割烹さんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

ヒューゴの不思議な発明(2011年製作の映画)

4.0

マーティンスコセッシを語るとき、バイオレンスは彼を象徴する要素であるかのように言われるが、彼の本質は映画への愛とヒューマニティにあると思う。そのことが、スコセッシの作品の中では異色とされる本作でこそと>>続きを読む

レイジング・ブル(1980年製作の映画)

3.9

ボクシングの王者でありながら人間的に弱い部分を抱えながら生きた実在の人物をモデルにした映画。スターダムにのし上がった人間でさえ、逃れられない辛苦の中で無様にあがき生き続ける姿は、誰しもが持つ人生の哀し>>続きを読む

タクシードライバー(1976年製作の映画)

3.8

ベトナム戦争で受けた心の傷を抱えながら、社会の底辺を生きる若者の閉塞感と鬱屈した心情をよく表現している脚本とデニーロの演技。何者かになりたいという純粋な思いには、たとえそれが凶行につながるものであった>>続きを読む

アリスの恋(1974年製作の映画)

4.2

マーティンスコセッシの初期のころの作品だが、実にすばらしい。生々しくリアリティに富んでいて、こんなにも痛々しいのになぜか微笑ましい脚本は、安易にセンセーショナリズムに走る現代においては得がたい存在だ。>>続きを読む

シャッター アイランド(2009年製作の映画)

3.9

ミステリーとしてはなかなか楽しめる映画だ。全編丁寧に作られていて、役者たちの演技も申し分ない。一定の緊張感を保ったままストーリーが進行するので飽きないし、途中でご都合主義的展開が散見されるようになるが>>続きを読む

トーク・トゥ・ハー(2002年製作の映画)

3.9

ペドロ・アルモドバルの映画だが、物語としては大変よくできている。母親への献身的な介護に思春期を費やした看護師が、今度は淡い恋心を描いた植物状態美女を介護するわけだが、それを第三者の視点から見つめること>>続きを読む

奇跡の海(1996年製作の映画)

4.1

ラースフォントリアーお得意の、痛々しさの中に人間の本当に大切なものを描くという手法が存分に発揮されている作品。
この作品の見所は、信仰について深く考えさせられる点だ。すばらしい演技を披露している主人公
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ANTIPORNO アンチポルノ(2016年製作の映画)

3.4

サイケデリックな色彩で現実と虚構の境界が曖昧な少女の世界を描いた園子温の小品。最初は、主演の富手麻妙が、顔も身体も演技もあまりにも平凡で、なんと華のないヒロインなのだろうかと思うが、物語が転回していく>>続きを読む

ひそひそ星(2015年製作の映画)

3.3

テレポーテーションが可能になった未来、距離と時間に対する憧れを失った未来の人間が、よくわからない思い出の品を、宇宙を何年もかけて送るというプロットは面白い。そして非常に詩的な作品だということも理解。>>続きを読む

リアル鬼ごっこ(2015年製作の映画)

2.2

これはまた随分な駄作だ。支離滅裂なシーンと脚本の繋ぎ合わせは普通に失敗しており、映像のグロさやスクリーンの中の登場人物の緊張感に反比例してどんどん退屈になっていくという、最も残念なパターン。またそこに>>続きを読む

ラブ&ピース(2015年製作の映画)

3.7

園子温の独創的で挑戦的な姿勢には脱帽する。突然洋画ライクなファンタジーの世界になったときには度肝を抜かれた。奇想天外なだけでなく荒唐無稽な部分も多いが、映像の力強さと完成度の高さはやはり園子温クオリテ>>続きを読む

TOKYO TRIBE(2014年製作の映画)

4.0

冒頭、幻想的で退廃的な世界観に圧倒され、またラップを使ってミュージカル形式で展開するという映画としては斬新な試みに驚く。
音楽は時とともに色褪せる種類のものだが、極端な演出と演技が痛快で、映像にも力が
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希望の国(2012年製作の映画)

