mat9215さんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

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EO イーオー(2022年製作の映画)

4.0

いつものようにシャープなスコリモフスキ。ロバのEOの悲しげな眼差しを捉える広角レンズのクロースアップショットは『GUNDA/グンダ』を想起したりする。ロバ視点の冒険譚では、人間は点景にすぎない。EOを>>続きを読む

あのこと(2021年製作の映画)

2.5

第二次大戦中を舞台にしたシャブロルの『主婦マリーがしたこと』で処置者はギロチンにかけられた。それから二十年近くたっても事情は大差なかったようだ。処置を受ける者を描くという設定は『17歳の瞳に映る世界』>>続きを読む

一寸先は闇(1971年製作の映画)

4.0

オープニング、着衣のミシェル・ブーケと金髪裸女が戯れるうちに大事に至るツカミが上々だ。そして、懊悩するブーケが人を殺したことを告白する2つの場面が秀逸。一つは、友人フランソワーズ・ペリエに告げる場面。>>続きを読む

野獣死すべし(1969年製作の映画)

4.0

火サス風のサスペンスプロットが、重層的な構造と官能的な映像で描かれる。晩餐場面の破壊力に戦慄した。主人公のアパルトマンのチェスセットや、ブルターニュ邸宅内の絵画や置物など、ちょっとイカれた装飾も歪んだ>>続きを読む

アンナの出会い(1978年製作の映画)

4.0

隅々まで息苦しいくらい映画に配慮されている。冒頭の駅ホームの長回し、ホテル室内の横移動、列車内の会話、母と語らうレストラン。しっかり作りこまれた映像と環境音。観る者に映画を観ていることを意識させる映画>>続きを読む

ノンちゃん雲に乗る(1955年製作の映画)

2.5

鰐淵晴子と徳川夢声が綿菓子のような雲の上で語り合う。徳川夢声は仙人というよりは村の古老のような出で立ちだ。鰐淵晴子がバイオリンを演奏し、バレエを舞う場面はミュージカル風の天上感が溢れる。藤田進と原節子>>続きを読む

ショック療法(1972年製作の映画)

2.5

若さを維持するクスリを製造し、金持ちの顧客に処方する怪しげな医師。怪しい医師に扮するアラン・ドロンがいかがわしくてハマリ役。アニー・ジラルドも中年の域に達した肉体を惜しげもなくカメラに晒す。話の展開は>>続きを読む

オルメイヤーの阿房宮(2011年製作の映画)

3.5

オープニング、舞台で歌う男を見つめる刺客。刺客が事を成し遂げると、歌う若い女のクロースアップ。このツカミにやられる。途中で寝ちゃったけど、海岸で男女を迎える舟だとか、ラストの長回しでおっさんの顔にゆる>>続きを読む

幸せをつかむ歌(2015年製作の映画)

2.5

予定調和の展開で安心して観られる。ドラマに対して、バンドの演奏場面が長い。ジョナサン・デミはバンド音楽映画はお手のものだし、メリル・ストリープも熱演ではなく熱唱なので安心して観ていられる。家族が揃った>>続きを読む

デジレ(1937年製作の映画)

4.0

屋内の場面が中心だから演劇的というわけではない。ショットの選択やその連鎖が極めて映画的だ。登場人物たちの夢が立て続けに描かれる場面の鮮やかさのみならず、会話場面でも唐突な切り返しがあったり、イマジナリ>>続きを読む

さよなら、私のロンリー(2020年製作の映画)

2.5

ホワイトトラッシュものかと思ったら、親娘三人でこすい犯罪を続ける歪な家族ものだった。ゆるく笑える。天井の縁から壁面に流れ落ちるピンクの泡や、何度も揺れる地震といった象徴っぽいできごとには、あまり心を動>>続きを読む

レイチェルの結婚(2008年製作の映画)

3.5

ホームムービー風のカメラワークとよく評されている。揺れたり、所在なげにさまよう手持ちカメラ撮影というだけでなく、撮影される人たちが撮影する人を近親者として受け容れている内輪感がその印象を与えるのだろう>>続きを読む

