kakioさんの映画レビュー・感想・評価

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ムーンライト(2016年製作の映画)

4.5

濃淡のある洗練された詩的な映像と、要所をおさえた無駄のないミニマルなストーリーテリング。”マイノリティの個人的な物語”という小さなフレームでは収まりきらないテーマ性。個人が抱える根源的な孤独の相が、ブ>>続きを読む

遠い声、静かな暮し(1988年製作の映画)

4.0

とある家族の肖像。ヴァージニアウルフやジョイスのような意識の流れ系小説を思わせる不思議な空気感。
90分弱の短い映画だが、いくつもの断片的で印象的な回想が効果的に配置され、大衆歌を織り交ぜながら、悲哀
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ヴァージン・スーサイズ(1999年製作の映画)

4.0

NewJeansのASAPの元ネタってこれだったのか。。
男子にとって理解不可能なでかい謎としての美少女世界。どこか退屈そうでつかみどころのない、いたずらっぽい笑みを浮かべはしゃぐガール。
洗練されて
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ゴーストワールド(2001年製作の映画)

3.5

複雑系思春期ガールの世界は合理的で整合的な理解を断固拒絶する。
90年代の終末論・精神分析的なデカダンスの影をひっぱり、周囲の人間を冷笑しシニカルな態度をとる2ちゃんねるが猛威をふるう00年代の幕開け
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さがす(2022年製作の映画)

4.5

さがす
意味を求めるな、と彼は言った
やっと見つかった、と彼女は言った
何の勝負やねん、と互いに交わした

正解?答え?真実?
なんの勝負やねん!

パンピング・アイアン (鋼鉄の男)/アーノルド・シュワルツェネッガーの鋼鉄の男(1977年製作の映画)

3.5

とんでもない重さの鉄を持ち上げている。はたから見る限りもう無理だろ、もう限界だろと思うのに、「何が何でも後2回やれ」と激が飛び、限界を突破して持ち上げる。

筋肉の痛みを感じながら、何度も痛めつける。
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いますぐ抱きしめたい(1988年製作の映画)

4.5

傑作。デビュー作にしてほとばしる才能に「失禁」やむなし!演出と編集、とにかくカメラだ、素数を数えながら次に映る画面のモーションに集中するんだ。熱病にかかった状態で映画はすぐに終わる。
ラストの死のダン
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リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

4.0

接近と離反を繰り返しながら絶妙な侵入角度を探る2人の恋のゆくえ。恋のスプートニクの周縁に精密に配置された巨匠やファミリー達の重力でスイングバイして引き合う速度は加速する。

レコードという同心円状の円
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わたしは最悪。(2021年製作の映画)

4.0

倫理的、あまりに倫理的。
良いとか悪いとか、他人の道徳的尺度では測りきれない自分色の人生を持つこと。他人への弁解や感情を言葉で説明することなど不要。自分でも不可解で奇天烈で衝動的で時に背徳的だからこそ
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MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

3.5

目にはまぶたがあるが、耳にふたはない。
爆発音と自然音の連なりが、我々のバランスを司る渦上の三半規管に対して、感染したシダ植物のように変容を迫る。
音のイニシエーションによって、眠った状態の無防備な体
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

5.0

四角いフレームが意識された背景美術、溶け合うことを抑えた境界の明確な色づかい、人形のようにしわのないつるつるとした肌、フラットな絵画的世界観を強烈に印象付け、ぬるりとした平面によって見る側の泳ぐ視線を>>続きを読む

象は静かに座っている(2018年製作の映画)

5.0

象の肌のような灰色の壁で取り囲まれたしわくちゃな箱庭のセカイ。
ここではないどこかなど幻想で、現実をみて生きるしかないという説教じみた言葉が空虚に響くほどに、ここは決定的に何かが欠け乾ききっている。
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スケート・キッチン(2018年製作の映画)

3.5

ポップパンク的軽快さを引き継ぎながら全体のモードは明らかにクローズドな親密さを前景化させたインディーチルへ。
肩幅大の板とローラーが目線の高さと速度を変え、普段とは違う移動のリズムで見える街の風景が変
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友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)

4.0

思い立ったが吉日
決意と一途な心こそ成長が刻まれたノートにはさまれた一輪の白い花だ
ロバを追いかけるシーンが最高。走り出した足がとまらない!考えるまえにもう体は動きはじめているんだ。世界中の期待を背負
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トムボーイ(2011年製作の映画)

4.5

自分の部屋、親に内緒の外出、お腹の赤ちゃんへの囁き、秘密が少しずつ増えていくほど自分の世界は広がり、やがて外の世界とぶつかるだろう
青いワンピース1つでまなざしがひっくり返るってなんか笑っちゃうね
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The Witch/魔女(2018年製作の映画)

4.0

暗殺者、女子高生、異能力者、記憶喪失、サイコパス、様々な素顔を内に秘め人を欺きつつも魅了する魔女。暴走する理性と狂気を華奢な体におさめ、数々の内なるキャラを凝縮したキムダミのどや顔、一見の価値あり。

子供はわかってあげない(2020年製作の映画)

4.5

元来原作もギャグが多めなのに、そのまんま使ってるとこはほとんどなく、独特の間合いと役者の演技で笑いを積み上げていくのは、さすが沖田監督でした。古館寛治が歌い出した時点で勝ちは確定していたのかもしれませ>>続きを読む

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結(2021年製作の映画)

3.5

潰されようが、引き裂かれようが、音楽が鳴りやむまで物語の上で踊ることが底辺悪党キャラクター達の運命。
暴れ出した決死隊が最後に連れていってくれる、とんでもない最終決戦におおいに笑おう、それが彼らへの最
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.0

