marikologyさんの映画レビュー・感想・評価

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神々のたそがれ(2013年製作の映画)

4.5

壮絶なパラレル人類史。グロさ醜悪さよりも、モノクロ画面にひしめく事物自体の「圧」が、遠近法無き中世絵画さながらに際立つ。3時間に渡る無力感に憔悴し、雪景色に救われてようやく帰って来た後に残る、この奇妙>>続きを読む

グロリアの青春(2013年製作の映画)

4.0

文字通り、青春する熟年の凄まじいパワフルさ!そしてそのぶん増幅される哀しさも含め、カッコ良い。長年築いてきた人生観がもたらす、可能性と不可能性の狭間でもがきながらも、なお幸せを求める姿勢は素直にステキ>>続きを読む

惑星ソラリス(1972年製作の映画)

3.5

懐かしいSF的な取っ付きやすさも感じつつ、映像美に身を任せるうち、いつの間にか宇宙の向こう側に突き落とされる。意識の彼岸から不完全なままやって来る思い出たちの、堪らぬ寂寥感。是非ともスクリーンで観たい>>続きを読む

アルゴ(2012年製作の映画)

3.0

題材そのものの、アンビリバボー的興味深さ。そこにハリウッドの冒険味、本編と「アルゴ」との入れ子感もほんのり加わり、背景への触れ方はさておき、良きエンターテイメントになっている。
特典収録のインタビュー
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世界にひとつのプレイブック(2012年製作の映画)

4.0

颯爽とした文体で、笑いのツボも涙腺もガッツリ刺激。心の躍動まで伝わる二人の踊りは、「映画史に残るダンスシーン」の仲間入りしてるのでは。ラブコメディの枠を超えた、素晴らしくポジティブな人間愛映画。

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(2014年製作の映画)

4.5

落ち目のヒーローの再起、とまとめてしまうにはあまりに言葉足らずで、「バードマン」としか言いようがない。大筋の上にミルフィーユ状に重なった様々な要素と演出を、分解せず一口で楽しみたい。技術的問題ではない>>続きを読む

こわれゆく女(1974年製作の映画)

4.5

互いに愛しつつも、情緒不安定な妻と、妻を恥じる夫。二人の絆が、破綻に近づいてみせては少しだけ引き返す。でも着実に元の位置からズレていくとともに、外側からはより見えにくく暗号化していく無限ループ。生々し>>続きを読む

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

4.0

一枚一枚が、その儚さ自体で美しい、記憶の根源としての静止画たち。「12モンキーズ」も素敵だったけど、本作の、ほぼ引き算だけで語られた時空の揺らぎとロマンスが、鮮烈に脳裏に焼き付けられる。

サタデー・ナイト・フィーバー(1977年製作の映画)

3.5

トラボルタの一挙手一投足から放たれるこのキレキレ具合、言葉では言い尽くせない。ほかのキャストも、ヒロインといい取り巻きのコといい、絶妙なリアリティの顔で、青春映画としてのかぐわしさを補強。今まで半笑い>>続きを読む

クラッシュ(2004年製作の映画)

4.0

小さな物語の端と端が、寄木細工のように隙なく連なり、壮大な円を描く。その構成力への驚嘆に負けじと、ずっしり広がる余韻。
LAの夜景が、また新たに産まれた《クラッシュ》を見守るラストシーンに、アンデルセ
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グランドピアノ 狙われた黒鍵(2013年製作の映画)

2.5

一回目の「離席」時点で、期待のベクトルの転向を強いられましたが、それはそれで良いです。ヒッチコック的マテリアルを、現代の質感でツルッとまとめてみたような。ピアノの構造美とそれ故の妖しさが、物語に溶け込>>続きを読む

ビューティフル・マインド(2001年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

盛りだくさんの物語パーツゆえか、それらを繋ぐ主人公の人間描写がちょっとあっさり目。しかし、病の症状がそのままトリッキーな演出になっているのは見事。ラッセル・クロウの悲しげな熊顏も良かった。

アマデウス(1984年製作の映画)

4.5

主人公たるサリエリは勿論、モーツァルトの「ロックスター」っぷりとその苦悩も、万人に捉えやすい豊かな人物像。ほかの全てが背景と化す中、対象と自らを結ぶ糸でがんじがらめになる愛憎の構図は、みな覚えがあるは>>続きを読む

暗殺の森(1970年製作の映画)

4.0

オペラっぽかったりPOVホラーっぽかったり、しなやかに切り替わる演出で、不穏な美を最高潮へ導く。何者にもなり切れなかった人間が、周りまで悲劇に巻き込む罪深さ。ジャケット写真のダンスシーンが素敵過ぎる。

ラリー・フリント(1996年製作の映画)

3.5

法廷×ノートンの時点で美味確定ですが、やはりフリント夫妻の狂気の純愛に胸打たれる。顔だけで圧巻のコートニー。
しかし、ミロス・フォアマンは凄い。自伝を映画化するならフォアマンでお願いします派、結構いる
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グロリア(1980年製作の映画)

3.0

かなりブッ飛んだ逃避行劇。このデコボコカップルの画的インパクトは最強だし、細かいことをほじくり返すとこっちが撃たれそうなグロリアの勇ましさに、降伏せざるを得ない。

普通の人々(1980年製作の映画)

4.0

たとえ家族で同じ出来事を見つめていても、苦しみの種類は各々違う、という残酷な事実を、極めて「普通の」こととして、赦しを持って語る。感情が高まっていく過程と原因を、繊細かつ的確に見せていく構成が素晴らし>>続きを読む

キャリー(2013年製作の映画)

