クロさんの映画レビュー・感想・評価

クロ

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サラ・ムーンのミシシッピー・ワン(1991年製作の映画)

4.2

繰り返されるヴィヴァルディの歌曲『Nisi Dominus(主が建てたもうのでなければ)』。詩篇127章「主は、愛する者が眠っているときでさえ、それ(日々の糧)をお与えになる。子供たちは主の賜物。胎内>>続きを読む

デカローグ(1988年製作の映画)

4.3

聖書の十戒のモチーフを翻案した10のドラマ。人口の9割をカトリックが占めるポーランドに向けて1989-1990年にテレビ放送され視聴率初回50%台、最終回60%台に達したとのこと。世相、宗教観、個人の>>続きを読む

エルミタージュ幻想(2002年製作の映画)

4.5

18世紀半ば帝政ロシアの水の都サンクトペテルブルク、エカテリーナ2世の美術品蒐集癖に端を発し、「隠れ家」を意味したエルミタージュ美術館、100年かけて歴代皇帝が宮殿を増設し、今300万点を所蔵する。エ>>続きを読む

チェチェンへ アレクサンドラの旅(2007年製作の映画)

4.5

本作は第二次チェチェン紛争中の2006年、チェチェン共和国の首都グロズヌイで撮影された。ロシア勢力と独立派の紛争は1991年の第一次チェチェン紛争にはじまり、第二次チェチェン紛争ではゲリラ化した独立派>>続きを読む

クレールの膝(1970年製作の映画)

4.2

セザンヌの色合いを思わせる山々に囲まれた湖畔の短い夏の日々。木、水、舟、空、風、白い日差し。ターナーの淡いタッチのような曖昧な輪郭に人々もまた溶けてゆく。

壮年の男と思春期の姉妹の戯れに通うとりとめ
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冬の光(1962年製作の映画)

4.5

本作はベルイマンの神の沈黙三部作の二作目にあたる。

冬のスウェーデンの小さな町の一日を描く。教会の礼拝堂で牧師トマスはミサを行う。ミサの後、漁師の夫妻がトマスをたずね、妻カリンは夫ヨナスが生活に不安
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大樹のうた(1958年製作の映画)

4.7

本作はサタジット・レイ監督によるオプー三部作(大地のうた、大河のうた、大樹のうた)の最後の作品である。老婆心ながら鑑賞される方は制作の順に沿って是非ご覧頂きたい。主人公オプーの半生、彼とえにしを持つ人>>続きを読む

愛の嵐(1973年製作の映画)

4.5

第二次大戦中のポーランド。強制収容所におけるナチス親衛隊員マクシミリアンは数えきれない囚われ人の中からひとりの美しい少女ルチアを見出す。彼女は見捨てられた人々の羨望と妬みと嫉みと絶望を一身に受ける。彼>>続きを読む

桜桃の味(1997年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

ひとりの男が自殺を思い立ち、道行く人にいくばくかのお金と引き換えに手を貸して欲しいともちかける。
若い兵士には一目散に逃げられた。
ムスリムの神学生には神の意に沿わないと断られた。
三人目の老人は男の
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牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版(1991年製作の映画)

5.0

ずっと待ちわびてきた作品。当面消えることのない何かが刺さった。

もし迷っている方がいらっしゃっいましたら是非劇場へ。貴方様を映画そのものへと駆り立てる火になることを願っております。

イーダ(2013年製作の映画)

4.2

1962年のポーランド、戦災孤児としてカトリック系修道院で暮らすイーダ。キリストの花嫁として身を捧げる修道誓願を前に外出許可を得、彼女との面会を久しく拒絶していた叔母ヴァンダと再会する。ヴァンダはイー>>続きを読む

セッション(2014年製作の映画)

4.2

鬼教官フレッチャーは生徒から最善の演奏を引き出すために、彼らを辱め、恫喝し、罵倒する。方便になるなら虚偽を弄すことも厭わない。絶望から這い上がって来るものが真の表現者足りうると盲信している。彼から伝わ>>続きを読む