3.5

原発事故に真正面から向き合った社会性の強い映画で、家の敷地内に杭が打たれ、非難区域の境界線が引かれるという大変象徴的なプロットから始まる。
酪農家にしては生活感のない夏八木勲夫婦や、その子供の村上淳夫
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ちゃんと伝える(2009年製作の映画)

3.3

園子温にしては珍しい静かな人間ドラマで、全体的にきれいにまとまっている印象だが、空気感や効果的な音楽の使い方などは園子温らしく、エキセントリックなことをしなくても十分映画が撮れることがわかる。
序盤は
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エクステ(2007年製作の映画)

2.3

良くわからない映画というのが正直な感想。ホラーとして見ればあまりに安っぽい恐怖シーンの存在は中途半端だし、園子温の十八番であるサイコな犯罪者を描くという視点では大杉漣の演技によってほぼコメディとなって>>続きを読む

テルマ&ルイーズ(1991年製作の映画)

4.0

亭主に虐げられひどい結婚生活を送る主婦の人生の解放と、レイプ被害が報われなかった女の過去との決別の物語だが、中盤までは犯した罪の重さに苛まれ、重苦しい雰囲気で展開する物語が、後半に入って俄かに色彩を帯>>続きを読む

12人の優しい日本人(1991年製作の映画)

3.2

もともと面白いプロットを再構成した脚本だが、原案の面白さはそのままに、いくつかのステレオタイプな日本人による議論という切り口が非常に成功しており、脚本は面白い。演技はかなり舞台寄りでわざとらしくはある>>続きを読む

援助交際撲滅運動(2001年製作の映画)

1.8

オープニングから学生の自主制作映画と見紛うレベルのチープさ、役者は基本猿芝居、つまらない脚本、ほとんど見る価値のない映画だが、遠藤憲一の振り切った一連のセックスシーンだけは笑いを禁じ得ない。

キャリー(1976年製作の映画)

3.7

スティーブン・キングのデビュー作で、40年近く前の映画だが、いまだに楽しめるというのは驚くべきことだ。ストーリーと展開の面白さはさすがキングといったところだし、シシー・スペイセクの影を含んだ透明感のあ>>続きを読む

プレステージ(2006年製作の映画)

3.8

サスペンスとしての話の運びは非常にうまい。トリックとマジシャンの生き様をストーリーの原動力として、最後まで途切れぬ緊張感で物語を展開させたクリストファー・ノーランの才能はすばらしい。
脚本も面白く、演
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メメント(2000年製作の映画)

4.2

クリストファー・ノーランの出世作と言われているが、映画史上類を見ない天才的な企画力と構成力が発揮されている。10分間で記憶を失う主人公という設定と、時間逆行で物語を見せていく手法が、これほどまでにマッ>>続きを読む

ミュージアム 序章(2016年製作の映画)

2.2

家族をネタに強請る、理不尽な脅迫と暴力しかない作品。白石作品を立て続けに観てきて、良さも悪さもわかってきたところで、白石がこんなどうでもいい商業映画の前座的な位置づけに甘んじているということを、やや悔>>続きを読む

残穢 住んではいけない部屋(2016年製作の映画)

3.5

一応ホラーだが、随分丁寧に作られているという印象。今住んでいる家には、その建物が建つ前も含めると、様々な歴史があるはずで、そこに恐怖の源があるという話には非常にリアリティがある。また、霊の存在そのもの>>続きを読む

鬼談百景(2015年製作の映画)

2.9

日本製短編ホラー全10作、比較対象が悪いかもしれないが、中でも白石晃士は良い部類に入る。ホラーとして見せるべきところはきちんと見せつつ、物語も描き出そうとする点で、他の監督とは一線を画していた。低予算>>続きを読む

殺人ワークショップ(2012年製作の映画)

