Kuutaさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

スキャナーズ(1981年製作の映画)

3.6

お腹の胎児から超能力攻撃を喰らって鼻血が出る映画は世界中でもスキャナーズくらいだろう。

昨年の「TITANE/チタン」は妊娠に伴う体型の変化、肌が裂ける感覚が、自己認識を壊していくというボディホラー
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気狂いピエロ(1965年製作の映画)

3.8

切り返しがなく、誰かと会話が成立するなんて欺瞞は許さないし、引きの自然の中にポツンと残される場面も多い。引用の洪水の中で、ベルモンドの肉体が連続していることだけが頼りになる。

あらゆる物語は既に表現
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THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.2

コメント欄に2022年のベスト10を載せました。

体の傾きや姿勢の高低、動作の一つ一つが美しく、3DCGのリアリティと、漫画的にデフォルメされた二次元表現の組み合わせが素晴らしい。空間描写が巧みだか
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ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(2022年製作の映画)

4.0

おとぎ話風にアレンジした映画よりも、普通におとぎ話を作った方がデルトロの良さは発揮できるのではないか。映像も脚本も、正しい選択肢を引き続けていた。

・ピノキオが酔った勢いで作られた設定なのがとても良
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ヨーヨー(1965年製作の映画)

4.2

満席のイメフォの最前列で見るというより見上げていたが、面白いことが絶えず起きていて、ずっと見ていられる映画だった。教育テレビとかで延々流してほしい。かつてのサイレント映画を表面的になぞるのではなく、ア>>続きを読む

理大囲城(2020年製作の映画)

4.5

恐怖と無力感で涙出てきた…。

柳下毅一郎さんが同種のコメントを寄せていたが、笑えないほど「香港映画」然としていることに衝撃を覚えた。残酷な青春映画の香りがした。

映像の希少性、厳しい現場で取材に徹
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ニューオーダー(2020年製作の映画)

3.5

ハネケのような乾いた暴力、嫌な人間描写を、男性中心の家族関係から、国家権力による抑圧へと結ぶ映画。露骨な性暴力と、信頼関係をガタガタにされる展開がキツい。

日常の小さな暴力が社会に広がる、緩急の付け
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グリーン・ナイト(2021年製作の映画)

3.9

「語るべき物語」を求めて緑の騎士の首を斬った男が、一年後に首を斬られる約束をさせられ、緑の騎士の住む礼拝堂まで旅をする、という変な話。以下、俺解釈です。

▽ファイトクラブ
最大の特徴は、主人公ガウェ
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ひつじのショーン スペシャル クリスマスがやってきた!(2021年製作の映画)

3.6

マッドゴッドでクレイアニメが見たくなったので鑑賞。昨年末公開の中編。

人間含め全員が「鳴き声」しか話せない縛りを設け、アクションや表情でストーリーを描いているシリーズ。動き続ける映像、行って帰ってく
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マッドゴッド(2021年製作の映画)

4.0

様々な怪獣映画の感想で書いてきたが、コマ撮り特有の可愛らしさと不気味さ、ミニチュアがぐしゃあと壊れる映像の快楽に浸れて、ひたすら気持ち良かった。特権意識と虚しさが入り交じった狂った神。何度壊れても作り>>続きを読む

男はつらいよ 柴又慕情(1972年製作の映画)

3.7

人生初寅さん。お正月にBSでやっていた。話のフォーマットは何となく知っていたが、文脈分からなすぎて皆さんの感想を読んでふむふむ…となっている。

・クライマックスで寅さんが「今夜は流れ星が多い」と言う
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LOVE LIFE(2022年製作の映画)

3.5

演出が素晴らしいのは知っているのだが、深田晃司らしい世界から一歩も外に出てこないというか「深田晃司っぽい映画」をAIに頼んだら出来そうな映画というか…。いつも大絶賛なんですが、今回は驚きが少なかった。>>続きを読む

風の中の子供(1937年製作の映画)

3.8

・子供の運動は自由の発露であると同時に、声にしない痛みの表明でもある。

子供と大人の区別は常に明確だが、橋の上で母親が三平に寄りかかるシーンで交差する。三平は絶望を言葉ではなく、やはり体で受け止める
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有りがたうさん(1936年製作の映画)

4.0

今年の映画館初めは清水宏特集。

田舎から東京へ売られる娘と、バスの運転手「有りがとうさん」、乗り合わせた客によるロードムービー(駅馬車っぽい)。バスは山間部の様々な人生をかすめていく。時代は戦争直前
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聖なる証(2022年製作の映画)

3.5

前から思っているのだが、フローレンスピューは体に存在感がある役者だ。ご飯を食べる役が似合う。料理好きらしく、インスタライブで料理やってる姿を見るのが以前のマイブームだった。最近やってくれない。待ち望ん>>続きを読む

サイン(2002年製作の映画)

4.2

あけましておめでとうございます。狙ったわけではないのですが、今年最初で、1000本目の感想です。

物語を信じることについての映画。何度も見返している大好きな作品。

シックスセンスで「伏線回収の人」
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.1

ろう者の方の苦労と全く次元が違う話ですが、大概私も1日の大半を無言で過ごしている人間でして、喋れないケイコに自分を重ね、ぐちゃぐちゃのメモを閉まってジムに入るとことか、試合での叫びとか、かなり泣いてし>>続きを読む

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

3.8

IMAXレーザーGTで見たが、早よ海行け殺人魚見せろと思っているうちに最初の方ちょっと寝てしまった。展開は驚くほど古典的で問題含み。多少の寝落ちは問題なく、海に出てからは楽しかったです。のけ者扱いだっ>>続きを読む

