コズモさんの映画レビュー・感想・評価

コズモ

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幼な子われらに生まれ(2017年製作の映画)

4.0

荒井晴彦脚本でこの配役ならば、悪いものは出てきそうもないが、実際その通りで。浅野をこの役でと挑んだスタッフは賭けではあったと思うが、浅野でなければこんなふうな作品にはならなかったはず。唸る演出もないが>>続きを読む

南瓜とマヨネーズ(2017年製作の映画)

4.0

冨永作品では珍しく、シネフィル的作りに溺れずに、人物に寄り添って正面切って撮りあげた青春映画で、ある終わりを描いている。臼田あさ美、太賀もよく捉えてすこぶる良いが、中でもオダギリの良さは素晴らしい。女>>続きを読む

ムーンライト(2016年製作の映画)

4.5

ドラッグに溺れる母親、ディーラー、ゲイ、虐め、描かれる題材は黒人映画として目新しさは全くないが、そのパーソナルな手付きは社会派的なジャンルには回収されず、黒人の造形的美しさ、黒人社会文化を素朴に写し出>>続きを読む

キングコング:髑髏島の巨神(2017年製作の映画)

3.8

サミュエルLG、グッドマン、ライリー、ヒドルストン、ブリー・ラーソンと特撮映画にはない豪華キャスティング。ドクロ島に向かうまでの設定の緩さにあまり期待が持てなかったが、島に渡り、コング登場で軍隊が一気>>続きを読む

葛城事件(2016年製作の映画)

3.5

過剰な父権の強制。そこからあまり拡がらず、自然主義的リアリズムで驚きは特にないが、しっかりした脚本と演出、演技を見せてくれる映画だ。救いも捻りもないので、もう一歩動かすともっと良かったのかなと。家出し>>続きを読む

だれかの木琴(2016年製作の映画)

4.0

それにしてもこの一見、只の若い美容師とミドルマダムのストーカー話というNHKドラマ的な題材が、これ程豊潤な作品になり得たのは監督の手腕だろう。ストーカーという言葉規定される未満のあらゆる可能性について>>続きを読む

セトウツミ(2016年製作の映画)

4.0

ほぼ全ては小川沿いでのセトとウツミの会話に終止し、その会話劇で関係性、お互いの情報を探りながら、更なる情報を求めていく展開。取り敢えず、邦画若手俳優1,2の凄みと大森監督の緩急の演出力と情報の提示の仕>>続きを読む

ディストラクション・ベイビーズ(2016年製作の映画)

4.0

何にも当て嵌められず、何の意味付けも出来ない暴力。「オンリーゴッド」的に神々しいユーモアも感じる。暴力シーンは圧倒的で、ワンショット狙いで細かいカッティングはされていない。一つとして同じような喧嘩にな>>続きを読む

誰のせいでもない(2015年製作の映画)

4.0

ヴェンダース久々の新作。不可抗力の交通事故で子供を殺めた小説家の事故からの年月。いくらでもドラマは浮かぶし、実際に自殺未遂、恋人との別れ、小説家としての成功等いろいろ起こるがそこはヴェンダースで、印象>>続きを読む

ノック・ノック(2015年製作の映画)

4.0

イーライ・ロスは黒沢清と違って、平凡な市民の感覚に巣食うような人智を越えない悪魔を扱う。どうしてもその罠に抗えない誘惑と、勝ち目のなさを説得力を持ってきっちり描くから立派なホラーだ。今回も男なら誰しも>>続きを読む

ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ(2015年製作の映画)

4.5

ゆるゆるな設定で風向き次第であちこちに移動する拡がりを持ちながら、初期ゴダール的カメラワークの遊びを取り入れ、切れ切れのショットで緊張感が持続している。 コアオブベルズの脚本の度の外れたリアリティーレ>>続きを読む

オーバー・フェンス(2016年製作の映画)

4.5

中年挫折男の再生への長い道のり。土地柄出てくるスペクタクルの誘惑、エキセントリック女、訳アリ主人公の開陳の手順等々、映画的誘惑の罠を難なくすり抜けて、淀みなく繋ぎきった快作。全編演出が行き渡っていて、>>続きを読む

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)

4.0

最近の黒沢清にしてはかなり娯楽に振った作品。冒頭プロットから黒沢映画の掴みで乗り出す。俳優を使うのが本当に旨くなっていて、黒沢組初めての東出、川口、竹内辺りすら自分の色に染めてしまうのはさすが。香川は>>続きを読む

グリーン・インフェルノ(2013年製作の映画)

4.0

世界の関係性、強者、弱者の作り込みがB級構造の中で極めて知性的に成された秀作。かつてはキリスト教的道徳に背く行為を犯した者から犠牲になる約束ごとがあったが、イーライロスは深い考えもなく中途半端な倫理観>>続きを読む

追憶の森(2015年製作の映画)

4.0

ストーリー自体が禁じ手である学生映画的なプロット。ヴァンサントの持ち味であるインデペンデント性とウェルメイド性が食い合わせ悪く、最後まで混じりあっていないのだが、それでも夫婦の会話など余りに微妙なリア>>続きを読む

岸辺の旅(2015年製作の映画)

4.5

二回目をDVDにて。今回は冒頭の蘇りの会話からちょっと泣きそうだった。こういうレベルの会話がスッと交わせる関係というのは何より得難いし、通常の黒沢映画ではあり得ない。深津が持ち込んだエモーションという>>続きを読む

ボーダーライン(2015年製作の映画)

4.0

ストーリーはメキシコ麻薬カルテルモノの典型。三人はほぼ完璧に見えて、しっかりした演出もあってこれだけで満足ではある。
しかしこれ程異色のテイストを残してしまうのは何なのか。。
移送シーンの空撮が素晴ら
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キャロル(2015年製作の映画)