3.5

モキュメンタリーを撮る中で自分の強みに気づいたのか、白石監督の成長ぶりが感じられる一品。モキュメンタリーの枠から自由になることで、『カルト』で見せた巧みな空気感の操りを思う存分炸裂させることができてい>>続きを読む

カルト(2012年製作の映画)

3.0

これは怖い。くだらないが怖い。失笑を禁じ得ない適当な脚本に、ご都合主義な展開、頭の悪そうなCG、演技も素人クラスだが、なぜか後半の映像の不気味さには目を見張るものがある。画面の中の空気感をうまく操って>>続きを読む

讐 〜ADA〜 第二部 絶望篇(2013年製作の映画)

2.0

一応、モキュメンタリー風ではあるが、第1部の別視点という設定なので、すでにカメラマンの視点ではなくモキュメンタリーもどき。草しか生えない殺人特訓、不自然すぎるカメラマン、男二人が見つかりやすすぎで三浦>>続きを読む

讐 〜ADA〜 第一部 戦慄篇(2013年製作の映画)

2.0

企画力だけは一人前の白石監督作品、こちらも例に漏れず企画は面白い。ただし第2部があっての第1部というところもあり、第1部単体では箸にも棒にもかからない駄作モキュメンタリー。馬鹿馬鹿しいまでにリアリティ>>続きを読む

シロメ(2010年製作の映画)

1.8

とんだ茶番映画である。白石が単にももクロが好きだったのだろう、ももクロへの愛にあふれた映画だ。そしてわたしのような、AKBは知っていてもももクロのことはよく知らなかった層がその魅力を知るには適したフッ>>続きを読む

テケテケ2(2009年製作の映画)

1.7

駄作とわかっていながらつい見てしまった第2作目。1作目よりは多少ましだが、リアリティのない脚本や使い古されたホラー手法、安っぽい大槻ケンヂモンスターは健在。その他、こじつけの漢字の部首ネタ等も登場。テ>>続きを読む

テケテケ(2009年製作の映画)

1.3

『ある優しき殺人者の記憶』を視聴後、もしやと思い観てみたが、残念ながら才能の片鱗もこだわりも感じられない残念な監督であったと言わざるを得ない。
映画初主演である大島優子をはじめとする大根役者による大根
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娚の一生(2015年製作の映画)

2.9

二人がお互いに惹かれ、好きになっていく描写が雑で、歳の離れた恋愛だけにまったく感情移入できない。ただトヨエツが榮倉の足を舐めるシーンと、染物のはためく中で抱きつくラストシーンだけが撮りたかったという思>>続きを読む

あるふたりの情事、28の部屋(2012年製作の映画)

3.0

不倫の都度利用されるホテルの部屋にて、男女の不倫関係の遷移を定点観測する手法は面白い。しかしホテルの部屋以外の要素は全て省かれているため、逢瀬の合間にどれくらいの時間が流れたのかがわからず、関係の変化>>続きを読む

ある優しき殺人者の記録(2014年製作の映画)

3.9

白石監督の作品は初見だったが、なかなかおもしろい。
大量殺人鬼とその異常な言動を冷ややかに眺めつつも、物語が進むにつれ、信憑性があるものとして描き始め、それを主要登場人物たちが信じ始め、最後にはものす
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オチキ(2012年製作の映画)

2.7

『モテキ』のヒットにインスパイアされ、対概念として「オチキ」をぶち上げたところまでは良いが、ストーリーはそもそも全然冴えない主人公たちによる単なる自業自得、因果応報の話で、『モテキ』のような理屈を超え>>続きを読む

夢の中へ(2005年製作の映画)

3.3

自主制作映画によくある安っぽい形而上学的な雰囲気を纏いつつ、一流の役者たちを使って夢と現実が交錯する様を描いた映画。
バイプレイヤーで有名な田中哲司はこれが映画初主演らしいが、田中の舞台慣れした演技と
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