない。自ら「第二章の始まり」と語る本作は、たんにトランスジェンダ
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かもめ食堂(2005年製作の映画)

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"No coffee, No Life"

な人間なので、映画鑑賞時の珈琲は欠かさない。そんな自分には嬉しい珈琲☕が美味しくなる作品。サチエが人に心を開くことで、そこから人の輪が生まれ「かもめ食堂」は
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オール・ユー・ニード・イズ・キル(2014年製作の映画)

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Live Die Repeat

覚えゲーとタイムリープを組み合わせたギミック。トム・クルーズのパブリックイメージが持つ長短所。それらを存分に活かす手際の良さを楽しんだ。

起:いけ好かないトム・クル
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シェフ 三ツ星フードトラック始めました(2014年製作の映画)

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「映画と料理」

趣味は?と聞かれれば、↑と答える♂なので、本作はどストライク。惚れ惚れする料理の手際の良さが、編集テンポの心地よさと見事に合致。切り詰めた分の尺で、音楽と料理の楽しさを存分に。

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アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)

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<往きて還りし物語>

「2001年」は外宇宙へ、本作は内宇宙(人間の内面)へのオデッセイ。一夜の冒険の末に、泣きながら女の元へ還っていく男。

キューブリック作品の中では低評価な本作。確かに独特の冷
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パラサイト 半地下の家族 (モノクロVer.)(2019年製作の映画)

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白と黒、
越えられない線はない。

本作が描く格差は貧富だけじゃない。キーワード「臭い」に込められた真意が、うかがい知れるモノクロ版。

ポンジュノのベスト版とでも言おうか、
犯罪「殺人の追憶」
父親
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ダークナイト(2008年製作の映画)

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二元論(分かりやすさ)の否定

複雑な事象を分かりやすく語る。それが是とされがちな現代にあって、本作はその真逆。故に何度も見直され、長く名作であり続けているのではないか。

善と悪、光と影、正義と邪心
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バットマン ビギンズ(2005年製作の映画)

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<ノーラン ビギンズ>

従来のアメコミ映画らしからぬソリッドな画。そこに放り込まれたブルース・ウェインが切る「大見得」。ノーラン初のビッグバジェットで描かれたのは壮大な中二病世界。

すっかり巨匠と
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ワイルド・スピード MAX(2009年製作の映画)

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<シリーズ4作目>

いつもゆる~く観てきたこのシリーズ。きちんと、それも時系列通りに見直してみたら新しい発見?があるんじゃないかという思いつき。

ドム、ミア、ブライアン、この3人の<兄妹弟>の結束
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マ・レイニーのブラックボトム(2020年製作の映画)

3.0

その死が信じられなかった。
この作品を観るまでは。

先日も息子@MCUビギナーに「ブラックパンサー」を見せて、「陛下はきっと今もワカンダにいるんだ」と半分真面目に思ったり・・。闘う国王やメジャーリー
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ショーン・オブ・ザ・デッド(2004年製作の映画)

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「ホットファズ」「ワールズエンド」の愛すべき3バカトリオ1作目。

タイトル通り、元祖ゾンビ「ドーンオブザデッド」を、イギリスに置き換えて作ったコメディホラーで、舞台は(アメリカの象徴)ショッピングモ
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羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

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「沈黙」が意味する所。

恐怖が去った安堵か、殺された悲劇か、それとも声を上げることすら諦めてしまったのか。ホラーという表層に隠された女性の生き辛さ。

美しく高潔なクラリスが、なぜレクターに心を開き
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JUNK HEAD(2017年製作の映画)

3.5

21/4/14@UL吉祥寺#3

<世界観の完成度が凄い>

この世界で何が起きるのか?
それより、この世界にただ浸る。
そんな風に楽しめる稀有な怪作。

とは言え、話も十分面白い。
作家性が強い作品
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ハウルの動く城(2004年製作の映画)

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女性の「したたかさ」、
男性の「いい加減さ」。

この対比は面白いが、宮崎駿が目指した「恋愛映画」としては微妙。

ソフィーとハウルの関係は、最初はハウルが、終盤ではソフィーがそれぞれ相手を「支配」し
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ノマドランド(2020年製作の映画)

3.5

21/3/30@調布#8

<自由+大地=∞?>

アメリカは自由の国だ。社会保障が受けられなくても、あらゆる生き方を選択する自由は均しくある。そして広大で美しい大地(ランド)も。

そういう国の酸い
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博士の愛した数式(2005年製作の映画)