回転するホイール、廻るレコードとカセットテープ、ぐるぐるまわる思考。他人の心。それが嘘か本当かはわからない。確からしさを軸に、生きていくというこのやっかいな問題を、探求し向き合い折り合いをつけることを>>続きを読む

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(2021年製作の映画)

4.5

高層ビルを貫通し燃え上がるオレンジ色のきらびやかな炎とテロルの魅力にあらがえない。耳をつんざく鉄の激しくぶつかる音、四方に散らばる高熱の破片、嫌悪感がまるで生まれない破壊表現の罪深さなど忘れて、現実も>>続きを読む

逃げた女(2019年製作の映画)

4.5

「正しい日 間違えた日」「夜の浜辺でひとり」「それから」に続き鑑賞。
ホンサンス×キムミニを何度も見てるのにキムミニが初めて画面に出てくる瞬間は相変わらずで嬉しくてつい笑みがこぼれる。すっかり中毒であ
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はちどり(2018年製作の映画)

3.5

夏の日差しきらめく緑陰に揺れる夏服。過度な感傷はシャットダウンし、淡々と赤裸々に日常の浮き沈みをつづったこの再構成された世界は、ずっとフタをして胸に隠していたパンドラ的な何か。
当時の濃い影と淡い記憶
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ノマドランド(2020年製作の映画)

3.5

日本でも働き方の文脈でマジックワードとなったノマド。その趣やイメージは思ってたよりも大分異なっていたようだ。
場所に縛られずに流動的に生きるからこそ、互いのつながりや支えがなければ生きてはいけない逆説
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ザ・ライダー(2017年製作の映画)

5.0

アイデンティティーをなくしても、夢を諦めないこととは。頑固だとか意地では片付けられない、自己表現そのものと向き合う。
火を囲み月の下祈る。親密な兄妹の距離感。荒野に凛とした馬のたたずまい。静かでいてピ
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サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~(2019年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

聴力を失ったドラマー。スティルネスまでまだあと20パーセント。記述しろ。誰にも見られないノートに。今まで頼り切っていた世界への依存度を下げる。手話を覚え笑顔を取り戻す。止まったままの時間を動かし人生を>>続きを読む

街の上で(2019年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

最後のシーンでようやく目を覚ました(いや、寝てたわけじゃない)
この街ではケーキは腐らないし、彼女はちゃんと戻ってくるし、泡姫がラーメン屋で微笑みかけてくれる、優しい壮大なファンタジーの世界だったって
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正しい日 間違えた日(2015年製作の映画)

4.5

出会ってしまった意味を知りたい。
偶然隣り合わせた女性との邂逅を繰り返し出会いなおす、語りなおすこと。淡々と執拗に。
正しい、間違いは振る舞いのレベルではなく、出会いの事実そのものに向けられている気が
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ペイン・アンド・グローリー(2019年製作の映画)

4.5

老境にさしかかった難儀な身体に、ヘロインによって乗っ取られた脳を支えるため、深くソファに溺れる。
生きていれば身体の痛みは増し、乗り越えられない過去もつのる。
しかし生をまっとうする限り、自分なりの落
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佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)

3.5

青春のヒーローはダサくて弱くて泣く男だった
過去を切断できない弱さを
冴えない現実に立ちあがれない心を
人に服を脱がせて盛り上がることしかできないちっぽけな自分を
そんな俺たちを何度でも、その不器用な
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Love Letter(1995年製作の映画)

5.0

亡くなった恋人がかつて住んでいた住所に手紙を送ってみると、恋人の名前で返事が返ってきた。好きだった相手が中学時代に暮らしていた町のこと、学校のこと、好きだった人のこと。ふとした思いつきで始まった神戸と>>続きを読む

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

4.5

2人の花束フォルダが火を吹くぜ~
甘いシュガーソングと恋のビターステップなふたりの恋をまるかじり。
おい、焼きそばパン、ちょっとそこ変われ
酸いも甘いも絶品。もはや転職の際の履歴書に書いてよいのでは?
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テルマ&ルイーズ(1991年製作の映画)

4.5

スカッとしたいやつはここに集まれ。
トラブルメーカーで愛嬌のあるテルマとクールだけど怒らせたらヤバいルイーズのエスケープロードムービー。
凸凹コンビが楽しく手を取りあうような優しくてぬるい友情世界では
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ウィッチ(2015年製作の映画)

3.0

科学前夜。魔術的・呪術的な力に世界が覆われていたころ。闇は確実に深かった。人の領域と神々の領域ははっきりとわかれ、自然がその一線を画す。森に足を踏み入れてはならない。そこは元々人間の場所ではないからだ>>続きを読む

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)

4.0

「何を書くべきかわからない。僕には世の中が謎みたいで。」
格差・不平等が埋め込まれた現実感のないゆらいだこの社会は、謎めいてしか見えない。終始みせる戸惑い、納屋を焼くという魅惑的な妄執が彼をとらえて離
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恋する惑星(1994年製作の映画)

4.5

生命たぎる雑多で濃密なアジアのバイブスこそ至高。街の熱にあてられたそこに生息する孤独な若者たちの生態系、少しいびつでふぞろいな心、例えそれがはっきりとした恋という形をなさなくても、誰かを愛し愛されずに>>続きを読む

ハッピー・オールド・イヤー(2019年製作の映画)

4.0

誰しもがやりすぎだと感じるであろうモノを捨てたのはとてもエッジがきいている。
監督はまだ30代の若い世代。年功序列のルールが日本より厳しいタイ社会で起きている衝突と摩擦。これからは俺たちの時代だという
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