TOVE/トーベ(2020年製作の映画)

2.0

トーヴェ・ヤンソンはスウェーデン語の話者だった。フィンランドは公用語にフィン語とスウェーデン語の二つを定めている。スウェーデン語の話者は人口の1割であり、トーヴェ・ヤンソンはフィンランドのスウェーデン>>続きを読む

王冠の真珠(1937年製作の映画)

4.5

これは傑作。サッシャ・ギトリ作品は、部屋の中で完結する舞台劇より、『トランプ譚』や本作のように時間と空間を越える作品が面白い。冒頭、ギトリがジャクリーヌ・ドリュパックと目線が交わらない切り返しで会話し>>続きを読む

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

3.5

アリ・アッバシの直球勝負。前作『ボーダー 二つの世界』は寓話的なつくりで当方の心には響かなかったけれど、本作は力強い。戦争帰還者の私的ジハドと、それを歓呼するイラン社会のミソジニーをストレートに描く。>>続きを読む

レッド・ロケット(2021年製作の映画)

4.0

クズばかりが登場する映画は面白い。ダメダメなプアホワイトを描く映画群の中でも、本作は準巨匠ウィリアム・フリードキンの『キラー・スナイパー』(原題の『Killer Joe』がイカしてる)に並び立つ。主人>>続きを読む

Diary of a Fleeting Affair(英題)(2022年製作の映画)

4.0

サンドリーヌ・キベルランとヴァンサン・マケーニュの二人が、出会いから別れまで全編ひたすら会話する。日付ごとに場面が変わっても、二人以外の人物はほとんど登場しない。マケーニュには妻子があるけど、ドラマに>>続きを読む

アフター・ヤン(2021年製作の映画)

2.5

クルマのフロントスクリーンには風景の光が映り込む。コリン・ファレルの夫とジョディ・ターナー=スミスの妻が会話するときは、対面でもリモートでも真正面から切り返される。こうしたちょいと映画的なディテールに>>続きを読む

真夏の夜のジャズ(1959年製作の映画)

3.5

オープニングはクラシックカーでのんびりと会場に向かう人々。昼間の会場はヴァカンス気分一杯で、ゆるーい雰囲気がいい感じ。夜に至って会場も演奏も熱くなる。当時ですら古臭いはずのサッチモやマヘリア・ジャクソ>>続きを読む

パリ13区(2021年製作の映画)

2.5

男女のぐだぐだ話はフィリップ・ガレルに感触が近い。男女のぐだぐだ話のフランス映画ならトリュフォー、最近ではエマニュエル・ムレが好み。本作ではエロサービスサイトから始まる女同士の交流が面白い。どちらも金>>続きを読む

ベルイマン島にて(2021年製作の映画)

2.5

猫背のティム・ロスに、でっかいヴィキー・ロスのカップルは、年齢以上にビジュアルが不釣り合いだ。この違和感がドラマを貫く。劇中劇のミア・ワシコウスカはスラブ系の頑なそうな顔つきが板についてきた。ミア・ハ>>続きを読む

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022年製作の映画)

2.5

『カメラを止めるな!』と同様、前半は困った感じだったけど、後半に盛り上がる。ゴールを目指してプロジェクトを完遂する。そのプロセスでチームに一体感が生まれたり主人公が成長するという、プロジェクト完遂モノ>>続きを読む

夢を見ましょう(1936年製作の映画)

3.5

ドラマが展開するのは室内、俳優の全身を捉える長回し。ほとんど舞台劇のような作りだけど、ギトリの映画には、これぞ映画だという瞬間がある。それは、長回しのショットを切り替えるタイミング、高速のパン、俳優の>>続きを読む

ミーン・ストリート(1973年製作の映画)

3.5

生き方が定まらない若造のぐだぐだ話が、フィルムノワールのような漆黒の画面で、ニューヨークの薄汚い(ミーンな)街を舞台に描かれる。流れる音楽は、オールディーズ、ストーンズ、ソウル、それにイタリア語の歌謡>>続きを読む

