愛さんの映画レビュー・感想・評価

愛

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ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)

3.8

夢のために手放した関係性は「お互い好きだったけどタイミングが悪かったね」と強引に粉飾され、ドラマチックに額装され、剥がれた壁紙を隠すように釈然としない様子で飾られる。
恋人との別れと引き換えに成功を掴
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春夏秋冬そして春(2003年製作の映画)

4.1

諸行無常、因果応報、愛別離苦。執着や欲望は捨てたいけれど、私の場合、愛し愛されることを望まずには、自身の業を背負いながら「まやかし」のこの世を生き抜けない。

AFTERGLOWS(2023年製作の映画)

3.8

ドロドロと傲慢に侵され、ハラハラと網膜が散る。スイスイと飲みやすいのに度数が強めの青い珊瑚礁ように、優しさが化けて知らないうちに頭を強く引っ叩かれてトランス。ライ麦畑に座礁したままで居てほしかった。>>続きを読む

四月物語(1998年製作の映画)

4.0

飴細工の花のような甘い匂いと、萌芽の唄のような音の粒が、瑞々しく降り注ぐ。桜吹雪と春驟雨は4月の言い訳。
日本に四季があって、本当に良かった。忘れ物のびりびりの赤い傘を大切に保管する国で、本当に良かっ
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ブルー・バイユー(2021年製作の映画)

3.9

命の限り父親であることに変わりはなくとも、抱きしめられる距離で「父親」でいられることがどれだけ短いことか、どれだけ幸せだったことか。いつか思い知るその日のために、全部全部大切に噛みしめて。いつでも、い>>続きを読む

言の葉の庭(2013年製作の映画)

3.5

翠雨、酒涙雨、天泣、秋霖……季節と面持ちにより繊細に表現し使い分けてきた雨にまつわる美しい日本語。これらは現代に詠い紡がれ、私たちはまた同じはずの空を見上げ反芻する。どの雨にも各々の想いを馳せる匂いや>>続きを読む

ムーンライト(2016年製作の映画)

3.9

黒い肌に集まる月光の神秘は、夜の海に現れる月の道。闇夜で研ぎ澄まされているはずの聴覚は波音に支配され、嗅覚は潮風に奪われる。
幼少期のトラウマ、好意への不信感、孤独への諦観。生活に溢れないようそれぞれ
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Love Letter(1995年製作の映画)

3.8

図書カードなんて懐かしい。自分の前に借りた人が、何年も前の、しかも年長の人だった時、その本が少しだけ特別になって、少しだけ大切に読もうと思った。

灯油の匂いに包まれながら、夢か現実か回想か、わからな
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スワロウテイル(1996年製作の映画)

4.0

甘酸っぱい黒褐色の果実のような、でも埃臭くてむさ苦しい退廃的な世界で、渇求と諦念が交錯する。渡部篤郎がかっこいい。
「こういう映画が好きな人」と酒飲みながらずっと喋り散らかしていたいな。

フランシス・ハ(2012年製作の映画)

4.3

焦燥と見栄とウォッカに飲まれ、頭を掻きむしりながらモダンラブを鳴らし駆け抜けるモラトリアム in NY。

同居人ふたりと余計な関係を持たないところが、フランシスの人間性と信念を裏付けていて好きだった
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秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)

4.1

古い日記の手触りから、森の中の小さな家の木と埃のにおいがする白昼夢へと誘われる。
母親の子供時代の夢や過去を知ったうえで、未来を変えようなんてエゴはなく、ただこの楽しい秘密の時間が1秒でも長く続くよう
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裸足になって(2022年製作の映画)

4.0

絶望の反復と手応えを得られぬ日々。それでもなお、瑞々しさを湛えるフーリア。大地を煽り太陽を抱き寄せ、清冽な真水が内側から湧出したかのような踊りは、まるでエジプト神話に登場するベンヌのよう。

マグリブ
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男と女、モントーク岬で(2017年製作の映画)

3.3

ロングアイランドのサウスショアの最東端、モントーク。"The End(終わりの地)"とは言い得て妙で、時が止まった死後の世界のような美しさだった。深い悲しみのままでいさせてくれる波だった。

ぱっくり
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コロンバス(2017年製作の映画)

