めしいらずさんの映画レビュー・感想・評価 - 38ページ目

ビッグ・アイズ(2014年製作の映画)

1.8

世事に疎い芸術家の妻と、商才に長けた自称芸術家の夫。妻の絵を売り込んだ先で作者だと間違われた夫がついた嘘。絵は評価され、彼はあれよあれよと祀りあげられる。大金が転がり込む。夫婦は愈々引っ込みがつかなく>>続きを読む

リトル・レッド レシピ泥棒は誰だ!?(2005年製作の映画)

1.0

このレビューはネタバレを含みます

赤ずきんを破茶滅茶に換骨奪胎したナンセンス・コメディ。このぶっ飛び具合、作り手側はさぞ面白がって作ったんだろうけど、観ている側はこれっぽちも面白くない。例えば東京フ◯ン◯パークの出演陣が嬉々としてゲー>>続きを読む

プロムナイト(1980年製作の映画)

1.5

ついやり過ぎてしまった子どもたち。その愚かさと残酷さを示す冒頭の、何とも不穏なかくれんぼの場面がいい。ラスト、真犯人の目を見て真相を悟った主人公の悲哀もそう。だけど過程が残念。人はこんなにも安易な判断>>続きを読む

タンポポ(1985年製作の映画)

4.2

伊丹エンタメの大名作!20回以上は観ているのに一向に飽きないのは、人の根っこたる食への尽きせぬ関心からか。日本映画黄金時代の雰囲気を擬古的に再現した本筋。そこに交差する様々な食エピソードへの視点の誘導>>続きを読む

平成狸合戦ぽんぽこ(1994年製作の映画)

3.5

昔、人と獣は住み分けができていた。ところが人間は自分らの領域を得手勝手に拡大し始め、邪魔者を「害獣」と都合良く呼んで駆逐しようとする。でも目の前の由々しき事態を憂うのは性に合わず、つい食欲や風流やお祭>>続きを読む

新選組(2000年製作の映画)

2.7

黒鉄ヒロシの原作漫画を切り絵にし、市川崑ファミリーの役者陣が声優を務め描かれた擬似的なアニメーション作品。お話自体をどうこう言うよりも、見せ方の工夫こそを愉しむべきだろう。血しぶきの描き方があの金田一>>続きを読む

パンドラの匣(2009年製作の映画)

3.5

再鑑賞。先だって太宰の原作を読んだばかりだったから、タイムリーな配信に感謝感激。原作のイメージを損なうことのない見事な出来栄え。主役から端役までキャスティングの妙が光っている。ひばり役の染谷将太は才気>>続きを読む

ハッピーボイス・キラー(2014年製作の映画)

3.7

「キュートでポップで首チョンパ!」コミカルな惹句の通りだけれど、所謂”普通”から逸脱した主人公が辿る転落の顛末は、そのポップさのせいで悲劇性がより際立つようだ。生き物や生首の声が聞こえる(と信じている>>続きを読む

K2 初登頂の真実(2012年製作の映画)

1.0

このレビューはネタバレを含みます

高峰登頂の過酷さも、初成功した晴れがましさも、人間ドラマの面白みも全然ない。取ってつけたようなエピソード、行き当たりばったりな展開、説明的でリアリティに欠ける会話など、とにかく脚本が惨憺たるものだ。人>>続きを読む

ナイトクローラー(2014年製作の映画)

4.0

他人の不幸に我先にと集る男たちがいる。その映像をテレビに売れば大金を手に入れられる。そんな仕事が成立するのは、視聴率が欲しい局と、大勢の視聴者の要求があるからだ。そのネタは凄惨であればあるほど喜ばれる>>続きを読む

ローン・サバイバー(2013年製作の映画)

3.5

凄惨な戦場。判断一つで結果は全然違うものに。その正否は主観者の側に属する。相手には相手側の正否があるのだから元より正解などないのだ。この時のそれは戦場に於いて綺麗事であったのかも知れぬ。それによって多>>続きを読む

誰も知らない(2004年製作の映画)

