okawaraさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

okawara

okawara

映画(761)
ドラマ(23)
アニメ(0)

民衆の敵(1931年製作の映画)

3.9

行き交う人々のなかからふたりの少年が選び取られる開巻は、この物語が彼らの転落を描くという当然の予感と相まって、実に魅力的な悲劇性を帯びていたことと思う。
ジェームズ・キャグニーが二度もカメラに向かって
>>続きを読む

階級関係 -カフカ「アメリカ」より-(1984年製作の映画)

3.5

主人公がどの被写体と同じショットに収まってゆくのかを観察することで、彼らの階級関係が明らかになるのだろうが、それゆえにそうした規則をたびたび逸脱することのドラマ性にこそ驚いた。

女群西部へ!(1951年製作の映画)

4.3

無限に連なる幌馬車の進行が幾度も中断される光景は滅法おもしろいし、目的地を目の前にして女群が中断を宣言する逆転劇には感嘆した。

オルタナティブな西漸運動を描くうえで、先住民との対立を無血状態で保留さ
>>続きを読む

ヤング・ゼネレーション(1979年製作の映画)

3.8

戦後の若者が外国かぶれを捨てたとき、はじめて父親(それは戦勝体験を引きずる世代にほかならない)と抱擁を交わす。悪しき保守が肯定される予感は、ラストショットで見事に覆される。
こうした天邪鬼な結末に、ノ
>>続きを読む

チャンス(1979年製作の映画)

4.0

「白痴」のクリシェをエンドロールで転覆させてしまう白々しさは、皮肉を通り越してもはや清々しい。

ハロルドとモード/少年は虹を渡る(1971年製作の映画)

4.1

戦勝を引きずる親世代を飛び越え、ふたつの反戦の意思が重なろうとする姿に心打たれる。
カウンターカルチャーさえも跳躍するフリーズショットの捻りが実に鮮やか!

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

3.8

まるでカメラが俳優の相貌に見惚れているかのような、魅力を欠いた(というよりもはや意味を失った)切り返しがこうも続くと辟易する。
ふたりが初めて共に喫煙するまでの大胆な省略くらいは記憶に残りそうなものだ
>>続きを読む

今日から明日へ(1996年製作の映画)

3.8

まず映画はオーケストラが舞台上の俳優と空間を共有していることを示す。すなわちこの映画ではオーケストラが連続的に音楽を響かせる限り、俳優の芝居に中断は起こりえないはずなのだから、妻の着替えの驚異的な素早>>続きを読む

彼方のうた(2023年製作の映画)

4.1

荒木知佳がキノコヤのカウンターに立ち、叔父に扮する金子岳憲がひょっこり顔を出す前作の世界は、その主題とともに本作へ引き継がれる。そしてその世界と主題は、濱口「偶然と想像」第3部をともに見たふたりの女性>>続きを読む

メニュー・プレジール~レ・トロワグロ(原題)(2023年製作の映画)

3.7

食材がマルシェから厨房へ運ばれ、それらが調理されゲストのもとへサーブされる様子がしかと捉えられる。カメラはバッシングの光景も見逃さないのだが、なぜか配膳係が中継地点を通り過ぎるところで、観察の手を止め>>続きを読む

ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ(2023年製作の映画)

3.5

オルタナティブな視座のみを示された印象は拭えない。短尺ではどうにも評価できかねる。

タタミ(2023年製作の映画)

3.9

イスラエル選手がほとんど画面に現れないことの記号性や、同時代の特定の出来事を契機にした物語をモノクロ撮影で収めてしまう表象性には、どうも首を傾げてしまう。
といいつつ、政治的な主張と娯楽性を大いに同居
>>続きを読む

湖の紛れもなき事実(2023年製作の映画)

3.0

画面の上方から水瓶か何かが落下することで男の悔恨と執念の開始が告げられ、画面の上方から日用品が勢いよく投げ捨てられることで男の贖罪が開始する。
次に上方から降りかかる火山灰はこの土地の記憶を埋め尽くし
>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

4.0

この映画では、複数の被写体が同じショットに収まることが彼らの関係のもつれを意味する。だから夜明けのオフィスで、この映画で示される唯一の切り返しを目にしたときにはしみじみと幸福を感じたし、涙に濡れている>>続きを読む

さらば、わが愛/覇王別姫 4K(1993年製作の映画)

4.5

二度も紗幕で引き裂かれたふたりが炎の幕の向こうで再会したとき、映画的に共有されたまさにその空間で、途方もない裏切りが示されることの悲劇性に大いに圧倒された。この瞬間のための3時間、とまでは言わないが、>>続きを読む

ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023年製作の映画)

4.3

前作が「ザ・レイド」へ目配せしながらそうしたように、本作も白人映画がアジアを倒錯的に招き入れることを積極的に試みるが、そこへ招待されるのがドニー・イェンと真田広之であることの既視感と待望のアンビバレン>>続きを読む

帽子箱を持った少女(1927年製作の映画)

4.0

少女の眼前に青年の足が勢いよく投げ出されることでふたりは出会い、青年が少女の帽子箱に足を突っ込むことでふたりの人生がすれ違う。まもなく彼らが再会したときには、今度は青年の眼前に少女の足が投げ出されてい>>続きを読む

よみがえるブルース/トゥー・レイト・ブルース(1961年製作の映画)

4.5

突然始まる野球試合の光景があまりにもカサヴェテス的で感動したし、そのインチキさ加減にはほとんど涙が出るほどに幸福を感じた。

鏡が「実際に」身体を解体する悲劇性を帯びる直前、ニックのバーの入り口を外か
>>続きを読む

ドクター・ブル(1933年製作の映画)