大地(1930年製作の映画)

4.4

崇高な失敗作だと思った。慌てて補足すれば、描かれる対象が遺物なのであり監督の力量はすさまじい。

旧ソ連、スターリンが1928年から指揮した五カ年計画により農村の集団化と工業の重工業化が進められた。本
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ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

4.2

ひとり暗い森に分け入り、虫の声、自分の息遣い、土を踏みしだく音に耳を澄ますように、この映画の中に入ってゆこう。心が静かになったら、そこで起きる出来事を胸の奥底でやわらかく受け止めてみよう。

死にあた
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宇宙飛行士の医者(2008年製作の映画)

4.7

旧ソ連の有人宇宙飛行計画はアメリカとの開発競争に先んじるため急ピッチで敢行された。1957年初めてロケットに搭乗した不運な犬ライカは生きて地上には帰らなかった。犬を乗せた飛行に成功したのは1960年9>>続きを読む

炎628(1985年製作の映画)

4.8

本作は第二次大戦中の旧ソ連の白ロシア(現ベラルーシ)の村でドイツ兵に虐殺された人々を描いている。モデルとされるハティニ(Khatyn)村では75人の子供を含む147人の民間人が小屋に押し込められ火を放>>続きを読む

ルナ・パパ(1999年製作の映画)

4.5

タジキスタンに暮らす17歳の娘マムラカット、兄ナスレディンとその父を中心に描くコメディである。

タジキスタンは1991年に旧ソ連から独立した中央アジアの小国で国民の大半はイスラム教徒である。1992
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機械じかけのピアノのための未完成の戯曲(1976年製作の映画)

4.3

チェーホフの戯曲「プラトーノフ」を原作とした監督の初期の作品である。おそらく1861年の農奴解放が行われる少し前のある夏の日、ロシアの片田舎にある将軍の未亡人アンナの邸宅で、将軍の先妻の息子セルゲイと>>続きを読む

ふたりのベロニカ(1991年製作の映画)

4.8

本作はポーランドとフランスで同じ時に生まれた生き写しの二人の女性、ベロニカたちの物語である。彼女たちは出会うことのないまま、心の何処かでもうひとりの自分の存在を予感しながら暮らしている。

冒頭、ポー
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鏡の中のマヤ・デレン(2001年製作の映画)

4.1

本作は実験映画作家マヤ・デレンのドキュメンタリーである。彼女はロシア生まれのユダヤ人でありニューヨークを拠点に活動し、44才の若さで亡くなっている。

以下は主な作品で、

1.午後の網目(1943)
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グロリア(1980年製作の映画)

3.9

マフィアのボスの元情婦で、今は隠居して安アパートで猫と気ままに暮らすグロリア。噛むようにきつくタバコを咥える口元と額には彼女の笑うときの癖が重なって深い皺が刻まれる。厚く塗り込んだ化粧は彼女の表情を覆>>続きを読む

男はつらいよ 寅次郎忘れな草(1973年製作の映画)

4.5

夜の車窓にゆれる街の灯のあいまあいまにぼうと浮かんで消えるのは間の抜けた死人のような自分の顔だ。今居る場所も今夜の宿も成り行き次第。耳慣れない言葉を交わす人々にまぎれて明日は仮の根を下ろそうか。あてど>>続きを読む

続・男はつらいよ(1969年製作の映画)

4.0

寅次郎、母を訪ねて京都へゆく。迎えるはグランドホテル称するラブホのオーナー(ミヤコ蝶々さん)。であるから、ふたり手を取り、おかあさん、ああ息子よ、と惜別の情をしおらしく交わすはずもなく。浪速のおかんと>>続きを読む

リップヴァンウィンクルの花嫁(2016年製作の映画)