こころの通訳者たち~what a wonderful world~(2021年製作の映画)

4.0

ちょっとビックリなドキュメンタリーでした。凄かった。

かなり多層的な映画で、インセプションを見ている気分になりました。ネタバレ気味ですが、いろんな人に見てほしいですし、作品の魅力を損なうものではない
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TITANE/チタン(2021年製作の映画)

3.7

映画館で見るべきだった…。

自分と他人とを隔てる境界は、体の輪郭、即ち皮膚にあるが、体型の変化に伴い、自己同一性はボロボロと崩れてしまう。アレクシアは妊娠、ヴァンサンは老化によって体の自由を失いつつ
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ある男(2022年製作の映画)

3.7

冒頭の絵が端的に示しているが、人を形作るレイヤー、表層と奥行きを意識させる画面構成を徹底しており、ある意味アバターの3D表現みたいだと思った。狭目の画角の選択も的確だ。見えない顔を見てやろうと、フレー>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

お馴染みの時空のずれ、記憶の不一致テーマを、被災者と非当事者の認識の違いに落とし込んでいる。非当事者と当事者は相容れない。新海誠の絵は、当然に観客を傷つける。その断絶を描いている。

アメノウズメでミ
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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011年製作の映画)

3.3

すずめの戸締まりから連想し、再鑑賞。

9.11で父親を失った少年が、父の遺した鍵に合う扉を探してNYを訪ね歩き、次第に喪失を受け入れる。

NY中のブラックさんを探し、片っ端から鍵穴に鍵を差し込む少
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ドント・ウォーリー・ダーリン(2022年製作の映画)

3.2

フローレンス・ピュー好きなら見てもいいだろうが…。映像は綺麗だけど、スリラーとしてもテーマの掘り下げもスカスカなこの感じ、去年の「ラストナイト・イン・ソーホー」に近い。

・オリビア・ワイルド監督、「
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ザ・メニュー(2022年製作の映画)

3.7

昼飯はマックにしました

コンテンツ過多の時代に情報だけ食ってる消費者への、作り手からの逆襲。

シェフは世界を縮小して再現、コントロールする監督だ。計算された見せ物で感情を動かし、分刻みで時間をコン
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言の葉の庭(2013年製作の映画)

3.4

「雨の日の東京の良さ」の映像化には成功していると思うが、感情をストレートに口にするセリフ回し、話の展開にはついていけなかった。

空の匂いを連れてくる雨。ここではない何処か、憧憬の対象が空であり、雨が
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ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985年製作の映画)

3.3

音が鳴ってストーリーがあって役者が動いてれば映画やろ?という実験。風吹くしスモークもいっぱいでしっかり黒沢清。

にっかつロマンポルノ「女子大生・恥ずかしゼミナール」として制作したが、にっかつからお蔵
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恋する惑星 4Kレストア版(1994年製作の映画)

3.5

短評。1960年代のカリフォルニアという、時間も空間もズレた場所への憧憬。バラバラな個がすれ違う都市で、敢えて相手の空間に「入っていく」「覗き込む」。感性が同期すれば、時空の縛りは映画のように飛び越え>>続きを読む

RRR(2022年製作の映画)

4.1

アクションの強度は現行の映画界最強。ただ私は、神話ネタの散りばめ方に沼のようにハマってしまっている。語弊を恐れずに言えば庵野作品のようなノリだ。

入門書をかじっただけで無限にこじつけられてしまう多層
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アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター(2022年製作の映画)

4.0

IMAX3Dで鑑賞。音圧が凄くて、物理的にその空間と対峙しているような臨場感があった。ざっくり感想。

・木が倒れるシーンすごく良かった。デカいものの向きが縦から横に変わり、生きるための意識づけも刻々
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顔のない眼(1959年製作の映画)

3.6

フランスのゴシックホラー。スケキヨ的なマスクや凝った手術ももちろん不気味なのだが、皮膚の移植に成功し、綺麗になった娘との夕食シーンが印象深い。

手術前と同じように、瞬きひとつしない彼女の表情は、マス
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バビ・ヤール(2021年製作の映画)

3.8

ナチスが「解放」したキーウ。右から左へ行進させられる人々。轟音、爆発、死体の山。今度はソ連による「解放」。反対方向へ歩かされる人々。轟音、爆発、死体の山。

シンメトリックな「反復」と「往復」。行進す
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周遊する蒸気船(1935年製作の映画)

4.2

スラップスティックなテンポでぐいぐい進む。主人公と弟の婚約者(アン・シャーリー)の信頼関係の構築と、目の前の危機の脱出が、包丁の受け渡しで描かれる。同じ船に乗った人々が移動しながら、物の受け渡しで難題>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

▽ジュープから考える
OJシンプソンはお茶の間の見せ物にされた。ピールがTwitterで公開したGordy's Homeのオープニングにはスペースシャトルが映るが、これは発射失敗が中継されたチャレンジ
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小島(こじま)の春(1940年製作の映画)

3.0

ハンセン病患者に対する無根拠な隔離政策を喧伝したプロパガンダ映画である。1940年度のキネ旬邦画1位。洋画の1位がリーフェンシュタールの「民族の祭典」だった事からも時代感が窺える。映画の内容に入る前に>>続きを読む

夜霧の恋⼈たち 4Kデジタルリマスター版(1968年製作の映画)

4.2

「大人は判ってくれない」のジャン=ピエール・レオ演じるドワネルないし、トリュフォーの分身が、子供と呼ぶには良い年になってきて仕事を始める。相変わらず好き勝手に画面内を暴れ回るものの、周囲の大人の姿に少>>続きを読む