3.6

投げ出される郵便袋それ自体ではなく、列車から(郵便袋を除いて)誰も降り立たないことがこの町の周縁性を実によく表していることこそが、この映画の開巻の素晴らしさだろう。
そうしたほとんど寒村ともいえる町か
>>続きを読む

十三人(1937年製作の映画)

3.2

フォード以上に地平線の原則を徹底しているのが可笑しいが、「見えない敵」の代わりに自然の脅威を前景においたことが、その構図に必然性をもたらしていたようには思う。
司令官の妻による手榴弾の投擲とそれに続く
>>続きを読む

肉弾鬼中隊(1934年製作の映画)

3.3

椰子の木で縁取られた画面内画面で映画がはじまる。そこへあらゆる決定的瞬間が間違いなく収められていく光景を確かめることが、この映画を見る喜びのひとつなのだろうが、どうも不手際を犯す瞬間が多いように感じて>>続きを読む

掟によって(1926年製作の映画)

4.7

川のほとりに建てられた小屋を前景に、奥へつづくなだらかな丘陵と、その地平線に(たった1本、不自然に)そびえる樹木とを後景に捉えた開巻ショットが素晴らしい。それはひとまず異様な美しさとして目に焼きつくの>>続きを読む

オオカミの家(2018年製作の映画)

3.5

『JUNK HEAD』しかり、その労作具合ばかりが評価基準になってしまっては、報われない何かがあるような気がして敢えて申せば、これを「映画」としては受け止めたくない、意地張りな感覚を覚えてしまう。
>>続きを読む

(2021年製作の映画)

3.9

旧作をレストアした映画であるという虚偽の体裁は『オオカミの家』と共有しているが、本作はその修復行為の脆さを指摘している点で、件の作品よりよほど興味深いように思えた。
魂を蘇らせることで、そもそもその人
>>続きを読む

一年の九日(1961年製作の映画)

3.6

「良いショット」の常態化が、映画をかえって貧相にしてしまった一例を見た気がする。
映画の冒頭、柵に寄りかかる男女を捉えたカメラが、その柵を易々と乗り越えた瞬間の驚くべきロマンチシズムが持続されないのは
>>続きを読む

メッセンジャー・ボーイ(1986年製作の映画)

3.9

家父長社会への積極的なカウンターは、ソヴィエトにおける民主化の機運によるところも大きいのだろうが、それにしても先進的だったろうと想像する。
スコープサイズに収められる遥かな地平に歓喜し、そこで僅かに示
>>続きを読む

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー(2022年製作の映画)

3.2

廣瀬氏が指摘する、切り返しショットにおける特定の構図が、被写体同士の物理的距離を曖昧にさせている原則に則ってみれば、たしかにおもしろい発見はあるように思えた。
その曖昧さは、カプリースが額に柿の種を仕
>>続きを読む

さすらい(1957年製作の映画)

4.0

根無し草の父娘が放浪の末にたどり着くガソリンスタンド。町の手前に位置するいわば中継地で、その見晴らしの良さとは裏腹に、あらゆる生が停止する光景がなんとも絶望的で素晴らしい。

(1943年製作の映画)

4.7

女家主の疑惑の視線が、レストランの給仕の疑わしげな視線を介して息子たちに降り注ぐ類稀なる画面連鎖、すなわち女家主の息子に対する疑惑が、それらの画面連鎖を経て決定的に濃度を増していく、実に映画的な手つき>>続きを読む

アル中女の肖像(1979年製作の映画)

4.0

スーツケースから大量の本が撒き散らされる開巻に、心を掴まれた。
セリフを発さない主人公は、社会から定義されること(それは言葉を用いた営みにほかならない)から思いきり遠ざかり、「社会問題」にも「良識」に
>>続きを読む

タブロイド紙が映したドリアン・グレイ(1984年製作の映画)

3.4

前作に続いてスペクタクル批判。今回はメディアが作りあげたイメージが主体性を獲得するなど、より現代的な主題にはなっているだろう。だがどうも「映画」としておもしろいとは思えず……長尺もいただけない。

フリーク・オルランド(1981年製作の映画)

3.5

キャンプ的表象が神話や戦争を消費してしまうことの皮肉を祝福で包むことに、一切の後ろめたさを窺わせないことをどのように受け止めれば良いのか、戸惑ってしまった。

ぼくの小さな恋人たち 4Kデジタルリマスター版(1974年製作の映画)

3.5

少年が窓枠に縁取られた画面内画面から退場することで映画が始まり、続くタイトルバックでは人影のない空間が映し出されていく。この「退去」ないしは「喪失」の感覚は、「一度掴みかけたものが失われてしまう」落胆>>続きを読む

サンタクロースの眼は青い 4Kデジタルリマスター版(1966年製作の映画)

3.6

そもそも窃盗をはたらく手振りが魅力的に収まっていないから、痴漢をする手振りにも犯罪の瞬間以上の何かは見出せない。

わるい仲間 4Kデジタルリマスター版(1963年製作の映画)

3.9

窃盗後の逃走進路を決める差し迫った瞬間に、ふたりは思わず正反対の方向を選択する。本作のハイライトともいうべき疾走を導いているのが、まさにこの、彼らの非対称性がもっとも明らかに示される光景であることに心>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

3.9

規定された役割から遠ざかることにこの映画の主張を見いだせそうなものだが、実のところ、ほとんどの人形はふたたびそれまでの職業ないしは役割を与えられるのだから、ともすれば客体化の呪縛から逃れられない悪夢の>>続きを読む