マンボーさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

空に聞く(2018年製作の映画)

4.0

センセーションやサプライズ、外連味などが全くなく、淡々と風景や日常、普段着のインタビューを切り取って、手作りの額に入れて見せてくれているようなドキュメンタリーだが、この題材にこれだけ心を動かされ、感嘆>>続きを読む

分断の歴史 朝鮮半島100年の記憶(2019年製作の映画)

3.7

現在も北朝鮮と韓国とに分断されている朝鮮半島の歴史を、分断以前の時代から振り返り、片側の国に片寄ることなく、大国の思惑に翻弄されてきたその歴史を、間断なく描き抜いたフランス産のドキュメンタリー映画。>>続きを読む

瞽女 GOZE(2019年製作の映画)

3.2

描こうとした題材に興味があって足を運んだが、正直に云ってどこか物足りない作品だった。

中世以降、幼い頃に目が不自由になった者が就く職業といえば、多くは按摩や鍼灸師、さらに家柄がよい者はかつては琵琶法
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シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

3.3

原書が読めるわけでもないのに、聖書をモチーフにして大風呂敷を敷いたけれど敷きっぱなしで説得力をもたせきれずに懊悩し、闇の底に落ち込みながらも、何とか周囲の支えもあり、ゼロから人の営みを見つめ直して精神>>続きを読む

時をかける少女(2006年製作の映画)

3.9

美術監督に山本二三、その他にも武重洋二、男鹿和雄。キャラクターデザインに貞本義行。要は、作画系に実績のある名人を揃えている。

細田監督の作品は現代的だが、物語の線が細く、絵柄の深みに欠けるイメージが
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タネは誰のもの(2020年製作の映画)

3.6

2018年に戦後以降、都道府県、JA、農業試験場が農業で使う種子の品質を保ち、国が予算を付けて、農家に種子を分配する方式の種子法が廃止された。

そして、種苗法がとって変わり、このほど改正されようとし
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まともじゃないのは君も一緒(2020年製作の映画)

3.0

意外に評価が高いのに、賛否が分かれていたので気になって映画館へ。

序盤、あからさまな高校生カップルを異様なほど悪しざまに言う女子高生グループに冷やり、これはどうも好まざる作品のような。

さらに清原
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砕け散るところを見せてあげる(2021年製作の映画)

4.2

1997年の封切り当時、滋賀から京都、大阪にかけて、梅田でしか劇場公開されておらず、大学からの帰り道がてら転がり込んだ映画館というより映写室と云った方がしっくりくるようなミニシアター(昔のプラネット+>>続きを読む

ファンタジア(1940年製作の映画)

3.7

1940年製作のクラシック音楽の名曲と、ディズニー独特のアニメーションとを組み合わせた実験的オーケストラ・アニメーション。

ようやく観た。手塚治虫といえば、大ファンだったディズニーアニメの中でも、何
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14歳の栞(2021年製作の映画)

4.0

舞台は埼玉、春日部。郊外の中学校の2年6組35名全員に密着を敢行したドキュメンタリー映画。

序盤は、平凡で退屈な作品ではないかという不安が首をもたげたが、中盤に差しかかって少しずつ引き込まれていった
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キンキーブーツ(2018年製作の映画)

4.2

前週、シネ・リーブルに「あのこは貴族」を観に行った時に、舞台版の本作がかかっていることを知って、翌週いそいそと鑑賞してしまった。

まずすばらしい劇場、天井の高い舞台に、作り込まれ妥協のない舞台セット
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リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)

3.3

21世紀に入り一般化しつつあったインターネットのファンサイトへの、ファンだけが共感できる独特の書き込みがすぐには消化しづらくて少し面食らったが、それは監督の目論見通りだろう。

田園が広がる北関東の地
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あのこは貴族(2021年製作の映画)