4.1

一人ひとり父親の違う妹弟たちを託された兄はまだ12歳。出生届を出してもらえず社会的に彼らは存在していないのと同じ。誰も彼らの存在を知らないのだ。妹弟らを世話する兄しか外に出ることを許されず、それを従順>>続きを読む

タロットカード殺人事件(2006年製作の映画)

2.8

実にウディ・アレンらしい映画。良く言えば十八番。悪く言えばマンネリ。だけど好きだなぁ。彼が画面の中で泣き言や言い訳をずーっとボヤき散らしているだけで面白い。絵に描いたような挙動不審ぶりももちろん御家芸>>続きを読む

ヒミズ(2011年製作の映画)

3.4

生きていくのはかくも苦しい。人生に日不見。高望みしない。受け流す。諦め。親から要らないと言われる痛苦。夢を持て。君は世界に一つだけの花。世の中は綺麗事と嘘っぱちと憎しみ悲しみが溢れている。本当にクソ人>>続きを読む

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)

3.3

主演の3人が素晴らしい。厭世的な主人公に綾野剛はまさにぴったり。体当たり演技の池脇千鶴もいい。そして何と言っても菅田将暉の繊細さ、絶妙な軽薄さと相反する鬱屈した内面の演じ分けが見事。せっかく好転しかけ>>続きを読む

奇跡(2011年製作の映画)

3.3

九州新幹線全線開業の朝、博多発と鹿児島発の一番列車がすれ違う瞬間に奇跡が起きて願いが叶う。両親の離婚で生き別れになってしまった兄弟が願う家族の再生。でも心の奥底でそれは叶わぬ願いだろうことは彼らにだっ>>続きを読む

歩いても 歩いても(2007年製作の映画)

3.7

家族が続いていくのは実に厄介事。他人を受け入れないと途絶えてしまう。それなのについ排他的な思いを言葉に含ませたり、同様にやり返されたり。息子を挟んだ、嫁と母親の、表面上は笑顔で取り繕った静かな攻防のこ>>続きを読む

残穢 住んではいけない部屋(2016年製作の映画)

2.0

原作にあった真実っぽさ。読んだ私も祟られるのではと本気で心配したほどの迫真性だった。しかし何かが明確に示されている訳ではないので、正直映画には向かないと思っていた。ところが細かな部分が上手く(資料の使>>続きを読む

セッション(2014年製作の映画)

4.1

音楽の神髄とは如何なるものか。この映画が肉薄したそれは狂気だ。そのぶつかり合いだ。バンドメンバー皆が恐れおののく鬼教官に唯一楯突いた主人公だけが、そこへの切符を持った傑出した音楽家だった。音楽の為に全>>続きを読む

遊星からの物体X ファーストコンタクト(2011年製作の映画)

2.7

SFホラーの金字塔だったあの傑作から30年後に制作された続編。82年版の冒頭へと繋がる前日譚である。基本的にはほぼ同じ話だ。この映画の肝は、人に乗り移って同化する地球外生命体に一体誰が乗っ取られている>>続きを読む

レスラー(2008年製作の映画)

3.5

愛を失った代わりに自由を得て飛んだ最後の必殺技。これが不器用にしか生きられなかった男の生きざまだった。そのありのままを見せつけられる。この無様さは何てカッコいいんだろう。好きだった女に自分への愛があっ>>続きを読む

ブルージャスミン(2013年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

富豪の座から転落しても彼女の上流意識は抜けない。事あるごとに今までのリッチさを吹聴する。事実から目を背け、周囲の人々を見下しながら自尊心を保つ。精神はもう蝕まれている。嘘を重ねて得た新しい恋人のおかげ>>続きを読む

わが青春のマリアンヌ(1955年製作の映画)

1.8

霧の立ち込める森。湖畔に建つ古城。美しい少年少女たち。対岸の古い屋敷に囚われた乙女。彼女を救い出そうとする主人公。冒頭から詩を詠んでいるような台詞。歯が浮くような少女趣味だ。全体的に古色蒼然。評価の高>>続きを読む

少女椿(2016年製作の映画)

2.0

期待せずに観たけれど意外と健闘が光る作品だった。元より実写化するにはいろんな意味でハードルの高い作品だ。主要メンバーのキャスティングが良く、特に主人公を演じた中村里砂は原作のイメージにとても近い。風間>>続きを読む