4.3

手持ちカメラを多用していたのが意外で印象的だった。トッドヘインズはクラシックを違和感なく撮ることが出来る貴重な監督。出会いのショット二発はここ何年もないくらいの素晴らしさ。ブランシェットは往年のハリウ>>続きを読む

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)

3.9

登場人物の多さ、密室サスペンス仕立てから説明の尺が長くなりすぎていつもの全く無意味なアホ話シークエンスは今回無し。終始犯人探しの不穏さが続くバランスの悪さで、途中、正直集中力は落ちる。お決まりの謎解き>>続きを読む

ラブ&マーシー 終わらないメロディー(2014年製作の映画)

3.9

冒頭のキューザック、バンクスの車内のどこに転ぶかわからない不確定な要素がありすぎな会話のシーンが素晴らしすぎた。これだけでこの映画はヤバイとバンクスの絡んだやり取りは全て食い入るように見てしまった。ダ>>続きを読む

ローリング(2015年製作の映画)

4.0

冨永監督の最新作。今作は語りに重きを置いていて、その分、持ち味の遊びは抑制されている分、ガチャガチャと、いびつに説話と演出が齟齬をきたすシーンはなかった。説話だけで十分、持ち味が出ると掛けられていたの>>続きを読む

プリズナーズ(2013年製作の映画)

4.1

事件そのものを越えて遥かに拡がっていく謎がマクガフィンとはならず、容疑者達、被害者達の動きそのものに焦点があたってしまうあたりヤバイ。これだけ非凡なストーリーテリングをサラッと見せるわりにカット割りや>>続きを読む

ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して(2013年製作の映画)

4.0

デプレシャンにとっての初のアメリカ映画。シンプルな関係性で尺も気にしたのだろうがアンサンブルによるいつものゴージャスな展開はないが、デルトロとマチューの関係だけで十分味わい深い。聴き手であるマチューを>>続きを読む

インターステラー(2014年製作の映画)

4.0

驚きは、泣きながら冷凍から覚醒したM.デイモンだ。悪役でのデイモンははじめてではないのか。しかも、妙に理路整然としながらも自己正当化するという新しいタイプ。目を疑った!

ニンフォマニアック Vol.2(2013年製作の映画)

4.0

相変わらずの受難ものと言ってもエロ、露悪と下品きわまりないトリアー。とはいえ、全体を通して観るとやはり軽さ、軽やかさがある淀みない語り。オチで映画を閉じちゃても構わない娯楽作家宣言作。

ニンフォマニアック Vol.1(2013年製作の映画)

4.2

トリアーはもう巨匠の頃の重さはない。娯楽作を配役の妙と過不足ない語りで作れるタランティーノ的な軽さがこの作品にはある。押し掛けサーマンの去り際の絶叫には、ウケた。

複製された男(2013年製作の映画)

4.3

この映画で描かれる男女のコミュニケーションをみてるだけでなにも要らないと思える位濃密だ。正に映画を見てる間にしか生起されない感情で、観た後に語ることを虚しく感じる。惹かれる映画だ。

セッション(2014年製作の映画)

4.2

シンプルなストーリーラインは拡がりに欠けるが、演者のレベルは及第越え。J.Kシモンズの凄さは予想するが、対峙させられる主人公生徒がJ.キューザック似の風貌で、繊細ながら肝っ玉を魅せる姿はさすがのアメリ>>続きを読む

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)

4.5

前作以上にキャラクターの作り込みが強くなっていて、キャラクター同士の接触によって話が変わっているような凄みを感じた。その場、その場で話が生まれてかろうじて話が繋がっていくような感触がある。それでいて、>>続きを読む

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)

4.7

このレビューはネタバレを含みます

自分なりの正しさを生きようとすることは孤立することだということを妻、肉親との関係でみせている。また、妻のシエナミラーがさまざまな女性的変化を体現しており、純粋に感動。
訓練までは、雑で性急な感じは否め
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ビッグ・アイズ(2014年製作の映画)

3.7

今回は際立つ映像表現は排し、ひたすら語りのためのカット構成。もちろんヴァルツ、エイミー二人の演技を見るにはこれが最高の選択だ。
エイミー演じる画家がバートン的キャラといえるが、彼女を侵していくエキセン
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オールド・ボーイ(2013年製作の映画)

3.9

チャヌク版の粗い部分を補完するバランスの取れた脚本に、リーの的確で切れのよいスピーディなB級演出が仕上がり。ブローリンの存在感は半端なく、更にビルトアップされ動けるニック・ノルティと化していて、シリア>>続きを読む

オール・ユー・ニード・イズ・キル(2014年製作の映画)

3.5

ループものの仕掛けを巧みに使った繊細な脚本をスピーディに処理する手腕は職人芸。娯楽としては、中々の線だろうが、ループものとしては、仕掛けのみを取り出した軽さを感じた。ループによって主人公に現れる本質的>>続きを読む

セインツ -約束の果て-(2013年製作の映画)

4.2

夕陽カントリーを手持ちワイドで回されるが、テレンス・マリックの影響下というだけでは済まされない才能だ。より、カットを挟んで説話性を保ちつつ、高度な映像が、いわゆる従来のキャラクターとはいえない登場人物>>続きを読む

ドラッグ・ウォー 毒戦(2012年製作の映画)

4.5

語り口の経済性とゴツゴツしたキャラ達の配置で衝突まで持っていく見事なB級ぶりは相変わらず。今回、エモーショナルな関係性は薄めだなと思っていたら全てをご破算にするようなラストに圧巻。 トー的ロマンすらぶ>>続きを読む

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