3.9

映画の世界は長い間、男性監督の活躍する世界だった。1990年代にジェーン・カンピオンが賞を取ったあたりからポツポツと女性監督が出てきたけれど、それでも男性監督からの影響を強く感じさせられたり、大人を観>>続きを読む

ノマドランド(2020年製作の映画)

3.9

2008年9月のリーマンブラザーズの破綻をきっかけに起こった世界的な不況のあおりを受けて、車上生活を強いられることになった高齢者たちの生活の実情を、主人公自身の生活ぶりによって描き込み、さらに狂言回し>>続きを読む

ミッドナイト・ファミリー(2019年製作の映画)

3.9

メキシコシティーの救急医療現場は、日本人から見ればカオスだ。人口は東京都とほとんど変わらない900万人にも関わらず、救急車はわずか45台に満たない。東京では240台弱だから、その差は歴然。だから事故が>>続きを読む

ミナリ(2020年製作の映画)

3.7

1980年代、韓国から移民としてアメリカに渡った夫婦が、農業で財を残そうと西海岸のカリフォルニアを離れて、アメリカ南部、中央からやや東側に位置する自然豊かなアーカンソー州の田舎の高原を開拓し、まだ幼い>>続きを読む

ANNIE/アニー(2014年製作の映画)

3.3

世界恐慌の時代を背景にした元祖アニーを、現代を舞台に大胆に置き換えた作品。大富豪役は、携帯電話会社の独身黒人社長、ニューヨーク市長選にも出馬していて、その人気取りのため孤児のアニーと暮らし始め、高層ビ>>続きを読む

春江水暖~しゅんこうすいだん(2019年製作の映画)

3.8

山水画には情趣と、しなやかで優美な美しさがあるけれど、本作の風景には画ではあえて描かれない、細密で重厚な細部が映り込んでいて、一概に美しいとは言えないけれど、しみじみとした深みのある趣を感じられる。>>続きを読む

バクラウ 地図から消された村(2019年製作の映画)

3.9

本作を観ながら、初めてラテンアメリカ(南米)はコロンビアの作家ガルシア・マルケスの小説を読んだときの感覚を思い出した。

「エレンディラ」や「族長の秋」、極彩色のイメージ、独特の倫理観と歴史観、語りの
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赤い闇 スターリンの冷たい大地で(2019年製作の映画)

4.0

思っていたよりずっと面白かった。先月観た「異端の鳥」にも重なる貧しさや、主人公のあてどない彷徨が寒々しくも、あまりに痛々しい作品だった。

主人公はイギリス南西部ウェールズの田舎の港町出身の知的な青年
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ラーヤと龍の王国(2020年製作の映画)

3.8

とてもよく練り込まれ、考え抜かれたことが伝わってくる東南アジア風の異国情緒も新鮮なファンタジーアニメーション。

密林(ジャングル)の国、砂漠の国、東洋風の賑わう港町風の国、バイキング風の国、エジプト
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あの頃をもう一度(2021年製作の映画)

3.5

過去の名作、雨降りミュージカル諸作へのオマージュと、水をテーマにした併映作品につなぐ役割を担った都市を舞台にした短編アニメーション。

活力をなくした年老いた白人男性が、ちょっと気分屋過ぎないかな、そ
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スペース カウボーイ(2000年製作の映画)

3.9

宇宙開発創世記、初めて宇宙に飛び立つはずだったアメリカの宇宙飛行士集団、チーム・ダイダロス(ダイダロスは、ギリシャ神話の腕利きの職人にして発明家の名前。クノッソスの迷宮も、イカロスのロウの羽根も彼の発>>続きを読む

野球少女(2019年製作の映画)

4.0

面白かったし、期待をはるかに超えて好きな作品だった。

チラシやポスターの投球モーション時の上半身を写した主人公の画像は、彼女の学生らしい清新さや、シャープなスタイル、意外に華奢な全身のフォルムの魅力
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男はつらいよ お帰り 寅さん(2019年製作の映画)