4.0

「私は一体何をやっているんだろう」という焦燥と向き合いきれず、時間の有限性から目を背ける日常を、窓枠に切り取られた緑が煽る。電車を何本も見送り、ホームの椅子にぼんやりと座る学生時代を追懐する。

そっ
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ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000年製作の映画)

4.4

対人関係に於いて「気にしない、期待しない、拘らない」と覚悟したのは確実にこの作品のせいだ。

感情が溢れる映画は文字にして昇華させるのが性に合っているのだけれど、この映画だけはそれができない。時を奪わ
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マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)

4.2

愛の正体を問う作品やコンテンツはあまたあれど、その答えは人の数以上に存在するし、恋愛におけるそれが必ずしも結婚に至るものとも限らない。
本当の意味で添い遂げるとはどういうことなのだろう。一方的にまたは
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光をくれた人(2016年製作の映画)

4.0

愛が行き交い、溢れ、漂流する。二つの海、二つの顔、二つの感情、二組の夫婦、二人の人間で構成される一組の夫婦。対照的な二面性を、美しい島を舞台に光と闇の交差で描いた作品。片方が光を掴むともう一方は闇に落>>続きを読む

世界一キライなあなたに(2015年製作の映画)

4.0

当たり前のように四肢を操る日常に「生きていたい理由」を並べる隙はあっただろうか。そしてそれらは生きているうちに片付けることができるだろうか。コントロールできない身体をもって生について思索することは、死>>続きを読む

ブルーバレンタイン(2010年製作の映画)

4.3

必ず終わりが来るとわかっているから、今が堪らなく愛おしいと同時に、愛の物語は虚しく儚い。

"How do you trust your feelings when they can just dis
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Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)

4.2

冒頭から強烈に提示され全編を通しわざとらしく映される赤は本能、欲望、自我を。アールデコが散りばめられたコンテンポラリーで緊張感のあるインテリアは、張り詰めた空気が流れる夫婦関係を。「色褪せたヴィヴィッ>>続きを読む

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

3.5

とっ散らかった自意識。いつも大切な事から逃げるように余計な事ばかり考えて頭をいっぱいにして、結局どこを切り取っても中途半端で、フッ軽と言えばそうだけど真反対の人から見れば移り気なメンヘラと言われてしま>>続きを読む

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)

3.7

制御不能なアンビバレンスは、希薄なコミュニケーションの元では支配欲へと化ける。

"I loved you and then all we did was resent each other, try
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メッセージ(2016年製作の映画)

4.0

洗練されたリビングダイニングの開放的な窓はヘプタポッドとの出会いを彷彿させ、レクイエムのような荘厳で美しいサウンドトラックはアボットとハンナへ捧げられているかのよう。
彼らが表す円形の文字、娘の名前、
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サマーフィーリング(2016年製作の映画)

4.1

部屋中に散りばめられたアートピースが光るベルリン、喪失の夏。小さな命がキラキラと弾けるパリ、停滞の夏。喧噪の中アンティークが煌めくニューヨーク、再生の夏。

足掻く気力も失った寝付けぬ長夜は続くけれど
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愛なのに(2021年製作の映画)

3.6

結婚を考える関係性にある相手との身体の相性問題、性欲の強弱問題は、いつだって根深くタチが悪い。

結婚式目前に新たな快楽を知り未知の可能性に艶めく新婦。不倫中に「結婚は自分たちのためじゃない、互いの両
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花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

3.5

「あぁ、この関係も終わりか」と気づき始めた時のヒリヒリ感は、麻酔の切れ始めによく似ている。
私達は生まれた時からある一定の地獄を抱えていて、誰かと繋がっている時だけ一時的に和らぎ、心が離れた時に「そう
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(500)日のサマー(2009年製作の映画)

3.6

「好き」はいつも自由で、気まぐれで、楽しくて、無責任。一時の癒しと快楽で良い。明日は今日と違う誰かを好きになっているかもしれないのだから。

自分の物差しをはっきりと見せないことを美徳とするサマーは、
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ロスト・イン・トランスレーション(2003年製作の映画)

4.1

同じ日本人でさえ"東京"の捉え方や印象は大きく異なり、そしてこの作品が描く"Tokyo"に嫌悪を抱く方も少なからずいらっしゃるだろうということを念頭に置きつつ。

ソフィアコッポラが作品全体にそっと被
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