2.5

設定に反して可愛すぎるという、ドラマや漫画にしばしば起こる障害はあれど、「可愛い」と「可哀想」の隙間をちゃんと埋める演技力に救われてる。あと、やっぱりジュリアン・ムーアは凄いですね。デ・パルマ版未見な>>続きを読む

ゾディアック(2006年製作の映画)

2.5

期待と失望が何度も繰り返され、時間だけが過ぎる虚しさを追体験する感じは凄まじい。殺人云々より、事件が闇に沈殿した総体としての、恐ろしさ、得体の知れなさ。精神衛生上、よろしくない(褒めてます)。

四季を売る男(1971年製作の映画)

3.5

出来事だけ追うと結構ドロドロした感触のはずなのに、それを無化する演技と画。悲哀を通り越して微笑を誘うが、沁みる。試しに昼ドラをこんな感じでやってみて欲しい。

フェイシズ(1968年製作の映画)

4.0

いろんな表情が映し出されるなかでも、笑顔がたぶん一番多いのに、悲しい人々。次々に切り替わるたび、美醜関係なく、顔がゲシュタルト崩壊していくような怖さ。かっこいい。
ジーナ・ローランズがひたすら美しいで
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ダンス・ウィズ・ウルブズ(1990年製作の映画)

4.0

柔らかな色調で包まれた一つ一つの情景が、本当に美しい。スー族の槍のように、物語が明晰な軌跡を描いて心に刺さって来る。どの民族もそうだけれど、自然とともに暮らす人々の言語センスは素敵。

ブラッド・ダイヤモンド(2006年製作の映画)

3.0

特に社会派テーマの時に、映画が取り得る選択肢について考えるのは楽しい。本作の、より間口の広い問題提起のために、様式美をストレートにフル活用する潔さ。何にせよ、知るきっかけを与えてくれる映画体験は貴重で>>続きを読む

キック・アス(2010年製作の映画)

3.0

クロエたん目当てで観てみたら、ナイスな衝撃の連続。いろんなジャンルの冒険活劇を拝借しつつ、アメコミ特有の、線そのものからしてバタ臭くて距離があるけど徐々に癖になる「絵のにおい」を、映画全体で再現してく>>続きを読む

デスプルーフ in グラインドハウス(2007年製作の映画)

4.5

趣味も遊びもパンッパンに詰まった傑作。これほど人間の快感原則にのっとった映画がありましょうか。

毛皮のヴィーナス(2013年製作の映画)

3.5

二人の会話だけでもスリリング。でもそれ以上に、舞台と映画の、そして「演じること」と「演じてないこと」との境界が溶けて行くさまを、なおも演じる二人に見せつけられる、という屈折した恍惚がたまらない。そうや>>続きを読む

狼たちの午後(1975年製作の映画)

3.5

邦題からのイメージが、冒頭であっさり裏切られて笑ってしまった。室内のシーンが多いが、空間や人間関係の流動を捉える演出で飽きさせないうえ、そのぶん外部との接触シーンの派手さが、異常にカッコいい。俳優陣の>>続きを読む

ロッキー(1976年製作の映画)

3.5

生卵も肉パンチもエイドリア〜ンも思いのほか奇抜な演出感が無く、必要に迫られたリアルな行為として入ってくる。メンタルとフィジカルの描写バランスと言い、映画以前から鍛えていたスタローンにしか生み出し得ない>>続きを読む

情婦(1957年製作の映画)

3.5

未見の人のために箝口令が敷かれるタイプの傑作は、体に毒ですね…
プロットの凄さだけでは収まらない魅力がしっかり詰まっている。階段昇降機に喜ぶ弁護士さんなど、みんな素敵ですが、とにかくマレーネ・ディート
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さらば、愛の言葉よ(2014年製作の映画)

4.0

暴力的なほど極端に、レイヤー処理され細切れにされ合体させられた、イメージと音にめまいがする。世界が「森」だと言うならば、この映画は方位磁針が効かない樹海だが、それは見たことのない美しさをたたえているし>>続きを読む

炎上(1958年製作の映画)

2.5

原作の、実存を賭けた病的葛藤を「もう許して」ってくらい嗅がされるあの感じが、だいぶ削ぎ落とされていて若干淋しい。でも雷蔵&仲代の見事なキャスティングと、燃える金閣のゾッとする美しさだけでも、一見の価値>>続きを読む

ダラス・バイヤーズクラブ(2013年製作の映画)

3.5

インディーであることが難しい医療の世界にゼロから殴り込みをかける、カウボーイとゲイ。綺麗事ではすまない、あまりに人間的な必死さこそが、やがては人類の進歩の扉をも叩く。二人の演技も最高、痛快この上ない人>>続きを読む

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)

4.0

戦場と、そこにいる兵士に「成る」人間を、現在と地続きな題材が持つリスクを承知で描く。だからこそ、この戦争が残したものを知っている、「今」を生きる観客各人が、肌で感じる作品になっている。偏狭なプロパガン>>続きを読む

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(2013年製作の映画)

4.5

萩尾望都の影響で、吸血鬼に無条件にロマンを感じてしまう体質ですが、本作には完全に吸い尽くされました。
悠久の時間の重みに、切なさとお茶目さが交錯。美しい本と楽器たち。音楽も素晴らしい、サントラを聴きな
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浮雲(1955年製作の映画)

4.0

ともに抱えた「生きづらさ」で結びついた男女が、それでもいたわりあったり理解しあったり出来ない苦しみ。

まだ少ししか見ていないけど、テーマやモチーフに共通項(女であること、時代にのまれること、長距離列
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乱れる(1964年製作の映画)

4.5

これは何も知らずに見るのが大正解。観てるうちにプロットを読めたとしても、始めから知って観るのとは後味が全然違うはず。

演出面の小憎い技ももちろん素晴らしいのですが、何と言っても高峰秀子の気品と色気の
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