3.5

シリーズ第50作、2019年12月27日公開作品。

寅さんを演じた渥美清が亡くなっておよそ23年の月日を経て、まだ健在の主要人物のキャストを揃えた、寅さん亡き後の後日譚。

主人公は、寅さんの甥っ子
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ある人質 生還までの398日(2019年製作の映画)

3.7

怪我で体操選手をあきらめたデンマーク人の青年は、これからの人生で平凡な生活を営み、ただただ年齢を重ねることに強い抵抗を感じて、長年の夢だった写真家になりたいと思い、ある写真家のもとを訪れる。

そこで
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おらおらでひとりいぐも(2020年製作の映画)

3.2

田中裕子が老婆を演じているけれど、どうしても、もっと軽やかに生きているイメージがあって、無理をして演じているように思えてしかたなかった。

本作の主役の老婆のように、戦後、東北から上京してきた女性なら
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すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.0

本当に勝手ながら、役所広司ほど色が付ききった役者には、正直ほとんど興味がない。さらには、正月明けから「無頼」に「ヤクザと家族」とかなり濃厚なヤクザ映画を二本観たこともあり、しばらくヤクザ映画を観るには>>続きを読む

男はつらいよ ぼくの伯父さん(1989年製作の映画)

3.7

シリーズ42作目。1989年12月27日に公開された作品。

序盤、寅さんと未成年で浪人生の満男とが、酔っ払ってとらやに戻ってくるシーンに見覚えがあった。

どうも劇場公開の数年後、地上波のロードショ
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機動警察パトレイバー2 the Movie(1993年製作の映画)

4.1

押井守監督がパトレーバーの設定を元に、長年温めてきたアイデアを放出した作品。

前半の三分の二は、全くパトレーバーっぽさはないが、政治劇、陰謀劇として秀逸で魅せられたが、終わってみると犯人の内面や動機
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メイキング・オブ・モータウン(2019年製作の映画)

4.0

モータータウン・デトロイトの左官屋の8人兄弟の7番目の息子として生まれた黒人のベリー・ゴーディー・ジュニアは、小さなジャズ・レコード専門店経営のかたわら作曲家として暮らしていたが、お店の経営はうまくゆ>>続きを読む

オン・ザ・ロック(2020年製作の映画)

3.5

フランシス・フォード・コッポラを父に持ち、かつてはゴッドファーザーパート3にも出演していたソフィア・コッポラ監督の8作目の映画作品。

抑えた色調に青みがさす映像に映えるメタリックな車が、ニューヨーク
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異端の鳥(2019年製作の映画)

4.2

白黒映画でこんなに美しい映像が撮れるのか。こんなに美しい映像で、こんなに普通の人々の残酷な所業をいくつも語れるのかという衝撃と驚異に満ちた問題作。

あまりにむごく、生々しい描写が多く、家族や善良な友
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アイヌモシリ(2020年製作の映画)

3.5

阿寒湖のほとり、アイヌコタンの民芸品店に生まれ育った中学生の少年の目から、先祖であるアイヌ民族の祭祀儀式であるイオマンテ(飼い育てた熊を殺して、神々の世界に送り返し、神々が地上に降りてくることを願い、>>続きを読む

天井桟敷の人々(1945年製作の映画)

4.3

4K修復版を映画館で観られる僥倖に預かった。

個人的に敬愛してやまないジャック・フェデー監督直系の弟子筋、フランス映画の名匠フェデーの助監督を務めたマルセル・カルネがナチスドイツに攻め寄せられたフラ
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男はつらいよ 知床慕情(1987年製作の映画)

3.8

1987年8月15日劇場公開のシリーズ第38作。50作に達した男はつらいよシリーズのファイナルサードで最も巷間の評価が高い、シリーズ後期を代表する作品。

冬は暖かい地域でも寒い地域でもどちらでも味わ
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