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<真心が通じる世界>

桜の季節が来ると見たくなる、どこまでも美しい世界。そして黒澤明への謝辞。

時は流れず。
このテーマに合わせるように(作中では1年以上が経過しているにも関わらず)全てのシーンが
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あのこは貴族(2021年製作の映画)

4.5

21/3/17@UL吉祥寺#4

彼女がタクシーを降りる時。

東京という街は分断が生まれるように出来ている。住む町、通う学校、使う乗り物、みんな違うから他の階層と交わることがなく、実は多様性にほど遠
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時をかける少女(2006年製作の映画)

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「逃げちゃだめだ」

エヴァではないが、これもまたそんな話。快活だがモラトリアムな少女が「逃げる」ことの非を知り、自分と自分の未来に向き合っていく。タイムリープはそれを語る格好の舞台装置。

「高校生
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シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

4.5

初:3/11@調布_ULTIRA
弐:3/24@吉祥寺5F

「日常への帰還」で終劇。

本作の主旨 "One Last Kiss" に些か反するが、弐回目を観に行ってしまったので感想(改)を。今回で
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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012年製作の映画)

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何度でもやり直せる?

「破」がドラマをしっかり見せたのと違い、本作は「設定」を見せることに終始する。映画としてのカタルシスは?だが、終盤31分の攻防は何度か見返す内にその意味が解り好きになってきた。
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エクストリーム・ジョブ(2018年製作の映画)

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ダサかっこいい
人情刑事コメディ

ちょっと前の香港アクションを、たっぷりのケレンミと韓国風タレで濃い目に味付けした庶民の味。私は公開時ノーマークだったけど、相互フォローの皆さんは凄いね。ちゃんと観て
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あの頃。(2021年製作の映画)

4.0

21/2/25@大泉#8

阿倍野キャッツアイ。

片想いから始まって、思わぬテーマに着地した「愛がなんだ」。本作も同様にアイドルへの「片想い」から始まり、「仲間」の話へと転調していく。

私のオール
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愛がなんだ(2018年製作の映画)

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<恋愛ホラー>

とでも言うべき、ぞっとする結末。しかしそこに至るまでダークな雰囲気はない。テルコの旺盛な食欲、お酒、セックス。そんな彼女の生命力が作品を明るくしているのだが、実はこれが曲者。

自分
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CLIMAX クライマックス(2018年製作の映画)

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「踊り狂う」

それ以上でも以下でもない。
こんな高純度のヤバさを自分の言葉で表現するのが難しいが、ゴダールの撮った「シャイニング」という印象。

生理的に嫌だなと思わせる要素を、抜け目なく盛り込んで
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すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.5

21/2/16@大泉#2

<情けは人の為ならず>

三上を囲む市井の人々が、単なる善意からではなく、むしろ自分の為に彼を支えていたように思えた。自分達の人生に欠落していた何かを補うように。

三上の
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007/慰めの報酬(2008年製作の映画)

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ダニエル・ボンド#2

これは駄目でしょ~。

金だけ掛けて何が起きているか分らないアクション。グダグダな脚本は、ボンドの任務が何かを見失う。魅力のないキャラクターたち。

(ダニエル・クレイグ以前の
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キック・アス(2010年製作の映画)

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人の命に軽重「あり」。

本作、X-MEN、キングスマンと続いたマシューヴォーンの3打席連続ホームラン。その一本目。

本作が何とも痛快極まりないのは、所謂「タブー」ギリギリを果敢に攻めているからかな
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007/カジノ・ロワイヤル(2006年製作の映画)

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ダニエル・ボンド#1

"007"は過去の遺物だった。
自分の中では。

東西冷戦という最高の舞台設定が氷解。荒唐無稽&女性軽視なストーリーも現代の感覚に合わず。更には「ミッション・インポッシブル」と
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気狂いピエロ(1965年製作の映画)

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眼に沁みる原色の美。
詩の如き台詞は哲学。
アメリカへの批判。
自身と女優の離婚を投影。

こうした見所が、自由勝手に主張を展開する。驚くべきことに、作中でこれらの要素は何ひとつ噛み合わない。だがそれ
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半世界(2018年製作の映画)

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<Another World>

人生半ばの中年男の話。
色んな反(対側の)世界に思いを馳せる作品。

自分と他人、世間と世界、過去と未来、親と子、夫と妻、職場と家庭、山と海、人と自然、そして現世と来
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花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

4.0

21/2/4@大泉#5

大学生のボクらが、大人になるまで。

どこか邦画離れした語り口。
「500日のサマー」の爽やかさ、「ララランド」のほろ苦さ、「6才のボクが」のような時間経過表現の技巧。そして
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