アムステルダム(2022年製作の映画)

2.5

男二人と女一人のトリオは『冒険者たち』と同じだけど、女は途中で死なないし、ペアにあぶれた男もちゃんと相方を見つける。どちらのカップルも白人と黒人というのは、最近の映画らしく政治的に正しい設定だ。実話ベ>>続きを読む

刑事ジョン・ルーサー: フォール ン・サン(2023年製作の映画)

2.5

ジョージ・ミラーの『アラビアンナイト 三千年の願い』を観て、イドリス・エルバという俳優を知った。本作では、元のボスから死への衝動をもっていると指摘される。そんな何かを背負っている役柄を演じて説得力があ>>続きを読む

テトリス(2023年製作の映画)

2.5

ウェルメイドのベイスト・オン・トゥルー・ストーリーもの。任天堂やメディア王ロバート・マクスウェルが販売権の獲得に地道を上げるのは実話べースなのだろうけど、当局のオフィスに関係者一同が揃ったり、KGBの>>続きを読む

プレイタイム(1967年製作の映画)

3.5

あらゆるディテールを映画作家が統御している常軌を逸した映画。30年以上前に見たときと同じ感想だ。空港や展示会場の場面は覚えていたのに、ナイト・クラブなどの場面はすっかり忘れていた。空港のメタリックなひ>>続きを読む

トリとロキタ(2022年製作の映画)

3.5

ダルデンヌ兄弟は上手い。いつものように人物を間近に捉えて後を追う場面でも、動きの入ったショット繋ぎのタイミングが絶妙だということに気づいた。また、本作ではサスペンスも冴える。トリとロキタが夜の街で麻薬>>続きを読む

新しい遺言(1936年製作の映画)

3.5

早口の台詞の掛け合いで、英語字幕を追うのが大変。俳優たちの会話を捉える長回しは、俳優たちを動かしたり、クロースアップを交えたりしてもちょっと単調なところがあった。クセの強い登場人物たちの中でもいちばん>>続きを読む

PIG ピッグ(2021年製作の映画)

3.5

そこにいるだけで迫力のあるニコラス・ケイジ。血まみれの顔のまま街を歩いたり、小綺麗なレストランに入っても誰も咎めない。世捨て人ケイジの台詞はミニマムで口調は穏やかだ。なぜトリュフ豚を探すのかと問われて>>続きを読む

アメリカン・グラフィティ(1973年製作の映画)

3.5

田舎町の小僧・小娘たちの群像劇。街中の移動もひたすらクルマだ。小さな街では、知り合い同士が路上やハンバーガーショップですぐに遭遇して、個々のエピソードが交差する。出番の多い俳優たちは後年まで活躍してい>>続きを読む

イージー★ライダー(1969年製作の映画)

3.5

初見。ピーター・フォンダの醒めた眼差しが印象的だ。エキセントリックなデニス・ホッパーとジャック・ニコルソンだけでは旅は続けられない。そして、まさしくデニス・ホッパーの映画だ。だらっとした場面が続く中で>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.5

仮面ライダーが宙を舞う短いショットの畳みかけや、唐突な着地といったアクション。はたまた、荒涼とした人気のないロケーション場所。こうした戦闘場面で不覚にも目頭が熱くなってしまった。電柱だの鉄路だのといっ>>続きを読む

コンペティション(2021年製作の映画)

2.5

ハリウッド映画スター役のアントニオ・バンデラスと意識高い系俳優役のオスカル・マルティネスは俗物として、また映画祭で評価の高い映画監督役のペネロペ・クルスは面倒くさい変人として描かれる。こうした底意地の>>続きを読む

画家と泥棒(2020年製作の映画)

2.5

女性画家とその作品を盗んだ男の二人が本物であることは確からしいものの、映画全体が最後の絵画作品に導くために構成されており、撮影も劇映画風だ。ギョーム・ブラックの『宝島』では好ましかった劇映画風ドキュメ>>続きを読む