4.2

七海に「この世界は幸せだらけなんだよ」と語りかける真白は、歌唄いのCoccoさんとほとんどそのまま重なっていた。ライブで聴衆を前に「あっちゃんはね」とたどたどしく話す時、南の島でゴミ拾いを始めた時、彼>>続きを読む

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)

4.0

長い月日、喜びを共にしてきた気のおけないパートナーの口からある日思いもよらない言葉を聞く。これまでの暮らしとパートナーに抱いていた安寧が足元からぐらぐらと揺らぎ始める。それは不発弾のようにふと足を置く>>続きを読む

バリエラ(1966年製作の映画)

4.1

舞台は第二次大戦後のポーランド。主人公は医学生の青年。青年の父は戦前、青年は戦後の世代であり、愛国者として国を守った父たちのもたらした安定の中で若者たちは暮らしている。しかしそれはあくまで小康状態であ>>続きを読む

男はつらいよ(1969年製作の映画)

4.2

子供心に寅さんといえば週末のおしまいの象徴で、日曜洋画劇場の次週予告で盛大にあのテーマ曲が流れようものなら、明日の学校の憂鬱に押しつぶされ呼吸は浅く早く浅く早く苦しくなるのだった。そして一度もこのシリ>>続きを読む

動くな、死ね、甦れ!(1989年製作の映画)

4.8

第二次大戦末期頃の旧ソ連の極東、共産主義の軋轢の元、流刑地がある寒村で生きる人々。大人たちは粛清に怯え明日のパンに事欠く惨めな日々をやりすごすので精一杯。ならばとばかり子どもたちはゲスな遊びやら奪い合>>続きを読む

ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(1995年製作の映画)

4.0

神様がもしもいるとして、人を欠落を抱えこんだものとしてこしらえたのは実に冴えた技だったと思う。おかげで私達の日常はとめどない乾きに苛まれるけれど、誰かと繋がるべくおっかなびっくりでも自分のほら穴から這>>続きを読む

ざくろの色(1971年製作の映画)

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はじめて見た時の衝撃は今も忘れられません。
感想文を書くにはもう少し時間がかかりそうです。

(1974年製作の映画)

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一番愛する監督の、一番愛する作品です。
この作品について自分の言葉で語れたら素敵だな、と思ってfilmarksに参加しました。
感想文を書くにはもう少し時間がかかりそうです。

イン・アブセンティア(2000年製作の映画)

4.2

金縛りにあう時というのは、今まさに耳のうしろあたりに見てはいけない何かが息を殺していて、私は勿論そんなものと関わり合いたくない、でもどうしても、ちらとでもいいからそれがどんなふうにそこあるのか確かめず>>続きを読む

ミルコのひかり(2005年製作の映画)

4.4

映画という「見る」行為に根ざした媒体の鑑賞者-消費者の私が、どうしたらひかりを失った子供の気持ちをほんとうに理解できるのか?自分を彼の立場に置いて考えはじめた途端、私は私の足場を失う。「相手の身になっ>>続きを読む

長距離ランナーの孤独(1962年製作の映画)

4.1

子供心にランナーなんて因果なものだと思った。じりじり灼けつく晴れの日も、風でも雨でも雪の日も、モルモットみたくぐるぐる飽きもせずおなじ路を駆け回り、酸欠でままならない頭であと何周か指折り数える。コーチ>>続きを読む

ツバル(1999年製作の映画)

4.5

名もしれぬとある国はいつも横殴りの雨。そこにあるとあるプールにまつわる人々の群像。プールは天井、床、壁、どこもかしこも穴だらけ。息を殺して遊泳中の客や少女の着替えを覗く誰か。

この物語は朝日が昇れば
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リトアニアへの旅の追憶(1972年製作の映画)

4.5

私達の記憶は刻一刻と色褪せかけらになって消えてゆく。忘れたいことであれ、忘れてはならないことであれ。
この作品は記憶の薄闇にあり、今この時に目の前で消えゆこうとしている、名づけることのできない何かを焼
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