地下幻燈劇画 少女椿(1992年製作の映画)

4.0

伝説のアングラ漫画のアニメ化。極めて観る者を選ぶ映画だ。乱歩や久作らの小説、寺山作品などからそのエキスを吸収し、それを濃縮したような丸尾末広の美学。それは幻想であり、血しぶきであり、エログロであり、同>>続きを読む

ルーム(2015年製作の映画)

3.3

誘拐監禁されて7年。17歳だった少女は24歳になり、犯人との間にできた5歳の息子と共に狭い”へや”で監禁生活を強いられている。外を知らない息子に世界を知ってほしい。計画を練って犯人を騙し、どうにか脱出>>続きを読む

破戒(1962年製作の映画)

4.0

人の心の卑しさと高潔さ。被差別部落出身を隠した若者の心の葛藤が描かれる。この問題の根っこの深さは、差別される側がそれを受け入れ卑屈になったり、逃げ隠れする現実にも表れる。主人公は差別を物ともしない活動>>続きを読む

愛、アムール(2012年製作の映画)

4.2

教養と品格を備えた老夫婦の妻を唐突に襲った病は日に日に悪化の一途を辿る。誇り高い妻は惨めな自分の姿を晒すのを嫌がる。負い目と病の二重苦だ。そんな彼女を慮りほぼ一人で介護する夫は、次第に周囲を遠ざけ、二>>続きを読む

別離(2011年製作の映画)

3.8

互いを誤解したまま相手を責め立て、それぞれが自分や家族の保身の為についた嘘が、真綿で首を締めるように己を追い込んでいく。そして見えてくる格差社会や介護、離婚の問題、彼らにとって絶対的な宗教観。そんな大>>続きを読む

野火(2014年製作の映画)

3.3

2014年の塚本晋也版。リアルさを追求する余りだろうか。余りに小さ過ぎる台詞は聴き取り辛いこと甚だしい。動きのある場面で揺れ過ぎて何が映っているのか判然としなくなるカメラにも閉口だ。しかしそれを除くと>>続きを読む

クラッシュ(2004年製作の映画)

3.6

アメリカの人種差別の根深い闇。肌の色や出自を問わずそれぞれが関わる社会の中で鬱屈している。彼らの線が交わるその時々に、傷つけ合い、辱め合い、貶め合いながら、時に助け合いもするのだ。思いは相手に通じたり>>続きを読む

ミッドナイト・イン・パリ(2011年製作の映画)

4.0

数多の芸術家が集う憧れの1920年代パリに迷い込んだ主人公が、夜な夜な彼らと交流する中で人生の真実に目覚め見定める。人は今ある現実を拒絶し過去に憧れがちだけど、たとえ過去に行けても人は同じことを繰り返>>続きを読む

ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)

1.7

このレビューはネタバレを含みます

結局何が描きたかったのだろう。ようやく栄光を手に入れた瞬間に暗転する主人公の人生。そして安楽死の話、赦しの話へと。善と悪の二極に偏った描き方が浅薄だ。彼女の家族や最後の対戦相手は物語の都合上の単なる「>>続きを読む

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

着想の妙が冴え渡る一発勝負の映画だ。撮り直しや止まることが許されぬ生放送を成立させる為に、スタッフとキャストが数々のトラブルを乗り越え一丸となっていく過程は、笑えるのに何故だか感動的。前半で感じていた>>続きを読む

イル・ポスティーノ(1994年製作の映画)

3.5

恋しくて、愛おしくて、言葉が湧き出てくる。それは詩だ。その詩が想い人に笑みを生み、涙を滲ませ、心を開かせる。濁りのない純粋な心だけが持ち得る言葉の力。言葉には偉大な力がある。人々に気付きを授け、力を与>>続きを読む

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)

2.5

次々に立ち現れる絶望的に苦しい状況を、人の善意や運の良さ、あるいは生きんとする本能によって切り抜けた主人公に、ポランスキーは自身の戦争体験を重ねているのかも知れない。冒頭の夜想曲20番、ドイツ人将校に>>続きを読む